妊娠中・授乳中の予防接種の考え方とインフルエンザ予防接種について

●妊娠中・授乳中のインフルエンザワクチン接種について
■妊娠中の予防接種についての一般的な考え方
1)生ワクチンの場合:
① 生ワクチンは生きた病原体(弱毒)を接種するため、妊婦への接種は原則禁忌です。
② 妊娠前に生ワクチンを接種した場合には、その後2ヶ月間は避妊が必要です。
2)不活化ワクチンの場合:
① 不活化ワクチンは生きた病原体そのものを接種するわけではないので、胎児への
感染は問題になりません。
② ただし、 ワクチン接種による母体の副反応が起こる可能性はあり、その場合には
流産や早産のリスクは存在します。
■妊娠中のインフルエンザワクチン接種について
1)非妊娠時と比較すると、インフルエンザに対する抗体を持たない妊娠中期、後期の
妊婦はインフルエンザにかかる確率が有意に高くなります。
そのため、アメリカでは疾病管理センター、産婦人科・小児科などの学会が妊婦に
対するインフルエンザワクチン接種を推奨しています。
また、WHOでも妊娠14週以降の妊婦に対するインフルエンザワクチン接種を推
奨しています。欧米において妊婦は、老人と小児と並びインフルエンザワクチン接
種の優先順位の上位にランクされています。
2)日本においては、妊婦に対するインフルエンザワクチン接種の大規模調査が実施さ
れていないことから積極的には勧められないとしていますが、現在までに、インフ
ルエンザワクチン接種によって特別の有害事象が発生したという報告はありません。
ただし、PL法(製造物責任法)のため製薬会社はインフルエンザワクチンに対
して以下の添付文書を記載しています。
「妊娠中の接種に関する安全性は確立されていないので、妊婦または妊娠している
可能性のある夫人には接種しないことを原則とし、予防接種上の有益性が危険性を
上回ると判断されると思われる場合にのみ接種すること」とあります。
3)現段階では、できれば胎児の器官形成期である妊娠初期を除けば、基本的に安全と
考えてよいと思われます。
4)上記のように、欧米での積極的な接種状況を考慮して、添付文書の内容を十分理解
した上で、インフルエンザワクチンの接種希望の妊婦に対して当院では接種を行っ
ています。
■授乳中のインフルエンザワクチン接種について
1)授乳中のワクチン接種は、インフルエンザワクチンのみならず、他の不活化ワクチ
ンや生ワクチンでも安全であるとされており、当院では接種を行っています。