東京工業大学百年記念 館 第 8 回 特 別 展 示 ・ 講 演 会 先 端 ロ ボ ット の 世 界 社 会 に 役 立 つ ロ ボ ット の 創 造 「先端ロボットの世界」展に向けて 日本はロボット大国です。近年は人間型や動物型をした一般の家庭で活躍させるためのエン ターテイメントロボットの開発が盛んに行われています。これらは昨年の愛知万博でも多く紹 介されました。しかしロボットが活躍するのは家庭内に限定されません。砂漠などで黙々と植 3 次 元 的 な 運 動 のできるヘ ビ 型 ロ ボット。左 右 方 向 の 屈 曲と上 下 方 向 の 屈 曲を作 る関節を交互に直列につな いだ節体幹移動体です。 体 は 大きな 車 輪で 囲まれて います が、この 車 輪 は 駆 動 輪で は なく、体 幹 の 方 向 に す べりや すく横 方 向 に す べ 6 ヘビ型ロボット / ACM-R3 りにくいという実際のヘビと ● ❶ 同じような 特 性 を 作り、そ [エーシーエムアールスリー / Active Cord Mechanism Revision3 ] れ で 地 上 を す べるように ほ 2001 年 - / 12.1 ㎏ ふく推 進しま す。捻 転 動 作 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 や尺取虫運動もできます。 水 陸 両 用 の ヘ ビ 型 ロ ボット で す。制 御 コ ン ピ ュ ー タ、 バ ッ テリ ー な ど を 内 蔵 し、 関 節 はジャバラで 囲まれ た 完 全 防 水 構 造で、胴 体を覆 う受 動 車 輪 を 内 蔵した ヒレ で 陸 上 の み ならず 水 中でも 遊 泳 で きま す。2005 年 愛 知万博にも出展しました。 ● ❶ ヘビ型ロボット / ACM-R5 ( 映像展示 ) [エーシーエムアールファイブ / Active Cord Mechanism Revision5 ] 2005 年 - / 7.5 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 林を行うロボット、電力・ガス・上下水道・発電施設などの社会インフラの維持管理を行うロボッ ト、災害時の人命救助ロボット、人道的な対人地雷の探査除去用ロボット、医療・福祉施設で 2 . 移 動 ロ ボ ット の 新し い 形 態 ( 不 整 地 移 動 ) 活躍するロボット、惑星探査ロボットなど、極限的な環境で我々の生活を守ってくれるロボット、 Shape of Mobile Robots for Uneven Terrain いわば縁の下の力持ちロボットたちも、これからどんどん開発してゆかなければなりません。 いろいろな自然 界 や 人 間 の 作った 環 境を自在 に動き回るロボットを実 現 するた め には、環 境 に応じてもっと 文部科学省は、顕著な業績を挙げている日本の代表的な研究グループに対して大型の資金援 ごあいさつ 助を行い、世界的な研究拠点を形成しようとする 21 世紀 COE プログラムを始めてますが、東 東京工業大学では、戦後非常に早い時期からロボットの研究を行ってきました。百年記念館の地下の展示室に常設展示されている四本足で歩く ロボットおよび巨大なヘビ型ロボットは、東京工業大学で生まれた初期のロボットです。ロボットというと人間の形をしたものを考えますが、これ らもりっぱなロボットで、東京工業大学のロボットの原点といえるものです。それから数十年、東京工業大学のロボットはすばらしい勢いで進化し てきました。そして 21 世紀 COE プログラムにも「先端ロボット開発を核とした創造技術の革新」というプロジェクトが採用されました。皆の知恵 と努力の成果です。 今回、 東京工業大学百年記念館では、 21 世紀 COEプログラム 「先端ロボット開発を核とした創造技術の革新」 と共同で、 第8回特別展示・講演会 [先 端ロボットの世界 社会に役立つロボットの創造」を開催することに致しました。東京工業大学で開発研究されてきた一連のロボットや、現在研 究開発中の最先端の技術についての展示・講演を行ないます。東京工業大学のロボットがどういうものか、どのようなことを考え、どのように知 恵をしぼって開発されたのか、よくご覧になってください。 SF 作家アイザック・アシモフが 1950 年に提案した有名なロボット3原則 ―第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。