マニュアル - 社会福祉法人 リデルライトホーム

感染対策マニュアル
平成27年度版
社会福祉法人リデルライトホーム
感染対策のために必要なこと知識
管理者は・・・
① 高齢者施設における感染症の特徴を理解をすること。
② 感染に対する知識(予防、発生時の対応)の習得をすること。
③ 法人内活動の推進(感染対策委員会、指針の策定、研修の実施、施設整備など)
④ 施設外活動の実施(情報収集、発生時の行政への届出など)
⑤ 職員の労務管理(職員の健康管理、職員が罹患したときに療養できる人的環境の整
備など)
職員は・・・
① 高齢者施設における感染症の特徴の理解をする。
② 感染に対する知識(予防、発生時の対応)の習得と日常業務における実践をする。
③ 自身の健康管理(感染源・媒介者にならないこと、など)
【感染症の種類】
注意すべき主な集団感染を起こしやすい疾病として、
① インフルエンザ
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
結核
ノロウイルス感染症
腸管出血性大腸菌感染症
痂皮型疥癬(ノルウェー疥癬とも言われる)
肺炎球菌感染症
レジオネラ症(媒介はしない)
MRSA 感染症
緑膿菌感染症
肝炎(B 型、C 型)
等、があげられるため、十分理解すること。
【感染対策の基礎知識】
感染症に対する対策の柱として、以下の3つが挙げられます。
① 感染源の排除(治療・手洗い・換気など)
② 感染経路の遮断(感染源を持ち込まない・拡げない・持ち出さない)事が重要になる。
③ 宿主(人間)の抵抗力の向上
【感染源】
感染症の原因となる微生物(細菌、ウイルスなど)を含んでいるものを感染源といい、次の
ものは感染源となる可能性があるので注意すること。
① 排泄物(嘔吐物・便・尿など)
② 血液・体液・分泌物(喀痰・膿みなど)
③ 上記に触れた手指で取り扱った食品など
①、②は、素手で触らず、必ず使い捨て手袋を着用して取り扱うこと。
【感染経路】
①
②
③
空気感染とは、咳、くしゃみなどで、飛沫核(5μm 以下)として伝播する。空中
に浮遊し、空気の流れにより飛散します。
≪主な病気≫ 結核など
飛沫感染とは、咳、くしゃみ、会話などで感染する。飛沫粒子(5μm 以上)は1m
以内に床に落下し、空中を浮遊し続けることはない。
≪主な病気≫ インフルエンザ・レジオネラなど
接触感染(経口感染)とは、手指・食品・器具を介して伝播する。最も頻度の高い伝
播経路である。
≪主な病気≫ ノロウイルス・腸管出血性大腸菌・MRSA・緑膿菌・疥癬虫など
ケア中の感染予防
【感染症予防策の基本】
1.感染を予防するためには、「1 行為(ケア)1 手洗い」の徹底をする。
2.日常のケアにおいて入所者の異常を早期に発見した場合は、看護師に相談する。必要が
あれば、看護師は主治医に相談すること。
3.冬季は、湿度が乾燥するので加湿器等を利用し、加湿を行うこと。また、暖房機器の使
用が連続的に必要になる場合は、2~3時間毎に換気をすること。
【職員の健康管理】
1.職員は感染媒介となりうるので日頃から健康管理には十分注意すること。また、職員は、
施設の外部との出入りの機会が多いことから、施設に病原体を持ち込む可能性が最も高
いことを認識する必要がある
2.職員が病気になった場合
① 職員が感染症の症状を呈した場合には、管理者に連絡し指示を仰ぐこと。必要があれ
ば病院を受診すること。受診結果は、管理者へ報告すること。
② 管理者は、症状の確認を行い、症状が改善するまで就業を停止することを検討する
3.職員への健康管理
① 年1回~年2回の定期検診を必ず受けること
② インフルエンザの予防接種を受けインフルエンザ蔓延中は、人ごみを避けるもしくは
マスクを着用するなどの自助努力をする。
【手洗い方法】
1.介助(ケア)後は「1行為(ケア)1手洗い」を原則とする
2.手洗い方法は、各洗面台に設置してある、手洗い方法『正しい手洗い』を参照しするこ
と。
3.手洗いを行う時は、時計や指輪を外すこと。
4.共同タオルは使用しないこと。
5.手をきちんと乾燥させること。
【血液・吐物・排泄物などに触れるときの感染予防】
1.創傷皮膚や血液・吐物・排泄物に触れるときは、必ず使い捨て手袋やマスクを着用する
