食品安全に関する国際的規制動向と食品産業の先進

システム認証事業本部
<GFSIの最新動向> 食品安全に関する国際的規制動向と食品産業の先進的取組み
…2010/11/18 「Food Safety の最新動向~食の安全を確認していますか?」セミナーでの講演より
ビューローベリタス フランス本社 食品安全マネジメント責任者 Vincent Doumeizel
食品安全とは?
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------食品安全とは、食品が意図した方法で調理された場合、あるいは、接触された場合に、負傷や疾病、病気、また
は死亡などの悪影響を及ぼさない概念とされています。
食品リコールには複数の要因が絡む
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------米国 FDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)のデータによれば、食品安全対策の不履行、及び
リコールの原因のトップは、誤った包装/ラベリングで、次いで、不十分な従業員のトレーニングとなっています。
包装、ラベリングの問題、不十分な従業員のトレ
ーニングなどが認証プロセスなどできちんと精査
されなければならないということです。
製造に関する標準作業手順の不履行、原材料の
汚 染 、 化学物 質 や 原料の 過 剰 、誤 っ た 添 加 、
不十分な衛生管理は、相対的には低いものと
なっています。しかしながら、リコールには食品加
工業のプロセスの問題が複数関係していることも
あると考えなければなりません。
アジア太平洋地域を拠点にグローバル化が進む食品産業
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------食品の品質と安全に対する懸念は今まで以上に高まっており、食品産業でグローバル化が進んでいる中で、
もはや 1 つの地域に限られた問題ではなくなっています。
中でも、中国を中心とするアジア太平洋地域は、近い将来、世界最大の食品市場として重要なマーケットになり
ます。人口は EU 圏の 3 倍の 15 億人で、非常に大きな都市もあります。特に北東アジアにおいて、世界各国に
向けた食品加工の需要がますます増加しています。
消費者意識の高まり-価格ばかりでなく品質も
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------食品安全面で問題を一度起こすとブランドイメージに対するマイナス影響が世界的に広がる可能性があります。
1 箇所で起こった問題が世界的に波及してしまい、グローバルなインパクトに広がってしまいます。
一方、消費者の意識はますます高まっているという現実があります。消費者が、価格のみならず、品質に関して
もより厳しくなっています。また、権利意識も高まってきており、消費者団体は活発に活動し、権利を主張して
います。
その結果、地方自治体はこういった事態への対応として、法律、規制を強化する傾向にあります。
QHSE(Quality Health Safety and Environment)、そして社会的責任の管理のプレッシャーも増大しています
ので、食品安全は、全体の品質、健康、安全を考えなければなりません。
ビューローベリタスの食品安全に関するサービス
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ビューローベリタスは世界約 70 カ国で、主要食品メーカーに様々なサービスを提供しています。我々は、いわゆ
る認証、試験および専門サービスの 3 つの要素を統合・推進したサービスを提供し、さらには特定の問題・課題
に関する監査、検査、トレーニング、必要に応じた技術的助言も提供しています。
認証とは、ご存じのとおり、様々な規格や基準があり、それに基づき認証を行います。
試験は、食品、成分に関して試験、分析を行い、病原菌、残留物、毒素など食品の汚染源を追跡するもので、
この需要は増加傾向にあります
専門サービスの中心は、検査であり、出荷される前にその原材料が適切な品質を持っている、あるいは商品
仕様を守っているということを担保するものです。
この 3 つの要素は独立した形で行っていますが、統合的なパッケージとしてもお客様に提供しています。
お客様のメリットとしては、食品安全に関する問題の予防的コントロール、リスク抑制、そして組織のイメージと
消費者の信頼を確立することができる点にあります。
認証という観点からみると、ビューローベリタスは農場から食卓まで様々なサービスの提供が可能です。各サプ
ライチェーンのステップにおいて皆様方のニーズに合ういくつかの具体的な規格や基準があります。例えば、
飼料生産のところを見ると、FAMI-QS、GMP+という 2 つの規格があります。これは飼料の生産にかかわるもの
です。飼料の安全は、今、中国で大変大きな問題になっています。第一次産業の農業、漁業の段階では、グロ
