植物と人々の博物館づくり - 東京学芸大学 環境教育研究センター

関連授業報告プロジェクト学習科目
表の形式で行った。いずれのグループも意欲的に取り組み、
ケーションを行う場面も想定され、本授業の中で理解した
プレゼンテーションやパフォーマンスを駆使して分かりや
点、考えた点を生かした活動が行えるものと思う。
すく伝えるということを“体現”できた(写真)
。次年度
の総合演習では、地域の高齢者・障害者と実際にコミュニ
植物と人々の博物館づくり
科 目
テ ー マ
担当教員
所 属
基礎Ⅰ 植物と人々の博物館づくり
木俣美樹男
環境教育実践施設 教授
基礎Ⅱ 植物の知恵を生活に生かす
中西 史
自然科学系 広域自然科学講座 生命科学分野 講師
応用Ⅰ 縄文人と森のくらし
南 道子
総合教育科学系 生活科学講座 生活科学分野 准教授
応用Ⅱ 食生活の変遷を考える
服部 哲則
総合教育科学系 広域自然科学講座 文化財科学分野 講師
総合演習 植物と人々の博物館特別展
木俣美樹男 / 中西 史 / 南 道子 / 服部哲則
日本の山村において伝統的知識体系を環境の視点から学
び、過疎高齢化が進む地域社会の再生・維持を図る「エコ
ミュージアム日本村」のコア博物館として、
「植物と人々
の博物館」を山梨県小菅村の中央公民館に創立すること
が本プロジェクト科目の主題である。このために、東京学
芸大学は小菅村と2007 年 5 月に地域連携協定を締結した。
教員4 名による基礎・応用科目は講義内容に応じて環境教
育実践施設多目的教室、教材植物園、小菅村公民館、小菅
の湯雑穀栽培見本園などで実施した。受講 2 年生 40 名は植
物と人々の関係についての基礎知識と技能の習得を中心に
した環境学習を行った。3 年生の総合演習では4班編成で
展示作品を作り、東京学芸大学環境教育実践施設と小菅村
中央公民館において「植物人々の博物館特別展」を開催す
る予定である。
プロジェクト学習科目基礎Ⅰ
「植物と人々の博物館づくり」
、2007 年前期
担当 木俣美樹男 環境教育実践施設
●ねらいと目標
プロジェクト科目「植物と人々の博物館づくり」の序論
である。環境学習の場としてのエコミュージアム日本村と
植物と人々の博物館の構想について理解を深める。
●内 容
エコミュージアムの基本構造である、コア博物館(coremuseum)、発見の小道(discovery trail)、学習の場所
(satellite-museum)の意義、国立公園の管理運営について
アメリカのヨセミテ国立公園の事例、植物園の管理運営に
ついてイギリスの王立キュー植物園の事例、および民族植
物学の方法論から山村において植物と人々のかかわり方の
学習方法を学んだ。その上で、小菅村巡検を実施し、雑穀
栽培見本園を観察し、古老や染色家からの聞き取りを行い、
染色用の植物を採集して、さく葉標本を作製した。
●授業スケジュール
1 エコミュージアムとは何か
2 エコミュージアム日本村構想
3 植物と人々の博物館の現況
4 王立キュー植物園の紹介
5 ヨセミテ国立公園の紹介
6 ELF 環境学習プログラムの概説
7 民族植物学の手法の概説
8 植物標本の作り方
9 民具の整理の仕方
10 聞き取り調査の仕方
11 小菅村1日バス巡検
−6−
関連授業報告プロジェクト学習科目
巡検において、草木染の専門家との交流会をもち、その材
12から15 まとめの実習作業
料となる植物の採集・標本作製を行った。この授業を通じ、
プロジェクト学習科目基礎Ⅱ
「植物の知恵を生活に生かす」
、2007 年前期
植物が進化の過程で獲得した様々な形質を理解するととも
担当 中西史 広域自然科学講座
●ねらいと目標
植物は光合成により生きて行くために必要な有機物とエ
ネルギーを生み出し、それらをもとに動かなくても生きて
ゆける術を獲得している。本授業では、普段我々が利用し
ている様々な植物成分の植物にとっての機能を探り、植物
の巧みな生存戦略を理解する。
●内 容
植物生理学ならびに草木染をはじめとする植物の二次代
謝産物の人による利用についての講義を行うとともに、受
講生がタデアイの播種、栽培、収穫を班ごとに責任を持っ
て行い、その収穫物による藍染めを行った。また、小菅村
