地球地図ニューズレター日本語訳 26号

2002 年 6 月 25 日 No. 26
地球地図ニューズレター (日本語訳) 地球地図国際運営委員会
NEWSLETTER 26
GLOBAL MAPPING
新委員長挨拶
D. R. F. テーラー博士
カールトン大学地理環境学部教授
最も 必要とさ れている 場所で、 必要な資源と 専門
的な技術は、 社会が直面している 挑戦に対抗する
には全く 十分ではあり ません。 更に貧困について
の環境問題は、 余剰に関する 環境問題よりも 注目
度が低いままでした。
地球地図が中心的な要素である地理空間データ
は、 環境の物理的、 人間的両面で、 データ 構成
の枠組みを提供する 鍵の役目を果たし 、 その間の
重要な接点と なっており ます。
さらに、 等しく 重要なこと は、 社会経済の発展の
地球地図国際運営委員会(ISCGM)委員長就任
は光栄であり 名誉に思います。 ISCGM 初代委員
長のジョ ン ・ エステス教授は高潔な理想家で、 亡
く なら れて悲しく 、 寂しく なり ま す。 こ の挨拶文の
作成にあたり 、 1996 年 2 月につく ばで開催さ れた
第 1 回 ISCGM 会合の冒頭の挨拶を興味深く 読み
直し 、 私は彼の地球環境問題に対する 力強い言
葉と 情熱に心を打たれました。
8 月のヨ ハネスブルグ・サミット が近づき 、 エステ
ス先生が論じら れた環境問題の意義と 重要性はこ
れまでになく 重要になっており ます。 このよう な挑
戦に直面するなかで、 地球地図が中心的役割を
担う 地理基盤データの重要性については強調し す
ぎると いうこと はありません。 アジェンダ 21 文書の
第40章はその要求を包括的に述べており ますが、
進歩はあったものの、 多く のこと がやり 残さ れてお
り ま す。 また進歩は空間的な意味で非常に不公
平であり 、 世界中の多く の場所で、 おう おう にして
挑戦に関し 、地理空間データの利用の効率化のた
めに必要とさ れる 人的資本と 社会資本の両方の開
発です。 地理情報処理技術はおもに産業社会や
ポスト 産業社会のものですが、 開発途上世界に貢
献できる 大きな可能性を持っており ます。 この可能
性の実現のさらなる 促進は、 各国固有の人材の開
発を加速さ せるにちがいありません。人間は能力を
「 開発してもらう 」と いうこと はあり えま せん。 人間
は、 自分で自己の能力を開発するのみです。
ISCGM の大きな強みは、 その柱と なる 目標に向
かって参加する 国・地域数の多さ であり 、 また多く
の関係者の熱意と 専門知識です。 こ れはこ の取り
組みの素晴らしい未来を予告し 、 私はその一翼を
担えることを誇り に思います。 委員の方々、 ひたむ
きな事務局、 日本国の支援と 多く の国際機関の善
意に助けら れ、 地球地図は、 地理情報処理が持
つ可能性をさらに価値あるものへと 変換する手助け
と なること ができま す。
2 ペ ージ
地球地図ニューズレター (日本語訳)
No. 26 - 2002 年 6 月 25 日
「 地球地図」は WSSD の “ 世界実施文書” に 盛り 込ま れた
地球地図国際運営委員会事務局
政 春 尋志
囲な利用を、 「 各界各層での以下の行動による
ことを含め」[以下の行動をもって]促進する 。
(a) [合意]能力開発と 、 地上観測、 衛星リ モー
ト センシング及びその他の情報源から のデータ
の各国間での共有の必要性に鑑み、 統合地理
観測のための地球観測システムや研究プログラ
ムの協力 ・ 調整を強化する 。
(b) [合意]地球観測データの活発な交換といった
有用なデータの共有を可能にする 情報システム
持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)の
第4 回準備会合(PrepCom4)は、 5 月 24 日から 6
を開発する 。
月 7 日までインド ネシア国バリ 島で開催さ れまし
た。 PrepCom4 は、 サミット に向けての最後の会
地球地図
(c) [合意]地球地図
地球地図のためのイニシアティ ブや
パート ナーシッ プを奨励する 。
合で、 6 月 5 日から 7 日までの閣僚級会合も 含ま
れました。 本会合の目的は、 サミット の全参加国
115. [合意]各 国 、 こと に開発途上国を、 以下
の合意としてサミット で採択し 、 持続可能な開発
の実現のための実施計画を述べる 最も 重要な文
の彼らの国家の努力において支援する 。
書と なる 世界実施文書の本文をまと めること でし
た。 また、 本会合はサミット において各国の長が
(a) [合意]正 確 、長 期 、一貫性があり 、 信頼で
きる データを収集する 。
発する 政治宣言の骨子の準備も 目的としました。
ISCGM 関係者は PrepCom4 に参加し 、 地球地
(b) [合意]データ収集や地上観測のさらなる改善
図の重要性を周知さ せるために努力しました。 そ
の結果、 「 地球地図」と いう 言葉が以下のと おり
のために衛星データやリ モート センシング技術を
利用する 。
世界実施文書の草案に盛り 込まれました(http://
www.johannesburgsummit.org/html/
docu-
(c) [合意]衛星リ モート センシング、 衛星全地球
