2006/10/24

複素微分と正則性
2006/10/24 by 矢崎
目次
1.
2.
3.
関数の極限 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
微分可能性、正則性、コーシー・リーマンの方程式
微分可能性、正則性、コーシー・リーマンの方程式
(つづき) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
注.
問題 (A): これだけは!
(初級)
問題 (B): 脳みそに汗が;
(中級)
問題 (C): むむ、御主只者でないの。(上級)
2
3
4
1.
関数の極限
関数 f (z) が
z → z0
⇒
f (z) → w0
ならば、z が z0 に限りなく近付くとき f (z) は極限値 w0 をもつ(w0 に収
束する)といい、
lim f (z) = w0
z→z0
or f (z) → w0 (z → z0 )
z 6= z0 かつ z → z0
である!
と書く。
極限についての公式などは実変数の場合と同様である。また、
lim f (z) = f (z0 )
z→z0
が成り立つとき、f (z) は z0 で連続であるという。
この定義も形式的に実変数
の場合と同様である。
例.
(z + i)(z − i)
z+i
2i
z2 + 1
= lim
= lim
=
= 1 + i.
z→i (z − i)(z + 1)
z→i z + 1
z→i (z − i)(z + 1)
1+i
lim
例. 次の計算はウソである。
iz + 1
i + 1/i
i + 1/i
= lim
=
= 1.
2
z→i z + 1
z→i z + 1/z
i + 1/i
lim
どこがウソか。
問題 1. (A) 次の関数の極限値を求めよ.
az + b
z→∞ ca + d
(1) lim
z−i
z→i z 2 + 1
(5) lim
(bc − ad 6= 0)
z 2 − iz + 2
z→2i
z − 2i
(6) lim
iz 3 − 1
z→i z + i
(2) lim
iz 3 + 1
z→−i z + i
(3) lim
z−i
z→i z 3 + i
(7) lim
問題 2. (A) 次の各問に答えよ.
x−y
x+y
(1) f (z) =
+i
は z = x + iy → 0 のとき極限値をもつか.
x+y
2
2
x y
(z = x + iy) とする.
(2) f (z) = 4
x + y2
(i) y = x に沿って z を 0 に近づけるとき,f (z) の極限値を求めよ.
(ii) y = x2 に沿って z を 0 に近づけるとき,f (z) の極限値を求めよ.
(iii) lim f (z) は存在するか.
z→0
z
(3) f (z) = は z = x + iy → 0 のとき極限値をもつか.
z
(4) z = x + iy とし,

