-1- 家族がいてよかった 平成6年の古いデータになりますが,中学校

家族がいてよかった
平成6年の古いデータになりますが,中学校一年生1000人に『「家族が
いてよかった」とか「家庭っていいな」と思うときはどんなときか』を尋ねま
した。その回答が次のとおりです。
・みんなでご飯を食べているとき。
・家の中で話すことがいっぱいあって,聞いてくれたとき。
・僕が入院しているとき毎日見舞いに来てくれたとき。
・家族の写真を見ているとき。
・一人で留守番していて,誰かが帰ってきたとき。
・一人でご飯を食べているとき。
・深刻な家族の悩みがあるとき,私の意見も聞いてくれたとき。
・失敗したとき,みんなで励ましてくれたとき。
・誕生日に「おめでとう」と言ってくれたとき。
・うれしいことがあったとき,それを一緒に喜びながら聞いてくれるとき。
・夜遅く帰るとき,駅まで迎えにきてくれたとき。
・一人ですべての仕事をしないで,分担してできたとき。
このように,いかに親や兄弟姉妹に励まされたり,喜ばれたりすることがど
れだけ支えになっているかということがご理解いただけると思います。
特別のことはなく,ワイワイ,ガヤガヤと気を許しながらおしゃべりをする,
そんなごく普通のぬくもりと明るさのある生活を,子どもたちは心の基地とし
て求めているのではないでしょうか。
ちなみに平成6年といえば,
・郵便料金を現在の料金に値上げ。(葉書 50円、封書 80円)
・日本人初の女性宇宙飛行士向井千秋を乗せたスペースシャトルが打ち上げ
・ソニー・コンピュータエンタテインメントが「プレイステーション」発売
などの出来事があった時代です。
しかし,今も昔も変わらないような気がしますが,いかがでしょうか。
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続,家族がいてよかった
前頁で「普通のぬくもりと明るさのある生活を,子どもたちは心の基地とし
て求めています」と書きました。
今回はその続きです。
「一行詩
父よ母よ
吉村英夫選著」という本が,学陽書房から出版されて
います。本書は,朝日・毎日・読売・日経・産経新聞ほか全国各紙及び TBS・
NHK・フジ・朝日などのテレビで紹介されて爆発的な話題となったものです。
この本には,家族のほのぼのとした様子がたくさん詰まっています。笑いな
がら一気読することができます。
「子どもは,ほんと,よく親を見ているもんだな」と思う一行詩の何点かを,
紹介いたします。
・父よ言いたいことがあったらはっきり言え,母よ,言いたいことをそのま
ま言うな。
・母よ,つべこべ言うけど,あんたの息子は,ええほうやで。
・怒るのは,愛情表現だという母よ。それは暴力です。
・父よ,「お父さんが我が家の憲法だ」なんてジョーダンじゃない。
・父よ,「入るぞ」というのと同時に,私の部屋のドアを開けるのはやめて
欲しい。
・父よ,いびきがやかましい。母よ,口がやかましい。
・おばあちゃん,我が家で一番長電話するのはあなた。おまけに声もでかい
んだな,これが。
・この前,親父がたばこを反対にくわえていたので,珍しく,火を付けてあ
げた。
・母よ。お風呂までパジャマを持っていってください。もう見たくありませ
ん。あなたの三段腹を。
・母よ,犬よ,少しうるさいよ。
・お父さん,もっと派手に。お母さん,もっと地味に。
現在は,「新選・父よ母よ
一行詩」(学陽文庫)698円に変わっていま
す。興味ある方は,ご覧になってください。
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ウソをつくな!
