■ 建築認証事業本部 平成27年6月施行 改正建築基準法 既存不適格建築物への遡及範囲(構造)は変わったのか? 1.平成17年に緩和規定スタート 既存不適格建築物への遡及緩和については、平成17年6月1日の改正により法第86条の7に法第20条が追加 されたことで始まりました。それ以前は、既存建築物に増築を行う場合は面積やエキスパンションジョイントの有 無に関わらず、建築物全体に構造耐力規定を遡及適用していましたが、一定規模以下の増築等を行う場合は 構造耐力規定の遡及適用をしないことに変わりました。この「一定規模以下」が、既存部分の延べ面積の1/2以 下及び1/20以下かつ50㎡以下の規模制限の始まりです。ただし、これ以前でもエキスパンションジョイントにより 構造上分離して増築する場合は、遡及適用されていない実態もあったため、必ずしも規制の緩和となっていませ んでした。また、1/2以下の増築の場合は「耐震促進法」に適合した建築物であることが条件であったため、エキ スパンションジョイントにより構造上分離して増築を行う場合に既存部の耐震診断が必要でした。 2.平成21年に新耐震基準導入 平成21年9月1日の国住指第2072号「建築物の耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針となるべ き事項に係る認定について(技術的助言)」により、耐震診断の方法に「既存部分が昭和56年6月1日における建 築基準法に適合しているもの」が追加されました。これは、平成24年9月27日に「昭和56年6月1日以降におけ る」と見直され、新耐震基準や限界耐力計算等の昭和56年以降に導入された耐震関係規定に適合していれば、 既存部の耐震診断を改めて行う必要がないという規定に変わりました。 3.平成24年に緩和の規模制限廃止 そして、平成24年9月20日の法改正により既存部分の延べ面積の1/2を超える増築にも緩和規定が設けられま した。このときの1/2超と1/2以下の違いは、1/2超には令第82条の4(屋根ふき材等の構造計算)及び令第82条 第四号(使用上の支障が起こらないことの確認)の適用があることと、1/2以下には法第20条第1項第四号の木造 建築物の緩和(令第42条、第43条、第46条のみ適合を確認)があることでした。 4.平成27年改正による規模による緩和の違い それでは、今年の法改正でどのように変わったのか見てみましょう。法第86条の7及び令第137条の2に実質的 な変更はなく、増改築部分の面積による取り扱いも変わっていません。ここで、令第137条の2各号を簡単に説 明すると、令第137条の2第三号(基準時の面積の1/20以下かつ50㎡以下)では、増改築部分が小規模なため、 既存部分の構造耐力上の危険性が増大しないことを確認すれば、構造耐力関係での既存部分への遡及はあり ません。令第137条の2第一号(面積制限なし)と第二号(基準時の面積の1/2以下)では、平成17年国交省告示 第566号が改正されたことにより、結局、令第137条の2第二号に法第20条第1項第四号の木造建築物の緩和 規定がある以外の違いはなくなりました。 5.平成27年改正で構造判定導入 今回の法改正での増改築に関する変更点の特徴としては、構造計算適合性判定の対象の見直しと申請図書及 び書類の合理化になります。構造計算適合性判定に係る手続きの見直しがなされ、特定増改築構造計算基準 によって増改築部分の安全性を確かめる場合には、構造計算適合性判定を行うことが義務付けられました(法 第6条の3第1項)。特定増改築構造計算基準とは、新築時の特定構造計算基準に相当する基準とされ、いわゆ るルート3、ルート2及び大臣認定プログラムによる構造計算のことです。ただし、ルート2で構造計算を行った場 合で、ルート2審査を行っている建築主事等が審査する場合は構造計算適合性判定が不要となります。 6.既存適格の場合は計算書省略 改築を行う建築物に係る申請図書及び書類の合理化としては、増改部分と既存部分とがエキスパンションジョイ ント等により構造上分離されており、かつ既存部分の計画が、現行の構造計算基準に適合することが明らかな 場合は、構造計算基準に適合する部分の計画に係る構造計算書等の提出が不要となったことが挙げられます (規則第1条の3第10項)。 