命 令 書 申立人 東京私立学校教職員組合連合 申立人 東京私立学校

命
令
書
申立人
東京私立学校教職員組合連合
申立人
東京私立学校教職員組合連合専修各種学校支部
申立人
X1
被申立人
学校法人東京日新学園
上 記 当 事 者 間 の 都 労 委 平 成 11年 不 第 3号 事 件 に つ い て 、 当 委 員 会 は 、
平 成 15年 7月 1日 第 1349回 公 益 委 員 会 議 に お い て 、 会 長 公 益 委 員 藤 田 耕
三、公益委員松井清旭、同明石守正、同浜田脩、同岩瀬孝、同大辻正
寛、同小井圡有治、同古郡鞆子、同中島弘雅、同岩村正彦、同小幡純
子、同荒木尚志の合議により、次のとおり命令する。
主 文
本件申立てを棄却する。
理 由
第1 事案の概要と請求する救済内容の要旨
1 事案の概要
本 件 は 、 東 京 商 科 学 院 外 2校 の 専 修 学 校 を 開 設 し て い た 法 商 学 園
が 平 成 10年 10月 1日 に 解 散 し 、 同 日 、 3校 を 引 き 継 い だ 東 京 日 新 学
園 が 、法 商 学 園 の 教 職 員 の 中 か ら 同 学 園 の 教 職 員 を 採 用 し た 際 に 、
①法商学園分会の分会長X1を不採用としたこと、及び②組合員
の不採用に関する団体交渉に応じなかったことがいずれも不当労
働行為であるとして争われた事案である。
2 請求する救済内容の要旨
(1) 東 京 日 新 学 園 は 、 X 1 を 10年 10月 1日 に 採 用 し た と 同 様 に 就
労 さ せ 、そ の 間 同 人 が 受 け 取 る は ず で あ っ た 給 与 等 を 支 払 う こ
と。
(2) 東 京 日 新 学 園 は 、10年 10月 23日 に 東 京 私 立 学 校 教 職 員 組 合 連
合らが申し入れた採用差別に関する団体交渉に誠実に応じる
こと。
(3) 陳 謝 文 の 掲 示
第2 認定した事実
1 当事者
(1) 被 申 立 人 学 校 法 人 東 京 日 新 学 園 (以 下 「 東 京 日 新 学 園 」 と い
う 。)は 、肩 書 地 に 法 人 事 務 局 を 置 き 、後 記 3の と お り 、解 散 す
る 学 校 法 人 法 商 学 園 (以 下「 法 商 学 園 」と い う 。)の 在 校 生 を 救
う こ と を 目 的 と し て 平 成 10年 10月 1日 に 設 立 さ れ た 法 人 で あ り 、
-1-
法 商 学 園 の 運 営 し て い た 専 修 学 校 3校 を 引 き 継 い で 開 設 し た 。
(2) 申 立 人 東 京 私 立 学 校 教 職 員 組 合 連 合 は 、東 京 都 内 の 私 立 学 校
の 教 職 員 が 組 織 す る 労 働 組 合 の 連 合 体 で あ り 、本 件 申 立 時 の 加
盟 単 組 は 約 100組 合 、 組 合 員 数 は 、 約 3,000名 で あ っ た 。
(3) 申 立 人 東 京 私 立 学 校 教 職 員 組 合 連 合 専 修 各 種 学 校 支 部 (以 下 、
東 京 私 立 学 校 教 職 員 組 合 連 合 と 併 せ て 「 組 合 」 と い う 。 )は 、
東京都内の専修学校及び各種学校の教職員が組織する労働組
合 で あ り 、東 京 私 立 学 校 教 職 員 組 合 連 合 に 加 盟 し 、各 学 校 法 人
ご と に 分 会 を 組 織 し て い る 。本 件 申 立 時 の 組 合 員 数 は 、20数 名
であった。
(4) 申 立 人 X 1 (以 下 「 X 1 」 と い う 。 )は 、 組 合 の 下 部 組 織 で あ
る 法 商 学 園 分 会 の 分 会 長 で あ っ た 。ま た 、同 人 は 2年 4月 に 法 商
学 園 に 教 員 と し て 就 職 し 、コ ン ピ ュ ー タ な ど の 授 業 を 担 当 し て
い た が 、法 商 学 園 の 解 散 に 伴 い 解 雇 さ れ 、東 京 日 新 学 園 に は 採
用されなかった。
2 法商学園の売却計画と菅原学園の動向
(1) 菅 原 学 園 へ の 売 却 計 画
法 商 学 園 は 、千 代 田 区 神 田 神 保 町 に 法 人 事 務 局 を 置 き 、千 代
田区で東京商科学院専門学校、北区で東京法科学院専門学校、
新宿区で東京商科学院新宿専門学校をそれぞれ運営していた。
ま た 、法 商 学 園 は 、3校 の 10校 舎 (う ち 4校 舎 は 賃 借 )の ほ か 、図
書 の 出 版 や 通 信 講 座 の 開 設 、ア メ リ カ 合 衆 国 及 び 北 海 道 に 研 修
センターを設立するなどの事業を展開していた。
法 商 学 園 は 、平 成 6年 度 当 時 1万 名 以 上 の 学 生 が 在 籍 し て い た
が 、学 生 数 が 漸 次 減 少 し 、10年 4月 の 学 生 数 は 約 4,300名 と な り 、
上記の事業展開及び過剰な宣伝費などにより債務超過に陥っ
た 。 法 商 学 園 は 、 10年 1月 頃 に 、 学 生 寮 の 経 営 を 行 っ て い た 株
式 会 社 共 立 メ ン テ ナ ン ス (以 下「 共 立 メ ン テ ナ ン ス 」と い う 。)
に 今 後 の 経 営 に つ い て 相 談 の 上 、 3校 の 売 却 を 計 画 し た 。 法 商
学 園 が 、 売 却 先 を 探 し て い た と こ ろ 、 5月 に 仙 台 に 本 部 を 置 く
学 校 法 人 菅 原 学 園 (以 下「 菅 原 学 園 」と い う 。)か ら 検 討 す る と
の 返 答 を 得 た 。こ の た め 法 商 学 園 は 、6月 に は 3校 の 売 却 に 関 し
債 権 者 と の 交 渉 を 行 い 、 7月 に は 学 校 の 設 置 者 の 変 更 に つ い て
私 立 学 校 審 議 会 を 管 轄 し て い た 東 京 都 総 務 局 学 事 部 (当 時 、 以
下 「 学 事 部 」 と い う 。 )に 申 請 手 続 な ど を 相 談 し 、 売 却 の 準 備
を進めた。
(2) 法 商 学 園 解 散 及 び 解 雇 の 予 告 等
法 商 学 園 は 、7月 17日 に 教 職 員 会 議 を 開 き 、8月 31日 付 の 解 雇
予 告 通 知 を 配 付 す る と と も に 、法 商 学 園 代 理 人 Y 9 弁 護 士 が 今
後 の 対 応 に つ い て 、 ① 約 180億 円 の 債 務 超 過 に よ り 、 こ れ 以 上
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の 経 営 が 困 難 に な っ た た め 、 法 商 学 園 を 解 散 し 、 8月 31日 を も
っ て 全 職 員 を 解 雇 す る 、② 菅 原 学 園 が 法 商 学 園 の 事 業 を 全 面 的
に 継 承 す る 、③ 学 校 法 人 の 設 置 者 変 更 の 手 続 を 行 い 、私 立 学 校
審 議 会 の 審 議 を 受 け る 、④ 設 置 者 変 更 の 認 可 後 、広 告 費 及 び 教
育 機 器 費 を 菅 原 学 園 が 法 商 学 園 に 支 払 う 。退 職 金 は 、東 京 都 退
職 金 社 団 に 加 え 、法 商 学 園 か ら も 出 資 し 、学 校 都 合 退 職 と し て
2割 増 し を 支 払 う 、 と の 説 明 を し た 。
(3) 菅 原 学 園 の 職 員 採 用 計 画
7月 17日 の 教 職 員 会 議 に は 菅 原 学 園 の Y 1 理 事 長 代 行 ( 以 下
「 Y 1 事 長 代 行 」 と い う 。 )も 出 席 し て 、 法 商 学 園 を 引 き 継 ぐ
条件として、①法商学園の労使問題は話合いで解決すること、
② 設 置 者 変 更 の 認 可 が お り る こ と 、③ 経 営 の 継 続 に 教 職 員 の 協
力 が あ る こ と 、の 3点 を あ げ 、就 職 を 希 望 す る 者 は 7月 21日 か ら
27日 ま で に 履 歴 書 を 提 出 す る よ う に 求 め た 。
7月 27日 、教 職 員 向 け の 説 明 会 に お い て 、Y 1 理 事 長 代 行 は 、
130名 の 非 常 勤 講 師 は 引 き 続 き 雇 用 し 、教 職 員 に つ い て は 、263
名 の う ち 120名 を 専 任 か 非 常 勤 の ど ち ら か で 採 用 す る と 説 明 し
た。
8月 3日 、 菅 原 学 園 は 応 募 者 224名 全 員 を 10年 12月 ま で 臨 時 雇
用 者 と し て 雇 用 す る と 発 表 し た 。 5日 に 法 商 学 園 の 解 散 の 新 聞
