ILO 創設 100 年働く女性イニシアチブ:私たちはどこにいて、どこに行きたいのか。 国際女性デー記念パネルイベント 2014 年 3 月 7 日 ILO 本部、ジュネーブ ILO 創設 100 年働く女性イニシアチブは、「将来 ILO の任務となる課題への取り組 みに成功するための準備」として、創設 100 年の記念日に先立って開始された 7 つの取り組みの 1 つです。1 ILO は、100 年を迎える 2019 年までに、仕事の世界に おける女性に対する評価を実施する計画です。今年の国際女性デーは、この取り 組みを考える上でのプロセスの第一歩です。 2014 年 3 月 7 日(金)、男女平等を推し進める著名な学者及び労働者側と使用者 側の活動家たちが、ジュネーブの ILO 本部でハイレベル・パネル討議に参加します。 このパネルは、ILO の政労使構成員や専門家が、働く女性のテーマについてさまざ まな意見を述べ、創設 100 年に向けての取り組みを活性化するためのものです。 実績を積み上げる ILO は、仕事の世界における女性の地位向上および女性の権利の認証に向けたアド ボカシー(提唱活動)と貢献では長年の業績を持っています。ILO は、1919 年の創設 以来、仕事の世界における女性労働者の権利と男女平等を促進する上で、国際労 働基準および政策、並びにさまざまな手法の開発を先導してきました。仕事にお ける男女平等に関する ILO の基本条約 2 および国連の女子差別撤廃条約(CEDAW) は、ほぼ世界的に批准されています。2009 年、ILO 総会は様々な戦略、政策提言 およびアプローチを盛り込んだ男女平等に関する結論3を採択しました。2008 年 の「公正なグローバル化のための社会正義に関する ILO 宣言」は、ILO が戦略目標 の横断的課題として男女平等と非差別を挙げる権限を付与しています。4 大多数の国で、平等原則と非差別は国の法令に盛り込まれ、政府は性差別と闘う ために積極的労働市場政策を導入し、使用者団体および労働者団体が機会均等と 処遇の平等を確保する施策を実施してきました。政労使三者構成において、男女 平等を達成するための措置やポジティブ・アクション(暫定目標の設定やクオー タ制度)は蔓延する雇用差別を克服するための手段として、女性が公正な代表性 を確保すると共に、認識されてきました。 格差を認定する しかし、女性のエンパワメントと男女平等の進展が各国で一様に進んだわけでは ありません。女性の労働力率は大幅に増加したものの、その進展具合は国と地域 で異なりました。水平的および垂直的な職業上の男女の区分と賃金における男女 格差は、依然として存在しています。女性はインフォーマル経済、不安定労働、 低賃金の仕事(農業、家内労働、ケア労働、家事労働など)に過度に多く就業し ています。フォーマル経済においては、才能を持ち有能な女性指導者が多数いる にもかかわらず、CEO や経営トップに就く女性の割合は、容認できないほど低い ままです。間接差別やその影響は、複合的な理由に基づく差別であるため、理解 されにくく、取り組みが遅れています。 女性と少女は無償のケア労働の大半を担っており、それは労働市場における彼女 たちの雇用機会均等と処遇を限定的なものとしています。ワーク・ライフ・バラン ス、特に国の財源による良質な子育て支援は、多くの労働者が利用できず手に届 きにくいものとなっています。 男女の賃金格差(月収入、未調整)5 出所:ILO STAT 注5)男女賃金格差(%)は、男性と女性の雇用から得られる平均収入間の差を男性の平均収入に対する割 合として示したもの。月収の男女賃金格差は、労働時間および労働形態の違いを反映している。以下の諸国 に関しては、上記格差はフルタイムの仕事における男女間の比較を計算したものである:ボリビア、エジプ ト、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、グアテマラ、アイスランド、日本、ラトビア、ルクセンブルグ、ノ ルウェー、パナマ、ポルトガル、スロヴェニア、スイスおよび米国。 ILO にとって、母性保護は設立当初からの関心事でしたが、その保護策の欠如は今 日働く女性が直面する主要な課題のひとつであり続けています。有給出産休暇の 制定法上の権利は事実上普遍的なものですが 6、大半の女性たち―特に、自営業者、 農業、家事労働または非典型雇用に就く労働者は―質の良い母性および幼児のヘ ルスケア、所得保障、十分な休息、妊娠または出産に基づく差別からの保護を受 けられない状態に置かれています。使用者が母性保護給付の直接コストの全額、 例えば休暇中賃金に代用するものを出資するなど負担すべきである、と法的には 規定されていますが、このことは家族的責任の可能性を持つ可能性があったり或 いは実際に責任を持つ労働者の採用、就業維持そして昇進へのインセンティブ をなくすことに結びついています。ILO は、出産給付は社会保険または公的資金で 賄われること、出産時の女性の雇用保護、出産や家族的状況に関連する差別をな くすよう呼びかけています。 