こと。その後は、石鹸を使用し流水で手洗い・うがいをして感染を防止すること。
2.処理後は、屋内に長時間置かず、ビニール袋を活用し速やかに屋外のごみ箱に捨てるこ
と。
【食事介助に伴う感染予防】
1.食事介助の際は、介護職員は必ず手洗いを行い、清潔な食器で提供する。
2.排泄介助後の食事介助に関しては、食事介助前に十分な手洗いを行うこと。
3.介護職員が食中毒の媒介者とならないように、手洗いを行う。
4.食事用エプロンは、食器用洗剤できれいに洗い、きちんと乾燥させること。
5.手で食事をされる方は、食事前に入居者の手洗いを行う。
6.食器は、食器乾燥機で熱をかけ菌を死滅させる。
7.食事前、食事後はアルコールでテーブルを消毒する。
9.食事後は、速やかに茶碗を洗うこと。
【排泄介助(おむつ交換を含む)時の感染予防】
便には多くの細菌が混入しているため、介護職員・看護職員が病原体の媒介者となるのを避
けるため、排泄物の取り扱いには特に注意が必要である。おむつ交換時は、必ず使い捨て手
袋を着用して行うことを基本とする。
1.入所者1人ごとの手洗いや手指消毒を徹底し、手袋を使用する場合には1ケアごとに必
ず使い捨て手袋を取り替えること。
2.排泄介助後のオムツは、屋外のポリバケツに廃棄すること。
3.便器の汚れは、0.1%次亜塩素酸で速やかに掃除すること。
4.トイレの手すりは、0.02%次亜塩素酸で拭き取ること。
5.洗面台の水の飛び散りは、紙タオルで拭き取ること。
6.トイレのごみ箱に長時間オムツが放置されないよう、定期的にトイレ内を確認すること。
【異常の早期発見】
日常的な状態に留意すること。
1.異常の兆候をできるだけ早く発見するために、入所者・利用者の健康状態を、常に注意
深く観察すること。体の動きや声の調子・食欲などがいつものその人らしくない、と
感じたら看護師に報告すること。
2.トイレ誘導やおむつ交換などのケアの際、入所者の体に触れたとき熱感がある場合は、
検温をする。
3.特に注意する症状
介護職員が入所者・利用者の健康状態の異常を発見したら、すぐに、看護師に相談して適切
な対応をとること。主治医・家族への連絡も適正に行うこと。
①発熱があり、ぐったりしている、意識がはっきりしない、呼吸がおかしいなど全身状
態が悪い
②発熱以外に、嘔吐や下痢などの症状が激しい嘔吐
③発熱、腹痛、下痢もあり、便に血が混じることもあるので注意する。
④発熱し、体に赤い発疹も出ている。
⑤発熱し、意識がはっきりしていない。
⑥下痢は、便に血が混じっていないか確認する。
⑦尿が少ない、口が渇いている。
⑧咳、咽頭痛・鼻水 ・ 熱があり、たんのからんだ咳がひどい。
⑨発疹(皮膚の異常)・ 厚い鱗屑が、体幹、四肢の関節の外側、骨の突出した部分な
ど、圧迫や摩擦が起こりやすいところに多く見られる。非常に強いかゆみがある場合
4.異常に気付いた場合、入居者・利用者の記録に詳細に記載すること。
感染症発生時の対応
【発生時の対応】
1.発生時の対応として、次のことを行う。
①「発生状況の把握」
②「感染拡大の防止」
③「医療処置」
④「行政への報告」
⑤「関係機関との連携」
2.感染症の発生状況の把握
感染症や食中毒が発生した場合や、それが疑われる状況が生じた場合には、有症者の状況や
それぞれに講じた措置等を詳細に記録しておくこと。
①入所者と職員の健康状態(症状の有無)を、発生した日時を記載する。
②受診状況と診断名、検査、治療の内容を記録する。
3.職員は、感染症や食中毒を疑ったときは、速やかに管理者へ報告する。報告後は、管理
者の指示を仰ぐこととする。
【感染拡大の防止】
職員は、感染症若しくは食中毒が発生したとき、又はそれが疑われる状況が生じたときは、
拡大を防止するため速やかに対応すること。
①発生時は、厳密な手洗いをすること。
②排泄物・嘔吐物は、屋外のポリバケツに廃棄すること。
③職員が媒介者にならないように、特に注意を払うこと。
④事業所に消毒液の置き場所を増加すること。
⑤主治医の指示に従い、必要に応じて感染した入所者の個
室隔離を行う。
⑥主治医の指示に従い、必要に応じて利用の中止を検討する。
⑦職員は、感染者の症状を緩和し回復を促すために、すみやかに医師に連絡し、必要な
指示を仰ぐこと。必要に応じて、医療機関への受診もしくは往診・緊急搬送などを行
います。
