PDFファイル - 秋田県総合教育センター

Ⅷ
軽度発達障害に対する具体的な対応例
1 研修講座受講者アンケート調査をもとに
〈学習面〉
観
点
聞く
特
徴
効
・最後まで話を聞くことが難しい。
果
的
な
対
応
・簡潔に分かりやすい言葉で話す。
・最後まで聞けたら褒める。
・授業の前に,椅子を倒さず 45 分間座
っていることなどを約束をする。
・授業の途中で「ここまでがんばって
ね」と評価する。
・一度の説明で理解することが難し ・指示は目に見える形でする。
い。
・説明は区切り,個々に具体的に行う。
・授業中,集中して話を聞くことが ・TTが横にいて疑問に直ぐに答える。
難しい。
・教師がさりげなく言葉がけができる
座席を配慮する。
・話しかけられているのに聞いてい ・1対1で指導。
ないときが多いように見える。
・模範生の隣の席にしたら落ち着いた。
・他の人の発表や発言にやじを言う ・なるべく全体の前で誉める場面を増
ことがある。
やし ,「いつも気にかけているよ」
という態度で接する。
話す
・吃音がある。
・周りが気にせず接したら,のびのび
してきた。
・不明瞭な言葉がみられる。
・子どもの言葉をありのまま受容した
上で,正しい発音で教師が繰り返す。
・苦手な発音に関して,ゆっくり丁寧
に話すことを意識付ける。
・言葉の遅れがある。
・一斉指導後に個別に声をかける。
・日記を書くことで意思を伝えるよう
になり,語彙不足解消につながった。
・自分から話すことが少ない。
読む
・音読が難しい。
・できるだけ教師から話しかけ,考え
や思いを引き出す。
・音読の量に配慮する。
・つまずきの原因を探す(漢字が苦手
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なときはルビをふる。行をとばす時
は1行ずつポイントアップする)。
書く
・板書を正しく書き写すことが難し ・問題はプリントにして提示する。
い。
・大事な説明は視覚的に強調する。
・漢字を覚えることが難しい。
・既習の漢字やカタカナ等の部分に分
けて提示する。たとえば「 息」は「自
分の自に心」と言語化する。
・鏡文字を書くときがある。
・なぞり書きをさせる。
計算する
・九九を理解することが難しい。
・パソコンで九九をやってから興味を
持ち始め,少しずつ覚えた。
推論する
・論理的に考えることが難しい。
・つまずきを具体的に把握する。
・スモールステップで指導する。
その他
・読む・話を聞く力は劣るが,特定 ・興味のある教科や得意な教科で十分
の学習に対しては他の子どもにない に認め,褒める。
能力を発揮する。
・発言を取り上げて授業を進める。
・興味が薄い学習,パターンにない ・興味がある学習・見通しをもてる学
学習に取りかかるのが苦手である。 習と苦手な学習を組み合わせる。
・板書や発表する機会を多くし,皆の
前で褒めてやる気がでるようにする。
・心を開かない。
・ありのままを受け入れるという姿勢
でかかわる。本人が好きなこと,得
意なことを見つけ,一緒に遊ぶ。
・順序立てて書く・話すことが苦手 ・指示は短く,一つずつ出す。
である。
・学習課題に集中できない。
・別室で個別に対応すると落ち着いた。
〈行動面〉
観
点
不注意
特
徴
効
果
的
な
対
応
・整理整頓が苦手である。
・箱を色分けするなどして片付け方を
確認する。
・机のまわりが整頓されていたら褒め,
忘れているときは声をかける。
・忘れ物が多い。
・持ち物をメモに書いて準備ができた
らシールを貼る。
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多動性
・周囲の状況にかまわずやりたいこ ・指示は一つずつ出す。
とをする。
・できたのを見届けてから次に進める。
・指示を理解していれば褒める。
・約束を破った場合は行動に制限を設
ける。
・ちょっとした変化や頑張りを褒める。
・教室から勝手に出ていく。
・どこへ行きたいのかを聞く。
・出ていってしまった時に対応できる
教師と連携をとる。
・授業中立ち歩く。
・なぜ立ち歩くのか原因を探る。
・座るきっかけとなる対応を探して,
言葉かけをする。
・注意されるとヒステリーを起こす。 ・良い面をたくさん保護者に伝えたら,
自信を持ち,学級の中でも褒められ
ようと努力するようになった。
・廊下や教室の中をものすごい勢い ・周囲のざわつきを無くしたら,落ち
で走り回る。
着いて勉強するようになった。
衝動性
・カッとして暴力的になる。
・衝動的になるきっかけを把握する。
・危険な行為は何故いけないのかを諭