財政および人口動態への配慮は、仕事と家庭の両立に政策介入する原動力となっ ていますが、時として仕事における平等や社会的結束を脇に追いやることもあり ます。つまり、持続可能な開発のための 1 つの要因であると同時に、権利に関す る明確な政策目標というよりは、望ましい「副次効果」とみなされるかも知れま せん。仕事の世界に存在する性に根ざした暴力とその負の影響とコストや、女性 と少女たちに不均衡に現れる HIV/エイズの影響に関心が払われるようになったの はごく最近のことです。 一方で今までの進展を踏まえ、他方で未解決の課題を考慮しつつ、より詳細に仕 事の世界における女性の状況を調査し、現在の男女平等政策と非差別政策の成果 を評価することが急務です。これは、経済危機と急速に変化する労働市場の現実 の文脈において特に重要です。労働者側と使用者側の声を聞く事と同様に、地域 内と地域を越えた経験から教訓を学び、知識を拡大し、政策の刷新を促進するこ とは、働く女性に対する機会均等および平等な処遇を向上させる上で不可欠です。 新たな行動とベンチマークを通じて橋を架ける 「働く女性」イニシアチブの結果を、男女平等の進展に努力する全ての人々の今 後の行動へと導きながら、更に次の 100 年に向けて ILO の男女平等戦略を刷新す るための基盤としてゆくことが期待されています。ILO の焦点は、政労使と手を取 り合い、この取り組みの目標を進展させるような経験や専門知識を有する他者と 戦略的な連携を構築することで、男女平等実現への具体的行動を通じて男女双方 の生活の変化に影響を及ぼし、事情が異なる環境下においても素早く対応できる 労働市場介入を特定し促進してゆくことになるでしょう。 労働市場における女性の状況:世界雇用動向 2014 年版からの調査結果 世界全体の労働力率は好転しておらず、世界経済危機以前の水準より 1%ポイント以上低下し たままである。労働力率の低下は、多くの女性が労働市場を離れた東アジアと南アジアで特 に顕著に見られた。女性は男性よりインフォーマル雇用という高リスクに直面し続けてお り、法的保護および社会的保護も男性より少ない。 先進国では、女性は中期的に期待される弱々しい景気回復からほとんど恩恵を受けていな い;事実、女性の失業率は 2018 年に 8.2%にまで徐々に低下するにすぎないであろう。一方、 男性の失業率は 7.6%まで力強く低下することから恩恵を受けられると期待されている。 東欧・南東欧(EU 以外)および CIS では、雇用における男女格差は大きいままであり、さらに 拡大する傾向が一般的に見て取れる。多くの女性はインフォーマル経済に就いており、しば しば生活の糧となる農業に従事している。経済危機の下、女性は家族を支え続けられるよう にと、自分の持つ資格より低いレベルの職に就く事を強いられる事態が頻発している。 労働力率の伸びが弱い中、2013 年、東アジアにおける女性の雇用は僅か 560 万しか増えず、 伸び率は 0.7%に過ぎなかった。雇用水準は、女性は5つの新規の仕事のうち 2 つ未満の仕事 しか占めていないため、女性より男性に対し恩恵の度合いが高い。その結果、対人口雇用率 における男女格差は 13.0%ポイントまで徐々に拡大した。 東南アジアと太平洋地域においては、脆弱な雇用は男性よりも女性に一層影響したが(2013 年、女性は 63.1%に対し男性は 56%)、2017 年までには男性より若干低くなると推測されて いる。 東アジアにおいては、全雇用における賃金労働者の割合は、1991~2013 年で 50.1%となり、 18.5%ポイントも顕著に増加した。この状況から、女性は明らかに恩恵を受けた。男性労働者 は、女性労働者と比較して依然としてより多くの報酬や賃金を得ているが、この格差は徐々 に縮小しつつある。2013 年までに、東アジアにおける賃金労働者の男女間の雇用率ギャップ は 5.2%ポイントまで低下した。 南アジアにおいては、雇用の質とより良い仕事に就く機会は男女間で不均衡に配分され続け ている。女性が働く場合、生産性が低く(しばしば職業上の区分による)賃金の安い仕事 (男女の賃金格差)に就く傾向があり、多くの女性が過度に無償の家族労働に就いている。 中東・北アフリカ地域(MANA 地域)、特に中東・ペルシャ湾岸地域(GCC 諸国)の労働市場に おいて、女性は独特な課題に直面している。女性の失業率は高く雇用の男女間格差が大き い。女性の労働力率は他のいかなる地域より低く、北アフリカではかろうじて 25%であるが、 中東では 20%に満たない。現在、女性の人口比率の上昇で女性が高等レベルの教育を受けてい るものの、今のところ活用されているとはいえない状況にある。 ジェンダー・平等・多様性部 労働条件・平等局 ILO、ジュネーブ [email protected]
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