報道があり、これを受けて法商学園は、教職員会議を開催し、
父 母 な ど へ の 説 明 方 法 、 認 可 の 予 定 な ど を 説 明 し た 。 6日 に 菅
原 学 園 は 、 応 募 後 の 辞 退 者 を 除 く 201名 の 臨 時 雇 用 者 名 簿 を 発
表した。
(4) 菅 原 学 園 の 撤 退
8月 中 旬 に な る と 菅 原 学 園 は 、3校 の 引 継 ぎ に 難 色 を 示 す よ う
に な っ た 。法 商 学 園 は 、25日 に 教 職 員 会 議 を 開 き 、菅 原 学 園 と
の 交 渉 が 行 き 詰 っ て い る こ と を 説 明 し た 。 26日 、 菅 原 学 園 は 、
3校 の 買 取 り を 取 り や め た こ と を 学 事 部 に 申 し 出 た 。
3 新法人東京日新学園の設立
(1) 新 法 人 設 立 事 務 局 と 業 務 遂 行 委 員 会 の 設 置
① 学 事 部 は 、 10年 10月 1日 に 設 置 者 変 更 が で き な け れ ば 、 3校
の 11年 度 の 新 入 生 の 募 集 を 停 止 さ せ る と の 方 針 を 持 っ て い た 。
8月 28日 、3校 の 廃 校 を 回 避 す る た め 、法 商 学 園 と 社 団 法 人 東 京
都 専 修 学 校 各 種 学 校 協 会 の 依 頼 を 受 け た 、共 立 メ ン テ ナ ン ス の
Y 2 社 長 (以 下「 Y 2 社 長 」と い う 。)は 、急 き ょ 新 法 人 設 立 の
準 備 を 進 め る こ と と し た 。 そ し て 、 Y 2 社 長 は 、 Y 3 (後 に 東
京 日 新 学 園 理 事 長 。以 下「 Y 3 理 事 長 」と い う 。)、Y 4 (後 に
同 理 事 兼 校 長 。以 下「 Y 4 校 長 」と い う 。)及 び Y 5 (後 に 同 理
事 。 以 下 「 Y 5 理 事 」 と い う 。 )ら と 新 法 人 の 発 起 人 会 及 び 設
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立 事 務 局 (前 記 3人 の 理 事 と 共 立 メ ン テ ナ ン ス の Y 6 経 営 企 画
部 長 で 構 成 )を 発 足 さ せ た 。 Y 3 理 事 長 と Y 5 理 事 は 、 日 本 債
券 信 用 銀 行 の 同 僚 で あ り 、ま た 、Y 2 社 長 と 知 り 合 い で あ っ た
が、Y4校長も含め、それまで法商学園との関係はなかった。
ま た 、同 日 の 夜 に 新 法 人 の 設 立 を 知 ら さ れ た 法 商 学 園 の 管 理
職 ら は 、設 立 事 務 局 の 指 示 を 受 け 、業 務 遂 行 委 員 会 を 結 成 し た 。
業 務 遂 行 委 員 会 は 、 9月 中 の 法 商 学 園 の 運 営 を 行 う と と も に 、
新 法 人 の 組 織 原 案 を 作 成 し 、各 学 科 の 採 用 人 数 を 割 り 振 り 、業
務面から必要な人員の選別と採用者名簿を作成するなどの教
職 員 の 採 用 に か か わ る 業 務 を 行 い 、設 立 事 務 局 に 報 告 を し て い
た。
② 学 事 部 は 、 3校 の 設 置 者 変 更 に つ い て 9月 28日 の 私 立 学 校 審
議 会 に 諮 る た め 、 教 員 の 就 任 承 諾 書 を 含 め た 必 要 書 類 を 9月 10
日までに提出するよう求めていた。これに間に合わせるため、
設 立 事 務 局 は 、急 ぎ 法 人 名 (東 京 日 新 学 園 )、寄 附 行 為 、学 則 及
び 役 員 等 を 決 定 す る と と も に 、教 職 員 の 採 用 手 続 を 行 っ た 。こ
れ ら の 業 務 に は 、共 立 メ ン テ ナ ン ス の 社 員 の ほ か 、業 務 遂 行 委
員会と法商学園の総務・人事担当者が当たった。
③ 8月 31日 、 教 職 員 会 議 に お い て 、 法 商 学 園 は 、 新 法 人 設 立 及
び 7月 17日 に 行 っ た 解 雇 予 告 の 1か 月 延 期 を 発 表 し 、 改 め て 翌 9
月 1日 に 職 制 を 通 し て 9月 30日 付 の 解 雇 予 告 通 知 を 配 付 し た 。
(2) 法 商 学 園 の 校 舎 売 却 等 の 覚 書
9月 7日 に 発 起 人 会 と 法 商 学 園 は 、 3校 の 売 却 に つ い て 、 学 校
教 育 の 継 続 、校 舎 の 売 買 、債 務 の 不 継 承 な ど と と も に 、第 5条 (教
職 員 の 退 職 等 )と し て 、① 法 商 学 園 は 、教 職 員 全 員 を 9月 末 日 を
も っ て 退 職 さ せ る 、② 法 商 学 園 は 、前 項 の 解 雇 に 伴 っ て 必 要 な
退職金を東京日新学園から受領する代金等の資金をもって優
先 的 に こ れ を 支 払 う 、③ 東 京 日 新 学 園 は 、法 商 学 園 の 退 職 者 の
う ち 本 件 専 門 学 校 (3校 )の 運 営 に 必 要 な 教 職 員 を 認 可 の 日 か ら
雇 用 し 、法 商 学 園 は こ れ に 協 力 す る 、④ 前 項 に よ っ て 雇 用 す る
教 職 員 の 勤 務 条 件 は 、東 京 日 新 学 園 の 就 業 規 則 等 に よ る 、と の
内容を含む覚書を取り交わした。
(3) 法 商 学 園 の 解 散 と 東 京 日 新 学 園 の 設 立
① 9月 28日 の 私 立 学 校 審 議 会 に お い て 、 東 京 日 新 学 園 の 設 立 は 、
ア 現に法商学園に在籍する生徒の教育に一切の支障をきた
さ な い こ と 、イ 現 に 法 商 学 園 に 在 籍 す る 生 徒 に 対 す る 教 育 は 、
こ の 生 徒 が 修 業 す る 期 間 に 限 る こ と 。そ の た め に 自 己 所 有 予 定
の 2校 舎 の ほ か 賃 借 予 定 の 6校 舎 を 使 用 す る こ と 、ウ 新 法 人 と
し て の 生 徒 受 入 れ は 11年 4月 か ら と し 、自 己 所 有 す る 2校 舎 の 定
員 に 限 る こ と 、 の 3点 を 指 導 す る こ と と し て 了 承 さ れ 、 「 学 校
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法 人 の 適 正 な 管 理 運 営 に つ い て (通 知 )」と 題 す る 文 書 指 導 が 付
き 、 10月 1日 付 で 認 可 さ れ た 。 文 書 指 導 の 内 容 は 、 ア 学 校 法
人 の 運 営 に つ い て は 、学 校 教 育 法 、私 立 学 校 法 等 関 係 法 令 及 び
寄附行為を遵守して、適正かつ健全な運営に努めること、イ
設 置 す る 学 校 の 施 設・設 備 及 び 教 職 員 体 制 に つ い て 、内 容 の 充
実 に 意 を 配 り 円 滑 な 学 校 運 営 に 努 め る こ と 、ウ 特 に 、在 籍 す
る 生 徒 の 教 育 に つ い て は 、教 育 条 件 を 堅 持 し 、修 学 の 責 務 遂 行
に 万 全 を 期 す こ と 、エ 生 徒 の 募 集 に つ い て は 、関 係 規 定 を 遵
守 し 、過 剰 な 受 入 れ は 厳 に 行 わ な い こ と 、オ 会 計 処 理 に 当 た
っ て は 、学 校 法 人 会 計 基 準 に 従 っ て 適 正 に 処 理 し 、絶 え ず 一 切
の財産を正確に把握して、健全な財務管理を行うこと。また、
内 部 監 査 機 能 を 十 分 活 用 し て 、 経 理 の 適 正 を 期 す こ と 、 の 5点
であった。
② 9月 30日 、 法 商 学 園 は 全 教 職 員 を 解 雇 し 、 10月 1日 に 解 散 し
て清算法人となり、同日、東京日新学園が発足した。
東 京 日 新 学 園 は 、法 商 学 園 が 所 有 し て い た 6校 舎 の う ち 2校 舎
を買い取り、共立メンテナンスとその関連会社が買い取った3
校 舎 を 賃 借 し 、さ ら に 、法 商 学 園 が 賃 借 し て い た 4校 舎 の う ち 3
校 舎 を 賃 借 し た 。 ま た 、 教 育 機 器 (机 や コ ン ピ ュ ー タ な ど )は 、
必 要 な も の を 東 京 日 新 学 園 が リ ー ス 会 社 か ら 買 い 取 り 、引 き 続
き 使 用 す る こ と に よ っ て 、法 商 学 園 が 行 っ て い た 授 業 の 内 容 を
変更することなく継続した。