―第2条 第1条に反しない限り、ロボットは与えられた命令に従わなければならない。―第3条 第1条、第2条に反しない限り、ロボットは自己を守ら なければならない。はその後多くの論争を経て、いろいろな解釈や新原則が生まれてきています。そもそもロボットとは何であるかをともに考え、 人類に役立つロボットの創造に、皆さんもともに参加して頂ければ幸いです。 末尾になりましたが、この展示・講演会を開催するにあたりご協力を賜りました関係各位に心から御礼申し上げます。 平成18年7月22日 国立大学法人東京工業大学長 東京工業大学百年記念館館長 相澤益男 工大のロボット研究グループは、2003 年からロボット系の代表として選抜されています。そし 20 ● 16 ● 15 ● 14 ● 13 ● 12 ● 9 ● 10 ● 3.極限環境で作業するロボット (災害救助、人道的地雷探知) 7 ● 8 ● 6 ● 4 ● 17 ● 映像展示 スペース 18 ● 19 ● 24 ● 22 ● 23 ● 4.ロボット技術の 医療・福祉への応用 25 ● 26 ● 27 ● 1 ● 1.ロボットを動かす技術 5.産業におけるロボット開発 28 ● 29 ● 西門 30 ● 受付 「夢のロボット」応募作品展示(館内) 東京工業大学百年記念館第8回特別展示・講演会「先端ロボットの世界」展準備委員長 21 世紀 COE プログラム「先端ロボット開発を核とした創造技術の革新」 リーダー 広瀬 茂男 7 3 輪惑星探査ローバー / ❶ ● Tri-Star III [トライスタースリー] 1 回転型倒立振子 ● アー ム 先 端 に 取りつ けられ た自由 に 回 転 する振 子 に 対 し、振 子 が 倒 れている角 度 に 応じて適 切 にアー ムを 回 転させる制御を施すことで、 普 通 なら倒 れ てしまう振 子 を立った 状 態 に 保 持 する制 御 が で きます。この 装 置 は 東 工 大で 開 発されて世 界 に 広まっています。 [カイテンガタトウリツシンシ / Rotating Inverted Pendulum (Furuta Pendulum) ] 1990 年 - / 10 ㎏ 機械制御システム専攻 三平研究室 人 の 行う鉄 棒 競 技と同じよ うな アクロ バ ティックな 運 動 を 実 現 で きる 人 型 ロ ボッ ト(アクロボット)で す。 体 の 振 れ に合わ せて胴 体を 屈 曲 させる パラメータ励 振 という運動法で振れを大きく していき大回転が出来ます。 ま た 手 を 離してジャンプ な ども出 来ます。 前 の モデ ル 2 鉄棒ロボット / SMB-R2 ● ❶ [テツボウロボット / エスエムビーアールツー の S M B - R 1 は 倒 立 や 空 中 Super Mechano Boy-R2 ] 回 転も実 現しています。 2000 年 - / 3 ㎏ (市 販 歩 行ロボットによる大 機械制御システム専攻 山北研究室 車輪運動) 荒地では脚移動が有利で す が、平 坦 地 で は 車 輪 移 動 の 方 が 効 率よく移 動 で き ま す。この R o l l e r - W a l k e r は 足 裏を倒 すとそれ が 受 動 車 輪となり、 脚 を 動 かして ロ ー ラ ー ス ケ ートの ように 推 進します。 車 輪 に モ ータ を 付 けると足 先 が 重くなっ て 歩 行 特 性 が 悪くなりま す 9 脚車輪複合型ロボット / ● ❶ Roller-Walker [ローラーウォーカー] が 、この R o l l e r - W a l k e r は 足 先 が 大 変 軽く軽 快 に 歩 行 1994 年 - / 24 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 できます。 それぞ れの脚 は一対の 軽 量 エアー シリンダ で 駆 動 さ れ て いま す。そして、比 較 的 平 坦 な 環 境 で は エアーサス ペ ン ション の 車 両として 移 動し、大 きな 障 害 物 が ある とこの エアー シリンダ を 急 激 に 駆 動してジャン プ して 乗り越 えることを目 的 に 開 10 ジャンプ型4輪ロボット / 発して い る 未 来 型 ロ ボット ● ❶ です。 AirHopper [エアホッパー] 鉄 棒 の 根 本 の バネ 要 素でし なりを 持 た せ た アクロ ボッ トで す。 