2.6 電子ビームによるプラズマ生成

翁ワ窃 σ
誌
つ
2.プラズマ生成の基礎
2.6電子ビームによるプラズマ生成
原 民 夫
(理化学研究所〉
(1993年5月19日受理)
Plasma Pro(luction by Electron Beam
Tam重o Hara
(Received May19,1993)
Abstract
A br星ef review o£plasma production by a low energy and high current electron beam is
presented. The plasma source is able to steadily pro(iuce a high(iensity plasma with a large
(iiameter. Thissourcewillopenanewway{orlowenergyionprocessingsuchasdamage互ess
ion etching an(玉 (leposition.
Keywords:
electron beam,plasma catho(ie,plasma production,electron beam exc辻e〔1plasma,ion source,
(iry etching,
ネルギーに差があり,電場で電子を加速しようと
1.はじめに
一般に,プラズマの定常的生成法は,直流放
電,高周波放電およびマイクロ波放電だけである
しても,まず低い電離エネルギーを持つガスが優
、先的に電離される.エネルギーの高い電子ほど,
と考えられがちである.これらは用いる電源の周
電離過程や励起過程の確率が大きいため,このガ
波数によって分類されてはいるが,基本的には放
ス分子との衝突によってエネルギーを失い易い。
電空間に電場を誘起させて,プラズマ中の自由電
そのため電子温度が低く保たれ,他のガスを充分
子を加速し,その結果生じる高エネルギー電子に
に電離できなくなる.全てのガス種を同時に電離
よって中性粒子を電離している点では同じであ
させるために,しばしば高繰り返しパルス放電法
る.
が用いられている.パルス放電の立ち上がり時に
ドライエッチングや薄膜形成といったプラズマ
は,過渡的に高い電場が印加でき,この時電子
は,全てのガス種を電離するのに十分な高エネル
プロセスにおいては,混合ガスのプラズマを生成
する必要がしばしばある.このような場合,ガス
ギーまで加速できる.もし,適当な定常運転の電
の混合比と生成されたプラズマ中のイオンの密度
子ビーム源が利用できれば,混合ガスの場合でも
比は一般に大きく異なる.ガス種によって電離工
その混合比とプラズマ中のイオンの密度比をほぼ
丁勉6加3拓渉%惚ρゾ」P勉y3¢6α1α%40み6解づoα!1∼θ36απ勉.四αた0351−01。
647
プラズマ・核融合学会誌 第69巻第6号 1993年6月
同じにできるはずである.
Ho + o 一一》 Sum{Hon.や (n手1}e}
10−15
従来,電子ビームで高密度プラズマを発生させ
O Smi璽h.P.T.1.930}
嘱しi餉O,’.W.093‘》
A3Qyd.R.し。Groon,G.W.ζ、958》
3KrebOf【O,P.曾電01.(’952》
る場合には,高エネルギー電子を高いガス圧力の
10−16
中に入射する方法が用いられてきた.これらは相
9
0
璽〇一亀7
9①
〇
の
の
o
』
圧力が低いプロセッシングプラズマの場合には,
o
卿糎
一
の
起源として知られている.しかし,使用するガス
バ
梅
⊂
するエキシマーレーザーまたは化学レーザーの励
◎ Schrcr曙.3.し.OO Ol.‘1965}
躍 SChrcm,S.し.o監α豆.い965〕
属Gqudh,A,Hklgo恥Gn.R,{15喝7,
∈
対論的電子ビーみ源と呼ばれ,高ガス圧中で動作
サA5㍉』【dl,R、K.』くrgpc,M.》.q引53診
← RoρP, D, o篭 08。 {19∈5,
10。竃■
」
甲
高エネルギーの電子はガス中を素通りしてしまう
ので有効ではない.ここでは,低エネルギー電子
10−19
ビームにより,低いガス圧中で高密度プラズマを
i
I
102
10曾
生成する方法とその応用について述べる.
101
粕‘
τ05
ELectron energy (dV)
2.高効率プラズマ生成法の必要性
図1 電子衝突によるHeの電離断面積[11
プラズマを利用するドライエッチング技術は,
IC,LSlの基本製造技術として広く用いられ,そ
プラズマや電子サイクロトロン共鳴現象を利用す
のデバイスの微細化は年々加速される傾向にあ
るECRプラズマが盛んに研究されている.しか
る.それに伴い高精度の異方性エッチングの必要
し,試料に垂直に強い磁場が印加されているた
から10−3Torr前後の低ガス圧下で運転できる枚
め,均質な大直径プラズマを発生することが難し
葉式ドライエッチング装置が重要になってきた.