③ 東京日新学園と法商学園は、法人事務局は別であり、理事
に 重 複 す る 者 は い な い が 、 法 商 学 園 の 管 理 職 2名 が 東 京 日 新 学
園 の 理 事 に 就 任 し て お り 、 同 様 に 、 評 議 員 は 15名 中 1名 、 管 理
職 は 48名 中 15名 が 同 職 に 就 い た 。
な お 、Y 2 社 長 は 、東 京 日 新 学 園 の 理 事 な ど の 役 職 に は 就 い
ていないが、同学園の経営会議に出席していた。
4 教職員の東京日新学園への採用
(1) 東 京 日 新 学 園 の 採 用 手 続
設 立 事 務 局 は 、10年 9月 4日 の 教 職 員 会 議 で 、新 法 人 に ふ さ わ
しい教職員像は、①学生を守っていく情熱を持っていること、
② 自 分 の 持 ち 場 で 十 二 分 に 自 己 責 任 を 果 た す こ と 、③「 学 園 が
何 を し て く れ る か 」で は な く 、「 学 園 、学 生 の た め に 自 分 が 何
を で き る か 」を 考 え ら れ る こ と 、④ ガ ラ ス 張 り で 風 通 し の 良 い
学 園 に す る こ と 、⑤ 議 論 は す る が 、一 旦 決 め た ら 一 丸 と な っ て
邁進すること、であると発表した。
し か し 、設 立 事 務 局 は 、専 修 学 校 設 置 基 準 な ど を 参 考 に 法 商
学 園 の 教 職 員 か ら 教 員 120名 と 職 員 30名 を 採 用 す る こ と と し て
い た が 、こ れ を 公 表 せ ず 、ま た 、東 京 日 新 学 園 の 雇 用 条 件 の 説
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明 も し な い ま ま 、採 用 希 望 者 は そ の 日 の う ち に 履 歴 書 を 提 出 す
る よ う 指 示 し た 。そ し て 、履 歴 書 に は 、住 所 、特 技 、職 務 経 験
な ど の ほ か 、 希 望 区 分 と し て 教 育 指 導 部 門 (教 員 ・ 契 約 教 員 ・
非 常 勤 教 員 )、 サ ポ ー ト 部 門 (職 員 ・ 契 約 職 員 ・ ア ル バ イ ト )の
選 択 及 び「 東 京 日 新 学 園 で 何 が や り た い か 」「 ど う し て そ う 考
え る の か 」 「 具 体 的 方 法 」 の 3点 を そ れ ぞ れ 5な い し 6行 で 記 入
す る 項 目 が あ っ た が 、特 に 項 目 の 説 明 や 書 き 方 の 注 意 は な さ れ
なかった。
ま た 、 菅 原 学 園 に 採 用 の 申 入 れ を せ ず 、 8月 末 に 退 職 す る 予
定 で あ っ た 28名 に つ い て も 、採 用 希 望 者 は 履 歴 書 を 提 出 で き る
よ う に し た た め 、 4名 が 応 募 し た が 、 菅 原 学 園 の 撤 退 な ど の 状
況 に よ り 自 主 退 職 し た 者 が 出 た こ と も あ り 、履 歴 書 を 提 出 し た
採 用 希 望 者 は 、 183名 で あ っ た 。
(2) 設 立 事 務 局 に よ る 面 接
採 用 希 望 者 に は 、 9月 5日 か ら 8日 ま で の 間 に 、 東 京 日 新 学 園
の 理 事 に 就 任 す る こ と が 予 定 さ れ て い る Y 3 理 事 長 、Y 4 校 長
及 び Y 5 理 事 の 3名 が 、 採 用 希 望 者 3名 か ら 5名 の グ ル ー プ 毎 に
20分 か ら 30分 程 度 の 面 接 を 行 っ た 。面 接 は 、履 歴 書 に 関 す る 質
問 の ほ か 、法 商 学 園 は 就 職 指 導 や 教 育 は 良 く や っ て い た が 学 生
の 募 集 に つ い て は 問 題 が あ っ た こ と を 説 明 し た 上 で 、学 生 の 募
集について採用希望者の考えを聞くという進行で行われた。
そ し て 、 3名 の 面 接 者 は 、 面 接 と 履 歴 書 の 記 載 か ら 、 そ れ ぞ
れ 1 (採 用 し た い )、2 (で き れ ば 採 用 し た く な い )、3 (絶 対
採 用 し た く な い )の 3段 階 の 評 価 に 加 え 、必 要 な 場 合 に は プ ラ ス
と マ イ ナ ス (各 0.5換 算 )に よ る 補 助 評 価 を 加 味 し て 採 点 し た 。
こ の 結 果 は 、設 立 事 務 局 の 指 示 を 受 け た 業 務 遂 行 委 員 会 で 取 り
ま と め ら れ た 。そ し て 、同 委 員 会 は 、情 報 系 、経 営 系 、法 律 系
の 各 学 科 に 採 用 予 定 の 教 員 120名 を 、 実 習 数 や 来 年 度 の 入 学 見
込 み を 考 慮 し て 配 分 し 、並 行 し て 作 成 し て い た 組 織 図 に 落 と し
込 ん だ 上 で 、採 用 候 補 者 名 簿 を 作 成 し た 。こ の 名 簿 作 成 に お い
て は 、面 接 の 評 価 の ほ か 業 務 遂 行 委 員 会 で 人 選 を 行 う こ と も あ
った。
な お 、設 立 事 務 局 は 、時 間 が な い こ と と 、応 募 者 は 全 員 が 実
務経験者であることから、筆記試験は実施しなかった。
(3) 採 用 候 補 者 名 簿 の 作 成
設 立 事 務 局 は 、面 接 の 終 了 し た 9月 8日 の 夜 、ほ ぼ 業 務 遂 行 委
員 会 の 作 成 し た 採 用 候 補 者 名 簿 ど お り に 154名 の 採 用 者 を 内 定
した。
翌 9日 、 採 用 内 定 者 に 対 し 、 採 用 内 定 通 知 、 資 格 ・ 給 与 等 の
通 知 及 び 組 織 図 が 手 渡 さ れ た が 、準 備 が 整 わ ず 、所 属 部 署 や 給
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料 額 は そ の 場 で 書 込 ん で 渡 し た 。資 格 及 び 給 与 に つ い て は 、各
人 の 職 位 給 、資 格 給 、年 功 給 、時 間 外 手 当 (20時 間 )相 当 分 及 び
調 整 を 合 計 し た 年 俸 金 額 が 記 入 さ れ て い た も の の 、そ の 内 訳 や
その他の労働条件の記載はなく、説明もなかった。
同 日 、不 採 用 と な っ た 教 員 13名 を 含 む 29名 に は 、不 採 用 通 知
が 手 渡 さ れ た 。組 合 員 は 、X 1 、X 2 (以 下「 X 2 」と い う 。)
及 び X 3 (以 下 「 X 3 」 と い う 。 )の 3名 が 不 採 用 と な っ た が 、
X 4 (以 下 「 X 4 」 と い う 。 )は 採 用 さ れ た 。
な お 、 採 用 予 定 者 の う ち 教 員 3名 、 職 員 10名 が 採 用 を 辞 退 し
たが、東京日新学園は、補充採用を行わなかった。さらに、1
年 契 約 の 非 常 勤 講 師 に つ い て は 、全 員 が 雇 用 さ れ た が 、契 約 手
続 は 10月 16日 ま で ず れ 込 ん だ 。
5 組合員の採否と面接の内容
(1) X 1 の 教 員 歴
X 1 は 、採 用 さ れ た 平 成 2年 か ら 5年 ま で は 東 京 商 科 学 院 専 門
学 校 情 報 経 理 学 科 、 6年 に は 東 京 法 科 学 院 専 門 学 校 医 療 秘 書 学
科 、7年 か ら 9年 ま で は 東 京 商 科 学 院 専 門 学 校 公 務 員 コ ー ス 、10
年 に は 同 校 編 集 出 版 ビ ジ ネ ス 学 科 に 所 属 し 、 1年 生 の コ ン ピ ュ
ー タ に 関 す る 資 格 試 験 の 授 業 を 週 12コ マ 担 当 し て い た 。
X 1 が 担 当 し た 資 格 試 験 は 、 6月 に 実 施 さ れ た 全 国 経 理 学 校
協 会 情 報 処 理 能 力 検 定 試 験 (3級 )と 専 門 学 校 教 育 振 興 会 情 報 処
理 活 用 能 力 検 定 (3級 )及 び 10月 18日 に 実 施 さ れ る 国 家 試 験 の 初
級システムアドミニストレータ試験であった。
な お 、初 級 シ ス テ ム ア ド ミ ニ ス ト レ ー タ 試 験 に つ い て は 、X
1 が 不 採 用 と な っ た た め 、試 験 指 導 の 経 験 の あ る 非 常 勤 講 師 が