体 操 競 技 の 鉄 棒 運 動 に お ける 振り上 げ 動 作 を、 鉄 棒 のし なりを も 考 慮 し た 制 御 を 行うことで 、よ り効 率 の 良 い 振り上 げ 動 作 の 実 現 を 達 成 することが で きます。 狭い山岳地帯等や災害現 場で の 移 動 車 両として搭 乗 者 の 肩 幅 程 度 のコン パクト な 車 体 が 有 効で す。このロ ボットは 3 つ の 車 輪 を 地 形 の 凹 凸 に 応じて能 動 的 に 制 御して 安 定して 動 き 回 るこ とができます。 崖 の 土 砂 崩 れを防 止 するた め に、コンクリートの 格 子 状フレ ー ム が ある法 面で 格 子 を 計 測し避 け な がら歩 け るロ ボットで す。現 場 で は アン カ ー ロックボ ルトの 姿 勢を足 の 動きで 調 整し、長 い ボ ルトを 法 面 に 打ち込 み ま す。全 質 量 7トンでこれ ❶ 法面アンカーロックボルト まで 世 界で 製 作され た 歩 行 ● 作業用 4 足歩行ロボット / ロ ボットの 中 で 最 も巨 大 な ものです。 TITAN Ⅺ [タイタンイレブン] ( 映像展示 ) 2002 年 - / 7000 ㎏ 1 . ロ ボ ット を 動 か す 技 術 事をしてくれるた め に は、それ を動 か す 基 本 的 な 技 術 の 蓄 積 が 不 可 欠 で す。ここで は、ロ ボットの メカニズ ムが 出 来 上 がった 後 に、それをい か にた くみに動かすかの「制御」の技術に関する研究の一 21 屋外展示 ● 会 場案内図 会場案内図 東工大マップ 石川台1号館 5F展示室 ロボット展示 毎日 10:00 - 17:00 2F253号室・5Fリフレッシュルーム 機械・ロボットを創る∼ものづくり体感ワールド∼ 7 月 27 日 ( 木 ) 13:00 - 17:00 28 日 ( 金 ) 10:00 - 17:00 29 日 ( 土 ) 10:00 - 16:00 70 周年記念講堂 百年記念館 講演会: 展示: 7 月 23 日 ( 日 ) ー 30 日 ( 日 ) 毎日 13:00 - 14:00 7 月 22 日 ( 日 ) ー 30 日 ( 日 ) 開館 10:00 - 17:00 端を紹介します。 デモンストレーション: 毎日 11:00、16:00 本館 桜並木 4 球操りロボット ● ❶ 南門 石川台地区 東工大マップ [タマアヤツリロボット / 図書館 トンネル 大岡山地区 正門 大岡山駅 惑 星で 岩 石 の 採 集 を すると きなど、一 台 の 探 査 機で は 効率が良くありません。 SMC ロ ー バ ー は 親 ロ ー バ ー の 車 輪 が 分 離して 子 ロ ー バ ーとして 独 立して 作 業 で きる 世 界 的 に もまった く新しいローバーです。 子 ロ ー バ ー はアー ムを 振り 8 親子型惑星探査ローバー 回 す ことで「糸 巻 き 戦 車」 ❶ ● SMC Rover [エスエムシーローバー/ のように自在に動きます。 また車輪を土台にして独立し Super Mechano-Colony Rover ] 1997 年 - / 20 ㎏ た作業アームにもなります。 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 M o t i o n C o n t r o l of the Robots 常設展示(B1F) 3 輪 型 の 惑 星 探 査 機(ロー バ ー r o v e r )で す。ロ ケ ッ トで 搬 送 するときに はアー ムを折りた たんで 小さくし、 惑 星 に 到 達して探 索を開 始 するとき に ア ー ム を 伸 ばし て安 定 な 移 動を行 います。 アームの 展 開 は 、 車 輪 の 回 転と関 節 のブレ ー キ の 作 動 を同 期して行 います。 2004 年 - / 12.3 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 ロ ボットが 多 様 な 機 能 を 発 揮し、目 的 に 応じた 仕 カフェ はそのようなロボット群を紹介します。 に実用的な世界最先端のロボット群の開発プログラムが進行してます。本展示会では、そのよ 2 ● デモンストレーションスペース 形 態 の 移 動ロボットを試 作しな がらその 運 動 制 御 法も含 め た 広 範 な 研 究を進 めています。