し,改善しているときは褒める。
・行為そのものは「ダメ 」,しかし気
持ちは受けとめる態度で接する。
・突然隣の子どもを叩く。
・周囲の子どもを避難させる。
・表情が落ち着いてから「叩かれると
痛いよ」と伝え,謝るように諭す。
・壁や机を蹴る。
・イライラを落ち着かせるスペースを
確保し,本人が落ち着くのを待つ。
・順番を待つのが苦手である。
・うまくできたら,シールをご褒美と
する。
・良い点を連絡帳で家庭へ連絡する。
・注意できれてしまい,暴言を平気 ・注意を少なくし,本人が自分で気付
で吐く。
くようにし向ける。
・自分の感情をコントロールできな ・話を聞いてやることで心が開き,会
いで,乱暴な言動をとる。
話ができるようになった。
・自分の気持ちと相手の気持ちの二面
性に気付くようにかかわる。
・「 気持ち」を表現する言葉のレパー
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トリーを増やす。
・相手に自分の気持ちを伝える時,わ
かってもらえるように伝える事を意
識付ける。
社会性
・相手の気持ちを推し量ったり,考 ・トラブルは互いの話を聞き,ポイン
えたりすることができずトラブル
トのみ指摘する。
になる。
・声かけ,本人が好きな話題やスキン
シップ等を通じて信頼関係を築く。
・よい行動はすぐに褒める。
・ダメなことはダメと言う。
・約束やルールを守れない。
・遊びのルールなどを自分で決定する。
・自分で判断できることを増やす。
・良い点を連絡帳で家庭へ連絡する。
・存在感をアピールできるような係活
動を設定する。
・自分の思いが中心となり他の人の ・児童相互の人間関係を意識し ,「気
心を察することが難しい。
になる子ども」のよさを友達が見つ
けられるようにする。
・周囲の状況を理解しない。
想像力
その他
・「 ○○は∼でいいのかな?」と本人
が気付く事ができるようにかかわる。
・興味のあることに気を取られると ・1日のスケジュールを黒板に書き,
座って授業が受けられない。
今日やることを朝に話す。
・変なことに固執し自己主張する。
・面談で話を聞いて理解してあげる。
・問題行動を繰り返す。
・ダメなことはダメと言う。
・関係機関と連携をとり,対応の仕方
を確認する。
・校内で共通理解を図る。
・関心を引くために,わざと「 ダメ 」 ・個別に話を聞いてあげる時間を持つ。
と言われることをする。
・わざとしていることを無視し,ペー
スに巻き込まれないようにする。
・自傷行為をしている。
・面談をし,本人の気持ちを聞くよう
にしている。
・自傷行為のきっかけとなる原因を把
握する。
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2 事例から
(1) 教室を抜け出すことの多いA子への対応∼カウンセリング技法を生かして
① 相談時の状況
A子は小学校低学年。担任を独占したい気持ちが強く,教室を抜け出すことも頻繁に
ある。授業中,落ち着きがない。友達を突然,押すなど,危ない行為も目に付く。担任
がその都度注意したり,養護教諭,教頭をはじめとして,チーム対応も試みたりしてい
るが,なかなか行為の改善は見られない。学習面では,漢字や計算を好み,記憶力もい
い。担任に,「A子のいいところをいくつか挙げてください」と言ったら,言葉に詰ま
り,「悪いことはたくさんあるのですが……」と答えた。
WISC-Ⅲ知能検査では,全体IQは「平均の下」の範囲にあり,言語性IQよりも動作性I
Qの数値が高いという結果が示された。
②
対応の方針
知能検査の結果から,情報処理の上では,聴覚的情報処理に比べて,視覚的情報
処理が優位であると考えられた。そこで,指示をする際には,言葉だけではなく,
絵カードや文字カードを利用して,「見て分かる」工夫をすることの必要性を伝え
た。また,教室の抜け出し等に関する行動改善に向け,次のような対応をすること
を確認した。
○ 学校,家庭間の連携
・母親とかかわる時間をできるだけ設定する(個別面談の時や母親が迎えに来た時な
ど)。
・連絡帳にはよいことを中心に書き,母親を追いつめないようにする。
○
校内チーム対応
「先生,私のことだけを見て,見て」という注目行動に引っ張られすぎることの
ないよう,校内チーム対応を心掛ける。例えば,A子が教室を抜け出した際,担任
が後を追いかけるといつまでも教室に入らないことが予想される。また,他の子ど
もたちも,その様子を見て,うらやましいと感じるようでは困る。そこで,抜け出
した際は,すぐに他の教師に応援を頼めるように,事前に確認しておく。
○