試 験 ま で の 授 業 を 担 当 し た 。編 集 出 版 ジ ネ ス 学 科 は 11年 以 降 新
入生の募集を行わなかった。
そ し て 、 法 商 学 園 で は 、 お お む ね 採 用 後 3年 で 主 任 に 昇 進 し
て い た が 、 X 1 は 、 採 用 8年 後 の 10年 に な っ て も 主 任 に 昇 進 し
ていなかった。
ま た 、X 1 は 、2年 か ら 6年 ま で は 学 生 の 出 席 な ど の 指 導 と 就
職 の 個 別 指 導 を 行 う ク ラ ス 担 任 に 就 い て い た が 、 7年 以 降 は ク
ラ ス 担 任 に は 就 い て い な か っ た 。 そ し て 、 10年 8月 に な っ て 5
名 の 編 集 出 版 ビ ジ ネ ス 学 科 所 属 教 員 の う ち 、 2年 生 の ク ラ ス 担
任 を 含 む 、3名 が 同 月 末 で 退 職 す る こ と と な っ た た め 、X 1 は 、
2年 生 の ク ラ ス 担 任 に 就 い た が 、 X 1 の 不 採 用 に よ り 再 度 、 ク
ラス担任が変更されることとなった。
な お 、10年 に は 法 商 学 園 全 体 で 92の ク ラ ス が あ っ た が 、ク ラ
ス担任で東京日新学園に採用を希望しながら不採用となった
者 は 、 X 1 と も う 1名 の み で あ っ た 。
-7-
(2) X 1 の 組 合 活 動
① X 1 は 、 7年 5月 に 組 合 に 加 入 し 、 専 修 各 種 学 校 支 部 の 副 支
部 長 な ど の 役 職 に つ い て い た が 、法 商 学 園 に お い て 具 体 的 な 組
合 活 動 は 行 っ て い な か っ た 。し か し 、法 商 学 園 の 経 営 の 先 行 き
に 不 安 を 覚 え 、 翌 8年 に 組 合 に 加 入 し た X 2 と と も に 法 商 学 園
の 経 営 状 況 の 調 査 を 行 っ て い た 。 そ し て 、 9年 に は 一 時 金 の 減
額 や 不 支 給 の う わ さ が 流 れ た こ と を 契 機 に 、X 1 は 、一 部 の 教
員に組合の結成を呼びかけたことがあった。
② 10年 7月 17日 の 法 商 学 園 の 解 散 、 全 員 解 雇 の 発 表 を 受 け て 、
X 1 と X 2 が 、24日 に 法 商 学 園 が 解 散 手 続 を 進 め て い る こ と を
確 認 す る た め に 学 事 部 を 訪 れ 、学 事 部 は 教 職 員 の 雇 用 に つ い て
指 導 す る 中 で こ の こ と を 法 商 学 園 に 伝 え た た め 、法 商 学 園 は 同
人 ら の 組 合 活 動 を 知 る こ と と な っ た 。そ し て 、8月 6日 に X 1 を
中 心 に 法 商 学 園 分 会 が 結 成 さ れ 、同 分 会 は 、組 合 と 連 名 で 法 商
学園に財務状況の公開、雇用継続の働きかけ、退職金の支給、
就 職 の あ っ せ ん 及 び 在 校 生・父 兄 に 対 す る 説 明 会 の 開 催 を 議 題
と す る 団 体 交 渉 を 申 し 入 れ る と 同 時 に 公 然 化 し た 。こ の 申 入 書
に は X 1 の ほ か X 2 及 び X 3 の 名 前 も 記 載 さ れ て い た が 、X 4
は、未だ組合に加入していなかった。
8月 12日 、 「 経 営 破 綻 の 法 商 学 園 教 職 員 が 労 組 結 成 」 と 題
す る 記 事 が 新 聞 に 掲 載 さ れ 、X 1 の コ メ ン ト と 団 体 交 渉 の 申 入
れが紹介された。
8月 19日 、法 商 学 園 は 、団 体 交 渉 開 催 日 を 9月 9日 と 回 答 し た 。
翌 20日 、 新 た に 組 合 に 加 入 し た X 4 を 含 む 法 商 学 園 分 会 員 は 、
理 事 長 に 早 期 の 団 体 交 渉 の 開 催 を 要 求 し に 行 っ た が 、理 事 長 室
に 入 れ ず 、別 室 で 菅 原 学 園 の Y 1 理 事 長 代 行 に 団 体 交 渉 の 早 期
開催を要求した。
③ 8月 21日 、 法 商 学 園 の Y 7 部 長 (以 下 「 Y 7 部 長 」 と い う 。
後 に 業 務 遂 行 委 員 会 委 員 及 び 東 京 日 新 学 園 理 事 )は 、 X 1 に 対
し 、個 人 的 な 話 で あ る と 断 っ て 、「 菅 原 学 園 が 、組 合 が あ る こ
と を 問 題 に し て い る 。組 合 を や め て 私 と 仙 台 の 菅 原 学 園 の 理 事
長 に 会 い に 行 こ う 。学 園 に は 組 合 は な く な り ま し た と 説 明 し に
行こう。」などと言ったが、X1は、これを断った。
(3) X 1 の 不 採 用
編 集 出 版 ビ ジ ネ ス 学 科 を 含 む 情 報 系 学 科 の 採 用 希 望 者 は 35
名 で あ っ た が 、面 接 が 行 わ れ て い た 頃 、業 務 遂 行 委 員 会 で 情 報
系 学 科 の 採 用 者 名 簿 の 作 成 を 担 当 し た Y 8 課 長 (以 下 「 Y 8 課
長 」 と い う 。 )は 、 他 の 学 科 の 採 用 者 名 簿 の 作 成 担 当 者 と 協 議
し た 結 果 、 情 報 系 学 科 の 採 用 予 定 数 を 32名 と し た 。
X 1 は 、菅 原 学 園 の 募 集 に 応 募 し 、臨 時 雇 用 者 名 簿 に 登 載 さ
-8-
れ て お り 、9月 4日 の 東 京 日 新 学 園 の 募 集 に も 履 歴 書 を 提 出 し て
応 募 し た 。 X 1 の 面 接 は 同 月 8日 に 行 わ れ 、 そ こ で 同 人 は 、 学
生 の 募 集 に つ い て「 学 園 の 今 回 の 事 態 に つ い て 、学 園 と し て 父
母や高校の先生向けに正式な場を作って説明会をすべきであ
る 。」「 コ ン ピ ュ ー タ の 学 科 は 教 員 が 手 一 杯 な の で 、教 員 は 教
育に専念するべきだ。」などと言った。
面 接 後 、Y 3 理 事 長 は 、X 1 に つ い て 、「 暗 い 。自 分 で こ う
し た い と い う 積 極 的 な 態 度 が な く 、学 園 が や れ ば い い と い う 第
三 者 的 な 考 え 方 を す る 人 。」と 評 し 、評 価「 2」と し た 。他 の 2
名 の 面 接 者 の 評 価 は「 1.5」と「 3」で あ り 、X 1 の 面 接 の 評 価
は 、 合 計 「 6.5」 と な っ た 。 情 報 系 学 科 の 採 用 希 望 者 は 35名 で
あ っ た が 、面 接 評 価 が「 3.0」の 者 は 15名 、
「 3.5」は 6名 、
「 4.0」
は 9名 、「 4.5」は 3名 、「 5.0」は 1名 で 、X 1 の 評 価「 6.5」は
最 下 位 で あ っ た 。Y 8 課 長 は 、授 業 に 支 障 が 出 な い か を 考 慮 し
た上で、X1を採用候補者名簿に登載しなかった。そして、9
月 8日 に 設 立 事 務 局 は 、 業 務 遂 行 委 員 会 の 作 成 し た 採 用 候 補 者
名 簿 を 承 認 し 、結 局 、東 京 日 新 学 園 は 、X 1 を 採 用 し な か っ た 。
(4) 他 の 組 合 員 の 採 否
① X3の不採用
X 3 は 、 4年 に 法 商 学 園 に 採 用 さ れ 、 東 京 商 科 学 院 専 門 学 校
及び東京商科学院新宿専門学校でコンピュータに関する授業
を 担 当 し て い た 。そ し て 、10年 に は X 3 は 、東 京 商 科 学 院 専 門
学 校 マ ル チ メ デ ィ ア ビ ジ ネ ス 学 科 に 属 し て い た が 、 7月 17日 に
法 商 学 園 の 解 散 を 聞 き 、当 時 の 上 司 で あ っ た Y 8 課 長 を 呼 び 出
し 、「 こ の よ う に ご た ご た し て い る 学 校 で は ま と も な 仕 事 が で
き な い か ら 、す ぐ 就 職 活 動 を し ま す 。」と 言 っ た 。Y 8 課 長 は 、
X 3 が 8月 に や め る と 思 い 、 そ の 後 任 を 手 配 し た 。 そ し て X 3
は 、菅 原 学 園 の 募 集 に 応 じ な か っ た の で 、8月 6日 の 臨 時 雇 用 者
名簿に登載されなかった。
そ の 後 、X 3 は 、X 1 か ら「 や め な い で 一 緒 に 学 校 を 良 く し