に、それを利用するために先人がいかに試行錯誤し、工夫
を凝らしてきたかを受講生たちが実感できたものと考えて
いる。
●授業スケジュール
1 ガイダンス−植物の知恵を生活に生かす
2 タデアイを育てる 3 植物の成長と環境応答
4 植物と他の生物の相互作用
5 花と人とのかかわり
6 植物が作り出す物質
7 植物・植物性食品の抗酸化活性を測定する 8 草木染めの歴史と原理
9 藍染め(生葉染め)にチャレンジ
写真:左上はタデアイの苗作り、右上はタデアイの生葉を採取し、左下は染色を行い、右下は染めた布を乾燥しているとこ
ろである。
プロジェクト学習科目応用Ⅰ
「縄文人と森のくらし」
、2007 年後期
担当 服部哲則 広域自然科学講座
●ねらいと目標
約1万年間、農業や牧畜によらず森とともに生きた縄文
人の暮らしは、日本人のもつ自然観の原点になっていると
考えられる。縄文人の生活、文化を通して、森を中心とし
た自然との共存について理解を深める。
●内容
日本人は、どのように森と共生してきたのか。旧石器時
代から古代にかけて日本列島に渡来した人々と、自然環境
とのかかわりについて学習する。また、約1万年もの間日
本列島に栄えた縄文文化が歴史研究の上で、これまでどの
ように捉えられてきたのか、また近年の考古学研究の成果
によってどのようなことが明らかになってきたのか、その
実像を探る。
−7−
関連授業報告プロジェクト学習科目
●授業スケジュール
6 縄文時代のくらし
1 ガイダンス
2 縄文人観について
7 博物館紹介
3 日本人はどのように作られたか (1)
4 旧石器時代∼縄文時代の自然環境
5 日本人はどのように作られたか (2)
9 縄文土器について 2
10 ∼ 15 体験実習(博物館見学を含む集中授業)
8 縄文土器について 1
写真:左は縄文人の漆採取法と使用方について説明を受ける受講生、中・左は縄文土器の製作実習の風景。
プロジェクト学習科目応用Ⅱ
「食生活の変遷を考える」
、2007 年後期
担当 南道子 生活科学講座
●ねらいと目標 動植物を食することにより私たち人間は生存、繁殖して
きたが、日本は第二次世界大戦前後で毎日の食生活を大き
く変動させた。この授業ではその変動させた理由や、それ
によって影響を受けた事柄について学び、これからの食生
活がどうあるべきか考える。
● 内容 縄文時代から現代までの日本人の食生活の歴史、食文化
について学び、三大熱量素の栄養学の基礎についても学ん
だ。第一回目の実習は鎌倉時代の武士の食事として、玄米
(一般的にまだ白米は貴族の食べもの)を蒸して(炊飯の
技術がなかったため)主食とし、カブのみそ汁を昆布出汁
で作った。また、出汁としてとった昆布を佃煮にして食べ
た。また、武家は時々焼き鳥なども食するというので、
(調
味液で煮るということがされていなかった時代なので)
、
素焼きにして塩や味噌をつけて食べた。次に、最近の食
生活の問題点とそれがもとでおこる生活習慣病について学
び、2回目の実習としてエコクッキングを行った。豚汁と
それを作る時に出る野菜の皮をきんぴらにして食べ、無洗
米で炊飯をした。エコクッキングは食材を購入するところ
から、調理方法、食事の後片付けにもエコの観点で実行で
きることがあるということを学んだ。 ●授業スケジュール
1 ガイダンス
2 私たちの食事内容の変化
3 実習
4 実習
5 栄養学の基礎知識 I
6 栄養学の基礎知識 II
7 日本人の食環境
8 エコクッキング
9 エコクッキング
10 栄養学の最新情報
11 昔の暮らしを知る
12 昔の暮らしを知る
13 食生活指針・健康日本21
14 食育基本法
小菅村への巡検
日時:7月7日(土曜日)に日帰りで実施した(往復バ
ス使用)
。
場所:山梨県小菅村 中央公民館、小菅の湯周辺
内容:エコミュージアム日本村「植物と人々の博物館」
づくりの現場を見る 1)昔話を聞き、民具展示を見る
2)郷土食を味わう
3)雑穀在来品種の見本園を観察する
4)染色用植物採集と腊葉標本づくり
地域講師:植物と人々の博物館伝統知伝承顧問
守重洋作、木下純子、清水利江
現代 GP講演会「植物と人々の博物館づくり ―