『父母から「ウソをつかないように」とどの程度言われるか』という問いに
対して,日本,韓国,イギリス,アメリカ,ドイツの5カ国で比較したデー
タがありますので紹介します。
Q:父母から『ウソをつかないように』とどの程度言われるか。
日本
よく言われるが
父から11% ,母から16%
韓国
よく言われるが
父から41% ,母から42%
イギリス
よく言われるが
父から44% ,母から49%
アメリカ
よく言われるが
父から47% ,母から50%
ドイツ
よく言われるが
父から28%, 母から32%
このデータから見ると,日本の親の「うそをつかないいように」という躾は,
極端に低いことがうかがわれます。
ある外国の家庭教育学者は,日本の親は「なぜ,ウソをつくなと教えない」
と指摘しています。そして,このままでは,日本の子どもは不幸になると危機
感を露わにしています。
うそを専門に研究している方の話では,うそをつく理由は,大きく下の7つ
に分類されるそうです。
(1)相手のためを思ってつくうそ
(2)その場から逃れたいからつくうそ
(3)うそをついていることに本人も気づいていないうそ
(4)はじめはうそをついてないつもりが、結果としてうそになってしまううそ
(5)楽しさからくるうそ
(6)悪意のあるうそ
(7)その他のうそ
少なくとも(2),(6)は厳禁ですね。
保護者の皆様はどうお考えになりましたでしょうか。
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夢をもつと人は強くなる
今の子どもは冷めていて,将来の夢や希望をもたずに,難しい目標はチャレ
ンジする前にあきらめてしまうと言われます。
しかし,子どもは子どもなりに夢や希望をもっています。
大人は,それを見逃していることが多いような気がしています。
親は,どんな小さなでものあっても,その夢や希望に耳を傾けることが大切
ではないでしょうか。
自分の子どもに「大きくなったら,何になりたいのか」と聞いてみていただ
きたいと思います。
幼稚園児であっても,小学生,中学生であってもかまいません。
その問いに対して,子どもが,具体的な職業の名前を挙げたならば,まず,
安心していただいて結構だと思います。
反対に,子どもが横を向いたり,下を向いたりして「分からないや」と言っ
たり,返事をしなかったならば,ちょっと注意が必要です。
その際には,自分の経験や長い間にわたって苦労して夢を実現した人々の生
き方など折に触れて話して見てはいかがでしょうか。
そして,人生の目標は汗を流し,失敗を重ねながら達成していくものだと,
励まし,温かく見守っていただければと思います。
気になるデータがあります。
『「将来のために努力する」について「全くそう思う」』と答えた割合を国別
に示したデータです(各国とも約1000人の中・高校生を対象に調査)。
・日
本
18.7%
・韓
国
48.3%
・アメリカ
25.5%
・中
国
55.7%
・トルコ
54.4%
日本の子どもの数値(%)の低さが,とても気になります。
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子と親の価値観
なんといっても,親と子どもの間で異なるものは,価値観です。
例えばその一つにあげられるのは,友だちに対する価値観です。
保護者の方々が,よい友だちだとしてあげる項目は,一般的には
○勉強ができる子
○優しくて親切な子
○素直で大人のいうことをよく守る子
○清潔で健康,悪い遊びはしない子
○ウソをついたケンカをしない子となっています。
それに対して子供たちは,
○面白いことを一緒にして遊ぶ子
○親のいうことよりも友だちのいう方を信じてくれる子
○秘密をばらしたりしない子
○ケンカをやっても仲直りがするのがうまい子
○大人にはウソをついても仲間にはウソをつかない子
と比較しても分かるように,評価が大きく分かれてしまいます。
この価値観を理解し,この溝をどう埋めていくかが大切になってきます。
子どもが「お父さん,お母さん,大嫌い」と思うときがあります。
○子どもであっても面子をつぶされたとき
○ケチを付けられたとき
○約束を破って,秘密をばらされたとき
○告げ口したとき
○子どもを疑ってかかったとき
○友だちをけなされたとき
○予定を無視されたとき
○あとで文句を付けられたとき
○比べて叱られたとき
○「勉強,勉強」というとき
などが,そうです。
「お父さん,お母さん,大嫌い」と子どもが言う裏にも,価値観の違いが見
え隠れしてはいないでしょうか。
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言語能力の低下
平成25年11月に,ショッキングな内容の記事が新聞に掲載されました。
かいつまんで紹介すると
東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授(脳科学)と竹内光准教授(同)
らのグループは,子どものテレビの長時間視聴が,言語能力などをつかさ
どる脳の前頭極に悪影響を与えるという研究結果を発表した。
従来,心理学研究でテレビが子どもの読書や注意力を低下させることが
確認されていたが,脳のどの部分に作用するかが明らかになったのは初め
て。
となります。
「自ら考えたりする」というは脳の前頭極で行うそうですが,長い時間,テ
レビを見ていると,この部分の発達が遅れ,言語能力の低下を招くというわけ
です。
川島教授は,
テレビ視聴の制限の必要性が脳科学でも裏付けられた。