て い こ う 。」と 勧 誘 さ れ 組 合 に 加 入 し 、前 述 の と お り 団 体 交 渉
申入書に名前を記載し、理事長への要求や団体交渉に参加し、
東京日新学園の募集に応募した。
面 接 の 結 果 、X 3 は 採 用 さ れ る レ ベ ル の 評 価 で あ っ た が 、Y
8 課 長 は 、X 3 の 後 任 を 手 配 し た こ と 及 び 自 分 か ら や め る こ と
を 言 い 出 し 、学 生 や 学 校 の こ と を ま っ た く 考 え な い 自 分 勝 手 な
人 だ と 評 価 し て い た こ と か ら 、X 3 を 採 用 候 補 者 名 簿 に 登 載 し
なかった。そして、東京日新学園は、X3を採用しなかった。
② X2の不採用
X2については双方とも主張、立証をしていない。
-9-
③
X4の採用
X 4 は 、 8年 に 法 商 学 園 に 採 用 さ れ 、 東 京 商 科 学 院 専 門 学 校
マルチメディアビジネス学科において卒業研究及び企業論と
クラス担任をしていた。
X 4 は 、 10年 8月 12日 に 組 合 に 加 入 届 を 提 出 し た が 、 そ の 後
も 、X 4 の 名 前 が 団 体 交 渉 申 入 書 等 に 出 る こ と は な か っ た 。し
か し 、 X 4 は 、 8月 20日 の 理 事 長 へ の 要 求 に 同 行 し て お り 、 ま
た 、28日 の 法 商 学 園 と の 団 体 交 渉 に お い て 、組 合 員 と し て 紹 介
さ れ る こ と は な か っ た も の の 、 会 場 の 組 合 側 の 席 に お り 、 29
日 に 配 付 し た 法 商 学 園 組 合 ニ ュ ー ス 第 3号 に は 、 X 1 ら 組 合 員
との写真が掲載されるなどの組合活動を行っていた。
X 4 は 、菅 原 学 園 の 臨 時 雇 用 者 名 簿 に も 登 載 さ れ て お り 、東
京 日 新 学 園 の 採 用 面 接 で 学 生 の 募 集 に つ い て「 在 校 生 に 働 き か
け 、そ の 学 生 か ら 母 校 や 弟 妹 な ど に 伝 わ る こ と に よ り 新 入 生 を
確 保 す る の が 一 番 良 い の で は な い か 。」「 わ れ わ れ 教 員 が 高 校
の 先 生 を 訪 問 し て 話 を し た い 。」な ど と い い 、Y 3 理 事 長 の 評
価 は 「 1」 で あ っ た 。 そ し て 、 X 4 は 採 用 候 補 者 名 簿 に 登 載 さ
れ、東京日新学園に採用された。
6 法商学園との団体交渉
(1) 第 1回 団 体 交 渉
組 合 の 早 期 開 催 の 要 求 に 応 え て 、組 合 と 法 商 学 園 と の 団 体 交
渉 は 、 Y 7 部 長 ら が 出 席 し て 、 10年 8月 28日 午 前 10時 か ら 12時
ま で の 間 に 行 わ れ た 。そ し て 、「 ① 法 商 学 園 が 教 職 員 の 雇 用 の
継 続 に 努 力 す る こ と 、②『 菅 原 学 園 臨 時 雇 用 者 名 簿 』登 載 以 外
の 教 職 員 の う ち 希 望 者 に は 3月 末 ま で の 雇 用 を 継 続 す る よ う 新
法 人 に 働 き か け る 」と の 確 認 書 が 交 わ さ れ 、次 回 の 団 体 交 渉 は
9月 10日 頃 と 決 定 し た 。
(2) そ の 後 の 団 体 交 渉
組 合 と 法 商 学 園 と の 団 体 交 渉 は 、 9月 18日 、 25日 、 30日 に 開
催 さ れ 、組 合 は 、互 助 会 費 の 残 金 の 返 還 、財 務 状 況 の 公 開 等 を
要 求 し た が 、法 商 学 園 は 、互 助 会 費 の 返 還 に つ い て は 応 じ る 姿
勢を見せたものの、財務状況を公開しなかった。
10月 2日 、 組 合 は 、 清 算 法 人 と な っ た 法 商 学 園 に 対 し 、 ① 財
務 諸 表 の 提 示 、② 同 窓 会 費 の 決 算 報 告 、③ 互 助 会 費 の 返 還 、④
解雇予告に関する見解、⑤退職準備金の支払いを議題として、
団 体 交 渉 を 申 し 入 れ た が 、法 商 学 園 は こ れ に 応 じ な か っ た 。組
合 は 、23日 に 、議 題 に 東 京 日 新 学 園 へ の 採 用 の 働 き か け を 加 え 、
再 度 団 体 交 渉 を 申 し 入 れ た が 、法 商 学 園 は こ れ に も 応 じ な か っ
た。
7 東京日新学園との団体交渉
- 10 -
(1)
日新学園分会結成と団体交渉申入れに対する対応
10年 10月 1日 、X 4 を 分 会 長 と し て 日 新 学 園 分 会 が 設 立 さ れ 、
5日 に 同 分 会 と 組 合 と は 連 名 で 、 東 京 日 新 学 園 に 対 し て 、 ① 総
合 職 と 専 門 職 の 職 務 内 容 と 待 遇 を 明 ら か に す る こ と 、② 賃 金 体
系 を 明 ら か に す る こ と 、③ 残 業 手 当 を 支 給 す る こ と 、④ 有 給 休
暇 を 20日 支 給 す る こ と 、⑤ 春 休 み 、夏 休 み 、冬 休 み の 特 別 休 暇
を 支 給 す る こ と 、⑥ 法 商 学 園 か ら 引 継 ぐ 同 窓 会 の 会 計 や 規 約 を
明 ら か に す る こ と 、⑦ 教 職 員 の 専 任 率 を 上 げ る こ と 、⑧ 東 京 日
新 学 園 の 採 用 に つ い て 、非 常 勤 講 師 は 面 接 も せ ず 法 商 学 園 か ら
継 続 雇 用 と な り 、専 任 教 職 員 に つ い て は 選 別 を 行 っ た 理 由 を 明
らかにすることを議題とする団体交渉の申入れを行った。翌6
日 、X 4 は Y 5 理 事 に「 学 園 が こ う い う 時 期 な の で 、団 体 交 渉
の 申 入 れ は も う 少 し 時 期 を 待 て な い の か 。」と 言 わ れ た が 、
「就
業 規 則 や 賃 金 の 詳 し い こ と が わ か っ て い な い 。こ う い う 時 期 だ
か ら こ そ 逆 に 団 体 交 渉 で 話 を 進 め て い く べ き だ 。」と 返 答 し た 。
組 合 の 申 入 れ に 対 し て 、 10 月 15 日 に 東 京 日 新 学 園 か ら 、 23
日 ま で に 団 体 交 渉 を 行 う と の 返 答 が あ っ た も の の 、団 体 交 渉 は
開催されなかった。
(2) 法 商 学 園 分 会 を 含 む 団 体 交 渉 申 入 れ に 対 す る 対 応
組 合 は 、10月 23日 、申 入 書 に 法 商 学 園 分 会 も 加 え 、議 題 に 組
合 員 3名 を 採 用 し な か っ た 理 由 を 明 確 に す る こ と を 追 加 し 、 再
度 東 京 日 新 学 園 に 団 体 交 渉 の 申 入 れ を 行 っ た 。26日 、Y 2 社 長
は 、X 4 を 呼 び「 な ぜ 学 園 が 厳 し い 状 況 に あ る 時 に 、組 合 を 立
ち 上 げ 団 体 交 渉 の 申 入 れ な ど を す る の か 。 来 年 3月 く ら い ま で
待 て な い の か 。行 動 を 慎 み た ま え 。」「 私 が 経 営 者 だ っ た ら 君
は ク ビ だ よ 。」な ど と 言 っ た 。そ し て 東 京 日 新 学 園 は 、27日 の
団 体 交 渉 の 開 催 を 返 答 し た が 、申 入 書 に 法 商 学 園 分 会 の X 1 の
名 前 が あ る こ と を 理 由 に 団 体 交 渉 を 行 わ な か っ た 。そ の 後 、組
合 は 、 10月 28日 、 11月 7日 に 団 体 交 渉 を 申 し 入 れ た が 、 東 京 日
新学園はこれにも応じなかった。
8 本件不当労働行為救済申立てとその後の労使関係
(1) 本 件 不 当 労 働 行 為 救 済 申 立 て
組 合 は 、10年 11月 13日 法 商 学 園 と 東 京 日 新 学 園 を 相 手 と し て
当 委 員 会 に あ っ せ ん を 申 請 し た (平 成 10年 都 委 争 第 149号 )。 こ
れ に 対 し 法 商 学 園 は 拒 否 し た も の の 、東 京 日 新 学 園 は あ っ せ ん
に 応 じ 、あ っ せ ん の 結 果 、11月 27日 及 び 12月 16日 に 団 体 交 渉 が
開 催 さ れ た 。 し か し 、 東 京 日 新 学 園 は 、 組 合 員 3名 の 不 採 用 に
関 す る 交 渉 に は 応 じ な か っ た 。組 合 及 び X 1 は 、11年 1月 18日 、
