リンククラブニューズレター

 というのも、佐野さんは、かなり早い段階からご自身のサ
イトを積極的に運営してらして、
「自分の音楽を聴いてくれ
るファンは、こちらが驚くような視点で物を見たり、書いた
詩についてとても深い読み込みをしてくれたり、そういう存
在に励まされてここまでやってきた」と言うんです。そうし
た、遠く離れてはいるけど、同じ思いを抱いて時代と格闘し
ている人とつながることのできるツールとしてWEBがある
ということを、佐野さんから教えてもらい、また、佐野さん
の活動を目の当たりにして痛感しました。
当時佐野さんのCDジャケットや、サイトの構築に携わっ
ていたデザイナーの方にも「山下さんもやってみたら?」と
言われ、そこで決心して、技術的なサポートをその方にお願
いしました。その際に使わせていただいたホスティング・サー
http://www.yuzumi.com/
「五感」をキーワードに作家活動を展開する山下柚実
さんと、彼女が主宰する五感生活研究所のサイト。
著作物の紹介や最新ニュース、デジフォトワールド、
ブログ、アーカイブスと豊富なコンテンツを揃え、訪
れる人と「セッション/やりとり」ができるユニーク
な交信場所として機能している。1月末には、
「五感」
をテーマにした環境省のまちづくりプロジェクトをま
とめた『五感で楽しむまちづくり――豊かな暮らし・
にぎわい・つながりの創造』
(山下柚実編著、
荒井眞一・
内藤克彦著 学陽書房)が上梓される。
同じ意思を持った遠くの人と出会いたい。
閾値を下げ、五感が敏感になれる
サイトをめざしています。
ビスがL.H.Sで、その後、より容量が大きくて使い勝手も良
いということで、今はL.H.Xユーザーというわけです。
遺されたキーワードは「五感」
以来、メインテーマに
私はある時期から「五感」をキーワードに仕事をするよう
になりましたが、これもある人との大きな出会いがあったか
らなんです。
1992年ごろ、私はエイズについて取材していました。い
ま以上に恐怖感も偏見も激しい時代です。主にアメリカで患
者の方に話をうかがっていましたが、その過程でアジア系の
ショーンさんという方と出会いました。彼が「日本にエイズ
患者として行きたい。そして人々の前に出て話したい」とい
うので来日のお手伝いをしました。ショーンさんは、この騒
がしい東京の街で、喫茶店で一緒に朝のモーニングコーヒー
を飲んだりするような時でも、様々な音を聴き分けたり、香
りについて言及したり、とても鋭敏な感覚を発揮します。そ
れは彼が、日々を全身全霊で生きるように努めていたから
で、
「あなた、ぼくが先に死ぬと思っているでしょう? でも、
作家の山下柚実さんは「五感」をキーワードに、執筆はもちろん、企業や自治体、学校など、多くの人々
と係わりあいながら旺盛な仕事を続けている。仕事が生まれる重要な接点になるのが、彼女のサイト
「ゆずJournal」だ。WEBという2次元世界においても、やはり「五感」を大切に構築されたその
ホームページづくりを、L.H.Xが支えている。
明日、トラックに轢かれて死ぬかもしれないよ。時間が有限
だという点では同じだよ」と。
彼はそれからおよそ半年後に亡くなりましたが、遺してく
れたキーワードが「五感」でした。私は「五感」という切り口
からこの東京を見たらどうなるだろうと思い、取材と執筆を
始めました。すると、自分が産んだ赤ちゃんに触れない女性、
「ゆずJournal」という名前でホームページを持つように
やっと本になったんですが(注:
『時代をノックする音―佐
なり、およそ10年続けてきました。サイトを作るきっかけを
野元春が疾走した社会』毎日新聞社刊)
、取材を通じてWEB
佐野さんがちょうどデビュー 20周年のタイミングでたっ
ぷりインタビューをさせていただき、それは紆余曲折を経て
何を食べても味のしない人、自分の匂いを嫌悪する女の子な
ど、五感にひずみを持った現象がたくさん出てきたんです。
そうしてまとめたのが『五感喪失』
(文藝春秋)という本で、
それ以降、
「五感」は私のライフワークになりました。
強い刺激に訴えない
静かに淡々と続くサイトを
「ゆずJournal」を作る際に心がけたのも、やはり「五感」
を大切にすることです。どういうわけか、WEBでは皆さん、
ほとんどゴシック体ばかり使うんですが、私は明朝体にして
います。明朝体に限らず、人間の筆跡、書くということの痕
跡が残ったフォントにしたいということですね。トメやハネ
といった痕跡が見えていることはやはり重要です。デザイン
についても同じく、身体感覚や質感を大事にしてほしいとお
願いしました。それが壁紙なのか、罫線なのか、ノイズなの
か、そこはデザイナーさんの力量にお任せして、私はいちば
ん肝心なポイントだけお伝えしています。
いま世の中には強い刺激に訴えて注意を惹こうというモノ
が溢れていますが、私は逆に意識的に閾値を下げた、静かに
淡々と続くサイトをめざしています。強い刺激に慣れてしま
うと、派手な色彩や大きな音にしか反応しなくなりますが、
閾値を下げてあげると、遠くの鳥の鳴き声だって聴こえるよ
うになってくるんです。
WEBは、同じ意思を持った見知らぬ人同士をつなげてく
れるかけがえのないメディアです。私のようなフリーランス
の人間は特に、WEBを通じて「自分は一人じゃない。同じ
ように考えて行動している人がいる」という励ましを受けて
いると思います。
今後は、様々な人と人が星座のようにつながりあっている
その様を皆さんに理解してもらえるように、自分でページを
編集してみたいと思っています。
「五感」というキーワード
から見えてくるものをもっともっと深めていくために、これ
を課題にしてみるつもりです。
L.C.N.L
L.C.N.L
きっかけは
佐野元春さん
くれたのは、実は佐野元春さんだったんです。
『五感で楽しむまちづくり
豊かな暮らし・にぎわい・つながりの創造』
●
第 5 回:L.H.Xユーザー探訪記
ゆずJournal 山下柚実さん
についていろいろ考える機会があったんですね。
山下柚実・編著 荒井眞一、内藤克彦・著 学陽書房・刊
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