ユネスコ無形文化遺産登録に向けて(1.96MB)

長浜の伝 統が世 界の宝に
日本三大山車祭の一つで、国の重要無形民俗文化財に指定されている長浜曳山まつり。
平成28年中には、長浜曳山まつりを含む全国33の「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に
登録予定となっております。そんな誇るべき長浜の伝統をご紹介いたします。
長浜信用金庫は、無形文化遺産登録を応援しています。
瀬田町組
伊部町組
細緻な金工に目を奪われる
豪華な飾り金具が舞台前柱を煌
びやかにしています。色絵象嵌と
呼ばれる手法で「高砂の尉と姥」
が表現されています。高砂は能の
作品の一つで夫婦愛と長寿を寿
ぐ大変めでたい作品で「高砂や、
この浦舟に帆を上げて、」のフレ
ーズは結婚披露宴の定番といっ
ても過言ではありません。飾り金
具は、年老いた男女の表情を白
髪や顔の皺、骨ばった手など実に
細緻に表現してあり、膳所の名工
奥村菅次の作と言われています。
翁山を代表する見送り幕は、正
式には国指定重要文化財 長浜
祭翁山飾毛綴 附 鍍金飾金具と
言います。 16世紀ベルギーで制
作されたタペストリーで二人の戦
士を中心に馬上の騎士たちが織
り出されています。面幕は、
「猿猴
促月図」
「鯉の滝登り」の二幕が
あります。前者は、猿が水面に
映った月を掴もうと木につかまり
ながら長い手を懸命に伸ばして
いる図柄で今年の干支にぴった
りの図柄でもあります。
▲前柱飾金具
「尉」
▲タペストリーの見送り幕
神戸町組
呉服町組
羽根を広げた孔雀がシンボル
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見送り幕は国指定の逸品
大きな鵜が亭を飾る
その名の通り、舞台屋根棟上に羽
根を広げた金銅製の孔雀を置きま
す。見送り幕は、染織美術の草分
けである山鹿清華の代表作「萌
春の図」で草花に孔雀三羽を織り
出してあります。平成26年4月から
本館の修理ドックに入って解体修
理を行っていましたが、いよいよ3
月に塗り、飾り金具や亭の貴重な
装飾である玉簾などの修理が終
わり、祭に真新しい姿を見ていた
だきました。
亭には珍しいちょっと怖いような鳥
が載っています 。これは木 彫の
「鸕 」
(ろじ)が置かれているの
です。鸕はあたま、かしら、 は全
身が黒い鳥の意味で大型の鵜を
さします。鵜というと竹生島の嫌わ
れもの、糞害を思い起こしますが、
実は鳥の中でも大変賢い鳥で飼
いやすく以前は全国で鵜飼が行
われていたのです。いまでは長良
川の鵜飼など一部で観光的に行
われているだけです。
▲舞台屋根の孔雀
▲亭の鸕 ∼歴史と未 来を紐解く∼
祭礼としての長浜曳山祭
∼「礼に始まり、礼に終わる」曳山祭∼
長浜曳山祭は今年12月にユネスコ無形文化遺産に
登録される予定ですが、その対象は国指定重要無形
民俗文化財「長浜曳山祭の曳山行事」であり、祭を構
成する諸行事とそれを担う人々と換言できるでしょう。
そ
の諸行事を貫くのが「礼に始まり、礼に終わる」
という言
葉です。4月14日、
「 登り山」
といって各曳山は、飾り立て
て自町から長濱八幡宮へ向かいます。そして宮入りの
直前、筋交い橋にて御簾を掛けるなど正装し、祭礼の
総合責任者である総当番に「、、、山、正装を整えました
ので只今より神前入りいたします」
と挨拶、山の着席が
完了すると先山に対し「、、、山、着席致しました。招き扇
有り難うございました」
と挨拶、そして15日の奉納狂言
の前には「、、、山、只今より神前に曳き出し、据え付け完
了後、狂言を奉納させていただきます」
と挨拶します。
こ
のように厳格な挨拶を踏襲することにより祭礼の歴史的
重みを感じ取るとともに、次世代へ継承していく責任を
再認識するのです。
▲宮入りの挨拶
▲他山組に挨拶
∼歴史と未 来を紐解く∼
長浜曳山祭の「子ども狂言」
∼民俗芸能としての文化財∼
絢爛豪華な曳山の舞台の上では「子ども狂言」がおこ
なわれますが、世話ものあり、時代物ありとバラエティーに
富んでいるのが山の芸です。役者は5才から12才の男の
子と決まっています。現在では「長浜曳山祭の子ども狂
言」
を
「子ども歌舞伎」
とも言い習わしますが、
長浜の子ど
も狂言は、曳山の楽屋の中で太夫の語る義太夫、三味
線の伴奏とともに子どもたちがセリフを言いながら演技す
るという実にユニークな芸能なのです。義太夫浄瑠璃歌
舞伎とでもいうのでしょうか。人形浄瑠璃は大夫と三味線
の語りと伴奏に合わせて人形が演技をしますが、子ども
歌舞伎は、
人形の代わりに子どもが演じ、
歌舞伎のように
セリフを語るのです。
このように独特の芸風から狂言とか
歌舞伎と呼ばれるようになったのかも。長浜曳山祭の子
ども狂言は、
そのユニークな芸態から地域的特色を示す
大事な民俗芸能、舞台芸として「国選択無形民俗文化
財」
(昭和45年6月8日)
に選ばれています。
▲太夫が語り三味線が合わせる
▲晴れの日を迎えるまで厳しい練習が続く
長浜市曳山博物館・中島誠一館長に監修していただきました。 写真提供:
(公財)長浜曳山文化協会
表紙は、今年度の長浜曳山まつり出番山の写真です。左上:翁山、右上:孔雀山、右下:常磐山、左下:萬歳樓
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