デカルトの心身問題

デカルトの心身問題
フランス=ハルス画(1648年)
1.発端
・ きっかけはエリザベト王女との文通
→デカルトの愛弟子であった彼女が、その書簡
において彼に最初に発した重要な質問
「非物体的な魂がいかにして身体を動かしうるのか」
2.背景 (1/2)
・精神と身体の実在的区別
→精神は身体なしで存在し得る
→身体は精神なしで存在し得る
・機械論的生理学
→精神が身体とかかわりを持つ
2.背景 (2/2)
・王女が導いた問い
→では非物体的である精神が、物質である身
体にどのように作用し、あるいは作用される
のか?
∥
「心身問題のアポリア(難題)」
3.デカルトの解決(1/4)
・「心身合一」の容認という解決
→デカルトは、日常の生と交わりを行使するこ
とによってのみ知られる原始的概念として精
神と身体の直接的合一を認める。
3.デカルトの解決(2/4)
※「日常の生」とは何か
→形而上学的概念や科学的概念では理解でき
ない精神と身体とのかかわりのありかた。
∥
実際に「身をもって」体得するほかない
3.デカルトの解決(3/4)
※「原始的概念」とは何か
→それ自体が一つの次元をもち、他の次元と
区別される概念のこと。
∥
「心身合一」に次元をもたせることで物理的な
因果関係からの考察を遮断する。
3.デカルトの解決(4/4)
つまり……
「精神と身体がお互いに作用し合う」のは、
「実践によってのみ体得できる(=日常の生と
の交わり)」という領域を対象とする、心身合
一の次元があるから、ということができる。
4.残る疑問
・心身の二元論
・心身合一
→この二つを同時に認めることは論理矛盾を
犯しているのではないか?
5.その解決(1/2)
・「次元が異なる」という解決
デカルトは心身合一を原始的概念として、「精
神」や「身体」の次元とは別の次元においた
∥
心身二元論と心身合一は時間的に異なる
5.その解決(2/2)
・「心身の実在的区別」という解決
「心身の実在的区別」とは…
精神は身体なしで存在できる
身体は精神なしで存在できる
∥
「分離可能性」が論拠であり、「分離」ではない
→「心身合一」に矛盾しない
完
参考文献:「デカルト入門」小林道夫(ちくま新書)