このコーナーで うな現在開発中の「社会に役立つロボット」の生々しい研究開発現状をご覧いただきます。 3 ● 2.移動ロボットの新しい形態 (不整地移動) 回転体、(2 ) 脚、(3 ) ヘビのような節体幹、などの組み合わせで実現できると考えられます。我々は多くの て現在、東工大が誇る機械系研究者の頭脳を結集しながら、このような極限環境で活躍する真 5 ● 11 ● も適当な形態の移動手段を選ぶ必要があります。そのような移動ロボットは、(1 ) 車やクローラなどの無限 Ball-Plate Manipulation ] 1998 年 / 35 ㎏ 機械制御システム専攻 三平研究室 上 下 2 枚 の 板 に挟まれて運 動 する 球 に 対し、ス テレ オ ビジョンで 計 測した 球 の 空 間 上 の 位 置 情 報 を 基 に、 ロ ボットマ ニ ピュレ ー タで 上 板 を 適 切 に 動 かしな がら 球 を 転 が すことで 、 板と球 の両方の位置を目的の値 に 制 御します。 不 思 議 な 腕 の 動 きで 制 御 で きてしまう ノン ホ ロノミック制 御 の 面 白 さ、 人 間 に は 難し いこと を体 験してください 。 3 鉄棒ロボット / Acrobot ● ❶ [テツボウロボット アクロボット] 2005 年 / 2.5 ㎏ 機械制御システム専攻 三平研究室 そ の ままで は 倒 れ てしまう 二 輪 車を、 上 に 搭 載した 振 子 を 左 右 に 振る制 御 を 行う ことによって 安 定 に 立っ た 状 態 にして 推 進 することを 実 現したロボットで す。 人 間 が 何 気 なく行 って い る 運 動 、 ま た ウィリーな どの 高度な二輪車の運転制御 5 2輪車ロボット / SMR-R1 法を 解 明し 、 それを実 際 の ● ❶ ロ ボットに 利 用 で きる よう [エスエムアール アールワン / Super Mechano Rider-R1 ] にして い くことを 目 的 とし 2004 年 / 80 ㎏ た 実 験バイクロボットです 。 機械制御システム専攻 山北研究室 11 不整地移動用パーソナル ❶ ● 三輪車両 / Falcon-Ⅱ [ファルコンツー] 2006 年 - / 80 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 2002 年 - / 30 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 ● ロボットの名称 [カタカナ / 英語 ] 開発年度 / 重量・サイズ 所属・開発者 ※過去のロボットも展示していますのでご覧ください(約 40 台)。 場所=石川台1号館5F 展示室 毎日 10:00-17:00 倒 壊した 家 屋 の 中 に 入り込 み,生 存 者を探 索 するた め には瓦礫 ( ガレキ ) の中を 推 進できる優 れ た 運 動 性 能 が必要です。蒼龍Ⅲ号機は、 東 工 大で 蓄 積してきた ヘ ビ ロボットの技術で開発してい ま す。3 つ のクロ ーラを 装 備した節を能動的に屈曲し、 12 ヘビ型レスキューロボット / 狭くて曲がりくねった瓦礫内 ● ❶ を自分の体をブリッジにしな 蒼龍 III 号機 がら移 動して い きま す。先 [ソウリュウサンゴウキ / Souryu-III ] 2002 年 - / 10 ㎏ 端 に は 小 型 カメラ、マ イク 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 があり被災者を探ります。 節 全 体 がクローラに 覆 わ れ たタイプ の ヘ ビ 型 瓦 礫 内 探 査 ロ ボットで す。 関 節 は 4 つ の 弾 性 ロッド( や わらか い 棒 状 の 関 節)の 伸 び 縮 みで 屈 曲し、また 適 度 な 弾 性を関 節 に与えています。 この ような ロ ボットを 実 現 するた め 、 薄 い 金 属 シ ート 13 ヘビ型レスキューロボット / に突 起 の 付 い たゴ ムを焼き ● ❶ 付 け たクロ ーラから新 た に 蒼龍 V 号機 開 発しています。 [ソウリュウゴゴウキ / Souryu-V ] 2004 年 - / 16.5 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 中 心 軸 周りに 回 転で きる左 右 のクロ ーラと強 力 な 出 力 のアー ムで、大 きな 瓦 礫 に よじ登ったり、障害物を排除 したりできるロボットです。 