以上より、エキスパンションジョイントによる増築の例を規模によって簡単にまとめると、下表のようになり法20条 1項四号建築物を除いて違いはないことがわかります。 ◆1/2 を超えるエキスパンションジョイント増築 ◆1/2 以下のエキスパンションジョイント増築 緩和は既存部分に対する一部の仕様規定 緩和は既存部分に対する一部の仕様規定と、耐 と、耐震性の確認方法。 震性の確認方法で 1/2 超のケースと同じ。 ただし、増築部分が四号なら計算不要。 ただし、増築部分は四号でも計算必要だが、木造 であれば緩和あり。 緩和規定詳細 一体増改築の場合の構造計算内容 面積制限なし 増改築部 建築物全体が令第 3 章第 8 節に適合すること。 法第 20 条第一項第四号の木造建築物についての緩和なし。 既存部 延べ面積の二分の一以下 建築物全体が法第 20 条第一項第二号イ後段又は第三号イ後段に規定す る構造計算すること。 法第 20 条第一項第四号の木造建築物については地震に対して建築物全 体が令第 42 条、令第 43 条並びに令第 46 条第一項から第三項まで及び第 四項(表三に係る部分を除く)の規定に適合。地震時を除き令第 46 条第四項 (表二に係る部分を除く)に適合。 増改築部 既存部 法第 20 条第一項第四号に掲げる建築物に限り令第 3 章第 1 節から第 7 節 の 2 まで(令第 36 条及び第 38 条第 2 項から第 4 項までを除く)の規定に適 合し、かつ、その基礎の補強について国土交通大臣が定める基準に適合。 エキスパンションジョイント(EXP.J)による分離増改築の場合の構造計算内容 面積制限なし EXP.J 増改築部分が令第 3 章に適合。 既存部分は法第 20 条第一項第二号イ後段に規定する構造計算、第三号イ 後段に規定する構造計算又は耐震診断基準に適合。 増改築部 法第 20 条第一項第四号の木造建築物についての緩和なし。 増改築部分が令第 3 章(第 8 節を除く)に適合し、地震に対して法第 20 条第一 既存部 延べ面積の二分の一以下 項第二号イ後段又は第三号イ後段に規定する構造計算。地震時を除き令第 82 条第一号から第三号まで(地震時に係る部分を除く)に定める構造計算。 EXP.J 既存部分は地震に対して法第 20 条第一項第二号イ後段に規定する構造計 算、第三号イ後段に規定する構造計算又は耐震診断基準に適合。地震時 を除き令第 82 条第一号から第三号まで(地震時に係る部分を除く)に定める 増改築部 構造計算。 既存部 法第 20 条第一項第四号の木造建築物については地震に対して建築物全 体が令第 42 条、令第 43 条並びに令第 46 条第一項から第三項まで及び第 四項(表三に係る部分を除く)の規定に適合。地震時を除き令第 46 条第四項 (表二に係る部分を除く)に適合。 建築認証事業本部 森口英樹 【お問い合わせ】 ビューローベリタスジャパン㈱ 建築認証事業本部 最寄りの事務所まで お問い合わせフォームもご利用下さい ビューローベリタスのサービス:確認検査業務 ■ インサービス検査事業本部 定期報告制度~建築基準法の一部改正について 建築基準法で義務付けられている定期点検結果の特定行政庁への報告制度の見直しが実施されます。 平成25年に福岡市の診療所で発生した火災では、防火扉が閉じないなど設備の不備から被害が拡大し10人が 死亡しました。国土交通省は、防火対策の強化の一環として平成26年に建築基準法を改正し新制度の検討を 実施、これが今回の一部改正につながっています。 平成27年10月15日に公開された定期点検結果報告制度の改正案によると、新設する防火整備検査員による 防火扉や防火シャッターといった防火設備の点検が義務付けられます。従来、最長3年間隔で義務付けている 特殊建築物定期報告の一環として行われていましたが、これを独立させて約1年間隔での報告が求められるよ うになります。 防火設備検査員という防火設備に特化した国土交通省認定の検査員資格制度も新設になります。