1

y sin
(x 6= 0)
f (z) =
とする.
x
 0
(x = 0)
µ
¶
(i) lim lim f (z) は存在するか.
x→0 y→0
³
´
(ii) lim lim f (z) は存在するか.
y→0
(iii)
x→0
lim f (z) は存在するか.
z→0
2
(4) lim
z→∞ z 2
1
+i
2.
微分可能性、正則性、コーシー・リーマンの方程式
w = f (z) を開集合 D で定義された関数、z0 ∈ D とするとき、極限値
f (z) − f (z0 )
f (z0 + h) − f (z0 )
= lim
h→0
z − z0
h
lim
z→z0
が存在するならば、この極限値を f 0 (z0 ),
df (z0 )
などと表し、z0 におけ
dz
る f (z) の微分係数といい、f (z) は z0 で微分可能であるという。f 0 (z) を D 内の全ての点で微分可能
z の関数とみなしたとき、f 0 (z) を z の導関数という。導関数に関する公式 ならば、f (z) は D で微分
可能であるという。また、
は、実関数の場合と同じである。
f (z) は z0 で微分可能なら
z0 ∈ D のある近傍の各点で微分可能なとき、f (z) は z0 のある近傍で正
則である、あるいは z0 で正則である、という。複素平面全体で正則な関数
を整関数と呼ぶ。
ば、f (z) は z0 で連続であ
る。これは実関数の場合と
同じ。
z = x + iy, f (z) = u(x, y) + iv(x, y), z0 = x0 + iy0 で f (z) は微分可能
とする:
ε(z; z0 ) → 0 (z → z0 )
f (z) = f (z0 ) + f 0 (z0 )(z − z0 ) + ε(z; z0 )(z − z0 ).
f 0 (z0 ) = a + ib, ε(z; z0 ) = ε1 + iε2 とすると、
u(x, y) = u(x0 , y0 ) + a(x − x0 ) − b(y − y0 ) + η1 ρ
v(x, y) = v(x0 , y0 ) + b(x − x0 ) + a(y − y0 ) + η2 ρ
である。ここで、
p
|z − z0 | = (x − x0 )2 + (y − y0 )2 = ρ,
η1 =
1
1
(ε1 (x − x0 ) − ε2 (y − y0 )), η2 = (ε2 (x − x0 ) + ε1 (y − y0 ))
ρ
ρ
とおいた。|η1 | ≤ |ε1 | + |ε2 | ≤ 2|ε|, 同様に、|η2 | ≤ 2|ε| であるから、
ε(z; z0 ) → 0 (z → z0 ) より、η1 , η2 → 0 (ρ → 0) である。よって、f (z) が
z0 で微分可能ならば、u(x, y), v(x, y) は (x0 , y0 ) で全微分可能で、かつ
a=
∂u
∂u
∂v
∂v
, −b =
; b=
, a=
∂x
∂y
∂x
∂y
すなわち、
∂u
∂x
=
∂v
∂y
,
∂u
∂y
=−
∂v
∂x
が成り立つ。これをコーシー・リーマンの方程式という。このとき、
¶
µ
∂u
∂v
∂u
∂v
0
f (z0 ) =
+i
= −i
+i
∂x
∂x
∂y
∂y
Cauchy–Riemann の微分
方程式、関係式ともいう。
∂u(x0 , y0 )
∂u
=
など。
∂x
∂x
である。
3
3.
微分可能性、正則性、コーシー・リーマンの方程式(つづき)
まとめ:
f (z) が z0 = x0 + iy0 で微分可能
=⇒
(
u, v は (x0 , y0 ) で全微分可能、
かつ CR の方程式が成り立つ
注. 実は、⇐= も成り立つ。
注. コーシー・リーマンの方程式は、f (z) が z0 = x0 + iy0 で微分可能で
あるための必要条件であるから、これがいえないとその点では微分可能で
ないことになる。
全微分可能性の十分条件:
F (x, y) に (x0 , y0 ) の近傍
∂F ∂F
で、
,
が存在し、そ
∂x ∂y
れが連続ならば、F (x, y)
は (x0 , y0 ) で全微分可能で
ある。
例. f (z) = Re z は全ての点で微分可能でない。
例. f (z) = z は全ての点で微分可能でない。
例. f (z) = ex (cos y + i sin y) は整関数である。
例. f (z) = |z|2 は z = 0 で微分可能だが、そこで正則でない。
問題 3. (A) 次の関数は (
x + iy とする).
(1) f (z) = ex
(3) f (z) =
2 −y 2
1
z
) 内において正則であることを確かめよ (z =
(cos 2xy + i sin 2xy) (z ∈ C)
(z 6= 0)
(2) f (z) =
1+z
1−z
(z 6= 1)
(4) f (z) = x4 − 6x2 y 2 + y 4 + 5 + i(4x3 y − 4xy 3 )
(z ∈ C)
問題 4. (A) 次の関数を微分せよ.
(1) f (z) =
z 3 + 2z − 1
z2 − 1
(2) f (z) = (1 − 3z + z 2 )3
問題 5. (A) 関数 f (z) = u(x, y) + iv(x, y) が z = x + iy で正則ならば,
次が成り立つことを示せ.
µ
¶
∂(u, v)
∂u
∂v
1 ∂u
∂v
0
(2) |f 0 (z)|2 =
(1) f (z) =
+i
=
+i
≥0
∂x
∂x
i ∂y
∂y
∂(x, y)
ここで,
¯
¯
∂(u, v) ¯¯ ux uy ¯¯
=¯
¯
∂(x, y) ¯ vx vy ¯
はヤコビアン (ヤコビ行列式,関数行列式) である.
問題 6. (A) 関数 f (z) = u(x, y) + iv(x, y) が z = reiθ で正則ならば,次
が成り立つことを示せ.
µ
¶
µ
¶
∂u
e−iθ ∂v
1 ∂v
∂u
∂v
∂v
∂u
0
−iθ ∂u
(1)
=
=
,
= −r
(2) f (z) = e
+i
−i
∂r
r ∂θ
∂θ
∂r
∂r
∂r
r
∂θ
∂θ
4