い,プラズマパラメータの制御が容易でない,な
この様な低ガス圧下では従来のプラズマ生成法で
どの問題点を抱えている.
は十分なプラズマ密度は期待できない.一方,結
これまでのエッチング装置におけるプラズマ生
晶の照射損傷をできるだけ少なくすることも大き
成は,基本的には放電プラズマ中の電子による衝
な課題の一つである.この照射損傷を避けるため
にはイオンエネルギーを低く保たなければならな
突電離により維持されている.この電子は数eV
の温度を持つマックスウェル分布に近いエネルギ
い.従って,実用的なエッチング速度を持つため
ー分布を持つ.図1に電子衝突による電離断面積
には,低ガス圧にもかかわらず従来よりさらに高
を示す[1].この図から明らかな様に,多くの原
密度のプラズマを生成できる新しい型のプラズマ
子に対する電子衝突による励起及び電離の断面積
生成法を開発し,これを利用した低エネルギーイ
は電子エネルギーが約80eVの時最大値をとるの
オンエッチングが必要となる.現在,高周波放電
で,放電プラズマでは一部の高エネルギー電子の
GAS IN
βAS旧
↓
HEATER
EしECTROMAGNET
1
EしECTRON GUN
METAし SOURCE RESERVOIR
TO PUMP
図2 直流グロー放電型電子銃を用いた金属蒸気レーザー[2]
648
電子ビームによるプラズマ生成
講 座
原
みが原子の電離に寄与するだけである.その結
果,高密度プラズマを生成するには大電流放電を
柱プラズマよりも20倍も高い.カソードから放
必要とする.電子による衝突電離の効率を向上す
電場で加速され,電子ビームとなって効率よくガ
るには,電子を原子の電離断面積が大きくなるエ
ス分子を電離しているのである.この型に属する
出された電子が,カソードダークスペースの強い
ネルギー領域まで加速することである.すなわ
ものとしては,ホローカソード放電がある.
ち,理想的なプラズマ生成法は,「原子の電離断
この原理を用いたものが,図2に示される直流
面積が最大になる80−100eV前後のエネルギーを
グロー放電型電子銃である[2].この電子銃は電
持つ大電流電子ビーム」Fを利用することである.
子を2.5keVまで加速できる.その時,ビーム電
電子は電場によって加速を受け,運動エネルギー
を得る.問題は,電子の加速方法をどう改善する
流も2A程度に達する.この電子銃は,比較的効
率よくプラズマを生成することが出来るので,1
かにある.
Torr前後で動作する金属蒸気レーザー装置に応
用された.しかし,この装置では電子ビームのエ
3.電子ビーム発生技術
ネルギーと電流を独立には制御できない.特に,
プラズマ生成のための電子ビーム発生法は,直
電子ビームエネルギーが100eV程度のときには,
流グロー放電型電子銃とプラズマカソードを用い
ほんのわずかのビーム電流しか引き出せない.こ
る阻止放電型電子銃の2つに分けることができ
れは,固体のカソード表面からイオン衝撃により
る.
電子を放出しているためであり,これ以上の電子
ビームの大電流化は困難である.
1)直流グロー放電型電子銃
定常放電中の負グローは電子ビームによって励
2)プラズマカソードを用いる阻止放電型電子銃
起されたプラズマであり,一般にその密度は陽光
固体のカソードの代わりに,放電プラズマをカ
D際mt→
K SI S2 A
ExtractiQnSlit 臣raday Cup
q
↓lfc Pumpナ Vacc!dec
1Aナ
Iext童
Vac
1dA
AA
A
Vext
牌
図3 放電プラズマを電子源とする電子銃を用いたイオン注入機用イオン源[3]
649
フ。ラズマ・核融合学会誌 第69巻第6号 1993年6月
ソードとする電子銃を用いれば上記の問題点が解
Ar Gas 2sccm
Vac= 300V +
決される.直流放電を維持するには,気体の圧力
200V 一企一
pと電極間距離dの積pdを一定値以上にする必
要がある.逆に,pd積を小さくすれば阻止放電
2.0
100V −O一
状態となり,電子ビームを加速できる.この原理
に基づいた電子銃では,電子源である放電プラズ
マの放電電流の7−8割の電子ビーム電流を低加速
∼
凄1。0
電圧(50−300V)にて引き出すことが可能である.