この アー ムで 他 のクロ ーラ ロ ボットを 把 持し、連 結し てさらに 高 い 移 動 性 能を発 揮することも可能です。 14 作業型クローラロボット / ● ❶ HELIOS-VII [ヘリオスセブン] 15 階段昇降監視ロボット / ● ❶ Raccoon-I [ラクーンワン] 大 規 模 地 震 が 来 たときなど は 、日常 生 活で 利 用できて い て 災 害 時 に すぐ に 人 命 救 助 に 利 用できる装 置 があ ると 効 果 的 で す。こ れ は 、 自 動 車 用 の ジャッキ を 災 害 救 助 用 に も流 用 で きるよう に開 発したジャッキで す。 2 0 0 3 年 度 の グッド デ ザ イ 16 自動車搭載救助用ジャッキ / ン賞を受 賞しています。 ❶ ● Rescue Jack-up Device [レスキュージャッキアップデバイス] 17 ペダル式人力空圧ポンプ ❶ ● [ペダルシキジンリキクウアツポンプ / Pedaling Pump ] 1998 年 -1999 年 / 10 ㎏ 機械制御システム専攻 北川・塚越 研究室 1996 年 - / 8 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 瓦 礫 をこじ開 けて狭 い 隙 間 に 潜 入し、 奥 深く挟 まっ た 生 存 者 を 救 出 する、 いまま で に な かった 新しいタイプ のレスキューロボット。 1 個 の 油 圧モータで 重 量 物 支 持と推 進 動 作 の 両 方を生 成 で き、ビ デ オデッキ 程 度 の サ イズ で 200kg 以 上 の 負荷を支えられます。 19 跳躍・回転移動体 / ❶ ● Leg-in-rotor-V 災 害 時 に自転 車 の ペダ ル 動 作 を 利 用して、人 の エ ネ ル ギ ーをレスキュー 機 器 の 空 圧 エ ネ ル ギ ー に 効 率よく変 換 で きる装 置 で す。ある特 殊 な 機 構 の 導 入 により、1 分 自 転 車 を 漕ぐ だ けで、1 トン車を 300mm程 度楽に 持ち上げることができます。 このような 自 転 車 は、災 害 時 に 狭 い 道 を 通ってレ ス キュー 機 器も運 べる運 搬 手 段としても適用できるため、 大変便利です。 倒 壊 家 屋 に 投 げ 込 ま れ て、 瓦 礫 の 上を飛 び 跳 ね な がら 生 存 者 発 見 す る カ メラ・ マ イク搭 載 の レ ス キュー ロ ボットで す。 平 地 は 効 率よ く回 転 駆 動し、 大 きな 障 害 物 はドライアイス パ ワー で 1 m ほどジャンプします。 たとえ逆さから着 地しても、 俊 敏 に 姿 勢を復 帰できるの も特 長で す。 4 . ロ ボット 技 術 の 医 療 ・ 福 祉 へ の 応 用 M e d i c a l a n d W elfare Robots 日本がこれから高齢化社会を迎えることを考えると、ロボットは高齢者や身障者の日常生活の補助をするでしょ う。また外科手術においては、患者に負担の少ない、腹部に開けた小さな穴から棒状の機器を挿入して行う ロボットは人間が嫌がる、いわゆる3K( きつい・汚い・危険)作業をするときその真価を発揮します。 と、現 在 世 界 中で 1 億 個 以上 ばら撒 か れていて今も一 般 市 民を死 傷させている地 雷を探 査 除 去 するロボッ トの開発事例を紹介します。 21 バギー車搭載地雷探査ロ ❶ ● ボット / Gryphon-IV [グリフォンフォー] 2002 年 - / アーム全長 3.4m 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 機械制御システム専攻 北川・塚越 研究室 25 組立式手術ハンド ● ❶ [クミタテシキシュジュツハンド/ Hand with Detachable Fingers for Laparoscopic Surgery] 2005 年 - / 本体長さ 30 ㎝ メカノマイクロ工学専攻 小俣研究室 New Robots in Industry 現 在、産 業 界 で はどのような ロ ボットが 開 発 され ているか の 一 例として、㈱ 東 芝で 開 発 中 の ロ ボッ トをこのコーナーでは紹介します。 