当委員会に本件救済申立てを行った。
な お 、 11年 1月 頃 に 日 新 学 園 分 会 は 、 法 商 学 園 分 会 と 合 併 し
- 11 -
て、東京商科法科学院分会となった。
(2) 本 件 救 済 申 立 て 後 の 経 過
① 法商学園は解散後、団体交渉に応じてはいないものの、互
助 会 費 に つ い て は 、 11年 11月 2日 付 で 法 商 学 園 の 元 職 員 に 対 し
返金を通知し、申出に応じて支払いを行った。
② 東 京 日 新 学 園 は 、 本 件 救 済 申 立 て 後 も 、 組 合 員 3名 の 不 採 用
に 関 す る 交 渉 に 応 じ て い な い 。 そ し て 、 東 京 日 新 学 園 は 、 12
年 2月 9日 、X 1 と の 雇 用 関 係 不 存 在 等 確 認 訴 訟 を 、浦 和 地 方 裁
判 所 に 提 起 し た (現 さ い た ま 地 方 裁 判 所 係 属 中 )。
③ ま た 、 東 京 日 新 学 園 は 、 10年 度 中 に 法 商 学 園 の 教 職 員 で は
な か っ た 2名 を 採 用 し 、11年 4月 に は 法 商 学 園 で コ ン ピ ュ ー タ を
担 当 し て い て 10年 8月 に 退 職 し た 教 員 を 1名 採 用 し た 。
そ し て 、10年 度 末 に 東 京 商 科 学 院 新 宿 専 門 学 校 は 廃 校 と な り 、
11 年 度 に は 、 東 京 日 新 学 園 の 新 入 生 は 約 600 名 で 、 学 生 は 約
2,100名 、教 職 員 は 110名 と な っ た 。12年 度 に は 、学 生 は 約 1,400
名 、 教 職 員 約 80名 と な っ た 。
第3 判断
1 X1の不採用について
(1) 当 事 者 の 主 張
① 申立人らの主張
ア 本 件 学 校 承 継 は 、新 旧 両 法 人 間 で 行 わ れ た 営 業 譲 渡 類 似 の
契 約 で あ り 、東 京 日 新 学 園 は 原 則 と し て 法 商 学 園 の 雇 用 関 係
を承継する義務を負っていたし、仮にそうでないとしても、
東 京 日 新 学 園 は 、法 商 学 園 と の 間 で 法 商 学 園 の 雇 用 関 係 を 原
則として引き継ぐ旨の合意を取り交わしていた。
東 京 日 新 学 園 の カ リ キ ュ ラ ム・授 業 は 法 商 学 園 と ま っ た く
同 一 で あ り 、法 商 学 園 当 時 の 主 要 な 校 地・校 舎 は 、東 京 日 新
学園とその経営母体とされている共立メンテナンス及びそ
の 関 連 会 社 が 取 得 し て お り 、什 器 備 品 に つ い て も 、全 て を そ
の ま ま 使 用 し 、正 規 採 用 の 教 職 員 に つ い て 、公 募 を せ ず 、全
員 を 法 商 学 園 の 在 職 者 か ら 採 用 す る な ど 、新 旧 両 法 人 は 、実
質 的 に 同 一 で あ り 、東 京 日 新 学 園 が 法 商 学 園 の 一 部 の 教 職 員
の 採 用 を 拒 否 す る こ と は 、雇 用 関 係 の 当 然 の 承 継 を 否 定 す る
ものとして、解雇に等しい。
イ X 1 の 不 採 用 は 、法 商 学 園 の 管 理 職 に よ っ て 構 成 さ れ た 業
務 遂 行 委 員 会 が 面 接 の 結 果 い か ん に よ ら ず 、同 人 を 当 初 よ り
採 用 し な い と の 方 針 の も と に 決 定 し た も の で あ る 。X 1 の 面
接 に お け る 回 答 を み て も 、悪 い 評 価 と な る べ き も の で は な く 、
東京日新学園のX1の面接結果が情報系学科で最下位であ
ったとの主張には大いに疑問がある。
- 12 -
そ し て 、X 1 が 不 採 用 と な っ た た め 、ク ラ ス 担 任 が 変 更 さ
れることになり、コンピュータ科目の担当者に欠員が生じ、
平 成 10年 度 に 同 人 が 担 当 し た 3つ の 試 験 対 策 授 業 も 継 続 が で
きないなど、東京日新学園の業務にも支障がおきている。
ウ 他 の 組 合 員 に つ い て も 、X 3 は 、Y 8 課 長 に 対 し て 学 校 に
残 ら な い と い う 意 思 表 示 を し た こ と が あ っ た が 、こ れ だ け を
捉えて不採用とするのは、合理的な判断とは到底いい難い。
ま た 、X 4 は 、団 体 交 渉 申 入 書 等 の 文 書 に 組 合 員 と し て 名 前
を 載 せ た こ と も な い し 、前 面 に 出 て 組 合 活 動 を す る と い う こ
と も 一 切 な く 、業 務 遂 行 委 員 会 が X 4 を 組 合 員 と は 認 識 し て
い な か っ た た め 、組 合 員 で た だ 一 人 東 京 日 新 学 園 に 採 用 さ れ
たものである。
エ 東 京 日 新 学 園 の 組 合 嫌 悪 体 質 は 、Y 2 社 長 が 、X 4 に「 な
ぜ 学 園 が 厳 し い 状 況 に あ る 時 に 、組 合 を 立 ち 上 げ 団 体 交 渉 の
申 入 れ な ど を す る の か 。 来 年 3月 く ら い ま で 待 て な い の か 。
行 動 を 慎 み た ま え 。」、
「 私 が 経 営 者 だ っ た ら 君 は ク ビ だ よ 。」
と 言 っ た こ と 、ま た 、組 合 の 申 し 入 れ た 団 体 交 渉 を 拒 否 し た
ことなどから明らかである。
オ 結 局 、3名 の 組 合 員 に は 、不 採 用 と な る 合 理 的 理 由 は な く 、
組 合 員 の 不 採 用 は 、組 合 の 法 商 学 園 破 綻 や 教 職 員 リ ス ト ラ の
責 任 追 及 を お そ れ た 法 商 学 園 の 管 理 職 が 部 下 を 選 別 し 、組 合
敵視体質を有する東京日新学園がこれを了承したことによ
る 労 働 組 合 法 第 7条 第 1号 及 び 第 3号 に 該 当 す る 不 当 労 働 行 為
である。
② 被申立人の主張
東 京 日 新 学 園 は 、 破 綻 し た 法 商 学 園 の 4,300名 の 学 生 を 救 う
ことを日的に社団法人東京都専修学校各種学校協会らの依頼
に よ り 設 立 さ れ た 法 人 で あ り 、法 商 学 園 と は 実 質 的 同 一 性 を 有
し な い 。ま た 、新 旧 法 人 間 に は 教 職 員 を 承 継 す る と の 合 意 は な
く、東京日新学園は新規に採用を行ったものである。
そ し て 、東 京 日 新 学 園 が X 1 を 採 用 し な か っ た の は 、同 人 の
採用面接の結果が情報系学科で一番悪かったこと及び同人を
不採用にしても格別不都合はなかったことによる。
し た が っ て 、X 1 の 不 採 用 は 不 当 労 働 行 為 で は な く 、救 済 申
立ては棄却されるべきである。
(2) 当 委 員 会 の 判 断
① 採用選考におけるX1の評価について
ア 東 京 日 新 学 園 は 、破 綻 し た 法 商 学 園 の 在 校 生 を 救 う こ と を
設 立 目 的 と し 、法 商 学 園 の 学 生 を 全 て 引 継 ぎ 、使 用 す る 校 舎
や 教 育 機 器 が 同 一 で あ っ た り 、管 理 職 の 一 部 が 同 一 人 で あ っ
- 13 -
た り し て い る (第 2.3(3)② ③ )。こ れ ら は 、東 京 日 新 学 園 の 設
立目的である在校生が支障なく修学するために必要かつ合
理的な措置ということができる。そして、東京日新学園は、
新 法 人 と し て 設 立 手 続 を と っ て お り 、役 員 の 重 複 も な い こ と
な ど も 勘 案 す れ ば 、形 式 的 に は も ち ろ ん 、東 京 日 新 学 園 と 法
商 学 園 と は 実 質 的 に も 同 一 で あ る と は い え な い 。し か し 、別
法 人 で あ る と し て も 、東 京 日 新 学 園 の 教 職 員 の 採 用 は 、一 般
の 新 規 採 用 と 事 情 を 異 に し 、菅 原 学 園 が 臨 時 雇 用 と は い え 希
望 者 全 員 を 採 用 す る と し た こ と ( 第 2.2(3)) 及 び 東 京 日 新 学
園が採用予定者の人数を明らかに しなかったこと(第
2.4(1))な ど か ら 法 商 学 園 の 教 職 員 が 一 定 の 手 続 を 前 提 と し
て 新 法 人 に 採 用 さ れ る と の 期 待 を も っ た と し て も 、無 理 か ら