これは、防火 戸や防火シャッターなどの駆動装置の点検、自動火災報知機の感知器と連動させた動作確認などを点検するた めの資格です。 平成28年の改正建築基準法の施行を前に、年明けの平成28年1月より順次、認定試験の受験資格となる事前 講習と認定試験が実施される予定です。 あわせて、特定行政庁が管理する定期点検結果報告の内容を記載した台帳について、防火設備に特化した記 載事項が新たに設定されます。特定行政庁が管理する公共建築物の防火設備についても、定期点検の頻度が 3年間隔から1年間隔に短縮される予定です。 国土交通省ウェブサイト 定期報告制度について 国土交通省住宅局建築指導課 平成27年9月(PDF) 建築基準法 / 省エネ法 / 消防法の規定に基づく建物・設備の定期報告・点検 を全国で実施しています フリーダイヤル 0120-719-904 までお気軽にお問い合わせ・ご相談下さい 建物の定期調査ならおまかせ!専用ウェブサイト ビルレポ.com もご覧下さい インサービス検査事業本部 足谷卓美 【お問い合わせ】 ビューローベリタスジャパン㈱ インサービス検査事業本部 TEL:0120-719-904 [email protected] もご利用下さい ビューローベリタスのサービス: 建物の定期調査ならおまかせ!専用ウェブサイト ビルレポ.com をご覧下さい。 システム認証事業本部 衛生管理徹底のために ISO22000 から FSSC22000 へ 株式会社福寿園 厳格化する茶葉の品質への要望にも応える (京都府木津川市) http://www.fukujuen.com/ ■ FSSC22000 認証取得の 3 つの理由 宇治茶の集散地、京都山城に本社を置く福寿園は、寛政 2 年 (1790 年)創業、225 年の歴史を持つ老舗の茶商。2004 年に、サン トリーとコラボレーションして「伊右衛門」ブランドの商品を発表し、 大ヒットさせたことでも知られる。 その福寿園が、2 つの工場で、ISO22000 と食品安全のための前 提条件プログラム ISO/TS22002-1 を組み合わせた FSSC22000 規格の認証を取得したのは、今年(2015 年)4 月のことだ。 121 にわたる全サイトで ISO9001 認証を取得したうえに、すでに 白い壁と黒い梁・屋根のコントラストが美しい社屋 ISO22000 認証も取得していた同社が、なぜあえて FSSC22000 認 証の取得に踏み切ったのか。その大きな理由は 3 つある。 第 1 の理由は衛生管理の徹底のため。 ISO22000 に比べて、FSSC22000 のほうが衛生管理に関する要求事項がより明確だ。異物混入の防止をはじ めとする衛生管理品質の向上のためには、より具体的で明確な基準があるほうが、従業員にとっては「するべき こと」や「努力目標」がはっきりするし、そのための体制やルールも構築しやすい。ひいては厳密な基準での品質 管理に馴染んだ人材を育てることが、会社の将来を明るくすると考えた。 第 2 の理由は、取引先が次々と ISO22000 から FSSC22000 へシフトをしていた ことにある。取引先の認証の状況を調べてそのことに気付いた業務本部 ISO 管理 責任者の室木広光氏は、「これは当社も早くシフトしないと、早晩、食品メーカーと してやっていけなくなるのではないか」という危機感を抱いたという。 その反面、取引先から「FSSC22000 を取得してほしい」というリクエストはなかっ たそうだ。「だからこそ言われていない今のうちに取得しておくことが誠実な企業姿 勢だ」という判断もあったと室木氏は言う。 そして第 3 の理由は、茶葉に対する世間の見方が、昨今、厳しくなっていることに あった。 以前、茶葉は「農産物」にカテゴリー分けされており、その時代には茶葉の中に多 サントリーとのコラボで 生まれた伊右衛門ブランド。 伊右衛門は福寿園初代の名。 少のゴミや異物が混じりこんでいてもそう問題にはならなかった。スーパーで買ったほうれん草の根に砂が入り こんでいても問題視する消費者がいないことと同じだ。 しかし近年、茶葉は「食品」とみなされるようになった。