27 自重 100g 指先力 100N ❶ ● の指関節 現 状 の ロ ボットハンド の 指 は 人 の 手 の 指 ほどに力を出 すことが で きま せ ん。 本 装 置 は 指 先 にか かる負荷 に感 応して自動 的 に 指 先 力 を 変 えられる機 構で す。 従 来 の ロ ボ ット ハ ンド よりも は る か に 大 きな 力 を 出 すことが できます。 力 強 い 把 持 がで きる 電 動 義 手 も 開 発 中 で す。 手 術 のとき、 腹 部 を 大 きく 切 開しな いで 小さな 穴 から 器 具 を 入 れ、内 視 鏡 を 見 な がら手 術 を 行う方 法 が 最 近 主 流 に なっています 。 し かし、 小 さ な 穴 を 通して 作 業 するた め 外 科 医 は 棒 状 の 器 具しか 使えませ ん 。 本 装 置 は、部 品 を 穴 か ら 腹部に入れ中で組み立て る 人 の 手 の よう な 手 術 ロ ボットハンドで す 。 28 ロボット鉗子 ● [ロボットカンシ / Robotic Forceps ] 29 ロボット情報家電 ● ApriAlpha TM 家 電 の 操 作 や、ニュースや 天 気 予 報 などを 教 えてくれ るコミュニケーションロボッ トです。音声認識・顔認識・ 運 動 制 御 機 能を搭 載し、誰 で も 簡 単 に 扱 える 動くパ ソ コンのようなロボットです。 安 全で 快 適 な 生 活を支 援 す るために期待されていま す。 [アプリアルファ] 2003 年 - / 全高 35 ㎝ ( 株 ) 東芝 内視鏡下手術は患者には 傷 が 小さく負 担 の 少 な い 手 術 で す が、外 科 医 に は 高 い 技 術 が 要 求されます。 そこで 、 鉗 子 の 先 端 を いろ いろな 方 向 に 向 けて微 細 な 手 術 ができるように、ロボッ ト技 術 を 取り入 れ た 鉗 子 を 開 発しました 。 左 がロボット鉗 子 ( 外 径 3 ㎜ )、右が従来の鉗子。 2001 年 - / 全長 50 ㎝ ( 株 ) 東芝 30 万年時計 ( 特別出品 ) ● [マンネンドケイ / Historic Perpetual Chronometer ] 六 面 の 時 表 示 部(和 時 計、 二 十 四 節 気、七 曜、十 干 十 二 支、月の 満ち欠 け、洋 時 計)と天 頂 部 に 太 陽と月 の 運 行を示 す 天 球 儀 からな る和時計の最高傑作です。 1 8 5 1 年 に か らくり儀 右 衛 門 こと 田 中 久 重 ( 東 芝 の 創 業 者 ) が 製 作しました 。 2005 年 の 愛 知 万 博 にも展 示されました。 1851 年 / 全高 60 ㎝ ( 株 ) 東芝 常 設 展 示 ( B 1 F ) 歴 史 的 な ロ ボ ット た ち ( 1 9 6 0 - 9 0 年 代 ) P e r m anent Collection Historical Robots in Tokyo Tech (1960 s - 90 s) おわりに 東 工 大 の 森 政 弘 名 誉 教 授、梅 谷 陽 二 名 誉 教 授、そして広 瀬 茂 男教 授らが 開 発したロボットが 百 年 記 念 館 の 地下展示室に展示してあります。 ヘビロボットの 開 発 は 実 際 のシマ ヘビを使った 動 物 実 験を繰り返してその 動きの 秘 密を解 明しそれをロボッ ト製 作 に 利 用しています。また、4 足 歩 行 ロ ボットは ザトウグ モというクモ の 動 きにインスピレ ーションを 得て開 始されています。このように、東 工 大で 始まったロボット開 発 の 特 徴 は、生 物 からインスピレ ーショ 社会で本当に役立つロボットはどうしたら出来るでしょうか。我々が使えるコンピュータ、機械 要素、センサなどは日々性能が向上していますが、しかしそれらを組み合わせて本当に役立つ ロボットを実現しようとすると大変難しく、目的とする作業にあった最も適した「形態」を選択し、 すべての側面から注意深く設計し作り上げなければなりません。今回展示したロボットたちは このような 作 業 のうち、本コーナーで は 大 震 災 などの 後 に必 要となる人 命 探 査 救 助を行うレスキューの 分 野 足 を 手 に 変えて作 業 で きる ロ ボットで す。地 雷 原 に も 歩 い て 入り地 雷 を 探 すこと などが目的で す。