行動の目的が「注目」である場合への対応
周囲から注目してほしいがゆえに,問題となる行動を起こしている場合は,「大
丈夫,見ているよ」というメッセージを送りたい。アドラー心理学の考え方に立ち,
可能であれば不適切な行動にあまり注目せず,適切な行動に注目することが基本で
ある 。「いい時を見逃さない」ということである 。「そうか,先生は私のことを見
てくれているんだ」と,注目欲求が充足されることで,A子の教室抜け出し行動が
減っていくのではないかと考えた。
カウンセリング技法1;アドラー心理学を生かす
A・アドラーは,「人間の行動には目的がある」ということ,そして,子どもの問題行
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動の動機は「①注目→②闘争→③復讐」の順で,より大人を手こずらせることを目的とし
た動機へと移っていくと述べている。この考えを基に,昨年度の特殊教育・相談研修部研
究紀要(2003)では,「児童生徒の行動の目的」を以下のように3段階のレベルに分け,
対応の在り方を示した。A子に対して行った対応は,「レベル1対応∼行動目的が注目の
場合」である。
〔不適切な行動の目的〕
大人の感情
児
童
生
徒
の
不
適
切
な
行
動
児童生徒の行動の目的
イライラする
注目
怒り・憤慨する
権力争い
傷つく
復讐
絶望・落胆する
無気力
じゃまをして大人の注目
を引く
反抗的な態度を取り,教
師と主導権を争う
レベル1
レベル2
けんか腰や陰湿になった
りし,大人を傷つける
自分は何も出来ないとア
ピールし,大人に指導を断
念させる。
レベル3
〔児童生徒の目的のレベルに応じた基本的な対応のポイント〕
大人の一般的な対応
子どもの反応
行動の目的を考慮した対応
レ
ベ
ル
1
気付かせる,なだめ
る,やめさせようと
する
一時的に中止する
が,しばらくする
とまた,同じよう
なことをやり出す
①可能であれば不適切な行動にあまり
注目を与えない
②適切な行動に注目し,勇気づける
③意表をつく方法で,注目を与える(相
手が,こう対応して来るだろうと思
っている方法で対応しない)
レ
ベ
ル
2
力対力で戦おうとす
る
主導権争いの度を
増す
反抗的だが屈服す
る
①闘争の舞台から身を引く
②おだやかに過ごせたときに,感謝の
気持ちを伝える
③子どもの協力を得ることで,子ども
がその力を建設的に使えるように援
助する
レ
ベ
ル
3
報復や仕返しをしよ
うとする
さらなる復讐を探
す
あきらめる
接触を拒否する
閉じこもる
①罰,報復を避ける
②決して傷ついたと言わない
③見捨てないで信頼関係の回復を図る
④子どもの深い落胆を理解する
⑤あきらめたり,批判したりしない
⑥子どもの小さな努力でも,どんなこ
とであれ認め勇気づける
⑦外部の専門家の助力を得る
○
気になる行動以外のところ:「例外」に注目する
A子の学校生活全てが気になる行動で占められているわけではない。1日の中で
は,うまくいっていることや気になる行動の「例外」もあるはずである。どんな時
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に,A子は教室から抜け出さずに活動できているのか,「例外探し」を宿題として
担任に伝えた。
カウンセリング技法3;例外探し
A子は,音楽の時間,クラスの友達と一緒
に楽しく歌を歌い,教室から抜け出すことは
ないという。担任に,「どうして音楽の時間,
みんなと一緒に活動できるのか 」(例外の責
任追及)と尋ねたら ,「歌が好きということ
もあるが,大きな声で歌っているのがうれし
くて,よく褒めていた」という答えだった。
○
アイメッセージで気持ちを伝える
A子とのかかわりの中で,自分がど
うしても受容できない「問題」を抱え
たら,我慢するのではなく,アイメッ
セージで気持ちを伝えるようにする。
アイメッセージは ,「私」を主語にし
て,自分の思いを言葉にして伝える表
現技法である。相手の行動によって,
自分がどんな影響を受け,それについ
てどう感じたかを伝えるメッセージで
あり,相手にどうしろと指示や命令を出すものではない。例えば,教室を抜け出す
A子に「あなたはなぜみんなと一緒に勉強できないの。だめでしょ!!」(ユーメ
ッセージ)ではなく ,「私はとても悲しいわ 」(アイメッセージ)という気持ちを
伝えることを,担任には心掛けてもらうようにした。
カウンセリング技法3;アイメッセージ
さらに,アイメッセージが相手に効果的
に伝わるためには,右図のように「行動」,
「影響 」,「感情」の三つをセットにするこ
