摂食・嚥下障害看護認定看護師の立場から

食べるということに関するセラピーとケア
―摂食・嚥下障害看護認定看護師の立場から―
大阪府立急性期・総合医療センター
慢性疾患看護専門看護師
摂食・嚥下障害看護認定看護師
西 依見子
地方独立行政法人 大阪府立病院機構
大阪府立急性期・総合医療センター
【病床数】
768床
所在地
/ 大阪市住吉区万代東3丁目1番56号
敷地面積
/ 43,456.375平方メートル
延床面積
/ 67,590.55平方メートル
自己紹介
2007年 摂食・嚥下障害看護認定看護師資格所得
2013年 慢性疾患看護専門看護師資格所得
病棟(神経内科・脳神経外科)
外来(神経内科・脳神経外科・耳鼻科)に勤務
活動内容
・嚥下外来の実践
・嚥下回診の実施
・コンサルテーション
・調整
・倫理調整
・教育(勉強会やセミナーの実施など)
摂食・嚥下障害看護
原因疾患の影響
脳血管障害、神経・筋疾患、口腔・咽頭癌
摂食・嚥下障害
誤嚥性肺炎
窒息の危険性
栄養不良・脱水
口から食べられない
加齢現象
気管切開
生命の危機
QOLの低下
介護が困難
摂食嚥下障害における看護の役割
患者の原疾患の経過のなかで嚥下障害を捉える役割
原疾患の急性期から嚥下へアプローチする役割
専門職へのコーディネイトを促進する役割
日常生活場面の情報を提供する役割
嚥下訓練を患者の生活に定着させる役割
リスクマネジメントを行なう役割
摂食嚥下リハビリテーションにおける看護の役割
情報
日常生活場面の観察
フィジカルアセスメント
(原因疾患の病態VE VF)
アセスメント
摂食・嚥下訓練方法論
摂食・嚥下訓練プログラムの確立
訓練の実施
病棟での訓練実行と記録
リスク管理
安全な訓練環境の設定
リスク管理
全身状態の観察・管理
摂食・嚥下障害看護認定看護師の役割
・摂食・嚥下機能の評価および誤嚥性肺炎、窒息、栄養低下、
脱水の予防
・適切かつ安全な摂食・嚥下訓練の選択および実施
慢性疾患看護専門看護師の役割
生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生き
る人々に対する慢性疾患の管理、健康増進、療養支援な
どに関す水準の高い看護を行う
活動の変遷
第1期 チーム医療での摂食嚥下障害看護の位置づけ
多職種との連携、横断的活動の開始、チームの設立
第2期 コアナースの育成、活用
摂食嚥下障害看護専門看護師コースの開始
第3期 地域へケアの拡大(嚥下外来の開設)
倫理問題への介入(看護専門外来への展望)
第1期
☆チーム医療での摂食嚥下障害看護の位置づけ
☆多職種との連携
☆横断的活動の開始
☆チームの設立
医療職成立の歴史
1946年 医師・看護師
1951年 診療X線技師
(改正 1995年→診療放射線技師)
1958年 衛生検査技師
(改正 1970年→臨床検査技師)
1965年 理学療法士・作業療法士
1971年 栄養士
1987年 社会福祉士・臨床工学技師・介護福祉士
1997年 ケアマネジャー・言語聴覚士
言語聴覚士との連携のなかでの看護の役割
・ハイリスク患者の共有
・訓練前に口腔内の衛生状態が整える
・事例検討会の実施
・退院支援
・覚醒への支援
・摂食嚥下にかかわる専門性の看護師への伝達
(摂食条件に関することなど)
・倫理事例への介入 など
看護の中の口腔ケアの位置付け
ナイチンゲール:看護覚え書
「看護がなすべきことは、最もよい状態で患者が自然の作用を受けら
れるようにしておくことである。」
ヘンダーソン:看護の基本となるもの
歯を磨くこともしごく簡単なことであると思っているが実際には口腔衛
生について十分知っている人はほとんどいない(中略)
患者の口腔内の状態は看護の質を最もよくあらわすもののひとつで
ある。
STとの連携事例 1
70歳台 男性
右MCA領域の広範囲の脳梗塞
挺舌は左へやや偏位
左の口角下垂あり
指示動作は難しい
嚥下反射が起こると喉頭挙上は良い
水分ではむせる
EDチューブ挿入
夜間眠れず眠剤使用
一側性右中大脳動脈の梗塞
脳卒中患者の嚥下障害看護
食事形態のアップは慎重に
眠剤を使わない支援の検討
時期を待てば嚥下障害の改善事例がある
PEG作成に関しては、改善の見込み、患者、
家族の思いを大切に
• 絶食患者こそ看護が必要
•
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•
STとの連携事例 2
60才台 肺癌ターミナル患者