左 前 足 に 指 を 取り付 けて地 表で の 作 業 が 出 来るように なって い ま す。脚 の 可 動 範 囲 を 拡 大 するた め 膝 関 節 は 2 つ の ジョイントで出来ています。 ドライアイス の 昇 華 エ ネ ル ギ ーを利 用して人 間 の 歩 行 を サ ポ ートで きま す。支 持 脚 モ ードで は 空 圧 シリンダ で 体 重 を 支え、遊 脚 モ ード で は ロック機 構 が 解 放 され 階段昇降時にも対応します。 特に、下肢関節疾患患者に 有 効。ドライア イス パ ワ ー セ ルとは、三 重 点 保 持 の 制 24 空圧アシスト肢 & ドライア ❶ ● イスパワーセル [クウアツアシストシ / 御 に より、タンクを 一 切 不 Pneumatic Crutch & Dry-ice Power Cell ] 要とする 全く新し い 携 帯 大 2002 年 - / 2 ㎏ 容量圧力源。 5 . 産 業 に お け る ロ ボ ット 開 発 2004 年 - / 全長 30 ㎝ メカノマイクロ工学専攻 小俣研究室 ンを得た研究 (Biologically Inspired Robots) である点です。 2001 年 -2004 年 / 2 ㎏ 機械制御システム専攻 北川・塚越 研究室 Robots for Critical W o r k ( R e s c u e a n d D e m i n i n g ) 2000 年 - / 150 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 2004 年 - / 1 ㎏ 機械制御システム専攻 北川・塚越 研究室 胃がん 手 術でも、 小さな 穴 から器 具を入 れ 内 視 鏡を用 いて手 術 する方 法 が 主 流 に なりつ つあります。しかし、 胃 が ん 手 術で 用 いるタバコ 縫 合 器 は T 型 形 状 をしてい るた め 、 小さな 穴 から入 れ ら れ ま せ ん。そこで 、これ をお 腹 の 中で 組 み 立てて利 26 胃がん手術用組立式タバ 用できるようにしました 。 ❶ ● 切 開を減らす斬 新 な 方 法で コ縫合器 [タバコホウゴウキ / Separable Pursestring Suturing Instrument す。 for Laparoscopic Gastrectomy] [100g-100N Finger Joint ] 2003 年 - / 0.1 ㎏ メカノマイクロ工学専攻 小俣研究室 3 . 極 限 環 境 で 作 業 す る ロ ボ ット ( 災 害 救 助 、 人 道 的 地 雷 探 知 ) [タイタンナイン] 2003 年 - / 1 ㎏ 機械制御システム専攻 北川・塚越 研究室 低襲侵手術を補助するためにロボット技術は利用されていくでしょう。これらの研究の一端を紹介します。 [レッグインローターファイブ] 2003 年 -2005 年 / 20 ㎏ 機械制御システム専攻 北川・塚越 研究室 20 地雷探知除去作業型4足 ❶ ● 歩行ロボット / TITAN-IX [エフアールティー / Flat Ring Tube ] 脳 卒 中 などで 半 身 麻 痺した 体 を そ の ま ま 放 置 す ると、 筋 肉 が 固まるなどの 新 た な 障 害 が 生まれます。この 予 防 の た め に、自分 の 意 志で 動 かしにくい 体 に 運 動 を 促 す装置が Tail-wrist です。 ドライアイス の 昇 華 エ ネ ル ギ ー で 螺 旋 状 チューブ アク ❶ 23 手首運動を促す装着型流体 チュエ ータを 駆 動し、 柔 軟 ● アクチュエータ / Tail-wrist な 動 作を手 首 に 提 供できま す。 [テイルリスト] 2005 年 - / 19 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 2004 年 - / 90 ㎏ 機械宇宙システム専攻 広瀬研究室 18 ジャッキアップ移動体 / ❶ ● Bari-bari-I [バリバリワン] 球 形 の車 輪と屈曲する胴 体 を有 する階 段 昇 降 が 可能 な ビ ル 内 などの 監 視 ロ ボット です。平坦 地 移 動 時 は 立ち 上 がり姿 勢で、階 段 昇 降 は 体を伸ばした安定 姿 勢で 移 動します。その 場 旋 回 は 球 形 車 輪 を支 持 軸 回りに回 転 させて滑らかに行えます。 