「何のために」「何について」「どれくらい」「どのようにして」を伝えよう

Takatsuki Education Center
H24.9
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Vol.27
今年の夏の研修も、多くの先生方にご参加いただきました。達人の授業づくりの極意に学んだこ
と、参加した先生方同士の話から学んだことなど、研修で得た知識やアイディアなどを、早速夏休
み明けの授業に生かしているという先生方もたくさんおられることと思います。
また、指導の基本的なことから学び直す「ABCシリーズ」の第2弾として、
「スピーチ指導のA
BC」と題し、スピーチ指導の基本的なことについて研修を行いました。
新しい学習指導要領においてスピーチを行うことが明文化されましたが、高槻市では、以前より
全ての学校でスピーチ指導に取り組んでいます。スピーチは、「話す」「聞く」「書く」「読む」活動
を統合的に取り入れることのできる活動です。生徒は聞いたり読んだりして得た知識や情報をもと
に「伝えたい」内容を整理し、それを聞き手に伝えるために英語で文を書き、そのことについて工
夫をしながら話して伝えようとします。また、スピーチでは語数や文の数などで到達
目標を示すことが多く、
それが生徒にとって具体的な目標となるため、挑戦しやすく、
またその目標に届いたときの達成感も得やすい、
ということもスピーチ指導が多くな
されていることの理由でしょう。
しかし、実際は、スピーチ文を作成する指導に力を入れすぎて、発表する頃には先
生も生徒も疲れきっている・・・なんてこともあるようです。指導のあり方やステップ
を見直し、達成感の持てるスピーチ指導をしてみませんか?
Step 1
「 何のた めに 」
「何 につい て」「どれ くらい 」
「 どのよ うにし て」を 伝え よう
いきなり「さあスピーチ原稿を書きましょう」というのでは、生徒のモチベーションは上がりま
せん。その目的や内容、方法も含めて初めに生徒に示しておきましょう。
「クラスの友だちに、その
人にもっと興味を持ってもらえるような人物紹介スピーチをしよう」
「小学6年生がワクワクするよ
うに、工夫して学校紹介のショウ・アンド・テルをしよう」など、具体的に示すとわかりやすいで
しょう。
一番よいのは、モデルを示すことです。もちろん、先生やALTが生徒の目の前で示すことも考
えられますが、先輩のモデルを示すことが効果的です。前年度に残しておいたビデオを見せること
により、上で示したスピーチの内容だけでなく、スピーチでめざす姿(評価基準A・Bの姿)を生
徒に理解させることができます。
Step 2
ス ピーチ 原稿を 書く前 に、内 容の構 想を練 ろう
スピーチ原稿をいきなりスラスラと書くことは難しいので、まずは書く内容を考えましょう。内
容のイメージを膨らませる方法としていくつかありますが、今回の研修では「マッピング」を紹介
しました。マッピングは、ウェビングとも呼ばれ、一つのキーワードからイメージされる言葉をク
モの巣状にどんどんつないでイメージを膨らませていくものです(この時点で十分に広がらないテ
ーマはスピーチに向いていないので、他のテーマへの変更を勧めた方がいいでしょう)。イメージが
膨らんだら、書きたい内容を箇条書きにして、原稿メモを作ります。この時に、難しい日本語で書
くのではなく、できるだけ易しい日本語で書くのがポイントです。
Step 3
英 訳の仕 方を教 えるの ではな く、「学び 方」を 教えよ う
いざ英文を書き始めると、
「語い」
「語順」
「文章構成」など、生徒はいくつかの壁にぶつかります。
辞書指導や語順ルールなどについては、自分で学習できる生徒を育成するためにも、どのようにす
ればよいのか、日々の授業の中で指導しておきたいものです。
できた英文については先生がすべて添削するのではなく、生徒自身が振り返
って直したり、友だち同士でチェックし合ったりするなど、生徒が「自ら学ぶ」
ことができるように指導することがポイントです。
Step 4
読 み練習 の量と 質が成 功の秘 訣
原稿ができたら読み練習です。聞き手に思いを伝えるために、
「正確に」「暗記する」ための練習
が必要になります。生徒が本格的に読み練習を始める前に、正しい発音やイントネーションで読め
ているかどうか、先生やALTがチェックしましょう。読み練習の具体的な方法は前号で紹介した
とおりですが、とにかく何度も何度も読み練習をすることが重要です。ここでも先ほどと同じく、
生徒自身が自らの読みを振り返ったり、友だち同士でチェックやアドバイスをし合ったりするなど、
生徒の「自学」を促すことを忘れずに。
Step 5
「スピ ーチ発 表をす る生徒の 姿」= この単 元でめ ざす子 どもの 姿
発表はどんな形式で行いますか? 単元をとおして育ててきた力をスピーチという形式で発表す
るのですから、必要以上のプレッシャーになることは避け、生徒たちが存分に力を発揮できるよう
応援したいものです。
時々見かけるのは、1人が前でスピーチをしている時に、聞いている他の生徒が話し手を見ずに
手元のプリントに一生懸命何かを書き込んでいる、という光景です。話し手の気持ちになってみま
しょう。一生懸命練習してきたことを友だちの前で表現しようと工夫して話しているのに、聞き手
はみなこっちを見ないで下を向いて何かを書いている・・・もしくはちらっとこっちを見ては評価を
している・・・というのでは、話し手のモチベーションが上がらないだけではなく、よけいな緊張感や
不信感を与えかねません。
聞き手を育てるという観点であれば、スピーチ後に内容についてのQ&Aを行う、聞いたことに
ついてペアでリポートをする、スピーチをした生徒にコメントを言う(書く)、などスピーチの間は
聞くことに集中し、活動はスピーチの後で、というようにメリハリをつけるといいでしょう。
スピーチを行うことは、生徒にとってハードなことです。しかし、登るべき「山」が大きいから
こそ、自らの頑張りが試されます。仲間の励ましや先生の助けがじわーっと効いてきます。だから、
終わった時の安堵感や達成感も大きいものがあるのです。生徒に英語力をつけるのはもちろんです
が、生徒の「心」を育てる、という観点を忘れずにスピーチ指導に取り組みたいものですね。
<参考>
英語力がぐんぐん伸びる! コミュニケーション・タイム 13 の帯活動&ワークシート
英語教育(平成 23 年 7 月 大修館書店)
ENGLISH NEWS 第 16 号(平成 19 年 高槻市教育センター)
11月に開催される英語スピーチ大会では、普段の授業では取り組め
ないような発表だけではなく、こういった普段の取組を拡充したものに
ついても広く受け付けています。今年もたくさんの学校の出場、お待ち
しています!
本多敏幸(平成 21 年
明治図書)
9 月末
予備調査
10 月 9 日より申込開始
奮ってご参加ください!
授業班とテスト班に分かれての研究活動、それぞれの課題に合わせていろいろと話を進めていると
ころです。詳しくは部報をお読みください。互いの学校の垣根を越えて、よりよい授業を創ってい
くために学び合う部会となるよう、ご協力をお願いします。今年の市教研英語部会は、違いますよ!