さらに,放電電流を制御することによって,電子
ビームのエネルギーと電流が独立に制御できると
いう大きな特徴を持つ.このため本方式の電子銃
は,電子衝突による原子の電離断面積が最大にな
るエネルギー領域において,大電流の電子ビーム
0 0.5 、.0 1.5 2.0 2.5
を引き出すことができる.また,応用上重要であ
る10−3Torrから1Torrという広いガス圧範囲で
Id(A)
高密度のプラズマを生成することもできる.
図3にこの電子銃をイオン注入機用イオン源に
図4 放電プラズマを電子源とする電子銃の特性[3]
応用した一例を示す[3].直流放電がカソードK
とアノードS2の間で維持される.ここでS2と加
速電極Aは多くの小さな孔を持ち,接近して平
行に配置されている.電極AにS2より正の電圧
効率よく高密度プラズマを生成できる.
を印加することによって,S2付近のプラズマか
は,放電プラズマ領域(K−S3),電子加速領域
装置の概略を図5に示す.その主な構成部分
ら電子が効率良く引き出され,電極Aの背後の
(S3−A1),及び電子ビームによってプラズマが生
空問で高密度プラズマが生成される.この電子銃
成されるプラズマ領域(A・一丁〉の3つから成る.
の特性を測定した一例が図4に示されている.低
陰極はタンタルパイプであり,この中を通して
い加速電圧でも約2Aのビーム電流が確認され
Arガスを導入する.領域(K−S、),(S2−S3),及び
る.しかし,この電子ビーム源は,多孔電極の過
(S3−A1)の典型的な動作ガス圧力は,それぞれ
熱などのために数アンペア以上の電子ビームを加
0。8,10−2,10}4Torrである.プラズマ領域
(A、一丁)は別のガス導入口を持っているので,こ
速することは困難である.
の領域のガス圧を他の領域とは独立に制御でき
4.電子ビーム励起プラズマ(EBEP:
ElectronBeamExcitedPlasma)装
及び15mm(A、)である.この装置には,電子ビ
置[4墨
ームやプラズマの壁への拡散を抑えるため,
ドライプロセス用高密度プラズマを生成するた
300−600Gの一様磁場が軸方向に印加されてい
めには,10A以上の大電流の低エネルギー電子
る.
る.各電極の内径は5mm(K),7mm(S、一S3),
ビームが必要である.このような大電流電子ビー
一般に,放電プラズマから電子を加速して引き
ムを加速することは,上記の方法では難しい.こ
出そうとしても,電子自身の空問電荷により制限
の目的のためには,単孔電極を用いて磁場に沿っ
され,極めて少ないビーム電流しか引き出せな
て加速する方式が有効である.100eV前後の運
い.この装置では,プラズマ領域に気体を導入す
動エネルギーを持つ大電流電子ビームを加速でき
ることにより,電子ビームによってこの領域でプ
るので,10一3Torrと言う低ガス圧下でも非常に
ラズマが生成される.このプラズマ中の正イオン
650
電子ビームによるプラズマ生成
講 座
CAT HODE K
ら
原
TARGE†T Ar
一一7 ↓SI S2 S3 A1
Ar→
Rdd Rl A
↓
R2
↓τO PU胡P
↓ GLASS TUBE
A、’ マ
V亡 Ii
Va !a =’
㌔Id
v ▼
図5 電子ビーム励起プラズマ装置[4]
の1部が電子加速領域に流入し,電子の空間電荷
増加する.この場合も,放電電流に対する電子ビ
による制限を緩める.その結果,放電プラズマ領
ーム電流の比率は70−80%にも達する.プラズマ
域から電子加速領域に流入した電子は強い空間電
領域(A、一丁)の最適動作ガス圧力pは0.5−100
荷制限を受けることなく加速される.
×10−3Torrであり,この範囲では電子ビーム電
4.1 電子ビーム源の特性
流はpに依存しない.電子ビーム電流の加速電
ターゲットTと加速電極A、を同電位にする
圧に対する依存性を図7に示す.電子ビーム電流
と,プラズマ領域(A、一丁)に入射された電子ビー
は,60V以上の領域では加速電圧に依存しない.
ムはターゲットに達する.図6はターゲットヘ流
これは電子ビームのエネルギーと電流が独立に制
入する電子ビーム電流を放電電流の関数として示
している.電子ビーム電流は放電電流に比例して
5
r自一 P凝2.2m茨っrr
<
)
}●一P=摩。5mT’orr
〈
)
△
一〇一P=0.7mTbrr
4
ト
Z
田
庄
α
⊃
Q
m
ド
u」 1
/
1
2 3
2A
Q 1
Σ
〈
山
△
ml
u」
0
/O
0
一
α
配
⊃
/彰
Σ 2
0
Z
ω
0
<
]
Id#3A
O
←
7
3
2
4 5
1d(A)
0 100
200
ACCELERATING
VOLIAGE(V)
図7 電子ビーム電流と加速電圧の関係[4]
図6 電子ビーム電流と放電電流の関係[4]
651
プラズマ・核融合学会誌第69巻第6号 1993年6月
ノ
ムン
一△一P=2.2mTOrr /
ム
1.0
〈
2二ll枷魏/
一1.0
ム
)
く
/.