ments/prepcom4docs/bali_documents/
draft_plan_1206.pdf)。 PrepCom4 では、 世界実
測 位 、 地図作成及び地理情報システムの技術
の利用により 地理情報を入手、 調査し 利用す
施文書の全文について合意するまでには至りませ
んでしたが、 地球地図と 地理情報に関するこ れら
る。
の項は編集上の語句を除いて合意さ れました。
ISCGM は、 7 月7 日、 PrepCom4 の会場におい
て、 サイド ・ イ ベント 「 持続可能な開発のための地
(仮訳)
114. 環境影響、土地利用、土地利用変化に
球地図及び地球観測のイニシアティ ブに関する 国
際パート ナーシッ プ」 を実施しました。 本行事は、
関する 質の高いデータを収集するため、 衛星
リ モート センシング、 地球地図
地球地図及び地理情報
佐藤静雄国土交通省副大臣の 「 持続可能な開発
と 国際パート ナーシッ プ」と 題する 基調講演で開会
システムを含む地球観測技術の開発とより 広範
しました。 引き 続いて、 そのほと んどがISCCGMの
3 ペ ージ
地球地図ニューズレター (日本語訳)
No. 26 - 2002 年 6 月 25 日
委員である7 人のパネリスト が、 地球地図の利用
と 地球地図に関する 国際的 ・ 地域的パート ナー
地球地図国際運営委員会事務局長
秋山 實
シッ プについて発表を行いました。パネリストと 彼
らの発表の表題は以下の通り です。
こ れらの発表に続いて、 参加者と パネリ スト の間
「 陸域観測技術衛星(ALOS)と 地球地図への貢
で熱心に討議が行われました。 討議のテーマは、
データ 利用者の要求やアフリ カバー等の他のイニ
献 」
宇宙開発事業団
シアティ ブと の関連と パート ナーシッ プ等でした。
閣僚級会合の対話形式の意見交換において、
ALOS プロジェクト 、 主任開発部員
浜崎 敬
佐藤副大臣は、 環境問題は人類の生存にとって
の鍵と なる 問題であると 提起し 、 地球地図のイニ
「 洪水監視と バングラ デシュにおける 監視のため
シアティ ブはこ れらの問題に対する 重要な貢献で
あると 述べました。
の地球地図」
バングラ デシュ 測量局局長
WSSD の準備段階を通してこ れらの取り 組みや
活動を行った結果、 「 地球地図」と いう 言葉が世
A H M シャヒドゥラ 准将
界実施文書の草案に盛り 込まれることと なり まし
た。 遠路バリ まで足を運び、 地球地図サイド ・ イ
「 開発途上国における 地球地図の利用」
南アフリ カ測量 ・ 地図局局長
デレク ・ クラ ーク 氏
ベント のパネリ スト を務めた方々を始めとして、 地
球地図を支援して下さったすべての方々に謝意を
表します。
PrepCom4 でのこ のよう な成果をもって、 ISCGM
「 持続可能な開発と 情報社会:地理情報の役割」
国際地図学協会副会長
チェコ 共和国マサリク 大学助教授
ミラン ・ コネチニー博士
では、 地球地図をさらに促進し 、 知名度を高め、
宣伝するためにヨ ハネスブルグ ・ サミット においても
サイド ・ イ ベント を開催する 予定です。
「 持続可能な開発のための意思決定: ラテンアメ
リ カにおける 利用可能なコアデータの必要性と 地
球地図の貢献」
コロンビア、 アグスティ ン ・ コダシ地理
院 (IGAC)院長
サンティ アゴ ・ ボレロ 氏
「 空間データ 基盤整備、アフリ カの活動」
ケニア測量局局長
ハガイ ・ ニャポラ 氏
「 アジア及びヨ ーロッ パにおける 地球地図の地域
協力」
地球地図データ の 公開
公開さ れた データ
パナマ、 3 月 28 日
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地球地図ニューズレター (日本語訳)
No. 26 - 2002 年 6 月 25 日
地 球 地 図の 参 加 状 況
EuroGeographics の 地球地図への 参加 EuroGeographics は従来から 組織として地球地図に参加して EuroGlobalMap を作成中です。 こ れまで、
地球地図参加国のリ スト は国単位で表示していましたが、 こ れではEuroGeographics を通して地球地図に
参加している 国は表示できませんでした。 EuroGeographics代表のニック ・ ランド 博士と 地球地図国際運営
委員会事務局長秋山實と の間で検討した結果、 6 月20 日、 地球地図参加国の中に EuroGeographics 参
加国のカテゴリ ーを設けると いう 結論に達しましたので EuroGeographics 参加国を次ページに紹介します。
地球地図の 参加状況
地球地図の参加国 ・ 地域数
2002 年 6 月 25 日現在
117ヶ 国 ・ 地域
地球地図への参加を検討している 国 ・ 地域数
22ヶ 国 ・ 地域
地球地図への 最近の 参加国
機関名
国名
参加年月日
測地 ・ 地図局
ポーランド
2002 年 4 月23日
ベナン環境局及び
国立地理院
ベナン
2002 年 6 月19日
地球 地図プロ ジェクト への 現在の 参 加状況
2002 年6 月25 日現在
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地球地図ニューズレター (日本語訳)
