2003-12-5 第7回 波形ひずみの除去

2003 年 12 月 05 日
原
大学院講義
精一郎
計測情報の数理処理
第 7 回 波形のひずみの補正
信号の劣化
ノイズの混入(前々回)
画像のぼけ,流れ,2 重露光(線形)
接触型測定機の先端形状(非線形)
線形の劣化に対する信号回復
計測機器を線形と考えると,本来の信号 x と,出力信号 y の間には次のようにたたみ込みの関
係がある.(雑音は無視できるとして)
∫
∞
y (t ) = h(τ )x(t − τ )dτ = h(t ) ∗ x(t )
(1)
−∞
h(t)は装置関数と呼ばれる.ただし面積は 1
∞
∫ h(t )dt = 1
−∞
理想的な測定機ならば y(t)=x(t)すなわち
∞
∫ x(τ )δ (t − τ )dτ = y(t )
−∞
式(1)を周波数領域で考えると
Y (ω ) = H (ω ) ⋅ X (ω )
(2)
ここで装置関数 h(t),あるいは H (ω ) がわかっているとする.
y から x を求めるには時間領域で処理する方法と,周波数領域で処理する方法がある.
たたみ込みを逆に解くために,デコンボリューションと呼ばれる.
図
コンボリューションとデコンボリューション
1
デコンボリューション(時間あるいは空間領域での処理)
図
コンボリューション
雑音が無視できるとすれば,以下の式を解き,x を求めることに等しい
y =Hx
ヤコビ法,ガウス-ザイデル法など
デコンボリューション(周波数領域での処理)
式(2)より
Xˆ (ω ) = Y (ω ) H (ω )
X を逆フーリエ変換して
⎛
1 ⎞
⎟
xˆ (t ) = ℑ −1 ⎜⎜ Y (ω ) ⋅
(ω ) ⎟⎠
H
⎝
(3)
インバースフィルタと呼ばれる.
図
図
ピント外れ
2 重露光
2
図
流れ写真
問題点
H (ω ) = 0 となる点で式(3)が発散する
H (ω ) が小さい周波数で雑音が増幅される
ウィナーインバースフィルタ
ノイズ成分と信号成分が無相関であると仮定,信号/ノイズの比を最大にする考えでウィナー
インバースフィルタを定義
W (ω ) =
H (ω ) ⋅ Ps (ω )
(4)
H (ω ) Ps (ω ) + PN (ω )
2
ただし, PS , PN は信号とノイズのパ ワースペクトルとする.しかし PS, PN は未知なので,
Ps (ω ) PN (ω ) = c という定数で表せると仮定して,式(4)を置き換える
W (ω ) =
H (ω )
2
H (ω ) + 1
c
ウィナーインバースフィルタとして,実用的に用いられる
レーザー顕微鏡で測定された高さデータに対する応用
超解像
ぼけた画像データに対して用いられる.光の強度が非負であること,及び光源(星)のサイズ
が有限であることを制約条件にして,本来の解像度を超える解像度の画像を得る.
モルフォロジフィルタ(測定機の先端形状への応用)
モルフォロジー演算
集合演算 Minkowski sums を基本とし、それらの組み合わせで種々のモルフォロジー
3
演算が構成される
集合演算の結果は構造要素の影響を大きく受ける
各演算により出力が異なる
和(dilation): A ⊕ B = ∪ ( A) b
b∈B
差(erosion): A Θ B = ∩ ( A) b
b∈B
図 Dilation
Erosion
Opening: f g ( x) = [( f Θ g s ) ⊕ g ]( x)
Closing: f g ( x) = [( f ⊕ g s ) Θ g ]( x)
図 Opening
Closing
表面形状を有限の大きさの触針でなぞって得られる表面形状は,もとの表面形状に Dilation
を行ったときの形状を等しい.
得られた表面形状に Erosion を適用すると,本来の表面形状が得られる.この操作は Closing
に相当する.
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