←
Zロ
ト
Z
田
/
配
配
⊃
臣
00.5
Z
O
一
80.5 △ O!
〃 !/
乙
孝/
一
0
0
1
/』/_
・./
/●
0
2 3
0
匹
2 3 4
1
5
P (mτorr)
1d (A)
図8 ターゲットヘ流入するイオン電流の放電電流依存 図9
性.電子ビーム加速電圧:100V,ターゲット電位
電子ビーム加速電圧=100V,ターゲット電位:
:一130V[4]
130V[4]
ターゲットヘ流入するイオン電流のガス圧依存性.
御できることを意味している.即ち,このプラズ
飽和が現われている.
マは電子ビームエネルギー,電子ビーム電流及び
プラズマ領域のプラズマ密度がプローブ法によ
プラズマ領域のガス圧力の3つの運転条件を独立
り測られた.図10は放電電流2A,電子ピ’一ム加
に最適化することができる.
4.2 EBEPの特性
速電圧100Vの時,A、からプラズマ領域内側7
cmの位置に於ける測定結果である.プラズマ密
プラズマ領域(A、一丁〉に入射された電子ビーム
度は明らかに1012cm−3以上に達している.この
は高密度プラズマを生成する.この時のプラズマ
の直径は加速電極A1の内径と同じ15mmである.
12
ターゲットTの電位がプラズマの電位より低い
とき,イオンはTの前面のイオンシース中で加
x10
8
速され,イオンビームとしてターゲット表面を叩
く.Tに流入するイオン電流の放電電流Idに対
する依存性を図8に示す.この時,Tの電位は
A1の電位に比して130V低く保たれた.プラズマ
z=7cm
/
_6
?
E
●
の電位はA、より約5V低いだけであるので,T
ε4
/
にはどんな電子も流入できない.この図から明ら
82
/●
かなように,イオン電流は放電電流に比例してい
る.プラズマ領域のArガス圧2.2mTorr,放電
電流3Aの時,イオン電流は1.1Aに達する.こ
れはイオン電流密度0.62A/cm2に相当する.図
/●
0
0
9はプラズマ領域のガス圧pに対するイオン電流
の変化を示している.低い圧力領域ではイオン電
1 2
P (mTo rr)
流はpに比例して増加するが,高い圧力領域では
図10 プラズマ密度のArガス圧依存性[4]
652
3
講 座
電子ビームによるプラズマ生成
原
Reverse
Magnetic
⑤lon
C12Gas Coi1
●Electron
Coil1 C。i12 図
Ar Gas 図 図
Wafe
●レぴア ⑳→ト駆 ●一γ 醗−
§ll
s織
》’吻,
S2 A
/調 捗 醗、 〆 〆
噂、
C
段
ひレ ひ〉 一←⑳ ひレ
朝> 尋⑱
H卜Hトのトく㊥
誌ミ
ち泌
\NN
N、
■’.》 ,図
…図
〆ゆ
Multi
姦一=ξMagnet Pump
悼 バ 輔.ウレ区 Probe
Pump Pemaanent
瞥斗鷲
Discharge AcceleratingRegion Region
Reactor
Electom Beam Source
Electom Beam Source
Reactor→
図11 EBEPエッチング装置[6]
装置では,電子ビーム電流をさらに増加させると
ズマ電位だけでなく,浮動電位をも一様にする必
とは容易である.実際に,ビーム電流63Aの運
要がある.そのためには,磁場の無い領域で高密
転を行ったが,何の問題もみられなかった[5].
度プラズマを発生することが重要である.