22 流体の新現象を用いた ❶ ● マッサージ装置 / FRT 流体の不思議な振動現象 を 利 用した 人 に 優しい マッ サ ージ デ バ イスで す 。この チュー ブ は 一 般 家 庭 の 水 道 圧 で も 駆 動 で き、 5 分 体 に 当てると血 流 促 進 効 果 が 3 0 分 以 上も続 きます 。 ま た 、こ の 振 動 現 象 は ロ ボットの 新しい 推 進 駆 動 に も応 用で きます 。 地 雷 探 知 除 去 作 業を行うロ ボット車 両 。 遠 隔 操 作 で き るバギー車 両 に地 雷センサ を 搭 載したアー ムを 搭 載し ています。 地 雷 原 の 周 辺 部 から地 雷 原 の 凹 凸 をステレ オカメラで 計 測し、そ れ に 沿って地 雷 セン サ を 走 査で きます。 砂 漠 の 酷 悪 な 環 境 で 作 動 するように いろいろ な 工 夫 が なされています。 ( 屋外展示 ) ● GAWALK [ガウォーク] ● ACM - III 1968 年 / 4 ㎏ 森政弘名誉教授 1972 年 / 15 ㎏ 広瀬茂男教授教授 / 梅谷陽二名誉教授 [エーシーエムスリー] 6足 歩 行 ロ ボット。モ ー タ の回 転を対 角線 の 位置にあ る一 対 の 3 つ 回 転 体 に伝 え、そ の 回 転 運 動 をパ ンタ グ ラフ 機 構 によって足 先 の 動きに変 換している。 世界で始めてヘビと同じ原理 でほふく推進を実現したヘビ 型ロボット。20 節全長2m。 先 頭 節 から後ろに 屈 曲 波 を 伝播する制御で前進する。 ● TITAN IV [タイタンフォー] ● 蛟龍 II [コウリュウツー] 1985 年 / 160 ㎏ 広瀬茂男教授 1989 年 / 350 ㎏ 広瀬茂男教授 新たに発明した3次元パンタグ ラフ機構を脚駆動系に使用し、 足先の触覚センサで階段昇降 を行った4足歩行ロボット。 つくばの科学博 (1985 年 ) で 半年間 40km 歩いた。 左 右の屈 曲と節 間 の上下 の 運 動 によって 階 段 の あ る原 子 炉内などの 狭 い 通 路 を移 動し、点 検 作 業 をする目的 で 開 発した 節 体 幹 移 動 ロ ボット。 ● NINJA II [ニンジャツー] 1993 年 / 45 ㎏ 広瀬茂男教授 足先の吸盤で壁面に吸着 し、3自由 度 の 並 行 駆 動 脚 に よっ て、壁 面 か ら 壁 へ、 また 壁 から天 井 へ の 乗り移 りなどを 行った 4 足 壁 面 吸 着移動ロボット。 そのようにして作り上げた特異な形のロボット群です。このようなロボットの創造研究は大変興 味深く、また社会的な意義の高いものです。多くの若い人たちがこの分野に興味を持ち、我々 の開発研究をさらに発展してくれることを大いに期待しています。 主 催 = 東 京 工 業 大 学 百 年 記 念 館 / 2 1 世 紀 C O E プログラム「 先 端ロボット開 発を核とした 創 造 技 術 の 革 新 」 協 賛 = ( 株 ) 東芝 後 援 = ( 社 ) 日本ロボット学会 / ( 社 ) 日本機械学会 / ( 社 ) 蔵前工業会 / 目黒区教育委員会 / 大田区教育委員会 「 先 端 ロ ボット の 世 界 」 展 準 備 委 員 会 : 広 瀬 茂 男 相 原 了 亀 井 宏 行 道 家 達 将 井 上 修 熊 渕 智 行 森 澤 淳 一 青 木 岳 史 尾 形 勝 遠 藤 康 一 / 展 示 デ ザ イン 協 力 = 理 工 学 研 究 科 建 築 学 専 攻 建 築 デ ザ イン コ ー ス ・ 総 合 理 工 学 研 究 科 人 間 環 境 シス テ ム 専 攻 : 岩 間 直 哉 廣 野 雄 太 / 展 示 協 力 = 情 報 理 工 学 研 究 科 計算工学専攻亀井研究室:本田誠彦/協力=花崎すが子 廣瀬俊子 大塚由美 市川政幸 門脇和世 主会場=東京工業大学百年記念館 〒152-8550 東京都目黒区大岡山 2-12-1 東京工業大学大岡山キャンパス TEL: 03-5734-3340 / FAX: 03-5734-3348 / E-mail: [email protected] URL: http://www.titech.ac.jp/access-and-campusmap/j/o-okayama-campus-j.html
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