⑧管理者は、必要があれば行政(保険者)に届けを出すこと。
【行政への報告】
管理者は、次のような場合、迅速に、市町村等の感染症等発生時に係る報告書で、報告する
こと。あわせて、保健所にも対応を相談すること。
<報告が必要な場合>
①同一の感染症や食中毒による、またはそれらが疑われる死亡者・重篤患者が1週間
以内に2名以上発生した場合
②同一の感染症や食中毒の患者、またはそれらが疑われる者が10名以上又は全利用者
の半数以上発生した場合*
③通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に管理者が報告を必要と認めた
場合とする。
*同一の感染症などによる患者等が、ある時点において、10 名以上又は全利用者の半数
以上発生した場合であって、最初の患者等が発生してからの累積の人数ではないことに
注意する。
<報告する内容>
①感染症又は食中毒が疑われる入居者・利用者の人数
②感染症又は食中毒が疑われる症状
③上記の入居者・利用者への対応や施設における対応状況等
<関係機関との連携など>
次のような関係機関に報告し、対応を相談し、指示を仰ぐなど、緊密に連携を取ること。
①施設配置医師(嘱託医)、協力機関の医師
②保健所
③地域の中核病院の感染管理担当の医師や看護師
④法人職員への周知し、感染対策委員会を設置後、感染状況を明らかにしたのち、対策
をたて、早期終息に向けた取り組みを行うこと
⑤家族への情報提供(④で決定した内容を説明する)
【発生時の対策】
<空気感染予防策>
主に結核などが該当。咳やくしゃみなどで飛散した飛沫核で伝播し、感染します。飛
沫核は空中に浮遊し続け、空気の流れにより飛散するので、次のような予防策をとる。
【予防対策措置】
①入院による治療に切り替える。
②病院に移送するまでの間は、原則として個室管理とする。
③ケア時は、高性能マスク(N95など)を着用すること。
④免疫のない職員は、患者との接触をさけること。
<飛沫感染予防策>
主にインフルエンザ・レジオネラなどが該当。咳、くしゃみ、会話などで飛散した飛
沫粒子で伝播し、感染します。飛沫粒子は半径1m以内に床に落下し空中に浮遊し続
けることはないので、次のような予防策をとる。
【予防対策措置】
①原則として個室管理ですが、同病者の集団隔離とする場合もある。
②感染防止のため、個室隔離とする。個別ケアを実施し、日勤体は担当職員を1名
決めマスク・ガウンを着用し、手洗い・うがいをケア前後に必ず実施すること。
夜勤帯は、マスク・ガウンを着用し、手洗い・うがいをケア前後に必ず実施するこ
とは同じであるが、複数の人数をケアするため、厳重に注意すること。
<接触感染予防策>
主にノロウイルス・腸管出血性大腸菌・MRSA・緑膿菌・疥癬虫などが該当。手指・
食品・器具を介して起こる最も頻度の高い伝播です。汚染物(排泄物、分泌物など)
との接触で環境を汚染し、手指を介して拡がるので注意をすること。
【予防対策措置】
①原則としては個室管理ですが、同病者の集団隔離とする場合もある。
②ケア時は、使い捨て手袋を着用し、便や創部排膿に触れたら手袋はビニール袋に入
れ屋外のポリバケツに廃棄する。長時間室内・居室に汚物を置かないこと。
③手洗いを励行し、適宜手指消毒を行う。
④可能な限り個人専用の医療器具を使用すること。
⑤汚染物との接触が予想されるときは、ガウンを着用する。ガウンを脱いだあとは、
衣服が環境表面や物品に触れないように、屋外(テラス)で管理する。
感染症の種類
<空気感染>
(1)結核菌(結核)
【特徴】
結核は結核菌による慢性感染症です。肺が主な病巣ですが、免疫の低下した人では全身感染
症となります。結核の症状は、呼吸器症状(痰と咳、時に血痰・喀血)と全身症状(発熱、
寝汗、倦怠感、体重減少)がみられます。咳と痰が2週間以上ある場合は要注意です。
高齢者では肺結核の再発例がみられます。高齢者では、全身の衰弱、食欲不振などの症状が
主となり、咳、痰、発熱などの症状を示さない場合もあります。
【平常時の対応】
入所時点で結核でないことを、医師の健康調査表などに基づき確認しましょう。年に一度、
レントゲン検査を行って、結核に感染していないことを確認しましょう。
<飛沫感染>
(1)インフルエンザウイルス(インフルエンザ)
【特徴】
