2015 年3月 26 日 トヨタ・レーシングとTS040 HYBRID WECチャンピオン連覇とル・マン勝利へ照準 トヨタ・レーシングは 2015 年の世界耐久選手権(WEC)に、マニュファクチャラー/ドライバーの“ダブルタ イトル”ホルダーとして参戦します。 トヨタ自動車は、2014 年に WEC で好成績を挙げた結果、日本の自動車メーカーとして初めて世界耐久選手権 を制した企業になりました。同時にトヨタ車を駆ったアンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブエミがドライ バーズ選手権タイトルを獲得しています。 スピードだけでなくエネルギー効率が性能を決める重要な要素になった昨年の WEC で、TS040 HYBRID は8 戦中5戦という記録を達成することができました。 2015 年型 TS040 HYBRID は、2014 年にタイトルを獲得した TS040 HYBRID の進化モデルです。進化型とは いえ、空力を最新のものに改良したのを始め、ボディ前端のクラッシャブルストラクチャーを含めて見直し、タイ ヤを今まで以上に効率良く使える様にサスペンションを設計し直し、加えて重量の軽減に努めました。 1 2015 年型 TS040 HYBRID は、これまで高い信頼性を誇ってきたトヨタ・ハイブリッド・システム・レーシン グ(THS-R)をパワートレインに採用します。このシステムは非常に高い熱効率を誇り、総出力 1000 馬力以上を 発揮します。 昨シーズン同様、TS040 HYBRID の ERS(エネルギー回生システム)は放出エネルギー量6MJ を採用します が、更なる性能のためスーパーキャパシタの構造変更も行っています。 チームは今年もふたつの空力パッケージを準備し、 今週ここポールリカールで両方をテストします。ル・ マン仕様は高速なル・マンのサーキットでの走行に向 けて準備したもので、もう一方のスプリント・パッケ ージはリアウィング、エンジンカバー、フロントのボ ディワーク等に手を加え、高いダウンフォースを発生 しています。 今年の TS040 HYBRID は昨年のル・マン 24 時間レ ースが終了するとすぐに開発に取りかかり、今年の1 月 13 日にポールリカールで初走行を行いました。それ からチームはモーターランド・アラゴン(スペイン) で2回、ポルティマオ(ポルトガル)で1回、3日間 にわたるテスト走行を行い、今日の発表会までに2万 5000km の走行をこなしました。 TS040 HYBRID #1 号車の運転席には 2014 年のチ ャンピオン・コンビであるアンソニー・デビッドソン とセバスチャン・ブエミ、そして今年は初めて WEC 全 戦出場となる中嶋一貴が乗ります。#2 号車にはアレッ クス・ブルツ、ステファン・サラザンに加え、2014 年 はテスト/リザーブ・ドライバーとして第7戦バーレーン6時間レース優勝の一角を担ったマイク・コンウェイが 全戦走ります。 コンウェイのレース参戦に伴い、新たにテスト/リザーブ・ドライバーに採用されたのは小林可夢偉です。彼は 2009 年のトヨタ最後の F1 グランプリ(アブダビ GP)で6位に入る実力を見せました。今年は日本国内のスーパ ーフォーミュラに参戦、同時にトヨタの WEC ドライバーラインアップに加わりました。ニコラス・ラピエールは 3シーズンをレース・ドライバーとして戦った後、今年はテスト兼開発ドライバーとして参加します。 今年、ドライバーを中心にトヨタ・レーシングは変革の時期を迎えましたが、ケルンに本拠を置き、トヨタ WEC 活動の中心である TMG(トヨタ・モータースポーツ GmbH)でも人事異動が行われました。永く TMG の社長を 務めてきた木下美明が、4月1日付けで日本に帰国、トヨタ自動車で新しいポストに就きます。 トヨタの WEC 参戦プロジェクトの長期継続の確約、世界耐久選手権タイトルの獲得、世界ラリー選手権(WRC) への参戦復帰という重要な仕事を終えた木下は、4月の WEC 開幕戦シルバーストーン6時間レースを最後に日本 に帰国する予定です。TMG のスタッフ一同、木下が TMG と TMG のモータースポーツ活動に対して注いでくれた 計り知れなく大きな貢献に対し、心から感謝し、新しいポジションでの成功を期待しています。 