ーバル GAP があります。有機農業、MSC は日本でも増えていますが、世界の至るところでさらに進展していま
す。
製造に関しては FSSC22000 という新しい規格があり、また外食産業においても具体的な基準があります。
トレーサビリティ(GMO、ISO22005)、国際貿易検査、トレーニング、グローバルマネジメントシステム、サプライ
チェーンのそれぞれのステップをカバーすることができます。食品安全というのはこのような異なる要素の全てに
依存しています。1 つ 1 つのステップが大変重要で、そのためにトレーサビリティが重要なのです。
GFSI とは
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------GFSI(Global Food Safety Initiative: 国際食品安全イニシアチブ)は「全ての地域、全ての消費者に安全な食品
を」をビジョンとする取り組みで、世界のトップの小売業から製造業まで様々な食品関連企業のエキスパートが
参加しています。主に小売業者から始まったのですが、現在は食品製造業が推進しています。
現在、サプライヤーは監査をいくつも受けなければいけない点で苦戦しています。毎週のように監査を受けな
ければならず、監査の増加により監査の質そのものが低下傾向にあります。満足度から考えても、このように
監査の件数が多いということは決して好ましいことではありません。GFSI は複数の監査基準を個別に使うので
はなく、これらの監査スキームを相互に承認し合うことによって、基準の集合化(Convergence)の推進を意図
しています。したがって、将来的に、GFSI の認証はその基準を元に一度認証を受ければどこの地域でも適用
可能となることが期待されます。
GFSI の主な認定済み規格
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------GFSI は、効率化を高めるために食品安全規格の調和を図ろうとしています。
その中で、良く知られている規格として、BRC、IFS、SQF2000、FSSC22000 の 4 つが挙げられます。GFSI
規格の技術的な要件についてよくマーケットから聞かれますが、どこで、どれが一番良いのか、というご質問に
明確にお答えするのは難しいと思われます。
これらの中で、どれが最善かというものはなく、どういったニーズがあるかと、いう点が重要です。これら 4 つの
規格の認証ルールは多少異なりますが、要求事項は大変似ています。一部、より厳密なものもあり、さほど厳密
でないものもあります。
BRC はテスコ、マーク・アンド・スペンサー等が会員である英国小売業協会が策定した規格で、1990 年代末に
誕生しました。BRC は初の食品安全規格で、欧米では、ほとんどの食品規格に関する認証が BRC をベースとし
ています。これは民間のコンソーシアムが管理をしています。
当初は自社ブランド(プライベートブランド)製品が対象で、小売業者にとっては、自社製品がいかに持続可能か
つ安全であり、そして重要な要件を満たすかということを確認するためのものでした。
英国がこのような規格を打ち出した直後に、ヨーロッパの他の国も同等の規格を違う形で打ち出すようになりまし
た。
IFS はもともとドイツの小売業団体が管理していたもので 2002 年に誕生し、その後、フランス、イタリア、スペイン、
ポーランドの小売業団体も参加しました。BRC に 90%類似しています。
SQF2000 のアプローチも似ています。これはもともと SGS が所有していましたが、2003 年より米国食品小売業
団体が管理しています。主にオーストラリアを含むオセアニアで適用されています。
FSSC22000 は、どちらかというとハザード分析に重点を置いており、ISO22000 と PAS220、及び追加要求事項
からなります。
FSSC22000 は ISO22000 をベースとする公的スキームですので大変有用で、今後、これによって 1 つの規格
に統合するであろうと期待されています。現在は、世界的な大手食品メーカーが採用しており、オランダの協会
が管理しています。2008 年に誕生し、2009 年にベンチマーク化された非常に新しい規格で、認証は 2011 年
以降となります。
急速な成長を遂げているその他の食品関連認証サービス
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------食品安全認証をみると、数多くの認証があり、2 年間で 10 倍になっています。中でも、ISO22000 は、食品規格
がマーケットの中で最も大きな成長率を見せています。日本での認証件数はまださほど多くありませんが、ヨー
ロッパを見ると平均で年間 1000 件位の認証が発行されています。日本ではこれから先、ISO22000 の成長が
見込まれます。
現時点では BRC、IFS は支配的であるとは言えず、FSSC の需要が今後伸びるとみられています。
そのほかグローバル GAP などの食品認証サービスが増加傾向にあります。このスキームは食品安全のみなら
