北九州港関連記事:「内外で注目される北九州市の優位性」

北九州港セミナー in 東京
内外で注目される北九州市の優位性
北九州市、北九州港振興協会などの
された日産自動車九州の児玉社長は、
相互通行を達成した事例などを紹介し
官民団体が主催する恒例の「北九州港
「物流コスト低減のため、生産の地場
た。
セミナー i n 東京」 がさる2月1 3日、
化や国内サプライヤーの近接化が事業
また、日産自動車九州は、部品の輸
東京のグランドプリンスホテル新高輪
の重要な柱となっている」と述べ九州
出入量の大半を北九州港経由で扱って
で物流・荷主関係者など約6 0 0 名を招
や東アジア近隣国からの部品調達や、
いる(門司:輸出7,743 FEU /年、輸
いて開催された。
国内の部品メーカー(サプライヤー)
入5,762 FEU /年、ひびきCT761FEU /
セミナーでは、橋本哲治・北九州市
との近接化の重要性を強調し、具体的
年)現状を踏まえ「北九州港の更なる
港湾空港局長が主催者を代表して挨拶
な取り組みを紹介した。
競争力強化のため行政の支援を期待し
したのに続き、北橋健治・北九州市長
現在、福岡県苅田町の同社工場から
たい」と表明。
が登壇、1963年の5市合併から昨年、
半径約50km圏内に44社あるサプライヤ
具体的には①ドレージ道路網整備等
市政50周年を迎えた北九州市の将来展
ーの生産工場の近接化、すなわち生産
の陸送コストダウンの施策②釜山・上
望や港湾・物流インフラの概要、今後
の「同期化」を順次促進している状況
海ハブを活用した、西から東への物流
の取り組みなどを紹介した。
やL C C(低コスト生産国)からの輸入
ルートの活性化③リードタイム削減の
その後、北九州港の最大のユーザー
コスト削減では月次発注からデイリー
ための安価なRORO航路(釜山・上海)
の1社である日産自動車九州株式会社
発注とすることで在庫削減を実現した
の開設④生鮮食料品、一般商業・工業
の児玉幸信社長が「グローバル競争時
( 2 5日が3日)ほか、コンテナ船輸送
部品等を混載、荷量の増大による配船
代の日産自動車九州のSCM 戦略」をテ
からフェリー輸送へシフトし、併せて
頻度アップ⑤シームレス一貫輸送の実
ーマに講演した。
梱包の簡素化(国内準拠化)、日韓ダ
現、などが競争力強化の方向性として
2011年に日産自動車本体から分社化
ブルナンバー・シャーシの導入による
考えられると指摘した。
た。これは、北九州市若松区の響灘地
課題の解決などに取り組む。
区で二酸化炭素および排気ガスを排出
今回、北九州市で導入される電気バ
しないバス運行システムで、この事業
スを特徴づけるカーボンファイバーや
は再生可能エネルギーである太陽光で
リチウムイオン電池といった、キーマ
発電された電力を大型蓄電池へ蓄電し
テリアルおよびコアデバイスは東レと
その電力を電気バスに充電し、バスを
三菱重工が韓国及び日本で製造する。
新たな成長への
チャレンジ 運行することで、二酸化炭素などの廃
これらは韓国の最終組立工場へ送ら
前述したとおり、北九州市は昨年2
棄物を一切排出しない「システム」の
れて電気バスに組み上げられる。完成
月10日、市政5 0周年を迎えた。
構築と運営をめざす、きわめて画期的
車両は、釜山港から積み出され、北九
昭和3 8年( 1 9 6 3)、門司・小倉・若
な取り組みである。
州のひびきコンテナターミナルで陸揚
松・八幡・戸畑の5市による世界に類
具体的には、ひびき灘開発及び東レ
げ・通関後、北九州市内において日本
のない多都市対等合併で発足した北九
エンジニアリングの両社が新たに事業
の交通事情に合った仕様に架装を施し
州市は、「世界の環境首都」を目指し
運営会社(
「HKK&TEK 合同会社」)を
車検を受けることで日韓国際水平分業
て様々な活動を展開している。
設立し事業に取り組む。北九州市は、
による電気バスの製造が完了する。
本誌2月号でも既報のとおり、北九
バス路線での電気バスの運行を担当、
今回の電気バスの場合は、国際水平
州市は日本で初めて「ゼロエミッショ
さらに電気バスの供給者である三菱重
分業体制で製造されるため、価格競争
ン交通システム」事業をスタートさせ
工の協力を得て、運行に関する技術的
力を維持しつつ本システムと電気バス
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CONTAINER
AGE
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の普及に弾みがつくことにも期待が寄
バスは2010年10月から韓国ソウル市の
▶阪九フェリー/毎日2便(泉大津と
せられている。電気バスは、昨年末、
南部に位置する南山(ナムサン)と市
神戸)
釜山港でフラットラック・コンテナに
街地を結ぶ路線に9台が投入され運行
▶名門大洋フェリー/毎日2便(大阪
積み込まれ、ひびきコンテナターミナ
中。2013年10月現在、合計139 万kmの
南港)
ルで陸揚げされた後、最終プロセスを
運行距離に達している。また、このほ
▶オーシャン東九フェリー/毎日1便
経て正式デビューを待つ段階にある。
か1 4台が現在、ソウル市内の路線で稼
電気バスが試験走行を終え、北九州
