平成 23 年 6 月 20 日 石油天然ガス・ 金属鉱物資源機構 波方国家石油ガス備蓄基地建設工事遅延に係る内部検証ついて 1.発錆の原因究明と対策案の検討 (1) 平成 19 年 9 月、愛媛県今治市で建設中の国家石油ガス備蓄波方基地において、地上部 と岩盤貯槽部を繋ぐ配管竪坑内で、プロパン・ブタンの受払や底水排水槽の排水用の金属 配管及び金属配管を支えるサポート架構に腐食が確認された。 (2) JOGMEC は腐食が確認された以降、外部有識者で構成する石油ガス設備技術委員会に報 告し、補修および湧水対策等の当面の必要な措置について指示するとともに、抜本対策に ついて、関係機関との調整に着手し、平成 20 年 2 月には同委員会において金属配管の引 抜を決定した。 その後、迅速な対応を行うために、JOGMEC 主導のもと、土木、設備の関係者による横 断的なWGを組織するとともに、新たに設置した土木・設備の専門家で構成する竪坑金属 配管小委員会の指導を受け、技術的な原因究明と対策について検討。金属配管については、 湧水低減化対策(止水グラウト工事・導水工事) 、防食被覆(エポキシ被覆) 、電気防食(外 部電源方式)の防食対策を、サポート架構については、防食被覆、電気防食、架構の構造 変更(隙間構造の見直し等)の防食対策を平成 21 年 8 月、最終的に決定した。 (3) なお、発生した腐食は、 「隙間腐食」と「孔食」に大別され、原因調査を依頼した腐食 防食協会による調査の結果、隙間腐食は、隙間が存在していたことと塩水環境が原因で、 予見は可能であるが、孔食は、塩水環境の他、溶接部の偏析による耐食性の低下が加わる 等、複数の要因が重なって短期間にて深い孔食に発展しており、予見は困難であるとの報 告を受けた。 (4) 上記により、金属配管腐食に関する腐食原因調査、防食対策の検討、技術的懸案事項等 への対応は一応の目処が立ち、現在は、見直した計画に沿って工事を着実に進めている状 況である。 なお、見直し計画策定に当たっては、竪坑プラグ部先行施工による上・下部配管の同時 施工、金属配管の2本継ぎ配管の吊込み等の工法見直しを行い 20 カ月の工期短縮を図り、 基地完成時期を平成 22 年 12 月から、27 カ月延伸の平成 25 年 3 月に変更した。 2.施工者との費用負担に関する整理 (1) JOGMEC は、法律事務所のアドバイスも受けつつ、腐食発生に関連する費用負担につい て施工者と交渉。 (2) 施工業者の管理不備による腐食確認の遅れや隙間腐食の予見も出来たことにより、腐食 の補修費用の全額及び工期延伸したことによる増加した費用の一部は施工者の責任によ るものとして、施工者負担とした。 (3)一方、金属配管の引抜再据付費用及び追加防食対策費用は、孔食は予見が困難であった ことから JOGMEC の負担とすることを合意した。(平成 22 年 1 月) 現在、これに沿って、金属配管に関する費用負担がなされ、工事を実施している。 3.JOGMEC における内部検証 (1) 本件に関する JOGMEC の内部の問題点の検証について、複数の第三者(技術的側面につ いては、竪坑金属配管小委員会委員長である青木京大教授、マネジメントについては法律 事務所)の客観的立場からの意見を受けながら、詳細設計時期、竪坑掘削終了に伴う設備 施工 JV への引渡時期、金属配管設置時期等の各段階について、資源備蓄本部から一線を 画した立場である副理事長によって検証を実施するとともに、検証の妥当性について法律 事務所からの確認を得た。 (2)それによると以下のとおり。 今回の腐食は、結果からみれば、材質と環境のミスマッチに起因するものであった。但 し、設計段階当時の知見からすれば、①「水島実証プラント」での竪坑水質実績を基に配 管材料を選定していること、②工事期間が有害な錆の発生が予見されるほど長期間ではな いということで、SUS316L 裸管を採用したことは妥当性を欠くとはいえない。 また、施工段階においては、竪坑設備の設置工事前後において、コスト・工期の調整代 はほとんどない状況であり、短期間での有害な腐食の予見性がない中では、実態上、腐食 の発生前に抜本的な対策を行うことの判断は非常に困難であると考えられる。 (3)以上のように、この腐食自体の発生は、当時の状況から防止困難であったと考えられる が、腐食の早期発見等により、工期延伸期間の短縮、腐食拡大の防止ができた可能性はあ るものと考えられる。これらに対応する費用について仕様変更対象外とした対処は妥当な ものと考える。さらに JOGMEC が十分監督していれば早期発見ができたのではないかとす る見方もあるが、当時は JOGMEC が専門技術性を有する設備施工 JV に腐食モニタリングを 依頼し、判定結果を受け入れたものであり、これが妥当性を欠くとまではいえないと考え られる。 4.JOGMEC における措置 前述のとおり、JOGMEC として職務上の義務を怠ることとなるような妥当性を欠く判断は 認められず、関係責任者の処分にはあたらないものと考える。但し、波方建設工事工程が遅 延し、工事費が増加したことは事実であるため、本プロジェクトの関係幹部の業績考課に反 映することとした。 また、組織体制の変更については、金属管腐食問題の反省を踏まえ、土木部門の担当審議 役を建設総括として位置付けるとともに、並列していた各課を建設管理課長が統括する等体 制の整備を実施した(平成 22 年 10 月) 。 さらに、倉敷、波方両基地の現場へ、それぞれ平成 22 年 7 月及び平成 23 年 1 月に、本部 幹部職員を配置し、JOGMEC として一層責任ある工事遂行体制を構築した。 以上
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