インフルエンザは、ほとんどが感染力の強い A 型や B 型ウイルスが原因。これらウイルス
に対する特効薬がないため、安静が治療の第一になる。通常、一般の成人なら、かかってか
ら 2、3 日休むと、ウイルスに対する抵抗力ができ、症状は良くなる。ところが、お年寄り
は総じて体力が低下している上、基礎疾患として何らかの病気を持っているケースが多い。
そのため、肺炎を併発したり、基礎疾患を悪化させたりして、最悪の事態を招きやすいのだ。
実際、インフルエンザが大流行した 1975-76 年には、インフルエンザによる死亡者の
95%を 65 歳以上の人が占めたほどだ。高年齢が、極めて重要な危険因子になっている。
さらに、基礎疾患のある高齢者は、危険度が増すのは確か。最近は、インフルエンザワクチ
ンが任意接種になったせいか、積極的に受ける人が少ないようだが、インフルエンザは単な
る風邪とは違うことを十分認識し、予防のためにワクチン接種を受けるのが賢明だ。ただし、
インフルエンザのワクチンは卵から作られているので、卵アレルギーのある人は、接種しな
い方がよい。毎年、インフルエンザは 12 月ぐらいから本格的に流行する。予防接種の効果
は接種後、2、3 週間ほどで表れ始めるので、12 月初頭には接種を終えるのが望ましい。
高齢者がインフルエンザにかかった場合は、早期に発見し、肺炎など 2 次感染を防ぐこと
が第一。インフルエンザの症状の特徴は、39-40 度の高熱で、それも 3-5 日ぐらい続
くのが一般的。そのほか、せき、たん、食欲不振を伴ったりする。家族や周りの人がこうし
た症状に気付いたときは、まず最寄りの内科を受診すべきだ。中には市販の風邪薬に頼る人
もいるようだが、これは感心しない。高齢者は入院を要するケースもあるので、必ず医師の
診断を受けることが大切。2 次感染の肺炎は、インフルエンザが治ったように見えたころに
起こることが多い。肺炎を併発すると、たんが濃い黄色や緑色になるなど、以前よりも汚い
たんが増えてくる。家庭では安静にするとともに、部屋の湿度を保ち、たんの量や色に注意
することが必要。
【平常時の対応】
インフルエンザウイルスは感染力が非常に強いことから、できるだけウイルスが施設内に持
ち込まれないようにすることが施設内感染防止の基本とされています。施設内に感染が発生
した場合には、感染の拡大を可能な限り阻止し、被害を最小限に抑えることが、施設内感染
防止対策の目的となる。
このためには、法人内の施設内感染対策委員会を設置し、施設内感染を想定した十分な検討
を行う。
(1)日常的に行うべき対策(事前対策)
(2)実際に発生した際の対策(行動計画)
について、日常的に、各々の施設入所者の特性、施設の特性に応じた対策及び手引きを策定
しておくことが重要とされています。事前対策としては、入所者と職員にワクチン接種を行
うことが有効です。入所者に対しては、インフルエンザが流行するシーズンを前に、予防接
種の必要性、有効性、副反応について十分説明します。同意が得られ接種を希望する入所者
には、安全に接種が受けられるよう配慮します。定期的に活動しているボランティアや頻繁
に面会に来られる家族にも、同様の対応が望ましいと考えられます。65 歳以上の健常の高
齢者については、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったと報告さ
れています(「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊)」)。
このデータを考慮して、平成13 年インフルエンザは、予防接種法2類疾病とされ、65 歳
以上の高齢者および60~65 歳で一定の基礎疾患を有する人は定期接種の対象となりまし
た。
(2)レジオネラ(レジオネラ症)
【特徴】
レジオネラ症は、レジオネラ属の細菌によっておこる感染症です。レジオネラは自然界の土
壌に生息し、レジオネラによって汚染された空調冷却塔水などにより、飛散したエアロゾル
を吸入することで感染します。その他、施設内における感染源として多いのは、循環式浴槽
水、加湿器の水、給水・給湯水等です。レジオネラによる感染症には、急激に重症となって
死亡する場合もあるレジオネラ肺炎と、数日で自然治癒するポンティアック熱とがありま
す。