ぬところがある。
イ 東 京 日 新 学 園 が 、 設 立 目 的 た る 3校 の 運 営 に 当 た っ て 、 経
験 の あ る 教 職 員 が 必 要 な こ と は 自 明 で あ り 、法 商 学 園 の 教 職
員 を 採 用 す る こ と に よ っ て そ の 必 要 を 満 た し 、か つ 、極 力 失
業 状 態 に 陥 る 教 職 員 を 生 み 出 さ な い よ う 努 め た こ と は 、至 極
当 然 の こ と と い え る 。し か し 、法 商 学 園 と 新 法 人 の 発 起 人 会
との間で交わされた覚書にも、法商学園は、教職員全員を9
月 末 日 を も っ て 退 職 さ せ 、東 京 日 新 学 園 は 、法 商 学 園 の 退 職
者 の う ち 3校 の 運 営 に 必 要 な 教 職 員 を 認 可 の 日 か ら 雇 用 し 、
法 商 学 園 は こ れ に 協 力 す る こ と 、そ の 勤 務 条 件 は 東 京 日 新 学
園 の 就 業 規 則 等 に よ る こ と が 記 載 さ れ て お り (第 2.3(2))、教
職 員 全 員 を 雇 用 す る 約 定 が あ っ た わ け で は な い 。よ っ て 、東
京 日 新 学 園 の 設 立 に 当 た っ て 、同 学 園 が 独 自 の 判 断 に よ っ て
採 用 人 数 を 決 め 、面 接 に よ り 選 考 を 行 う こ と 自 体 は 不 当 と は
いえない。
ウ 現に、本件採用選考を行うに当たって、東京日新学園は、
対象者である法商学園の教職員に対して採用予定人数を公
表 し な か っ た も の の (第 2.4(1))、当 初 よ り 法 商 学 園 の 教 職 員
を 全 員 採 用 す る 予 定 で は な く 、29名 が 不 採 用 と な っ て い る こ
と が 認 め ら れ る (第 2.4(3))。そ し て 、東 京 日 新 学 園 設 立 後 に
数 人 の 採 用 が 認 め ら れ る も の の (第 2.8(2)③ )、 10年 10月 1日
以 降 支 障 な く 授 業 が 継 続 し て い る こ と か ら み れ ば 、東 京 日 新
学 園 が 29 名 の 不 採 用 に よ り 学 園 と し て 必 要 な 人 員 を 確 保 で
きなかったとはいえない。
エ 他 方 、 X 1 が 法 商 学 園 に お い て 、 採 用 後 8年 を 経 過 し て い
な が ら 主 任 に 昇 進 し て い な か っ た こ と 、7年 度 以 降 10年 8月 ま
で ク ラ ス 担 任 に つ い て い な か っ た こ と ( 第 2.5(1)) か ら す れ
ば 、X 1 は 法 商 学 園 に お い て 、業 務 成 績 が 良 好 と い え な い も
- 14 -
の で あ っ た こ と が 推 測 さ れ 、ま た 、同 人 が 担 当 す る コ ン ピ ュ
ー タ の 資 格 試 験 に 関 す る 授 業 は 、東 京 日 新 学 園 で は 他 の 教 員
が 引 き 続 き 担 当 し て い た の で あ る か ら (第 2.5(1))、X 1 が 他
の教員によって代えがたい教員であったともいえない。
オ 東 京 日 新 学 園 の 採 用 手 続 は 、雇 用 条 件 な ど を 説 明 し な い ま
ま 、当 日 中 に 履 歴 書 の 提 出 を 求 め 、20分 か ら 30分 の 集 団 面 接
のみが行われるなど通常採用時に行われている手続に比べ
簡 略 に 過 ぎ る と 認 め ら れ る (第 2.4(1)(2))。 し か し 、 菅 原 学
園 が 撤 退 し 、学 事 部 の 決 め た 期 限 が 迫 り 、教 職 員 の 採 用 を 含
む 新 法 人 の 設 立 手 続 が 急 が れ る 事 情 が 認 め ら れ ( 第 2.3(1)
② )、 よ り 慎 重 な 手 続 が ふ さ わ し い と は い え 、 こ の こ と か ら
直 ち に 、東 京 日 新 学 園 の 採 用 選 考 が 不 当 で あ っ た と ま で は い
えない。
カ こ れ ら の 事 情 か ら 、東 京 日 新 学 園 が X 1 を 採 用 し な か っ た
こ と に つ い て は 、実 体 的 に も 手 続 的 に も も っ と も な 理 由 が 存
在 す る も の と み る こ と が で き 、そ れ ら が 不 公 正 な 対 応 で あ っ
たとはいえない。
② X1の組合活動と不採用の関係について
ア X 1 は 、 平 成 7年 に 組 合 に 加 入 し た が 、 法 商 学 園 に お い て
具 体 的 な 組 合 活 動 を 行 っ て お ら ず (第 2.5(2)① )、法 商 学 園 が
X 1 の 組 合 活 動 を 知 っ た の は 、同 人 が 学 事 部 に 行 き 、法 商 学
園 が 解 散 手 続 を 進 め て い る こ と を 確 認 し た こ と に よ る (第
2.5(2)② )も の で あ る 。
そ の 後 、 分 会 の 結 成 が 新 聞 に も 取 り 上 げ ら れ 、 (第 2.5(2)
② )、法 商 学 園 の 管 理 職 で あ り 、業 務 遂 行 委 員 会 委 員 で あ り 、
さ ら に 東 京 日 新 学 園 の 理 事 と な っ た Y 7 部 長 は 、X 1 に 対 し 、
「 菅 原 学 園 が 、組 合 が あ る こ と を 問 題 に し て い る 。組 合 を や
め て 私 と 仙 台 の 菅 原 学 園 の 理 事 長 に 会 い に 行 こ う 。学 園 に は
組 合 は な く な り ま し た と 説 明 し に 行 こ う 。」な ど と 発 言 し て
い る (第 2.5(2)③ )。こ の Y 7 部 長 の 発 言 は 、分 会 の 設 立 を 知
り撤退をほのめかす菅原学園を引き止めるためであるとみ
ら れ 、法 商 学 園 の 運 営 す る 学 校 が 承 継 さ れ る か 否 か の 微 妙 な
時 期 で あ っ た こ と も 考 慮 す れ ば 、同 発 言 は 、そ の 内 容 が 妥 当
性 を 欠 く と し て も 、学 校 継 続 を 何 と か 実 現 し よ う と し た Y 7
部長が菅原学園理事長の翻意を防ぐため分会長のX1に協
力 を 求 め た も の と み る の が 相 当 で あ る 。そ の 他 、法 商 学 園 は 、
新 法 人 設 立 ま で の 間 、組 合 及 び X 1 の 活 動 を 阻 害 し た り 、非
難したりする言動を行っていない。
さ ら に 、団 体 交 渉 に つ い て も 菅 原 学 園 の 撤 退 な ど の 混 乱 の
中 、当 初 は 10年 9月 9日 に 行 う と 返 答 し た も の の 、組 合 の 要 求
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に 応 じ て 8月 28日 に 開 催 し て お り 、 法 商 学 園 の 解 散 を 決 定 し
た 9月 に な っ て か ら も 、 組 合 の 申 し 入 れ た 団 体 交 渉 に 応 じ て
お り (第 2.5(2)② 、 6)、 こ の 点 か ら も 法 商 学 園 が 、 組 合 な い
しX1を嫌悪していたとは認められない。
な お 、組 合 及 び X 1 は 、X 4 が 採 用 さ れ た の は 、X 4 が 組
合員であることを業務遂行委員会が知らなかったからだと
い う 。し か し 、X 4 に つ い て は 、団 体 交 渉 申 入 れ 等 に 名 前 が
出 て は い な い も の の 、特 に 組 合 員 で あ る こ と 、又 は そ の 組 合
活 動 を 秘 匿 し て い た と は 認 め ら れ ず 、理 事 長 に 対 す る 要 求 や
団 体 交 渉 に 同 席 し 、組 合 ニ ュ ー ス に 写 真 が 掲 載 さ れ て い る こ
と な ど か ら (第 2.5(4)③ )、業 務 遂 行 委 員 会 は 、同 人 を 組 合 員
であると容易に推測できたはずである。
イ 組 合 及 び X 1 は 、東 京 日 新 学 園 が X 1 の 面 接 結 果 に か か わ
ら ず 、当 初 よ り 同 人 を 採 用 す る 意 思 が な か っ た と 主 張 す る が 、
そ れ を 裏 付 け る に 足 り る 疎 明 は な い 。か え っ て 面 接 に お い て 、
X 1 が そ の 発 言 等 か ら 低 い 評 価 を 受 け 、情 報 系 学 科 の 採 用 希