No. 26 - 2002 年 6 月 25 日
ユーロ ・ グロ ーバル ・ マッ プを 通し て 参加する ユーロ ・ ジオグラフィ ッ ク ス 加盟国
C ountry name
*
*
*
*
*
N ame of organization
ALBAN IA
Institut Studimit Tokave
ARMEN IA
State C ommittee of the Real Property cadastre (SC C ) of the Government of the
Republic of Armenia
AUSTRIA
Federal O ffice of Metrology and Surveying - (BEV)
BELARUS
The State C ommittee on Land Resources Geodesy and C artography
BELGIUM
N ational Geographic Institute - Belgium
BULGARIA
Ministry of Regional Development and Public Works
C RO ATIA
State Geodetic Administration of the Republic of C roatia - (DGU)
C YPRUS
C yprus Department of Lands and Surveys - (DLS)
C ZEC H REPUBLIC
C zech O ffice for Surveying, Mapping and C adastre
DEN MARK
N ational Survey and C adastre - Denmark - (K MS)
ESTO N IA
Estonian N ational Land Board
FIN LAN D
N ational Land Survey of Finland - (MML)
FIN LAN D
Finnish Geodetic Institute
FRAN C E
N ational Geographic Institute - France - (IGN - F)
GERMAN Y
Federal Agency for C artography and Geodesy - (BK G)
Working C ommittee of the Surveying Authorities of the States of the Federal
Republic of Germany (AdV)
GREAT BRITAIN
O rdnance Survey - (O S)
GREEC E
Hellenic Mapping & C adastral O rganisation (HEMC O )
GREEC E
Hellenic Military Geographical Service - (HMGS)
HUN GARY
Institute of Geodesy, C artography and Remote Sensing - (FO MI)
IC ELAN D
N ational Land Survey of Iceland - (LMI)
IRELAN D
O rdnance Survey Ireland - (O SI)
*
ITALY
Italian Military Geographic Institute - (IGM)
*
LATVIA
State Land Service of the Republic of Latvia
*
*
*
LITHUAN IA
N ational Land Survey under the Ministry of Agriculture
LUXEMBO URG
Administration du C adastre et de la Topographie
MO LDO VA
State Agency for Land Relations and C adastre of the Republic of Moldova
N O RTHERN IRELAN D
O rdnance Survey of N orthern Ireland - (O SN I)
N O RWAY
N orwegian Mapping Authority - (SK )
PO LAN D
Department of C adastre, Geodesy and C artography
*
PO RTUGAL
Portuguese Institute of C artography and C adastre - (IPC C )
*
RO MAN IA
N ational O ffice of C adastre, Geodesy and C artography
*
RUSSIA
Federal Service of Geodesy and C artography of Russia - (Roskartografia)
SLO VAK IA
Geodesy, C artography and C adastre Authority of the Slovak Republic - (UGK K )
*
SLO VEN IA
Surveying and Mapping Authority of the Republic of Slovenia - (GURS)