とが大切である。教室を抜け出すA子には,
「あなたが教室から出て行くと」
(行動),
「怪
我でもするんじゃないかと心配で落ち着か
なくなるの 」(影響),「私はいつも不安で,
とても悲しいわ」等の伝え方がアイメッセ
ージとして考えられる。なお,子どもの行
動を「カメラで写し取るように描写する」
部分では,「あなた」が文脈に入るのは構わない。
③
A子の変化
学期末に,担任がA子について次のように語った。
- 30 -
○
劇的な変化
「相談に来た頃に比べると,劇的にプラスに変化した」ということであった。具
体的には次のとおりである。
・教室から抜け出すことが減った。また,たまに抜け出しても,しばらくすると自分
から 教室に戻ってくるようになった。
・担任や友達に対する暴言が減った。
・全校集会などの集会活動に最後まで参加できるようになった。
・以前は一人遊びが多かったが,数人の友達と休み時間にかかわって遊ぶ様子が見ら
れるようになった。
担任に対して,「先生がA子とのかかわりの中で,一番気を付けていたのはどんなこと
ですか?」と尋ねたところ,「例外を探したり,A子のいいところを探したりして声をか
けるようにしていたこと。そして,一番は自分の気持ちをアイメッセージで伝えるように
していたことだと思います」と答えた。
A子は,その後,音楽発表会でも主役級の役柄を立派にこなし,友達や教師たちからた
くさんの褒め言葉をもらい,自信をもったようであるという。
先日,担任から,A子は,まったく「問題」がなくなったというわけではないが,元気
に学校生活を送っているという報告があった。
子どもたちの「気になる行動」をなくそう,なくそうと思っても,直接,その行動に働
きかけるとうまくいかない場合が多いように思われます。そうした時には,行動の背景に
目を向けたり,子どもとの関係づくりをチェックしたりすることをお薦めします。教育に
生かすことのできるカウンセリングの理論や技法は,本事例で紹介した「アドラー心理学」,
「アイメッセージ」の他にも様々にあります。
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(2) 自分の居場所が定まらないB男への対応∼関係機関との連携を生かして
① 相談時の状況
B男は中学生。突然大声を出したり大きな声で発言したりする。周辺の友達
にちょっかいを出しトラブルも絶えない。その上, 友達が言った言葉はいつま
でも鮮明に覚えており, その都度傷ついている。学習面では生物, 特に生き物
や星に関心があり, 教科書に載っていないことでも知っていることがある。数
学は計算はできるが,文章題でじっくり考えることや国語の文章を読んで問題
に答えることは不得意である。苦手な学習になると机に顔を伏せて寝てしまう
など意欲が乏しい。できることだけこだわって繰り返し取り組もうとする。ま
た,教室から勝手に飛び出して校内を歩き回り, 注意しても受け入れることが難
しい。
サポートの教師が付き,担任と連携を取りながら対応をいろいろ工夫してい
るが, なかなか効果が見られず学習意欲の低さが目立つ。また, 教室を飛び出
してしまうと教室に戻るまで時間がかかる。
定期的にセンターに来所。また,通院もしている。薬を服用。
WISC−Ⅲ知能検査では,全IQは「平均の下」の範囲にあり,動作性I
Qよりも言語性IQの数値が高いという結果が示された。
総合教育センターでは
ア) 母親との面談,B男への対応(ゲームを通したかかわり)
イ) 相談担当者(2人)とB男,母親と一緒に遊ぶ。
②
対応の方針
知能検査の結果から,情報処理の上では,視覚的情報処理に比べて,聴覚的情報
処理が有意であると考えられた。そこで,指示をする際には,一度に複数のことを
伝えるのではなく,具体的に一つ一つ順を追って伝えることを基本におさえるよう
にした。
★ 年度の初め
<担任への確認>
・保護者と十分連携し,協力関係を作る(困った時の対応の仕方の情報を得る)。
・トラブルの多い友達との座席を離す。教師がかかわりながら,友達とかかわる
場面や機会を意図的に作り,友達との関係を育てる。
・休み時間等,本生徒と仲良くなれるよう関係づくりに努力する(本生徒の好き
な活動や得意なことを見つけ話題にする)。
・禁止や注意の言葉がけはなるべく少なくして, よいところを探して褒める機会
を増やす。メリハリをつけた対応を心がける。
・パニックになったときは,本生徒が落ち着くのを待ち, 表情が安定してから語
りかける。
・支援の教師と連携を取りながら,対応の役割分担をする。