咽頭期の嚥下障害を認める患者
患者から「すいかを食べたい、最後まで食べていたい」と
ST訓練中に訴えあり
STから認定看護師へ相談あり
医師、家族、本人、病棟看護師間の意思決定支援を実施
なくなる前日まですいかを少量経口摂取することができた
看護倫理とは
倫理の考え方を看護の分野に応用した応用倫理の1つで
ある
応用倫理の領域には、生命倫理、環境倫理、情報倫理、
企業倫理、職業倫理などがある(加藤,2006)
倫理は実践であり学問である(小西,2007)
管理栄養士との連携のなかでの看護の役割
・嚥下食作成に関して
・お茶ゼリーの導入
・ミキサー粥の導入
・補食の検討
・家族への指導(嚥下食、治療食)
・事例検討会
・退院後のフォローの役割分担
など
NS to NSの重要性
・どの他職種に対しても専門性をもった看護師が必要
・どの専門性の中にも看護が見いだせる
横断的活動で大切にしていること
・はじめての病棟での事例は特に丁寧に対応
・病棟スタッフが成功体験できるように支援
・病棟管理者との密なコミュニケーション
・チーム医療のなかでの役割 など
チームの設立
多職種にてチーム編成
医師(リハビリ科、神経内科、障害者歯科、耳鼻科、歯科口腔外科)
ST
管理栄養士
歯科衛生士
関連病棟看護師
第2期
☆コアナースの育成、活用
☆摂食嚥下障害看護専門看護師コースの開始
摂食嚥下障害看護専門看護師コースの調整
内容
・摂食嚥下障害看護について(認定看護師)
・気管切開の嚥下への影響(耳鼻科医師)
・摂食嚥下障害の原因と疾患について(神経内科医師)
・口腔ケアの実際・演習(歯科医師、歯科衛生士)
・間接訓練・直接訓練(言語聴覚士)
・摂食嚥下機能のアセスメント法について(言語聴覚士)
・嚥下食について(管理栄養士)
・嚥下障害と栄養について(管理栄養士)
・演習:食事介助(認定看護師)
摂食嚥下障害看護コアナースの役割
・各部署での嚥下障害患者の発見と把握
・嚥下回診結果の入力
・スタッフへの伝達、スタッフ教育
・摂食機能療法の実施状況の把握
・主治医など他職種との連携
・チーム会議への出席 など
※ 基本的に専門看護コース修了者が嚥下担当者となる
第3期
☆地域へケアの拡大(嚥下外来の開設)
☆倫理問題への介入(看護専門外来への展望)
嚥下外来の調整
・問診とスクリーニング
在宅での状況の問診(介護保健等のサービス利用状況、
食事摂取状況、脱水・低栄養・誤嚥性肺炎の兆候の有無、
食べることへの思いなど)
・スクリーニングの実施(口腔内の状況、反復唾液嚥下テ
スト、改訂水のみテスト、フードテスト等の実施等)
・嚥下内視鏡検査、嚥下造影検査の必要性の検討と実施
・具体的指導の実施
・多職種と連携した指導
・PEG等の意思決定支援 など
嚥下外来の事例
60才台 男性 多発性脳梗塞あり
心不全にて入院
誤嚥性肺炎にてST訓練開始
嚥下食にて介護付きマンションへ退院
在宅でもST訓練継続
マンションを無断で外出し中華丼やモーニングを摂取
軽度嚥下障害残存
病態の生理
病気への思い
人生哲学 等の情報収集
食事形態の再調整
在宅スタッフとの連携
慢性期看護専門外来への展望
PEGや呼吸器の意思決定支援
療養生活での意思決定支援 等
最後に
多職種が関わるときに、キラっと光る看護をみつけてください
看護師だから看護師に伝えられる看護があります
一緒にがんばっていきましょう!
参考文献
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鎌倉やよい編:嚥下障害ナーシング フィジカルアセスメントから嚥下訓練へ、
医学書院、2004. .
向井美惠、鎌倉やよい編:摂食・嚥下障害ベストナーシング、学研、2010. .
藤島一郎:脳卒中の摂食・嚥下障害第2版、医歯薬出版、2005. .
聖隷三方原病院嚥下チーム:嚥下障害ポケットマニュアル、医歯薬出版、
2005. .
才藤栄一、向井美惠:摂食・嚥下リハビリテーション第2版、医歯薬出版、
2007 .
Kim Corbin-Lewis他:摂食・嚥下メカニズムUPDATE、医歯薬出版、2006 .
藤島一郎、藤谷順子:嚥下リハビリテーションと口腔ケア、メジカルフレンド
社、2006.
Lynette L. Carl他:薬と摂食・嚥下障害、医歯薬出版、2007 .
岸本裕充:知っておきたい!急性期の口腔ケア、オーラルケア、2008 .
野崎園子編.摂食嚥下ケアがわかる本.エピック.2013 .