食品である限りは異物混入やちょっとした瑕疵も許されな い。そこで従業員 1 人 1 人に「品質管理」の意識を高め、事故を防ぐ心掛けをし てもらう必要性が、がぜん大きくなったのである。包装ラインにパート従業員が 多いことも、その必要性に拍車をかけた。 こうした 3 つの大きな理由に背中を押されて、同社は 2013 年に FSSC22000 の認証取得を決断した。そして 1 年をかけて認証取得に至ったのである。 実は FSSC22000 認証の取得を迷った時期もあったという。その理由は、 FSSC22000 認証を取得しようとしていた 2 サイトの工場について、建物や施設 や設備といったハードを大きく改善しないと認証が取得できないのではないかと いう懸念があったからだ。しかしそれについては、現状のままで認証取得できる この道 40 年のベテランブレンダー。 その目と舌と鼻が、福寿園の茶の 味と香りを決める。 という判断が下された。そしてそれをはずみに同社の FSSC22000 認証取得は 一気に前進しはじめたのだった。 ■ FSSC22000 導入が生んだ社内外の効果 FSSC22000 認証を取得後、従業員には少しずつ変化の兆しが見えている。たとえば、異物混入のモニタリング は外部委託しているが、それを社内でもチェックするようになった。そして指摘があれば 2~3 日以内に改善でき るようになった。また実際に異物混入のクレーム数も減少している。 トレーサビリティーも行き届くようになり、もし異物混入などの事故が起こった場合も、回収すべき出荷商品が特 定できる体制が整った。 また FSSC22000 認証の取得を機に、社員全員を内部監査員にすることを構想中だという。そのことで認証取得 の意味や意義をきちんと理解したうえで運用に取り組む人材を質量ともに増やそうという考えだ。 一方で、外に向けて大々的に FSSC22000 認証を取得したというアナウンスをし ていない。これは食品企業として「認証取得は当然の責務である」という思いが あるためだ。 しかしそうした密やかな同社の認証取得にも注目する企業はしっかりあり、この たび同社はネスレ社からのオファーを受けて、コーヒーマシン「バリスタ」に続いて 新たに開発・発売されたティー専用マシン「スペシャル T.」にセットする日本茶ティ ーカプセルの茶葉供給を担当することとなった。数多くある茶商の中から同社が 選ばれた理由は明らかにはなっていないが、FSSC22000 認証を取得したことで さらに信頼度が高まった可能性はある。 異物混入防止のため、 金属探知機に加えて X 線検査機を使って検査。 ■ もう 1 つの品質マネジメントシステム 最後に、生産本部長の中村弘治氏による興味深い話を紹介しよう。 同氏によると 3 つの「大切」があるという。それは「お客さま」「品質」 そして「従業員」だ。 この「従業員を大切にする」という一見情に根差したように見える方 針が、実は FSSC22000 と並んで同社の品質管理に貢献している という話だ。 食品事故には大きく分けて 2 種類の起因がある。「内部起因」と「外 部起因」だ。「外部起因の事故」とは外からの侵入や攻撃が原因と なって起こる事故で、防止方法はマネジメントシステムなどを活用し ISO 管理責任者をつとめる室木氏(左)は、従業員へ の目配りと声掛けを欠かさない。 日本茶インストラクターの資格ももつ中村氏。 てフードディフェンスを強化することである。 一方の「内部起因の事故」には「過失(ミスや見逃し)によるもの」と「故意によるもの」の 2 種類がある。前者は ISO9000、ISO22000、FSSC22000 規格に準じたシステム運用などが防止策となるが、後者つまり「従業員の 故意によるもの」はそれでは防げない。言い換えると、最もやっかいで怖いのは、システムでは防げない「従業員 の故意によって引き起こされる事故」だと言えるだろう。 「これを防ぐ方法はただ 1 つ、会社が従業員を大切にし、そのことを従業員が感じられるだけのコミュニケーショ ンが会社と従業員の間に取られていることだ」と中村氏は言う。つまり会社と従 業員がしっかりと「情を交わしていること」が、会社への不満を減らし、従業員の 悪質な行為を防ぎ、内部起因による食品事故をなくすというわけだ。 