2 木下の TMG 社長職および WEC チーム代表からの離任に伴い行われた人事で、佐藤俊男が TMG と WEC チーム 代表に新しく就任します。佐藤はトヨタが F1 グランプリに参戦していた時期にエンジン担当技術者として TMG で働いており、いわば復帰と言うことになります。モータースポーツを離れていた期間、佐藤はトヨタとレクサス においてハイブリッドシステムの開発に携わっており、膨大なハイブリッド技術を持っての TMG 復帰となります。 以上は TMG 内部の変更ですが、2015 年は WEC のレギュレーションにもいくつかの変更が見られます。まずエ ンジンに関しては、1シーズンを通して5基までの使用しか許されなくなります。とはいえ、過去3シーズンに於 いていずれのチームも5基以上のエンジンは使用していません。タイヤに関しても、バーレーン、上海、ル・マン 以外のレースでは、練習走行ではスリックタイヤは最大4セット、予選と決勝では6セットまでしか使用出来ませ ん。但し、予選・決勝用には、バーレーンと上海は8セット、ル・マンは 11 セットまで使用可能となります。 ボディワークの柔軟度に関しても新しい規定が導入されました。スプリッター、リアウィング、ディフューザー、 プランクなどが走行中規定以上に変形しないようにする必要があります。また、体重が平均 80Kg 以下の軽いドラ イバーが搭乗するときにはバラストを搭載しなければなりません。 世界チャンピオンとして挑戦を開始する 2015 年シーズン、トヨタ・レーシングはふたつのタイトルを守るため に全力で戦います。開幕戦は4月 12 日のシルバーストーン6時間レース。カレンダーは以下の通りです。 第1戦 4月 12 日 シルバーストーン6時間 第2戦 5月2日 スパ・フランコルシャン6時間 第3戦 6月 14~15 日 ル・マン 24 時間レース 第4戦 8月 30 日 ニュルブルクリンク6時間 第5戦 9月 19 日 サーキット・オブ・ジ・アメリカズ6時間 第6戦 10 月 11 日 富士6時間 第7戦 11 月 1 日 上海6時間 第8戦 11 月 21 日 バーレーン6時間 木下美明 チーム代表: TMG とモータースポーツプロジェクトから離れることになったのは寂しいです。しかし、今後も出来る限りレー スを近くから見守り、チームをサポートしたいと思っています。我々が参戦を開始した 2012 年以来、励まし、サ ポートをしてくれた WEC の関係者に感謝すると共に、耐久レースを戦う仲間の一員になれたことを誇りに思って います。今季、ゼッケン1を付けた我々の TS040 HYBRID を見られるのは本当に素晴らしいことで、残る目標は ル・マン 24 時間レースの制覇です。今シーズンは、4チームに増えた LMP1 のマニュファクチャラー全てが異な る技術アプローチで参戦するということで、挑戦はこれまで以上に素晴らしいものになるでしょう。我々は懸命に TS040 HYBRID の改良を続けてきました。今のところ、テストでの結果は勇気づけられるものです。しかし、ま だ長い戦いは始まったばかりですし、ライバル達の最初のパフォーマンスを知りたいところですが、まず開幕戦と してのシルバーストーンがとても大切だと思っています。 村田久武 モータースポーツユニット開発部部長: 我々は TS040 HYBRID をアップグレードするために努力を重ねてきました。そして、パワーユニットを含む、多 くの領域で進化を遂げました。これはトータルでの最大出力が 1000 馬力以上になり、パワーユニットのパフォー マンスがかなり向上したことを意味しています。我々の開発目標は、トータルでの最高出力と安定性を昨年よりも 高めることです。ハイブリッドシステムのパフォーマンス向上は、特にレースで距離を走行したときに、全てのサ ーキットにおいて見ることが出来るでしょう。我々の 2015 年シーズンへ向けたアップグレードは、より良いハイ ブリッドカーを生み出すためのステップであり、何度も言っていますが、TS040 HYBRID によって培われたコン ポーネントおよび技術は将来、トヨタの市販車に活かされることになります。 