WPW 症候群に持続性心室頻拍を合併し

NP
Pr
og.Med.
1
9(s
.
1):6
81∼68
4,
199
9
uppl
一般講演
3
WPW 症候群に持続性心室頻拍を合併し,
アミオダロンの長期投与中に甲状腺腫を来した 1例
石本 直子
伊藤
誠
谷 康弘
和田 直人
蘆原 貴司
杉本 喜久
澤木 政英
前田 圭子
木之下正彦
中川 雅博
本 武洋
大林 靖典
北川 茂子
小野
安田
洋
進
症例提示
症
例:5
2歳,女性.
主
訴:動悸,眼前暗黒感.
家族歴:
;不整脈.
既往歴:特記事項なし.
現病歴:検診にて心電図異常を指摘されたが放置.
1
9
77年 3
0歳時に第 2子出産後から胸部不快感を自覚
し始めた.1
9
82年頃,不整脈に対し近医より内服処
方を受けたが詳細は不明である.1
99
6年 8月 6日,
朝より胸部不快感, 扼感,眼前暗黒感が出現し近医
受診,頻拍を認めたため緊急入院した.洞調律に復帰
後の心電図にてデルタ波 が 認 め ら れ た.そ の 後 も
I
a,I
c群の抗不整脈薬抵抗性の心室頻拍を繰り返す
ため,1
9
97年 1月 1
4日,精査加療目的にて当院に紹
介入院した.
入 院 時 現 症:血 圧 1
3
0/
7
8mmHg.脈 拍 78回/ ,
不整.心音は正常で,肺音は清明であった.四肢に浮
腫はなく,皮下結節やリンパ節は触知しなかった.右
図 1 近医搬送時 ECG
眼に視力低下が認められたがブトウ膜炎は認めなかっ
た.
図 2は洞調律に復帰後の心電図である.Ⅰ, V ,
血液生化学検査:異常なし.血中 ACE活性正常.
V ∼V で陽性,Ⅲ, V で陰性のデルタ波をもつ B
図 1は近医に搬送時の心電図である.左脚ブロック
型 WPW 症候群であった.
型,下方軸の心拍数 16
4bpm の wi
deQRSt
ac
hyc
ar
-
図 3は当院入院時の心電図である.デルタ波はなく
di
aを示している.このとき意識は清明であったが胸
Ⅰ度房室ブロック,V ∼V の poorR wave
,完全右
部不快感, 扼感を伴い直流除細動にて洞調律に復し
脚ブロックを認めた.連続記録では多形性の心室性期
た.
外 収 縮(
が 頻 発 し て い た.心 エ コ ー 図 で は
PVC)
1
)N.I
s
hi
mot
o,M.I
t
o,Y.Tar
ut
ani
,N.Wada,T.As
hi
har
a,Y.Sugi
mot
o,M.Sawaki
,K.Maeda,M.Ki
nos
hi
t
a:滋賀医科大学第
一内科 2)M.Nakagawa:中川医院 3)T.Mat
s
umot
o,H.Yas
uda,Y.Ohbayas
hi
,S.Ki
t
agawa,S.Ono:長浜赤十字病院内科
―1
76
(81
)―
.
19
.11
99
9
図 3 当院入院時 ECG
(ver
50mg)
apami
l120mg,pi
l
s
i
cai
ni
de1
表 1 アミオダロン投与前後での Hol
t
erECG
投与前
(
2
/
7
/
9
7
)
投与後
(
4
/
18
/
9
7)
t
ot
alQRS
(
/
be
at
s
day)
1
33
,1
5
7
7
4
,3
0
2
PVC
(
/
be
at
s
day)
>3beat
)
VT (
s
(
/day)
14
,0
4
4
2
,3
0
7
1
,5
5
5
5
2
maxVT r
at
e
(
bpm)
2
0
2
1
3
7
maxVT r
un
(
)
be
at
s
2
7
2
6
心室中隔から下壁にかけて壁運動の低下を認めた.5
カ所の心筋生検ではサルコイドーシスなどの特異的異
常所見はなく,線維化と動脈壁の肥厚を認めたため除
外診断にて拡張型心筋症と診断した.