この「従業員を大切にする」方針の強化のために、「家を出てから帰宅するまで の従業員の安全を守る」ことを目指して、2017 年を目途に労働安全衛生マネジ メントシステムの導入を考えているという。 一方で FSSC22000 認証の取得と運用。そしてもう一方では「従業員を大切にす る」という方針の遵守と強化。2 つの異種な舵を同時に操舵しながら企業品質を 保ち、安全に航行させる。この経営技術こそ、江戸時代から今に続く同社の真骨 福寿園は 225 年間、この地で 茶商を営み続けている。今も掛か る創業時からの看板。 頂なのかもしれない。 ビューローベリタスのサービス:食品安全システム認証(FSSC22000) (2015 年 11 月 2 日取材) ■ システム認証事業本部 グローバル遵法管理手法として盛んに利用されるEHS (環境・労働安全衛生) 監査 (Enhesa – ブルームバーグBNA共同 第2回グローバルEHS監査に関する企業調査結果) 2012年よりビューローベリタスとパートナーシップを結ぶEnhesa(エンヘサ)社が執筆する、「海外における 法規制」に関する記事を連載しています。 Enhesaは、ベルギーのブリュッセル及びアメリカのワシントンDCに本社を置くグローバルコンサルティング 会社であり、企業のEHS (環境、労働安全衛生) 及び製品の遵法を支援しています。 2015年10月には日本法人として日本エンヘサ株式会社を設立、日系企業のお客様に対して、よりきめ細か な支援をお届けする体制を整えました。 2015年2月13日から3月13日にかけて、Enhesa とブルームバーグBNA は、グローバルEHS (環境・労働安全 衛生) 監査に関する企業調査を実施しました。本調査票は、企業内EHS監査員による任意団体として欧米で名 高いオーディティング・ラウンドテーブル(米内部監査員団体 IIA と統合予定)及びEHS監査員認証機関(BEAC) の協力を得て世界中の企業に送付され、初回調査実施時(2013年)より77%増の487名から回答を得ました。 回答者が北米大陸に限定された初回調査(2013年)と比較し、今年の調査には、世界中から回答が寄せられま した。所属する企業の本社が北米に位置する回答者は84%から67%に減少し、その他の国に位置する企業か らの回答者の割合が増加しました。本社が中南米に位置する企業からの回答者は2倍となり、そのうち80%がメ キシコ、ブラジル、コロンビアでした。中近東・アフリカ地域では61%が南アフリカ、クウェイト、またはサウジアラ ビアでした。アジア本社企業からの回答者のうち85%が中国、日本、オーストラリア、インド、またはシンガポー ルでした。本社がアジアに位置する企業からの回答は全体の10分の1近くと、全体の50分の1程度であった 2013年から大きく増加し、注目すべき増加を示しました。 回答者の属する企業のグローバル化度合いについては、40%が単一の国で、40%が6カ国以上で、また8%が 30カ国以上で事業を行い、回答者全体でほとんど全ての世界中の国(185カ国)がカバーされました。 2013年調査と比較し、2015年調査ではより多くの企業がEHS監査を開始した、または近い将来に開始する予 定であると回答しました。また、従来の環境・労働安全衛生に加えて、より多くのトピックを監査対象とする傾向 が明らかとなりました。多数の企業が社内監査基準を作成しつつあるなか、監査の実施にあたっては外部の専 門コンサルタントに依頼する傾向も示されました。このような変化は、グローバル化する経済情勢の中で、EHS 監査がより複雑化し、困難となっていることを示しているといえるでしょう。 たとえば、2013年調査と比べ2倍以上の企業が、監査対象にGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和 システム)対応を追加しました。環境と労働安全が最も広く監査対象とされていることに変わりはありませんが、2 年前に比べると、品質、EPR(拡大製造者責任)、省エネルギーを監査対象とする企業数は2倍以上に増えました。 