けんさの豆知識 2004 年 1 月発行 [20]寄生虫 Part2 赤痢アメーバ 2010 年 12 月改訂 [1]そっと忍び寄る寄生虫(腸管寄生編)1997 年 12 月発行では当院で経験したうち のいくつかの寄生虫について取り上げました。今回は日本の原虫症の中で症例報告数が 多い赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)についてとりあげました。 赤痢アメーバとは 赤痢アメーバには、病原性の E.histlytica と非病原性の E.dispar があり、その生活史 上、栄養型とシストの2種類があります。シストに汚染された飲食物などを経口摂取す ることにより感染し、大腸粘膜に潰瘍をつくります。そのうち約5%が腸管外(肝臓・ 肺・脳・皮膚など)に膿瘍をつくります。 ←栄養型(アメーバ状) 新鮮な粘液便に認められた栄養型 直径20~50μm 偽足を出して動く 赤血球(RBC)を捕食していることがある (国立感染症研究所インターネット寄生虫図鑑より) ←シスト(嚢子) 球状、12~15μm 核が4個 (国立感染症研究所インターネット寄生虫図鑑より) 疫 学 ①水系感染-汚染された食品や飲料水による ②海外での感染 ③性行為感染-男性同性愛者に多い。oral-anal-sex 等により糞便が直接口に入るため ④AIDSやその他免疫不全患者による日和見感染 ⑤重症心身障害者収容施設による施設内感染 わが国のアメーバ赤痢患者の多くは他の性感染症(梅毒、HIV感染症、B型肝炎、性 器ヘルペスなど)を合併していることが報告されています。男性同性愛者に多く、海外 渡航暦がない国内感染が増加しています。 症 状 ①腸アメーバ症(栄養型、シストの寄生)-大腸に潰瘍を形成し無症状から重症まで 様々です。腹痛、下痢、粘血便が代表的症状です。 ②腸管外アメーバ症(栄養型の寄生)-肝臓・肺臓・脳・脾臓・肛門周囲の皮膚など への寄生がありますが、頻度が最も高いのは肝膿瘍です。アメーバ性肝膿瘍では右季肋 部痛、発熱、悪心、食欲不振などの症状が代表的です。 ←肝臓への寄生症例 (肝膿瘍) [元当院外科丸尾医師提供] 検 査 ①腸アメーバ症 ・糞便の寄生虫検査(栄養型、シストの検出) ・大腸内視鏡による観察および生検材料の組織検査など ・腸アメーバ症では抗体価が上がらない場合も多いため、免疫学的診断法はあまり有 用ではありません。 ②腸管外アメーバ症 ・免疫学的診断法が有用です。 ・肝膿瘍の場合、X線、CT、エコーなども診断の助けになります。 ↓肝膿瘍CT像 ↑肝膿瘍エコー像 [元当院外科丸尾医師提供] 治 療 赤痢アメーバの治療は本来、病原性の E.histlytica を対象としていて非病原性の E.dispar は対象外です。しかし、原虫の鑑別ができる施設が少ないことと E.histlytica でも無症状の時期があるため、病原性・非病原性にかかわらず治療の対象としたほうが よいとされています。 ・腸アメーバ症・腸外アメーバ症(肝膿瘍)-第一選択薬:メトロニダゾール(フラジール)
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