SPAIN
N ational Geographic Institute of Spain - (C N IG)
*
SWEDEN
N ational Land Survey of Sweden - (N LS)
SWITZERLAN D
Federal O ffice of Topography - (BLT)
THE N ETHERLAN DS
Topographical Service of the N etherlands - (TDN )
TURK EY
Ministry of N ational Defense, General C ommand of Mapping - (GC M)
UK RAIN E
State Service of Geodesy, C artography and C adastre
YUGO SLAVIA
(no record)
*地球地図に直接参加している 国
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地球地図ニューズレター (日本語訳)
No. 26 - 2002 年 6 月 25 日
地球地図 /GSDI グラ ント ・ プロ グラ ム
地球地図国際運営委員会事務局次長
カレン ・ D ・ クライ ン
地球地図/GSDI グラント ・ プログラムは、 コロンビ
ア国カルタ ヘナにおける 2001 年全地球空間データ
ずる省に授与さ れています。
グラント に含まれるものは以下のと おり です。
*
基盤会議において、 2001 年5 月 23 日 、理想家で、
ArcInfo 8 一 式 、 ArcSDE 8-ArcSDE
その理想像が地球地図やGSDIに盛り 込まれる 、 先
見性を持ち、 ISCGM 委員長を務めたジョ ン ・ E “
サ ー バ ー 及 び 5 接 続ラ イ セ ン ス 、
ArcIMS -ArcIMS 標準版及び CPU1
ジャック ” ・ エステス先生を記念し 立ち上げら れまし
個 、 Arc GIS Production Line TOOL
た。
ESRI はソフト ウェアと 研修、 支援の総合的なパッ
Set(PLTS)一式を含むArcGISシステム
一式。
*
ケージを内容と する 500 万米ド ルを越える 価値を持
ソフト ウェアの維持管理 ( テクニカル・
つプログラムを引き 受けています。 それぞれ 5 万米
ド ル相当の約100組のグラント が世界各国の国家空
サポート 及びアッ プグレ ード )、 バー
チャ ル・キャンパス・コ ース5コ ースの研
間データ や国家空間データ 基盤(NSDI)の構築を支
修 、及び国家基本図構築と 刊行研修
援するために授与さ れます。 また、 本プログラムは
GSDI活動の発展のために地理空間データの共有を
のための5000ド ル相当のクレジット 。
詳 細 は 、 グラ ント の ホ ーム ペ ージ h t t p : / /
促進さ せます。 2002 年 5 月 31 日 現 在 、グラント は、
www.esri.com/gsdi にアクセスするか、 クラウ ディ ア ・
世界中の 85 の国家地図作成機関もしく はそれに準
ルイス [email protected] まで連絡してく ださ い。
地球地図及び関連の 会合予定
以下は地球地図及び関連の会合の予定です。 関連の会合についての情報を歓迎します。
2002 年
8 月 6 日∼ 9 月5 日、 ケニア 、 ナイロ ビ
JICA GIS 技術セミ ナー
8 月 19 日∼ 23 日 、 ケニア 、 ナイロ ビ
地球地図セミ ナー ・ イン ・ ナイロビ
8 月 26 日∼ 9 月 4 日
南アフリ カ 、 ヨ ハネス ブルグ
持続可能な開発のための世界サミット
9 月 16 ∼ 19 日 、 ハン ガリ ー、 ブダ ペスト
第6 回 GSDI 会議
9 月 20 日 、 ハン ガリ ー、 ブダ ペスト
第 9 回 ISCGM 会合
11 月 14 日∼ 15 日 、 韓 国 、 慶州
第 15 回 ISO/TC211 本会議
2003 年
5 月 22 日∼ 23 日 、 スイ ス
第 16 回 ISO/TC211 本会議
7 月 12 日∼ 13 日 、 日 本 、 沖縄
地球地図フォーラム 2003 in 沖縄
7 月 20 日∼ 27 日 、 英 国 、 ケン ブリ ッ ジ
ケンブリッジ会議
7 月28 日、 英 国 、 ケン ブリ ッ ジ ( 予定)
第 10 回 ISCGM 会合
9 月 29 日∼ 10 月 30 日 、 カ ナダ 、 モントリ オール
CODATA2002 会議
8 月 10 日∼ 16 日 、 南アフリ カ 、 ダ ーバン
第 21 回国際地図学協会会議
10 月ま た は 11 月 、 フィリ ピン
PCGIAP 理事会会合
10 月ま た は 11 月 、 ド イ ツ
第 17 回 ISO/TC211 本会議
編 集 、 発行 : 地球地図国際運営委員会事務局
連絡先
: 〒 305-0811
茨城県つく ば市北 郷1 番 国土地理院
305-0811 Tel: 0298-64-6910 Fax: 0298-64-6923
ホ ーム ページ :
http://www
.iscgm.org/
http://www.iscgm.org/
E-mail : [email protected]