押し花の大切さと環境学習」
日時:2007 年 6 月16日(土)
午前10時から午後6時
まで
場所:東京学芸大学 環境教育実践施設 多目的教室
目的:学大生・卒業生・市民による標本庫整備の成果を
公開し、標本の大切さを学ぶ
内容:押し花(腊葉標本)の大切さを中心に講演、腊葉
標本庫武井コレクションの一般公開、植物と人々
の博物館 友の会設立総会、交流会
講師と話題:
1)武井尚(東京学芸大学環境教育実践施設共同研
究員)
武井コレクションの解説
2)渡嘉敷裕(東京腊葉会会長)
東京腊葉会の歴史
3)山田卓三(兵庫教育大学名誉教授、植物と人々
−8−
関連授業報告プロジェクト学習科目
主催:現代 GP 推進委員会、植物と人々の博物館
の博物館名誉会長)
草花遊びと生物文化多様性の保全
協賛:地域団体、日本たばこ産業ほか。
4)岩槻邦男(東京大学名誉教授、兵庫県立人と自
後援:日本エコミュージアム研究会、環境省、農林水産
然の博物館長)
生き物の研究と標本の大切さ
省、国土交通省、東京都、山梨県、全多摩川流
域自治体
現代教育GP「多摩川エコミュージアム・
ネットワーク・シンポジウム」
日時:11月16日∼ 17日(土)
目的:多摩川流域におけるエコミュージアムのネット
ワークづくりの実際を学ぶ
内容:多摩川エコミュージアムのネットワークづくりに
ついて、上流と下流が話し合う。
準備態勢:プロジェクト学習科目、関連科目受講学生を
中心に企画・運営した。市民、協賛団体からも実
行委員会委員を募集して、ネットワークづくりを
進めた。
(学習効果)
植物と人々の営みに関する基礎学習を行い、作品作りの
モチベーションを培い、
「総合的な学習の時間」に対応し
た応用的理解の準備ができた。巡検とシンポジウム企画運
営の中で小菅村や小金井市の方々とともに作業をし、地域
社会との交流の仕方を学んだ。これらの経験を総合演習で
さらに深めるための意欲が高まり、各人の希望により、4
グループ、①植物と人々(博物館展示コーディネーショ
ン)
、②植物の知恵(染色)
、③縄文人と森(土器)
、④食
生活(食文化)
、を編成した。
写真:左は小菅村の染色家へのインタビュー、中は雑穀見本園、右は植物による染色の成果発表。
フィールドワークへの誘い<まち>のモザイク −住み・学ぶ・生きる−
科 目
テ ー マ
担当教員
所 属
基礎Ⅰ まちをつなぐ:NPOとコミュニティ 清水 洋行 人文社会科学系 社会科学講座 社会学分野 准教授
基礎Ⅱ まちの記憶のデザイン:歴史的環境の保全
高田 滋 人文社会科学系 社会科学講座 社会学分野 教授
応用Ⅰ まちの風景・暮らし・文化:フィールドワークで探る武蔵野 椿 真智子 人文社会科学系 人文科学講座 地理学分野 准教授
応用Ⅱ まちの願いをかたちに:地方自治と公共サービス 牧野 文夫 人文社会科学系 社会科学講座 経済学分野 教授
清水 洋行 / 高田 滋 / 椿 真智子 / 牧野 文夫
総合演習 フィールドワークからガイドブックへ
◆ プロジェクト学習科目・基礎Ⅰ(2007 期)
⑴従来は、行政が担うことが当たり前と考えられていた、
社会教育、児童福祉、高齢者福祉など身近な「公共サー
ビス」の担い手が民営化(市場化)されているなかで、
担当:清水洋行
本授業は、
「基礎科目Ⅰ」であり、次年度におけるフィー
ルドワークを軸とする総合演習の入り口にあたる授業であ
ることから、次の点を主なねらいとして授業を計画した。
⑴身近な「まち」への関心を抱かせること
⑵「まち」をつくる社会的な仕組み(制度・構造)への基
礎的な視点を提供することである。
上記のねらいにおいて「NPO」を取り上げることが適切
と考えた理由は、次の通りである。
NPO もその担い手の一つとなっている。このような「公
共サービス」の実施のための新たな仕組みづくりをめぐ
る動きは、現代 GP における持続可能な社会づくりとい
うテーマと密接に関わっていると考えられる。
⑵ NPO は、地域社会においてサービスを提供するだけで
なく、地域の住民を巻き込み、エンパワーメントしてい
く役割も果たしている。このような機能に気づくことで、
−9−
NPO や地域住民と学校教育との連携について検討する