環境創造業としての新たな挑戦

時の言葉
環境創造業としての新たな挑戦
株式会社大坂組
代表取締役社長 経営者としての私の心構えに転機をもたら
したのは、今から20年程前に味わった苦い経
大坂 憲一
け、目につけるに至ったのが、個人的にも興
味のあった環境関連分野です。
験でした。受注した大型区画整理案件に思わ
陸奥湾ではここ10数年来、海洋環境の変化
ぬトラブルが発生し、大きな負債を背負い込
によって、海洋生物たちにとって重要な生息
みました。返済には大変苦労をしました。高
環境であるアマモ場の疲弊が急速に進行して
い勉強代を支払う結果となりましたが、そこ
います。そこで漁業関係者などからの協力も
から学んだものも多く、当社の存在意義を改
得て、人工漁礁によるアマモ場再生の研究に
めて考え直すキッカケもつくってくれました。
着手し、平成20年には同業者とともに会社を
地場ゼネコンとは“地域に雇用を生み出し、
立ち上げ、コンクリート製のアマモ育成漁礁
地域の元気をお手伝いする”産業である。そ
「竜宮礁」
(特許取得)を陸奥湾に実際に沈め、
れが私なりに導きだした結論でした。苦しい
海洋生物育成の実証プロジェクトを開始しま
時期を一緒に乗り越えてきてくれた社員たち
した。ようやく事業化の段階が見えてきてい
と、問題解決後にハワイまで社員旅行に出掛
ます。
けられたことが、強く印象に残っています。
また同年には農業法人
「ファーム月光の森」
その後も社員と仕事を続けてこられたことに
を設立し、カシス栽培、およびカシス加工品
も感謝しています。
の開発・販売事業などに着手しました。他に
2 代目社長(父)は、
「嘘をつかない」こと、
「人を裏切らない」こと、すなわち信頼の大
切さを常々説いていました。会社にとって「信
頼」が一番の財産であることを改めて痛感さ
せられた出来事でした。
公共事業費削減の流れが加速度的に進んだ
この10年あまり、当社を含め地場ゼネコンの
多くが大苦戦を強いられてきました。知恵を
も、野内川でのイワナの孵化・放流事業や間
伐材を活用した木製遮音壁事業などに取り組
んでいます。
このような事業は、環境への貢献と同時に、
事業としての仕組みの考案・整備を通じて雇
用の場づくり、地域の元気づくりへの寄与が
期待されます。
3 代目社長に就いてから間もなく、組織の
出し合い工夫を重ね、培ってきた地元との信
簡素化、
集約化など組織改革を断行しました。
頼関係のなかで、何とか今日まで、一定の業
環境創造業をビジョンに掲げて、これからも
績を上げることができましたが、先行きには
既成の土木・建設業の枠にとらわれない新領
危機感を抱き続けています。考え、模索を続
域へと、挑戦を続けてまいります。
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