Title Author(s) Citation Issue Date ヨーロッパにおける山の風景画の誕生とその変遷( abstract ) 小泉, 武栄 東京学芸大学紀要. 人文社会科学系. II, 59: 59-68 2008-01-00 URL http://hdl.handle.net/2309/87647 Publisher 東京学芸大学紀要出版委員会 Rights 東 京 学 芸 大 学 紀 要 人文社会科学系Ⅱ 第59集(2008) ヨーロッパにおける山の風景画の誕生とその変遷 The birth and change of mountain landscape painting in Europe 小 泉 武 栄 KOIZUMI Takeei 地理学* 要旨 中国や日本では風景画は古くから描かれてきた。しかしヨーロッパにおいては,風景画は,ローマ時代には存在 したものの,キリスト教が支配していた中世においては,1000年を越える長い期間を通じて描かれることはなかっ た。風景画は13世紀頃から,宗教画の背景として描かれるようになったが,次第に宗教的な色彩が薄まって,宗教 的人物が主役から退き,その後,風景画として独立する。この間,15世紀初頭にはランブール兄弟の,そして16世 紀にはブリューゲルの優れた風景画が誕生するが,風景画の本格的な独立にあたっては,宗教改革によってオラン ダがカルヴァン派の共和国となり,宗教画が禁止されるということが必要であった。17世紀のオランダでは,宗教 画や貴族の肖像画に代わって,中流市民が絵画を自宅に飾って楽しむことが流行し,それが風景画の隆盛につな がった。ただし山の風景画が描かれるようになるには,さらに2世紀ほどの時間が必要で,山の絵は,登山の開始 とほぼ同時期の,19世紀の初めくらいになってようやく本格的に描かれるようになった。 *Department of Geography ― 68 ―
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