2014 年度安全工学会論文賞 選考理由 対象論文 「爆発事故定量評価のための Bursting Sphere の数値解析とスケール則」 (安全工学,Vol. 53, No.5, 310-316 頁) 受賞者 大 塚 輝 人 (おおつか てるひと)氏 齋 藤 務 (さいとう つとむ)氏 吉 川 典 彦 (よしかわ のりひこ)氏 選考理由 爆発事故における爆風圧力の定量評価に関し,火薬類の爆風評価においては,理想点爆発を想定し, 距離と爆風圧力を無次元化した,いわゆる Sachsʼ Scale によって,爆発する物質の種類や量によらない 単一の爆風曲線が得られており,実験結果との対応も良好である。一方,燃料-酸化剤混合気が建屋内 で爆燃する場合には,理想点爆発の爆風曲線を直接利用した爆風評価では過剰に爆風圧を見積もってし まうことが指摘されており,実際の爆発事故に直接適用できる評価方法の確立が求められている。 本論文では,衝撃波の伝播を精度よく計算できる Random-Choice 法を用い,高圧球状容器の破裂に よって形成される爆風の大気圧中での減衰過程を解析し,高圧ガスの内部エネルギを基準にした爆発特 性長を用い,Sachs のスケールによって,(爆風過圧力/大気圧)と無次元距離の関係を表す減衰曲線 を得た。しかし,産業災害としての爆発の多くは,爆燃によって引き起こされる低い爆発過圧での容器 の破裂に対応しており,Sachs のスケールに基づく事故評価は誤差が大きくなることから,(初期衝撃 波圧力/大気圧-1) ・ (容器体積)1/3 を特性長とした Rankine-Hugoniot スケールを提案し,減衰曲線 を新たに得た。さらにこの減衰曲線について,2 つのスケール則の適用範囲について検討を行った。 以上の成果は,低い爆発過圧での容器破裂に伴う爆風が,元々爆風曲線を大きく下回った強さしか持 たないため,従来の Sachsʼ scale が成り立たず,Rankine-Hugoniot の関係式から導かれる特性長が有 効であることを明らかにし,爆風被害の予測や爆発災害の調査への貢献が期待されることから,安全工 学論文賞を受賞するにふさわしい内容であるであると判断した。 著者略歴 大塚輝人 所属:(独)労働安全衛生総合研究所化学安全研究グループ 学歴:平成 7 年 3 月 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了 職歴:平成 7 年 4 月 労働省産業安全研究所化学安全研究部 改組により(独)労働安全衛生総合研究所化学安全研究グループ 齋藤 務 所属:室蘭工業大学 教授 学歴:昭和 49 年 3 月 京都大学工学部航空工学科卒業 昭和 51 年 3 月 京都大学大学院工学研究科航空工学専攻修士課程修了 昭和 57 年 5 月 Ph.D. (トロント大学航空宇宙研究所)取得 職歴:昭和 56 年 9 月 ~ 昭和 58 年 10 月:トロント大学航空宇宙研究所リサーチアソシエイト 昭和 59 年 11 月 ~ 昭和 61 年 8 月:日本真空(株)勤務 昭和 61 年 8 月 ~ 平成 10 年 9月:日本クレイ(株)勤務 平成 10 年 10 月 ~ 平成 16 年 3 月:東北大学流体科学研究所 助教授 平成 16 年 4 月 ~ 現在 : 室蘭工業大学生産システム工学系専攻 教授 専門:衝撃波工学,高速流体力学,数値流体力学 所属学会(現在) :日本機械学会 日本航空宇宙学界 可視化情報学会 日本エム・イー学会 安全工学会 国際衝撃波学会(ISWI) 吉川 典彦 学歴:昭和 49 年 3 月 名古屋大学工学部航空学科卒業 昭和 49 年 4 月 名古屋大学大学院工学研究科航空工学専攻修士課程入学 (昭和 49 年 10 月~昭和 51 年 9 月休学,昭和 51 年 9 月退学) 昭和 49 年 10 月 カナダ マクギル大学大学院 機械工学専攻博士課程入学 昭和 55 年 11 月 職歴:昭和 55 年9月 昭和 56 年 4 月 昭和 59 年 4 月 昭和 61 年 8 月 昭和 62 年7月 平成 7 年 4 月 平成 12 年 12 月 博士(Ph.D.)の学位取得 豊橋技術科学大学工学部教務職員 豊橋技術科学大学工学部助手 豊橋技術科学大学技術開発センター講師 豊橋技術科学大学技術開発センター助教授 豊橋技術科学大学工学部助教授 名古屋大学大学院工学研究科助教授 名古屋大学大学院工学研究科教授 現在に至る 専門:気体燃焼工学,レーザー計測,安全工学 所属学会(現在) :日本燃焼学会,安全工学会,日本航空宇宙学会,日本機械学会 他 委員会(現在):NEDO 評価委員会委員
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