VT は多形性であり,Ⅰ,Ⅱ,Ⅳ群抗不整脈薬が無
効であったためアミオダロンの適応と
え,初期量
4
00mgから投与開始,2週間後に 2
00mgの維持量と
図 2 洞調律
した.投与開始 5日目頃より徐脈傾向と持続性 VT
の減少,消失を認めた.表 1はアミオダロン投与前後
4mm,Ds4
2mm,EF4
4
% で,心 室 中 隔 か
LVDd5
の Hol
t
e
r心電図の比
ら下壁を中心に壁運動の低下を認めた.入院後は持続
とともに PVC数,3連発以上の VT の数は著減し,
性,非持続性の心室頻拍(VT)
が頻回に認められ,
連発時の最大心拍数も 2
02bpm から 1
37bpm へと徐
60
∼1
8
0bpm で胸部不快感を伴った.電
VT r
at
eは 1
拍 化 が 認 め ら れ た.最 大 連 発 数 も 27
2be
at
sか ら 6
気生理学的検査では容易に多形性の持続性,非持続性
be
at
sへと減少し,現在はさらに PVC,VT ともに減
VT が誘発された.冠動脈造影は正常,左室造影では
少している.
―1
86
(82
)―
である.t
ot
alQRS数の減少
第 3回アミオダロン研究会講演集
図 5 甲状腺機能の経過
なく,甲状腺腫にも変化は認められなかった.
アミオダロン投与開始以後の甲状腺機能の経過を 図
5に示す.この症例では甲状腺腫の出現時には TSH
値を含め甲状腺機能検査は正常値であり,経過観察中
に徐々に TSH 値が上昇してきた.f
r
e
eT は現在も
正常範囲内であり,さらに慎重な経過観察が必要と思
われる.
アミオダロン投与による甲状腺機能異常には,甲状
腺中毒症と甲状腺機能低下症があり,併せて約 2
∼1
2
%の症例に生じると言われている
.甲状腺腫は甲
状腺中毒症ではその一症状としてしばしば出現する
図4
が,甲状腺機能低下症の症状としてはあまり一般的で
投与開始 6週目で再度電気生理学的検査を行ったと
はなく,ヨード摂取の多い地域で約 2
0%に認められ
ころ,非持続性の VT は誘発されたが持続性 VT は
るという報告がある.またその大部 がアミオダロン
誘発不能であり,アミオダロンは持続性 VT に有効
投与前から基礎に甲状腺疾患をもつことが多い
と
えられた.その後夜間に 30台の徐脈が持続する
甲状腺機能異常を伴わない甲状腺腫を非中毒性甲状腺
ためアミオダロンを 1
5
0mgに減量したが,心室性不
腫(
)
と言い,ヨード欠乏,ヨード過
nont
oxi
cgoi
t
e
r
整脈の増加は認められなかった.また投与前後で血液
剰などが原因で地域性に生じる地方性甲状腺腫がよく
生化学検査,%DLc
o,心胸比,BNP値に変化はな
知られているが,アミオダロン投与による非中毒性甲
かった.
状腺腫は比 的稀である.本症例では基礎に明らかな
以後,外来で経過観察をしていたが,アミオダロン
.
甲状腺疾患はなく,アミオダロンに多量に含まれるヨ
投与開始 1年後より甲状腺腫が出現した.図 4はこの
ードの過剰摂取が原因で甲状腺腫が生じた可能性が
ときの頸部 CT である.軽度の甲状腺腫大を認め表面
えられた.
はやや nodul
,同時に施行した頸部超音波検査では
ar
内部エコーは
ま と め
一であっ た.甲 状 腺 機 能 検 査 で は
.
17
μU/
7pg/
TSH は 2
mL,f
r
e
eT が 1.
mL,f
r
e
eT
が2
.
9ng/
dLと正常値を示し,サイロイドテスト,
マイクロゾームテストも陰性であった.しばらく経過
1)WPW 症候群に持続性心室頻拍を合併した 1
例を経験した.
2)WPW 症候群は bys
t
andであり,デルタ波消
観察したが,甲状腺腫は圧痛と頸部圧迫感の自覚があ
失時の心電図では V
るため 1
99
8年 6月よりアミオダロンの 1日投与量を
伝導障害を示した.また心室中隔から下壁にかけての
1
0
0mgに減量した.減量後も心室性不整脈の増加は
壁運動低下を伴っていた.
―1
96
(83
)―
に poorRwaveを伴う心室内
.
19
.11
99
9
3)アミオダロン投与により心室性不整脈は著減
し,心室頻拍は非持続性となった.
4)アミオダロン投与開始 1年後より甲状腺腫が出
現したが,甲状腺機能検査は正常値であった.甲状腺
腫出現 4カ月後に TSH の上昇と f
r
e
eT ,f
r
e
eT の
軽度低下を示した.甲状腺腫の原因としてヨード過剰
摂取が推測された.
2
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5)甲状腺機能障害の出現前に甲状腺腫を合併する
ことは比 的稀であると え報告した.
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