【平常時の対応】
レジオネラが増殖しないように、施設・設備の管理(点検・清掃・消毒)を徹底することが
必要です。高齢者施設で利用されている循環式浴槽では、浴槽水をシャワーや打たせ湯など
に使用してはいけません。毎日完全に湯を入れ換える場合は毎日清掃し、1カ月に1回以上
消毒することが必要です。消毒には塩素消毒が良いでしょう。
【検出時の対応(フロー)】
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
検査結果の報告 (施設 ⇒ 保健所)
① 直ちに保健所に報告
② 維持管理関係書類(設備の洗浄・消毒記録、残塩濃度記録等)等を用意
改善対策の協議 (保健所 ⇔ 施設)
 構造設備図面、維持管理関係書類等から今後の対策を協議
改善対策の実施 (施設)
① 感染防止対策
 浴槽等の使用中止(浴槽水等の安全確認が済むまで)
② 感染源の除去対策
 配管、浴槽等の洗浄及び消毒の実施
③ 増殖防止対策
 集毛器の清掃(毎日)
 浴槽水の完全換水(毎日)
④ その他
 施設の補修と改修(必要に応じて)
再検査の実施 (施設)
 改善対策の実施後、採水条件に注意して再検査を実施
再検査結果と改善対策の実施報告 (施設 ⇒ 保健所)
① 再検査結果の報告
不検出⇒直ちに報告し、以下の②の書類を提出
検 出⇒直ちに報告し、保健所と協議のうえ、Ⅲ改善対策~に戻る
② 改善報告書及び施設管理計画書の提出
通常営業の再開 (施設)
再検査結果、改善対策の実施状況等から、浴槽水等の安全確認がなされたと判断で
きる場合、浴槽等の使用中止を解除
(3)肺炎球菌(肺炎、気管支炎など)
【特徴】
肺炎球菌は人の鼻腔や咽頭などに常在し、健康成人でも30~70%は保有しています。しか
し、体力の落ちているときや高齢者など、免疫力が低下しているときに病気を引き起こしま
す。肺炎球菌が引き起こす主な病気としては、肺炎、気管支炎などの呼吸器感染症や副鼻腔
炎、中耳炎、髄膜炎などがあります。また、日本においてペニシリン耐性肺炎球菌が増えて
おり、臨床で分離される肺炎球菌の30~50%を占めているといわれています。
【平常時の対応】
肺炎などの病気から身体を守るためには、うがいをすること、手を洗うことが大切です。感
染経路としては飛沫感染が主ですが、接触感染などもあります。高齢者施設などでは、イン
フルエンザウイルスなどの感染時に二次感染する頻度が高くなっています。慢性心疾患、慢
性呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患を有する入所者は、肺炎球菌感染のハイリスク群です。
ハイリスク群である入所者には、重症感染予防として肺炎球菌ワクチンの接種が有効です。
4) 接触感染(経口感染、創傷感染、皮膚感染)
<経口感染>
(1) ノロウイルス(感染性胃腸炎)
【特徴】
ノロウイルスは、冬季の感染性胃腸炎の主要な原因となるウイルスで、集団感染を起こすこ
とがあります。ノーウォークウイルスや小型球形ウイルスと呼ばれていましたが、2002 年
にノロウイルスと命名されました。ノロウイルスの感染は、ほとんどが経口感染で、主に汚
染された貝類(カキなどの二枚貝)を、生あるいは十分加熱調理しないで食べた場合に感染
します。(なお、ノロウイルスは調理の過程で85℃以上1 分間の加熱を行えば感染性は
なくなるとされています。)高齢者介護福祉施設においては、入所者の便や嘔吐物に触れた
手指で取り扱う食品などを介して、二次感染を起こす場合が多くなっています。特に、おむ
つや嘔吐物の処理には注意が必要です。主症状は、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢で、通常は1
~2日続いた後、治癒します。
【平常時の対応】
入所者の便や嘔吐物などを処理するときは、使い捨て手袋を着用することが必要です。おむ
つの処理も同様です。嘔吐の場合には、広がりやすいのでさらに注意しましょう。手袋のほ
か、予防衣、マスクを付け
1) まず、布や濡れた新聞で被い、確実に集めてビニール袋に入れます。
2) 床は次亜塩素酸の薬品でふき取り、それらもビニール袋にいれます。
感染防止には、まず正しい手洗いを実行することが大切です。介護職員・看護職員はウイル