また、より多くの企業が、危機管理、輸送、緊急事態計画、CSR(企業の社会的責任)を監査対象に追加したと回 答しています。サプライチェーン監査もより広く実施されるようになってきました。 調査への回答にほの見えるその他の重要なトレンドは、外部コンサルティング会社や外部監査員に第三者監査 を実施させているか、社内監査員を補完させている企業が増加しているということです。さらに、特殊な経験を持 つ監査員を要求する企業も増加し、未経験の監査員でもよしとする企業数の減少と対比しています。90%近くの 企業が監査員に少なくとも1年以上の監査経験を要求し、それ以上の企業が、監査員に何らかの認証・資格の 取得を求めています。2013年調査時より圧倒的に多い90%の回答者が、認証を取得した主任監査員を求めて います。 2015年調査では、新しい質問項目として、グローバルでの法令増加と遵法対応の懸念が追加されました。多く の回答者が遵法管理について懸念を表明しており、ある回答者は「とても多くの法令が早いサイクルで制定され ており、追いつくのが大変だ。自社施設や従業員が常に最新の情報を取得し、最新の法的要求事項に対応する ことを徹底させるのは本当に困難であり、私たちは法令違反のリスクにさらされている。」と述べました。半数以 上の回答者が世界中の法規制の増加を認識しており、特に中国での法令の増加が顕著であるとの回答が多数 ありました。中国で事業を営む回答者のうち4分の3以上が、自社施設の遵法状態に疑念を持っています。20% 近くの回答者が、自社が事業を展開する多くの国で遵法リスクを管理できる状態にない、またはそれほどないと 回答しました。世界中でEHS規制が増加しているという事実を受け、多くの回答者が監査基準を国、または地方 の法的要求事項としています。 企業が監査に使用するツールも変化しています。多くの企業が自社開発した監査ツールを使用する一方、2013 年より多くの企業が、外部コンサルティング会社がカスタマイズ作成したツール、またはコンサルティング会社が 開発したツールをそのまま使用して、監査を実施するか、自社ツールを補完しています。監査で指摘された問題 点のリスク分析を実施する企業数も10%増加しました。 総合すると、2015年調査の結果は、企業が監査を遵守状況の確認のために積極的に利用していることを明らか に示したといえます。ほとんどの企業が、監査基準として自社EHS基準や国家法規制を使用しています。輸送、 危機管理、省エネルギーなど、その他の特別な項目を監査項目に追加する企業も増えています。監査員(特に 主任監査員)の資格・認証も求められてきています。監査にかける予算は前年同程度か、増加の傾向にありま す。 Enhesaは、2015年9月に、当2015年調査に関するオンラインセミナー(Webinar)を開催し、次の調査結果を報 告しました: • • • • • • 監査基準・構造 監査機能、頻度、組織体制 グローバルでの遵法リスク管理における懸念 監査予算、人材、監査費用を下げるための取組み 監査指摘事項の是正トラッキング手法 EHS法規制増加が監査実務に及ぼす影響 オンラインセミナーで使用した資料スライドと音声を入手されたい方は、日本エンヘサ株式会社(下記連絡先)ま でご連絡ください。 第2回グローバルEHS監査企業調査の詳細報告書は、2016年初旬に公開される予定です。現在は概要報告書 のみ公開されています。概要報告書を入手されたい方は、下記、日本エンヘサ株式会社にご連絡ください。 著者:Paul Beatley(Enhesa ディレクター) 翻訳・編集:宮田 祐子(Enhesaシニアプロジェクトマネジャー) 【お問い合わせ】 日本エンヘサ株式会社 〒103-0027 東京都中央区日本橋3-4-15 八重洲通ビル4F & 5F TEL:03-6870-3527 [email protected] もご利用ください http://www.enhesa.com/ Enhesaは、ベルギーのブリュッセル及びアメリカのワシントンDCに本社を置くグローバルコンサルティング会社であり、企業のEHS (環境・ 労働安全衛生)法令遵守を支援しています。