3 パスカル・バセロン テクニカル・ディレクター: 車両規則が大きく変わらなかったので、我々のコンセプトは明快で、2014 年シーズン以上のパフォーマンスを出 すことです。そのため、2015 年型の TS040 HYBRID は、完全な新型ではありませんが、ほぼ全ての面で進化を 遂げていると言えます。一見あまり変わっていないように見えるかもしれませんが、部品の 80%はデザインし直 しました。今年も我々はハイダウンフォース仕様とローダウンフォース仕様を用意します。理由は例年と同じく、 ル・マンは他の多くのコースとは要求される性能が大きく異なるからです。現行の車両規則では、空気抵抗を低く 保ったままこれらのパッケージにおいて最大の効果を得るには、リアウィングやエンジンカバー、そして車両先端 部の変更が有効となります。これまでのところ「1チームだけのレース」であるテストにおいて、満足行く結果を 得ています。我々は、残された数週間で、開幕戦へ向けた準備を終えなくてはなりません。 アンソニー・デビッドソン (#1 TS040 HYBRID): ゼッケン1を自分たちの車両に付けられるというのは本当に素晴らしいことで、これを堅守したいと思っています。 昨年はチャンピオンを獲得し最高の気分でしたが、最大のレースであるル・マン 24 時間で勝てませんでした。私 個人よりも、チームとして、この6月の偉大なレースに勝つことが目標です。競争がさらに厳しいものになること は分かっており、昨年以上に運に恵まれることを望んでいます。ル・マン 24 時間レースでは運を味方につけるこ とも必要です。現行の規則になって2年目のシーズンなので、我々の TS040 HYBRID は多くの領域で正常進化を 遂げました。第一印象は良好で、今重要なことは改良を続け、チャンスを逃さないことです。 セバスチャン・ブエミ (#1 TS040 HYBRID): ゼッケン1番を付けてのシーズンスタートはいつでも嬉しいものです。それは昨年の我々が成し遂げたことを表し ているからです。今年も出来る限り多くのレースで勝ちたいとは思っていますが、最大の目標は間違いなくル・マ ン 24 時間での勝利です。ル・マン 24 時間は獲得ポイントも倍なので、シリーズタイトル争いにも大きな助けと なります。我々には昨年の時点で既に、素晴らしい TS040 HYBRID があるので、大きな変更をすることなく、さ らなる進化を目指しています。全ての領域で少しずつ改良を重ねていけば、それはラップタイム向上につながりま す。我々の努力が報われ、昨年同様に上位争いが続けられることを期待しています。 中嶋一貴 (#1 TS040 HYBRID): WEC のシリーズにフル参戦出来ることになって最高の気分です。昨年は何戦かを TV で観戦することになり、チ ームと共に戦うことが出来ませんでした。それだけにシルバーストーンでの開幕戦が待ち切れません。今年はアン ソニー、セバスチャンと組むということで、きっと楽しいものになるでしょう。チーム構成は変わりますが、我々 は2台で一つのチームとして同じ目標を持っています。今年は昨年同様、全てのレースでトップを狙い、ゼッケン 1を守れればと思っています。ゼッケン1が付いた自分の車両を見るのは素晴らしいことです。これまでのところ、 アップデートされた TS040 HYBRID の感触は良く、自信もありますが、まだやらなくてはならない作業も残って おり、最良の状態で開幕戦を迎えられるよう準備をしなくてはなりません。 アレックス・ブルツ (#2 TS040 HYBRID): 希望に満ちた新シーズンがスタートします。我々はチームとして昨年タイトルを獲得しました。 今年の目標はそれに加えてル・マン 24 時間でも勝つことです。私自身にとっては3度目となるル・マンでの勝利 を切望しています。我々は既に最初のテストを改良型の TS040 HYBRID で行っており、2014 年よりも早いラッ プタイムをマークし、加えて信頼性でも改良は進んでいます。これらの面から見て、全てが順調と言えます。もち ろんライバルもハードワークを重ねて来ていることは分かっていますが、全体的に見れば、それが耐久レースをさ らに素晴らしくしてくれます。驚くべき技術で多くの開発が進んでいますが、それがライバルよりも上手く行って いることを願っています。 