ず、持続可能な開発や動物保護なども対象に含んでいます。色々な要素が含まれる規格であって、BRC や
食品安全だけではないわけです。これはとても大きなメリットだと思います。
同じようなアプローチをとっているのが MSC 認証です。これは海洋管理協議会が運営しているもので、MSC
漁業認証と MSC COC 認証があります。持続可能な漁業開発を推進するということを目的とし、食品安全や
生物多様性などの要素が含まれる民間の認証スキームです。
この 2 つのスキームは非常に急速に拡大しています。
一方、オーガニック認証は少し異なります。2010 年 7 月からですが、ヨーロッパはグローバルでハーモニー化
された、オーガニック認証規格を持っています。ヨーロッパにおいてオーガニックを訴求したい場合には、このよう
なラベルがついていなければならないということになります。これはヨーロッパ共同体で規定しているもので、EU
全加盟国で適用されています。ヨーロッパのオーガニック認証は世界に先駆けて進んでいると思います。
サプライヤー監査
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------現在注目されているものにサプライヤー監査があります。サプライヤー監査は認証ではありませんが、サプライ
ヤーと協働して、一定の基準をクリアするということを目的として実施しているものです。
まず、1)クライアント(監査依頼者)のニーズを事前につかみ、クライアントをサポートしチェックリストの作成をしま
す。次に、2)サプライヤーが積極的に関与し、新しい食品安全の要件について人材を啓発し、チェックリストの
要件を満たすための活動が開始されます。例えば、イベント、セミナーなどを企画したり、海外向け窓口を一本化
し要求を海外に発信、また、価格リストなどを作成するプロジェクトをサポートしたりしていきます。これらの準備
の完了後、3)監査を実施します。クライアントのニーズを把握すること、これは監査の観点か、あるいは検査官
の観点が重要かということを判断します。また、4)監査のリストをつくり、プロジェクトの進み具合をモニタリングし、
報告書を作成、提出します。監査の実施がきちんと計画どおりに行われているかということをモニタリングする
ためです。5)継続的な改善は認証の基本であり、とても重要です。クライアントとともに定期的なレビューを実施
します。
サプライヤーで検出された不適合や弱点の傾向を明らかにするとともに、監査の中身に踏み込んでそれらの
傾向を明らかにします。
サプライヤーチェーンに関する色々な弱点の傾向
を明らかにして抽出しデータを集積します。こうし
て二者監査の一定のボリュームをこなせれば、
全体的な傾向は明らかになってきます。そして、
クライアントとともに新しい監査基準のステップ
アップのための活動を推進し、同時に監査結果に
基づいた新しいサプライヤーリストを作成、更新
することになります。
第二者監査
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------第二者監査とは何でしょうか。まず、検査と監査を区別しなければなりません。検査というのは関連する特性を
測定、観察、試験または計量し、適合性を評価するということです。これは商品志向です。検査というのは製品
そのものに対する適合性評価です。
監査というのは、体系的で独立した調査で、システムがしっかりと構築されているのか、計画どおりに運用されて
いるかということを確認するものです。そして、マネジメントシステムに基づいて計画どおり行われているかという
ことを調査するわけです。
監査のタイプには内部監査と外部監査がありま
す。内部監査はお客様ご自身で、法律、あるいは
業務の基準に適合しているかを点検するもので、
内部関係者による自己評価です。外部監査には
政府機関、お客様が観察するものと、外部の
専門家による監査があります。後者が第二者監査です。第二者監査では、クライアントニーズに関係する特定の
規格への適合性を確認します。
第二者監査では、ほかの監査とは違うステップで
進みます。まず、食品安全のシステムを構築し、教育訓練を実施します。それから、システムを改善、調整します。
品質を追跡し、食品安全をモニタリングするわけです。そして、積極的な管理をしながら、同時にシステムの有効
性を評価します。最後の段階では、システムの実効性、有効性を見るわけです。こうして、食品安全の管理シス
テムを満たしているかということを担保するわけです。食品安全を強化し、継続的な改善を行う、顧客からの信頼
を確立し、そして品質を保証するのです。そうすることによってブランドバリューが一歩一歩向上します。これが
第二者監査のメリットです。
先述の通り、現状の課題は監査の数が多過ぎる点です。多数の監査がサプライヤーによって行われていること
によって、監査の価値、あるいは質が劣化しています。そこで、相互認証やサプライヤー監査の収斂を目的とし
て、大手食品企業とグローバルなデータベースを構築し、共有しようという試みが進められています。