2015年10月には東京八重洲に日本法人を開設し、日系企業のお客様に応対しております。ビ ューローベリタスジャパン株式会社との緊密な連携により、EHS法規制動向のモニタリング、遵法監査ツールの提供、遵法監査代行、製品 規制調査等、日本企業の国内及びグローバル市場における事業展開・事業運営、輸出に関する法令遵守を支援しています。 ビューローベリタスジャパン㈱ システム認証事業本部 営業部 TEL:045-651-4785 お問い合わせフォームもご利用ください ビューローベリタスのサービス:HSE(環境・労働安全衛生)/GHG・省エネ・CSR ■ 産業事業本部 遠心コンプレッサーの性能試験 遠心コンプレッサーは石油・ガス、石油化学等の分野で使用される産業機械の一種です。中でも、ガス流体を圧 送する遠心コンプレッサーは近年ますます高速化、大型化され、その用途が拡大しています。ビューローベリタ スは、これら遠心コンプレッサーの製造に関わる第三者/第二者検査サービスを提供していますが、本稿では その最終検査段階においてメーカーで実施される性能試験の基本的な留意点を紹介します。 実際に石油・ガス、石油化学等のプラントサイト(以下、現地)で使用される遠心コンプレッサーは、可燃性ガス(主 に炭化水素ガスの混合流体)を高圧、大風量で運転するケースが多く、その必要動力も数万KWから時には数十 万KWとなり、メーカーが全く同じ条件下で性能確認を行うことは不可能です。そのためほとんどの性能試験が、 熱力学的に現地での使用条件と相似となるようにテストガス(一般的には不燃性ガス)を選定し、実際の使用条 件よりも低速、低圧、低風量、(その結果として)低馬力で性能試験を行う方法(“Type 2” Test)を規定した ASME Power Test Code 10, 1997 (PTC-10) “Performance Test Code on Compressors and Exhausters” に従い 実施されます。 因みに “Type 1” Test は実際に現地で使用される流体を使用した試験で、温度、圧力条件等も現地での仕様 に近い条件で行われる試験方法ですが、現地では可燃性ガスを取り扱う場合が多いため、稀にしか採用されま せん。 1. 性能試験では、通常、予想性能カーブ上の保証点(定格点)、サージ流量点の2点を含む異なる流量5点に対 して試験を行い、データを取得します。 2. 各運転点におけるデータ採取にあたっては、正確なデータ取得のため測定に用いる計器数は吸込、吐出等 の圧力及び温度測定点で各4点、流量測定用のオリフィスの上流圧力・温度、差圧で各2点の計器を使用す ることが PTC-10 で要求されていますので、試験開始前にこれらの確認が必要です。 3. また、保証点を含む各運転点のデータを記録する前に、上記各計器の指示値の差異(フラクチュエーション) が吸込、吐出等の圧力で2.0%以内、温度で0.5%以内であることを確認します フラクチュエーションとは、各測定点における最大値と最小値の差を全ての計器の平均値で除した値(%)です。 4. 更に、各運転点のデータ記録前に、その運転点におけるコンプレッサーの運転が温度的に平衡状態に達し たことを確認します。すなわち、10分以上の時間内で吐出温度と吸込温度の温度上昇ドリフトが温度上昇値 の5%以内であることを、同一の時間間隔で最小6回測定して確認しなければなりません。 但し、本規定に従った場合、最短で運転点1点の条件設定から測定開始までに1時間以上は確実に必要とな り、トータルの試験時間が長時間となる為、メーカーによっては客先との同意を得た上で、異なる条件(例とし て、温度上昇ドリフトを温度上昇値の2.5%以内であることを、30分以内に数回測定して確認)を提示するケー スがあります。 5. コンプレッサーの保証点においてデータを取得後、試験条件が熱力学的に現地での運転条件と相似である ことを確認するための条件として、以下4つのパラメーターが許容範囲内となるよう規定されています。各パラ メーターの詳細な計算式は PTC-10 を参照ください。 