スを残さないように、手洗い・消毒をすることが必要です。介助後・配膳前・食事介助時に
は必ず手を洗いましょう。手袋を脱いだときも必ず手を洗いましょう。
(2) 腸管出血性大腸菌(腸管出血性大腸菌感染症)0157
【特徴】
O157 は、腸管出血性大腸菌の一種です。大腸菌自体は、人間の腸内に普通に存在し、ほ
とんどは無害ですが、中には下痢を起こす原因となる大腸菌がいます。これを病原性大腸菌
といいます。このうち、特に出血を伴う腸炎などを引き起こすのが、腸管出血性大腸菌です。
腸管出血性大腸菌は、人の腸内に存在している大腸菌と性状は同じですが、ベロ毒素を産生
するのが特徴です。ベロ毒素産生菌は、O157 が最も多いですが、O26、 O111 など
の型もあります。感染が成立する菌量は約100 個といわれており、平均3~5 日の潜伏期
で発症し、水様性便が続いたあと、激しい腹痛と血便となります。
【平常時の対応】
少量の菌量で感染するため、高齢者が集団生活する場では二次感染を防ぐ必要があります。
感染予防のために、
①手洗いの励行(排便後、食事の前など)
②消毒(ドアノブ、便座などのアルコール含浸綿の清拭)
③食品の洗浄や十分な加熱
など、衛生的な取扱いが大切である。
<その他の接触感染>
(3) MRSA(MRSA 感染症)
【特徴】
MRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)は、メシチリンのみでなく多くの抗菌薬に耐性
を示す黄色ブドウ球菌のことです。この菌自体はどこにでも存在し、健康な人に感染しても
全く問題はありません。ただし、高齢者や感染の抵抗力が低下している人、衰弱の激しい人、
慢性疾患を抱えている人に感染すると、肺炎、敗血症、腸炎、髄膜炎、胆管炎などを発症す
ることがあります。
【平常時の対応】
MRSA は接触感染で伝播するため、感染を防止するために、日常的な手洗いが重要です。
使用した物品(汚染されたおむつ、ティッシュペーパー、清拭布など)を取り扱った後は、
手洗いと手指消毒の徹底が必要です。
(4)緑膿菌(緑膿菌感染症)
【特徴】
緑膿菌は施設内の水場、洗面台、シンクのたまり水などに生息し、ときには腸管内にも常在
します。弱毒菌で健康な人に感染しても問題ありませんが、高齢者など感染抵抗性の低い人
に感染すると発症しやすく、いったん発症すると抗菌薬に抵抗性が強いため、難治性となり
ます。しばしばバイオフィルムとよばれる膜を形成し、抗菌薬や消毒薬に抵抗性を示します。
創部感染、呼吸器感染、尿路感染などを起こします。また、近年、薬剤耐性緑膿菌が増加し
つつあります。
【平常時の対応】
感染は、手指を介しておこることが多いため、接触感染に注意することが必要です。使用し
た物品(汚染されたおむつ、ティッシュペーパー、清拭布など)を取り扱った後は、手洗い
と手指消毒の徹底が必要です。
(5) 疥癬虫(疥癬)
【特徴】
疥癬は、ダニの一種であるヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)が皮膚に寄生することで発
生する皮膚病で、腹部、胸部、大腿内側などに激しいかゆみを伴う感染症です。直接的な接
触感染の他に、衣類やリネン類などから間接的に感染する例もあります。また、性感染症の
1つにも入れられています。疥癬の病型には通常の疥癬と重症の疥癬(通称「痂皮型疥癬」、
ノルウェー疥癬ともいわれる)があります。痂皮型疥癬の感染力は強く、集団感染を起こす
可能性があります。通常の疥癬は、本人に適切な治療がなされれば過剰な対応は必要ありま
せん疥癬虫は皮膚から離れると比較的短時間で死滅します。また、熱に弱く、50℃、10 分
間で死滅します。
【平常時の対応】
疥癬の予防のためには、早期発見に努め、適切な治療を行うことが必要です。疥癬が疑われ
る場合は、クロタミン軟膏を塗布し、医師の診察を受けましょう。衣類やリネン類は熱水で
の洗濯が必要です。ダニを駆除するため、布団なども定期的に日光消毒もしくは乾燥させま
しょう。介護職員の感染予防としては、手洗いを励行することが大切です。
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このマニュアルは、平成26年4月1日に更新