4 ステファン・サラザン (#2 TS040 HYBRID): 2014 年はタイトル獲得など、信じられないようなシーズンでしたが、もちろん今年はさらに良いシーズンにした いと願っています。我々は既に TS040 HYBRID の改良を進めており、テストは本当に上手く行っています。改良 型 TS040 HYBRID の感触は非常に良く、思い切り攻めることが出来ます。チームは驚くほどの仕事ぶりでアップ デートをこなしてくれました。我々は再び強さを見せられると思います。ライバルメーカーからの挑戦は激しく、 厳しいものになると予想されるので、我々は集中してハードワークに励まなくてはなりません。ドライバー、エン ジニア、メカニック、我々全員がベストを尽くせば、必ず良いシーズンが過ごせると思います。我々の素晴らしい チームスピリットがあれば、再び力強いシーズンが戦えるはずです。 マイク・コンウェイ (#2 TS040 HYBRID): 自分が世界チャンピオンを目指して戦えることにとても興奮しています。チームのタイトル防衛に貢献できると確 信していますし、楽しみです。アレックス、ステファンと共にまた戦えることも嬉しいですし、互いに多くを学べ ると思っています。共にプッシュし合って、我々のパッケージからベストを引き出せるはずです。私自身は昨年バ ーレーンで初勝利を挙げることが出来ましたが、今年の目標は、昨年以上の勝利です。そしてもちろん全員が、最 大のレースであるル・マン 24 時間を見据えています。戦いがどれだけ厳しいものかを伝えるのは難しいですが、 2015 年仕様の TS040 HYBRID は良好ですし、開幕戦を楽しみにしています。 小林可夢偉 (テスト兼リザーブ・ドライバー): トヨタチームに戻れて喜んでいますし、チームと共に戦えるチャンスを与えられたことに感謝しています。チーム スタッフの多くが、私がトヨタ F1 で戦っていた時を良く知っているメンバーなので、我が家に帰って来たような 気分です。すでに TS040 HYBRID でのテストは行っていますが、 最新のハイブリッド技術には感銘を受けました。 チームにとって今年も重要な年となりますが、チームスタッフ全員との強力な協力体制を築いて、TS040 HYBRID の開発に貢献出来ることを楽しみにしています。 5 TS040 HYBRID 技術仕様: タイプ ル・マン・プロトタイプ (LMP1) ボディワーク カーボンファイバーコンポジット フロントガラス ポリカーボネート ギヤボックス 横置きシーケンシャル7速ギヤボックス ギヤボックスケーシング アルミニウム ドライブシャフト CV 式三叉プランジジョイント・ドライブシャフト クラッチ ZF 製マルチディスク ディファレンシャル ヴィスカス機械ロック式ディファレンシャル サスペンション プッシュロッド式独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後) スプリング トーションバー アンチロールバー 前/後 ステアリング 油圧式パワーステアリング ブレーキ 2系統油圧式ブレーキ・システム モノブロック軽量合金キャリパー(前/後) ブレーキ・ディスク カーボン製ベンチレーテッド・ディスク(前/後) ホイール RAYS 製マグネシウム鍛造ホイール フロントホイール 13 x 18 inch リアホイール 13 x 18 inch タイヤ ミシュラン・ラジアル フロントタイヤ・サイズ 31/71-18 リアタイヤ・サイズ 31/71-18 全長 4650 mm 全幅 1900 mm 全高 1050 mm 燃料タンク容量 68.5 リッター パワートレイン TOYOTA HYBRID System - Racing(THS-R) エンジン 90° V8 自然吸気エンジン エンジン排気量 3.7 リッター 最高出力 520 馬力以上 燃料 ガソリン バルブ数 4 ハイブリッド最高出力 480 馬力以上(前後併せて) トータル最高出力 1000 馬力以上(エンジン及びハイブリッドシステム) キャパシタ 日清紡ホールディングス 前輪ハイブリッド・モーター アイシン AW 後輪ハイブリッド・モーター デンソー インバータ デンソー 以上 6
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