もちろんハイリスクなサプライヤーに関しては個別に扱わなければならなく、監査依頼者自身が対応しなければ
なりませんが、ローリスクサプライヤーに関してはデータベースを共有し、規格、基準の数を限定して適用して
いくことが可能です。
多くの企業が、監査基準、サプライヤーの監査の
数を増やし続けることはできず、監査基準の数を
限定して収斂していかなければならないことを
認識しています。これが食品産業の大きな課題、
目的となるでしょう。
今はまだ、自動車産業の 15 年前と同じような段階
です。自動車会社が相互承認を話し合い、TS の
スキームを作りましたが、それは全てのメーカー
のニーズを満たすためのスキームでありました。
現在は、そのような段階にあると思います。
食品試験
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------食品試験というのは食品安全の重要な要素で、非常に複雑な課題です。食品試験は、常に時差があるステップ
で、製品への対応としては遅れてくるわけです。例えばドーピングテストのようなことです。ドーピングで使用され
る薬というのは、その使用を防ごうとする前にドーピングテストをうまく逃れられるように開発されているのです。
安全試験に関してはまだたくさんやることがあると思います。メラミンの問題は、ニュージーランドで最も大きな
乳業の食品ラボでも、まだきちんとした適正な試験がないと言われています。
まず、安全性試験、食品試験においては、何を試験するのか、が重要で、病原菌の他、残留物、毒素、また、
GMO 遺伝子組み換え物、そのほかの汚染物質に微生物のプロセスが適用されます。
そのほかの試験もあります。品質・性能試験として、栄養素に関するもの、エネルギー化、またはたんぱく質、
炭水化物、脂質、飽和脂肪、ナトリウム等の含有量、また、ラボでは外観、味、においと感覚的な要素も対象と
なります。
食品安全規制の新たな傾向
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------食品安全規制の新たな傾向として、様々な認証機関によって食品安全監査が行われているものの、一部は
国家機関によって承認されていることが条件となることもあります。EU は ISO22000 の承認に関しては前向き
です。当局は、BRC、IFS を純然たる民間のスキームであると認識しており、ISO22000 はより公正であると考え
ています。そのため、EU は ISO22000 の一部を認証しようとしています。米国 FDA(食品医薬品局)は全ての
既存の認証スキームについても抵抗はなく、EU 同様に監査を認証しようとしています。監査の結果を尊重しよう
としているのです。しかし、ほかの国々ではそこまで進んでいません。
食品安全に関する重要なテーマとしては、遺伝子組み換え(Genetically Modified Organism: GMO)や不正な
製品(メラミン等)があります。偽造、不正というものはどんどん進化していきますので、これに関する対応も改善
しなければなりません。グッドプラクティスから逸脱があった場合に、それをトラッキングできる方法を見出す必要
があります。食品と包装の相互作用も改善を要する大変重要なテーマですが、包装スキームはまだ発展して
おらず、要請もありません。これは食品安全のリコールの重要な原因になっていますが、あまりトラッキングされ
ていません。健康被害の申し立てに関しても対応しなければなりません。
食品安全規制の進化はどうなっているのでしょう
か。現在、ヨーロッパ全域でトレーサビリティを
要件とする傾向が進み、様々な監査基準に適用
されています。しかし、まだハーモニー化が必要
です。まだまだ道のりは長く、改善を要します。
例えば、植物性生産品、医薬品等々はまだ改善
が必要です。アメリカでは、トレーサビリティは
新規のコンセプトで認知が進んでいません。
アメリカの重要課題は、グローバルで危機的状況にある食品への対応です。最近、FDA は中国に オフィスを開
設しました。食品の貿易がグローバル化しているため、食品に関するリスクが高くなってきているということを認
識しているのです。
世界レベルにおいてはハーモニゼーションが重要です。様々な異なるスキーム、方法論、食品安全を保証する
もの、こういったものについてやるべきことがたくさんあります。
世界貿易機関 WTO を問題解決機関として活用していくことも考えていかなければなりません。
また、グローバルな危機管理も重要な問題で、新たな危機や脅威に備えて、それらを特定する手段の分析・
研究推進が求められます。
今や競い合うのは企業だけではなくサプライチェーンです。顧客が求める製品やサービスをいかに速く、いかに
安く、そしていかにうまく提供するかで競争的差別化を図らなくてはなりません。
サプライチェーンのコラボレーションによる利益を数値化するには、新たな測定基準だけではなく、新たな考え方
も必要になります。そういったことが食品安全において必要なのです。
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