働している。
▶トヨフジ海運・フジトランスコーポ
市内の営業路線に投入されるのは本年
北九州市内の路線に投入される電気
レーション/週4便(名古屋)
3月末を予定。それ以降、下記3段階
バスは、国土交通省が実施する「地域
【小倉】
でシステムが完成する。
交通グリーン化事業」の支援を受けて
▶川崎近海汽船/週2便(常陸那珂)
(徳島・東京)
【フェーズ1】
導入し、一般的なディーゼルバスと同
【浅野】
太陽光発電設備が響灘地区で竣工す
程度の価格を目標にしているが、今後
▶松山・小倉フェリー/毎日1便運航
るのは本年9月末の予定である。その
電気バスが普及し量産効果が発揮され
(小倉(浅野)〜松山)
間は、一般の系統電力から充電し電気
れば、より安価になることが見込まれ
以上のうち、新門司地区に就航する
バスを運行する。
る。電気バスは、環境面からも大きな
内航長距離フェリー3社(阪九フェリ
【フェーズ2】
期待が寄せられているが、今回、事業
ー・オーシャントランス・名門大洋フ
本年10月以降は電気バスが太陽光発
化がスタートするゼロエミッション交
ェリー)は2015年以降、投入船舶12隻
電設備から電力の供給を受ける。この
通システムは、再生可能エネルギーと
中8隻を大型船にリプレースする計画
時点で、二酸化炭素を全く排出しない
の親和性がとりわけ高いことなどを踏
を発表している。
「ゼロエミッション交通システム」が
まえると、今後のマーケット需要も大
稼働することになるが、天候が許さな
いに期待されるところだ。
い場合は一般系統電力から充電する。
【フェーズ3】
マリナクロス新門司に
九州最大の輸出中古車施設
豊富な航路ネットワーク
こうしたなか、イースタンカーライ
2 0 1 5年4月に4 0f t型の大型蓄電池を
投入。蓄電することで気象条件を問わ
北九州港の外航定期コンテナ航路数
ナーの100 %子会社・ECL エージェン
ず再生可能エネルギーで発電した電力
は本年1月1日現在、 月間3 9航路1 9 7
シーが3月から中古車輸出サポートサ
が利用可能になり、「ゼロエミッショ
便に及ぶ(ロシア航路1航路1便・韓
ービスを行うため、新門司港の直背後
ン交通システム」が名実ともに完成す
国航路1 4航路96便・中国航路《香港を
の産業団地「マリナクロス新門司」に
る。
含む》1 2航路52便・台湾航路3航路12
進出することが決まった(別掲・写真
便・東南アジア9航路36便)。
参照)。
今回の電気バスは、初期モデルから
一方、北九州港は、内航フェリー・
同社は、中古車輸出事業者から中古
改良を重ねており、輸入に際しても、
RORO網が充実していることで知られる
車を預かり,輸出手続きの代行やモー
国の指定機関の助言を得て安全性を確
が、それを見ると次の通りである。
タープールの運営、搬送を行う事業を
認している。また、ベースとなる電気
【新門司】
展開する。事業面積は約6 1, 0 0 0㎡で、
輸出中古車を保管する施設の規模とし
ては九州最大を誇る。
同社は、「マリナクロス新門司」に
進出を決めた理由として、①新門司IC
に近く東九州自動車道の宮崎市までの
延伸により搬送がさらに容易になる②
団地内に擁するフェリーターミナルを
活用し大阪や神戸間の航走も容易であ
る③新門司地区における航路等の港湾
施設の整備が進めば、当該地区からの
船積みが可能になる、などを挙げてい
る。現在、マリナクロス新門司では、
「更なる物流拠点化」に取り組んでお
り、既に稼働しているトヨタ輸送自動
車物流センターに加え、今回の進出に
より自動車関連産業の集積が一層進む
▲盛況だった「北九州港セミナー i n東京」
22
ことが期待されている。
CONTAINER
AGE
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北九州市の優位性
北九州市は、物流拠点・物流基盤が
充実している点が他港にはない優位性
として挙げられる。
具体的には、北九州空港( 2 4時間運
用の海上空港)・北九州港(豊富な国
際コンテナ航路と西日本最大級の国内
フェリー航路)・北九州貨物ターミナ
ル駅(全国と結ばれるJ R貨物拠点駅)
の、まさに陸・海・空を網羅する充実
した物流インフラ。それに加え、豊富
な産業用地として①響灘臨海工業団地
②マリナクロス新門司③北九州空港跡
地産業団地、が控えている。
冒頭でふれた通り、世界の環境首都
ECLエージェンシー㈱
事業用地
をめざす北九州市では、いま、着々と
「環境で未来を支えるものづくり都市」
の形成が進んでいる。それは──、
▲「マリナクロス新門司」に九州最大の輸出中古車施設
▶ロボット産業(高齢者・人口減社会
を支えるロボット産業拠点)
▶環境産業(低炭素、資源問題を解決
値ものづくりクラスターの基盤として
▶自動車産業(低炭素社会をリードす
する環境産業拠点)
注目されているのが「地域エネルギー
る次世代自動車産業拠点)
──で、それらを下支えする高付加価
拠点化」と「物流拠点化」である。■
■太刀浦コンテナターミナル
アジア方面を中心に豊富な定期コンテナ航路が就航して
田野浦RORO
ターミナル
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