電子ビーム励起プラズマ(EBEP)を利用した
5.大ロ径エッチング装置の開発[6]
ULSIデバイス用ドライ手ッチング装置の開発研
64−Mbitや256−MbitDRAMの様なULSIデバ
究も行われている.実験装置の構成概略を図11
イスのドライエッチングプロセスのためのエッチ
に示す.反応室(プラズマ領域〉と予備室との問
ング装置には多くのことが要求されている.例え
はゲートバルブで仕切られており,予備室でサン
ば,速いエッチング速度,エッチ≧グ形状の強い
プルウェーハを取り付けられたターゲットホルダ
異方性,下地酸化膜の対する高い選択性,低損傷
ーはこのゲートバルブを通して反応室に挿入され
性そして直径8インチ以上の領域におけるエッチ
る.熱陰極としてLaB6フィラメントを使用して
ング速度の高い均一性,等である.特に最近,エ
いる.反応室にCl2がエッチングガスとして供給
ッチング中のゲートシリコン酸化膜の絶縁破壊が
されており,電子ビームによって高密度Cl2プラ
厳しい問題として浮かび上がってきている.これ
ズマを生成してSiウェーハのエッチングを行う.
は薄い酸化膜をはさんで大きな電位差が発生する
大体積のプラズマを生成するためには,電子ビー
ことが原因である.この問題を乗り越えるために
ムを反応室内で大きく広げる必要がある.電子ビ
は,ウェーハ全面にわたってプラズマ密度・プラ
ームは,電子ビーム源に印加されている軸方向磁
653
プラズマ・核融合学会誌 第69巻第6号 1993年6月
1.2
れた可動の平面探針で測定された.
1.0
図12は探針によって測定されたイオン電流密
度の径方向分布を示す.8インチサイズに対して
ハ
営
自
5
ρ
』
o
)
》
0.8
昌
の
=
o
めて均一なプラズマが実現されている.プラズマ
0.6
・O
り
ζ
o
イオン電流密度の一様性は±2.5%以下という極
Chlorine Plasma
0.4
Uniformlty:
電位(V,)と浮動電位(Vf〉の径方向分布を図13
±2.5% /±100mm
に示す.プラズマ電位は8インチサイズにわたっ
』
』
コ
o
て非常に一様である.浮動電位の分布Vf・も±2
0.2
V以下と高い面内均一性が得られている.この値
ζ
o
0.0
・100 ・50
0
100
50
Dlstance from tbe Cente『(mm)
は,薄いシリコン酸化膜のチャージアップによる
損傷を避けるのに充分なものである.このときの
VsとVfの差は約20Vである.したがって,イオ
ンシース内で加速されるイオンのエネルギーも充
図12 イオン電流密度の径方向分布
分低く,イオン衝撃による試料の損傷を避けられ
るだけでなく,高いエッチングの選択性も期待で
場に沿って進む.そこでこれと逆方向の磁場を反
応室外部の逆磁場コイルによって発生させ,電子
きる.
Cl2ガスプラズマを用いて多結晶シリコン
ビームを急速に広げると共に反応室内に磁場の無
(poly−Si)膜のエッチングを行い,エッチング速
い大きな領域を確保している.反応室の中央に
は1電子ビームを効果的に散乱するために永久磁
度の高い選択性(対フォトレジスト40,対SiO2
石を配置している.さらに,壁への電子やイオン
土ッチングが容易に得られている.この時のエッ
の拡散による損失を軽減するために,多極磁場が
チング速度の面内均一性を図14に示す.6インチ
反応室内に備えられている.ここでは,Siウェ
ーハは浮動電位に保持されている.プラズマパラ
ウェーハ上でエッチング速度の均一性は±4.5%
である.高速エッチングされたpoly−Si膜の断面
メーターは,ウェーハ表面の1cm前方に配置さ
形状も良好な異方性を示していることが確認された.
0
150以上)を保ちながら360nm/minという高速
400
w醗h permanent magnet
,三
E
E
Vs
一10
ε
ハ
>
ソ
噂_ ・20
360nm/mlη±4.5%
P(Cl2):3。OmTorr
の
>
>、
o
“
Vf(perpendlcular)
ω
300
200
十
> ・30
=
o
Vf(paraIlel)
Φ
o
・40
100
匡
P(CI2) 1mTorr
二
〇
田
一50
・100 ・50
0
50
100
0
Cl2Gas Fbw Rate =50SCCM
2
10n Current Denslty:6.5mA/cm
金心
一75 −50 −25 0 25 50 75
Distance from the Center(mm)
Distance f『om the Center(mm》
図14 n+一poly−Siのエッチング速度の面内均一性[6]
図13 プラズマ電位(V。)と浮動電位(Vf)の空間分布[6]
654
講 座
電子ビームによるプラズマ生成
原
6.まとめ
参考文献
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Hara,Y.Yamamoto,and Y.Aoyagi,Jpn.J。AppL
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Meth,B35,550(1988).
Phys.29,2216(1990).
な役割を果たし始めている.電子ビーム励起プラ
ズマはこれらの応用にも大いに役立つと考えられ
る.
655