許容範囲 (1) Volume Ratio: (Qs/Qd)t/(Qs/Qd)sp 95 ~ 105% (2) Capacity – Speed (Flow Coefficient) Ratio: φt/φsp 96 ~ 104% (3) Machine Mach Number: (Mmt - Mmsp) PTC-10 Fig. 3.3 に依る (4) Machine Reynolds Number Ratio: Remt/Remsp PTC-10 Fig. 3.5 に依る 遠心コンプレッサーの性能試験立会い時に、保証点において上記条件が満足されていることを確認しなければ なりません。 6. 各運転点でのデータを採取後、現地における実際の性能をこれらのデータより PTC-10 に規定された計算 式により求めます。式の詳細については PTC-10, Section 5 “Computation of Results” を参照ください。 以上、メーカーにおける遠心コンプレッサーの性能試験における基本的な留意点を紹介しました。実際の試験で は上記以外に多くの留意点がありますので、まずは PTC-10 を一読されることをお奨めします。 【お問い合わせ】 ビューローベリタスジャパン㈱ 産業事業本部 横浜 TEL:045-641-4219 FAX:045-641-7992 神戸 TEL:078-322-0232 FAX:078-322-2418 お問い合わせフォームもご利用下さい ビューローベリタスのサービス:ASME・プラント関連機器・設備の検査 ■ 政府指定検査・国際貿易部門 ケニア共和国向け適合性検査サービス~全輸入製品が検査対象に ご注意下さい:本記事は、2015 年 11 月 29 日現在の最新情報に基づくもので、その後、ケニア基準局は除外製 品情報をウェブサイトで公開しました。詳しくはこちら(2015/12/11 付ニュース)をご覧下さい。 ケニア共和国向け適合性検査(Kenya Pre-export Verification of Conformity : PVoC)の検査対象製品が拡大し ました。従来、ケニア基準局(Kenya Bureau of Standards : KEBS)が発行する対象品リストに該当する製品のみ がケニア PVoC に基づく船積前検査ならびに Certificate of Conformity(CoC)取得の対象でしたが、2015 年 12 月 1 日以降、全輸入製品が対象となりましたのでご注意下さい。 (本記事は、2015 年 11 月 29 日現在の最新情報に基づくもので、今後も変更となる可能性があります。 最新状況についてはお問い合わせ下さい) 1.申請に必要な主な書類 弊社所定の申請書(Request for Inspection) Profoma Invoice Packing List Import Declaration Form のコピー Letter of Credit のコピー(L/C 取引の場合) Conformity Document (国際規格等の適合認証書) ※製品により、その他の書類の提出をお願いする場合がございます。 2.検査後に必要となる書類 検査終了後、検査証発行のため、以下のご提出をお願いします。 • Final Invoice / Packing List • Bill of Lading のコピー ※CoC は弊社ケニア事務所より現地輸入企業宛に発行されます。 ビューローベリタスは各国当局より認可を受けた船積前検査機関として、長年にわたり実績を積み重ねてきまし た。その経験をベースに質の高い検査サービスを提供し、現地での円滑な通関手続きをサポートします。 ビューローベリタスの検査サービスをぜひご活用下さい。 政府指定検査・国際貿易検査部門 細谷知孝 【お問い合わせ】 ビューローベリタスジャパン㈱ 政府指定検査・国際貿易検査部門 TEL:06-6205-5540/045-641-4202 お問い合わせフォームもご利用下さい ビューローベリタスのサービス:政府指定検査・国際貿易検査
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