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<サポートの教師への確認>
・本生徒の好きなことを見つけ,学習以外の場面でも遊ぶようにして信頼関係つ
くる。
・学習の場面では,側に付きすぎないよう注意し,本生徒との距離をつかず離れ
ずに保つことに慣れる。
・本生徒が教室から飛び出した時は,すぐに引き戻そうとせず,どこへ行くのか
一定の距離をおいて追跡する。本生徒の様子(立ち止まって暇そうにしている
など)を見て「帰ろうか」と言葉をかけて誘う。
・学習の課題(プリント)は2∼3種類準備し,本生徒が取り組みたい課題を自
分で選べるようにする。
・本生徒ができることを把握し,できる内容とできつつある内容を組み合わせる
とともに, 1枚のプリントの問題量は少なめにする。問題量はプントの枚数で
調整する。
・連絡ノートには,本生徒のがんばりを伝え,本生徒が気になることの確認は電
話等で行い,気付かれないように配慮する。
<保護者への確認>
・宿題等は無理強いをしない。時間は本生徒と相談して決める。
・学校でのトラブルについて,話を十分に聴いて必要な時は学校と電話等で直接連携
をとる。連絡ノートには本生徒が気になる内容は書かない。
★
8月から10月にかけて
学校では,校内をうろうろすることが多く教室で落ち着く様子が見られない。
時々,特殊学級にも顔を出し,部分的に活動に加わることがあり,
「遊んできた」
と担任や保護者に伝えている。
<学校関係者と医師との連携>
・保護者の了解を得て,担任が直接話を聞く。
・薬について教師が知っておく必要があることを確認する。学校での気がかりな
行動を通して, 障害の理解と対応の仕方について確認する。
・本生徒を追いつめるようなかかわりは避け,リラックスできる状況づくりをする。
・本生徒の好きなことを通して仲良くなるようにとのことだった。
<特別支援教育セミナーへの申し込み>
・幼児・養護教育課の指導主事等が学校を訪問し,授業での支援や学校生活全般
での対応の仕方について直接助言を受ける。また,校内支援体制の整備につい
て確認する。
・機会を設定し,保護者,学校関係者,指導主事で話し合い,指導や支援の在り方に
ついて共通理解を図る。
<通常学級担任と特殊学級担任との連携>
・障害の理解や日常的な対応について連携を図る(資料の紹介)。
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・本生徒の実態把握の仕方,学習の進め方や支援について話し合う。
・本生徒の実態に合わせ, 保護者と相談しながら特殊学級を個別指導の場として
活用する。
③ B男の変化
<学習に取り組む姿が見えてくる>
・短時間でもプリント学習に取り組む(特殊学級にて)。
・1日の生活の流れができて,個別の学習の時間として特殊学級での学習が定着して
きた。
・机に伏して寝る等,周囲から大きく目立つ姿が減少した。ノートに絵を描く等して
過ごす。
・周囲の友達にちょっかいを出すことが少なくなった。発表会で自分の役割を演ずる
ことができた。
<保護者の変化>
・子どもが特殊学級の授業に参加することを仕方ないと思いつつ,受け入れることは
できなかった。しかし,子どもが特殊学級で,特殊学級担任とかかわるようになり
落ち着いて学習にも取り組むようになったことやプリントなどに学習の跡が見える
ようになってくると,学習の場として特殊学級を受け入れることができるようにな
ってきた。
<教育センターでのかかわり>
【子どもに対して】
・学校で全く勉強が手に付かない時期,相談の折りに「勉強コーナー」を設定しよう
かと試みたが,本生徒の拒否感が強く取り止めた。
・オセロゲームは,結果として勝敗が決まる。ほとんど勝つが,負けたとき弟を足で
蹴るなど力の弱い相手にイライラをぶつけることがあった。「蹴ることはダメ!」
と根気強く働きかけたら,受け入れて弟に謝ることができた。
【保護者に対して】
・話をじっくり聴くことを最優先にしている。子どもへの対応の仕方や気になった出
来事,うれしかった出来事も交えて確認している。
保護者の話の中で,「指導主事が訪問した時,同席して授業を参観した。1つの活
動を通して子どもの見方が全く違った。できるとかできないとかではなくて,どのよ
うにできているか,どこまでできているかを見てあげることで子どもを褒める材料が
見つかるということがわかった」と。同じものを一緒に見て,見る人により,見える
部分と見えなかった部分があることに気付いたとのことだった。
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