望 者 の う ち 最 下 位 で あ っ た こ と が 認 め ら れ (第 2.5(3))、ま た 、
採 用 の 面 接 を 行 っ た 東 京 日 新 学 園 の 理 事 3名 が 、 誰 が 組 合 員
で あ る か 知 っ て い た と か 、組 合 を 嫌 悪 し て い た と の 疎 明 は な
く 、面 接 の 評 価 が 三 者 三 様 で あ っ た (第 2.5(3))こ と も 考 慮 す
れ ば 、X 1 が 組 合 員 で あ る こ と を 理 由 に 低 い 評 価 を 受 け た と
は認められない。
ウ 他 方 、業 務 遂 行 委 員 会 は 、法 商 学 園 の 管 理 職 で 構 成 さ れ て
お り 、同 委 員 会 は 、新 法 人 が 採 用 す る 学 科 の 人 数 を 明 確 に せ
ず 、面 接 結 果 の 後 に 学 科 の 採 用 人 数 を 確 定 し た と み ら れ な く
も な い 事 情 が 存 在 す る (第 2.4(2))。ま た 、組 合 員 X 3 の よ う
に 面 接 の 結 果 と は 別 に 他 の 事 情 も 考 慮 し て 、採 用 候 補 者 名 簿
に 登 載 し な い (第 2.5(4))な ど 、新 法 人 へ の 採 用 の 決 定 に つ い
て も 業 務 遂 行 委 員 会 が 関 与 し て い た こ と が 窺 え る 。こ れ ら の
事 情 か ら す れ ば 、東 京 日 新 学 園 の 採 用 候 補 者 名 簿 を 作 成 す る
に当たって同学園ないし業務遂行委員会に採用手続上鮮明
さを欠く憾みがないわけではない。
し か し な が ら 、上 記 イ の と お り X 1 は 、情 報 系 学 科 で 面 接
結 果 が 最 下 位 で あ っ た の で あ り 、ま た 、組 合 員 で あ る こ と を
理 由 に 低 い 評 価 を さ れ た と は 認 め ら れ な い の で あ る か ら 、た
と え 組 合 員 4名 中 3名 が 不 採 用 と な っ た こ と が 全 体 の 不 採 用
率 (183 名 中 29 名 ) に 比 べ て 著 し く 高 率 で あ っ た と し て も ( 第
2.4(3))、 東 京 日 新 学 園 が X 1 を 採 用 し な か っ た こ と が 、 X
1 が 組 合 員 で あ る こ と 、又 は 組 合 活 動 を し た こ と に よ る と 断
定することには躊躇せざるを得ない。
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エ
本 件 に お け る 解 雇 と 採 用 は 、法 商 学 園 が 全 て の 教 職 員 を 解
雇 し 、ま た 、法 商 学 園 に 在 籍 す る 学 生 の 教 育 に 支 障 が 生 じ な
い よ う に 東 京 日 新 学 園 を 急 き ょ 新 法 人 と し て 立 ち 上 げ 、事 情
を心得ている法商学園の教職員の中から教職員を採用する
こ と と し た も の で あ り 、時 期 的 に は 解 雇 と 採 用 の 手 続 が 並 行
的 に 進 行 す る こ と が あ っ た (第 2.4(3))と し て も 、短 期 間 の う
ち に 採 用 者 を 決 め ざ る を 得 な か っ た 事 情 を 考 慮 す れ ば 、前 記
業務遂行委員会の採用手続上の不鮮明さは認められるもの
の 、東 京 日 新 学 園 の 対 応 が 、全 体 と し て 合 理 性 を 欠 き 、不 当
なものであったとはいえない。
③ 結論
以 上 を 総 合 し て 判 断 す る に 、法 商 学 園 と 東 京 日 新 学 園 と の 間
に 、実 質 的 同 一 性 は 認 め ら れ ず 、法 商 学 園 の 教 職 員 を そ の ま ま
承継する旨の合意の成立も黄犬契約類似の事情も認められな
い 本 件 に お い て は 、X 1 の 不 採 用 が 実 質 的 に 解 雇 に 相 当 す る と
は 解 さ れ ず 、組 合 員 に 対 す る 不 利 益 取 扱 い 及 び 組 合 に 対 す る 支
配 介 入 と は い え な い の で あ る か ら 、申 立 人 ら の 主 張 は い ず れ も
採用できない。
2 団体交渉について
(1) 当 事 者 の 主 張
① 申立人らの主張
東 京 日 新 学 園 は 、申 入 書 に X 1 の 名 前 が あ る こ と を 理 由 に 団
体 交 渉 を 拒 否 し て い た 。そ の 後 、労 働 委 員 会 の あ っ せ ん に よ り
団 体 交 渉 が 行 わ れ た も の の 、東 京 日 新 学 園 は 、X 1 の 不 採 用 に
つ い て 触 れ る の で あ れ ば 、一 切 団 体 交 渉 を 拒 否 す る と い う か た
くなな態度をとった。
X 1 ら 3名 の 不 採 用 は 、 純 粋 な 採 用 拒 否 で は な く 、 新 旧 両 法
人間における学校の承継という一連の行為の中での採用拒否
(解 雇 )が 行 わ れ た 事 例 で あ り 、東 京 日 新 学 園 が 、組 合 の 申 し 入
れ た 、不 採 用 理 由 の 開 示 を 求 め る 団 体 交 渉 の 開 催 を 拒 否 す る こ
と は 、 労 働 組 合 法 第 7条 第 2号 の 不 当 労 働 行 為 で あ る 。
② 被申立人の主張東京日新学園が設立当時、団体交渉を開催
で き な か っ た の は 、急 き ょ 新 法 人 を 設 立 し た の で 、事 務 作 業 に
時 間 が か か っ た た め に ほ か な ら な い 。そ し て 、東 京 日 新 学 園 は 、
法 商 学 園 と 別 法 人 で あ り 、事 業 を 継 続 し た わ け で は な く 、教 職
員 の 採 用 は 新 規 採 用 で あ る か ら 、組 合 員 3名 の 不 採 用 は 、(義 務
的 )団 体 交 渉 事 項 で は な く 、 こ れ を 拒 否 し て も 不 当 労 働 行 為 に
該当しない。
(2) 当 委 員 会 の 判 断
東 京 日 新 学 園 は 、 10月 6日 に Y 5 理 事 が 、 X 4 に 「 学 園 が こ う
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いう時期なので、団体交渉の申入れはもう少し時期を待てない
の か 。」と 言 っ た も の の 、そ の 後 、団 体 交 渉 の 開 催 を 約 し た が 、
実 際 に は 団 体 交 渉 に 応 じ な か っ た (第 2.7(1))。 こ の 経 過 を み れ
ば東京日新学園は、多忙により団体交渉を行えないのであれば、
そのことを組合に説明し期日の延期を求めることが筋であった
といわざるを得ない。
そ の 後 は 、当 委 員 会 の あ っ せ ん に よ り よ う や く 交 渉 が 行 わ れ る
よ う に な っ た が 、 東 京 日 新 学 園 は 、 組 合 員 3名 の 不 採 用 に つ い て
の 交 渉 に は 応 じ て い な い (第 2.8(1))。 一 般 的 に 採 用 問 題 が 団 体
交渉の議題になるかはともかく、本件においては、同一の法人
が経営するものではないとはいえ、学校が継続していることが
認められ、組合員が東京日新学園に存在しており、組合が団体
交渉によって問題を解決しようとしたことは、無理からぬとこ
ろである。
し か し 、一 方 で 、東 京 日 新 学 園 は 不 採 用 以 外 の 議 題 に つ い て 団
体交渉に応じており、加えて、その後の当委員会の審査手続及
びさいたま地方裁判所の訴訟手続の中で組合員の不採用理由が
提示され、さらに、前記判断のとおりX1の不採用が不公正な
措置であるとの事情は窺えないのであるから、かかる事情の下
では、東京日新学園が組合員の不採用問題に関する団体交渉に
応じなかったことを不当労働行為として問責するのは相当でな
いと思料する。
第4 法律上の根拠
以上の次第であるから、東京日新学園がX1を採用しなかったこ
と、及び組合の申し入れた組合員の不採用に関する団体交渉に応じ
な か っ た こ と は 、 労 働 組 合 法 第 7条 第 1号 な い し 第 3号 に 該 当 し な い 。
よ っ て 、 労 働 組 合 法 第 27条 及 び 労 働 委 員 会 規 則 第 43条 を 適 用 し て
主文のとおり命令する。
平 成 15年 7月 1日
東京都地方労働委員会
会長 藤田 耕三
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