痔疾患には種類があり、痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、肛門周囲膿瘍

(2)第64号
ゆうかり便り
平成23年4月1日 発行
痔疾患には種類があり、痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、肛門周囲膿瘍(あな痔)といった
ものがあります。その中で最も多いのが痔核になります。出血、痛み、脱肛(しこり、腫脹)等
の症状がありますが、イボ痔の名の通り、イボ(脱肛、しこり、腫脹)を自覚して、痔であると
思われている方が多いと思います。この痔核は、できる部位により内痔核と外痔核に分けられま
す。内痔核は直腸にできるイボ痔であり、外痔核は肛門にできるイボ痔です。内痔核と外痔核で
は治療も異なる場合があるので、同じイボ痔でも、どちらであるかを知っておく必要があります。
またきれいに境界で分かれるイボ痔だけでなく、内痔核と外痔核がつながっている内外痔核とい
う状態も多く見られます。この場合は、どちらの成分が大きいかにより、治療法も異なることが
あります。
今回は、内痔核に対する最新の治療法である、四段階注射法についてご紹介いたします。
まず、内痔核の治療法で基礎となるのは、保存的治療になります。内痔核の方の排便異常の多
くは便秘ですので、水分摂取や野菜など繊維質のものを多くとり、排便を出しやすくする、排便
後はウォシュレットで清潔にする、お尻を冷やさない、お風呂につかり肛門を温める、アルコー
ルや香辛料などの刺激物を控える、軟膏や坐薬などの痔のお薬を患部に使用する、といったもの
になります。これだけでも随分症状が軽減される方もおられ、手術の必要がなくなることもあり
ます。但し、保存的治療で改善しない場合には、手術という選択肢が出てきます。この場合、手
術後も引き続き保存的治療は重要になりますので、その習慣をつけることが大事です。
内痔核の手術の基本は、今も昔もこれからも変わりませんが、結紮切除術(ミリガンモルガン
法)という痔の腫れてる部分を直接切除する方法です。また、当院で最も多く施行している手術
法がPPH法で、これは痔の根元の直腸粘膜を、専用の機械で環状に切除してつなぎ直し、垂れ
下がり脱肛した痔を吊り上げ、痔に流れる血流を遮断することにより、痔を縮小し、症状を改善
する治療になります。
そして、四段階注射法というのは、ジオン注というお薬を使用する硬化療法で、痔に直接お薬
を注射することで、痔を硬化させ小さくし、症状を改善する治療法になります。ALTA(アル
タ)療法ともいいます。効果や持続性は、切る手術である結紮切除術やPPH法が勝りますが、
最も優れる点は、切る手術に比べて負担が少なく、合併症も極めて少ないということです。まだ
この治療が日本で始まって5年程しか経っていませんので、長期成績は今後の推移を見なければ
なりませんが、当初の予想より効果が持続するという報告があることから、この治療を希望し実
施される方が全国でかなり増えています。また治療法も進化しており、例えば内外痔核の場合な
ら、内痔核の部分は四段階注射法を施行し、外痔核の部分は切除するといった組み合わせで手術
をする方法も増えています。
つまり四段階注射法は、これまで内痔核で悩んでおられた方で、治療はしたいが、切ることへ
の不安などから、手術に踏み切れなかった方には朗報の治療法と考えます。しかし、結紮切除術
やPPH法が、確実で治療効果も長いことは忘れてはいけません。しかしながら負担は非常に少
ないですから、再発しても、再度注射で治療をするつもりでされる方にはお勧めします。
このように、治療の選択肢も増えましたので、一度ご検討してみてはいかがでしょうか。