生活習慣が脳の発達に影響することを子育て中の親に知ってほしい。
と,語っています。
この記事では,何時間くらいテレビを見ていると,言語能力が低下するのか
示されてはいませんが,いすれにせよ,テレビ,パソコン,スマートフォン,
ゲーム機などなど,時間を決めて使用しないと,あとで大きなつけが回ってく
ることは確実なようです。
保護者の方は,どうお考えになったでしょうか。
すでにご存じかと思いますが,川島隆太先生は,脳トレで有名な方であるこ
とを申し添えます。
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家族の情景Ⅰ
「貧乏でごめんな」
山路直美(広島県福山市在住・当時34歳)
ごめんな。うち貧乏でごめんな。
学校のピアニカ,お古でごめんな。
ゲーム機,買うてやれんでごめんな。
でも頑張るけぇ。お母さん頑張るけぇ。
病気せんよう,元気に大きくなりなよ。
人に迷惑かけんよう,勉強もがんばりよ。
この間,友達にバカ言うたらしいな。
お母さん,人から聞いてびっくりしたよ。
いけんで。そりゃ,いけんで。
みんなと仲良くせんといけん。
弱いものいじめは,絶対したらいけん。
もうお父さんお母さん,ケンカばっかりせんけぇ。
あんたの事,すぐ怒らんけぇ。
なっ,みんなでやさしい人間になろう。
みんなで思いやりのある,温かい家族になろう。
それが財産よ。
それが本当の宝物よ。
なっ,今日早く帰っておいで。
みんなでバーベ Q しようや。
なっ,そうしよう。
待っとるで。
○「母からの手紙
あなたに伝えたい想いがある」(幻冬舎)より引用
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家族の情景Ⅱ
「じゅぎょうさんかん」
某小学校低学年女児
おあかあさん,じゅぎょうさんかんのとき
おわるとき,きたんだね。
わたし,かなしかったんだよ
ないてしまったんだよ。
ちはるちゃんが,
「どうしたの。」
って,いってくれた。なみだがこぼれそうになったの。
せんせいも
「あら,ゆかちゃん。」
って,いったの。そしたら,わたし,ないてしまったんだよ。
「なみだ,とまれ,とまれ。」
と,こころなかでいったけど,
ぐっ,とがまんしたんだけど,
なみだがいっぱいでてきてしまったの。
おかあさん,「さようなら。」って,したとききたんだね。
おかあさん,
もっとはやくきたらよかったのに。
もっといそいできたらよかったのに。
わたしはね,ほんとはなきたくなかったの。
わたし,もうなかないから,はやくきてね,
おかあさん。
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家族の情景Ⅲ
「よる」
某小学校中学年男児
「はやぐねろっ。」
お父さんのとくいななセリフだ。
おもしぇぐなって
テレビを見ていると
きまってお父さんが
「はやぐねろ。」
っていう。
おらのどこ
自分だけ
ねがせで
テレビを見ている
ずるい
よげい
ねでぐなくなる。
なんで子どもだけ
はやくねねげ
おとうさんんだち
働いてきて
ねんだべ。
つかれてんのに
おらだち
よげい
いっと
うるさくて
つかれっからがなあ
つかれているごって
静かにしてけっから
それにお父さん
つかれているんなら
おらが
お父さんのごど
はやぐ
ねせでけっから
「はやくねらいん,お父さん」
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しつけのつもり
日本大学 佐藤晴雄教授らのグループがおこなった意識調査(平成20年)
から,「保護者の多くは,我が子を十分にしつけたつもりになっている」とい
う調査結果を発表しました。
調査によると,保護者および教師の8割以上が一般的な家庭のしつけが不十
分だと思っていますが,ところが,保護者の7割は,自分の子どものしつけは,
しっかり行われていると自認していることが分かりました。
多くの保護者は,他の家庭のしつけは不十分ですが,自分の家では,十分に
しつけているつもりになっているということであります。
しつけの役割分担意識を見ると,
早寝・早起きなどの基本的なしつけは【家庭の役割】,
「協力し合う姿勢」など社会性のしつけの一部については【学校の役割】,
と認識する傾向にあったそうです。
ここでは,家庭と学校の役割分担意識にズレはなかったのですが…
多くの保護者は基本的な生活習慣などのしつけは,家庭で行っていると考え
ていますが,教師は,さにあらず。家庭ではさほど行われてないと見ています。
例えば,「あいさつの仕方」。
家庭の役割だと回答した保護者は,92%でした。
これを家庭でしつけていると回答した割合は,保護者の83%で,教師は
27%にすぎませんでした。
「あいさつ指導」は学校の役割だと回答した教師は8%。
しかし,学校で,指導しているという教師は70%と数値が高くなります。
ところが,保護者は,家庭でしつけていると考えていますので,保護者の
16%しか,学校では指導していないと思っているそうです。
佐藤教授はこう述べています。
『保護者は,基本的な生活習慣は家庭で十分しつけているつもりなっている
ので,学校で行われているとは思ってもみないだろう。しかし,そのしつけ不
足を目の当たりにした学校は,それを指導せざるを得ないのである。「つもり
のしつけ」現象こそ,今日の家庭教育の問題がありそうだ。』
この調査結果から,これまで以上に学校と家庭の連携の重要性を感じました。
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