リンパ管静脈吻合術 (LVA)とは

小樽協会病院
ミーナの白熱塾 Lesson 4_Summary
「☆リンパ管静脈吻合術
とは☆」
「☆リンパ管静脈吻合術(LVA)とは
リンパ管静脈吻合術
とは☆」
2013年5月7日(火)【講堂】17:30-19:00
CONTENTS
1. リンパ循環とリンパ管の構造
2. リンパ浮腫の診断・評価
3. リンパ浮腫の治療
4. リンパ管静脈吻合術 (LVA) の実際
5. 当院で実施できること
1. リンパ循環とリンパ管の構造
• 心臓
→
動脈
→
毛細血管
→
心臓
• 間質液 interstitial fluid
– 赤血球と血小板を含まない「血液」(96%水分)
– タンパク質ほか,ガス,細胞,微生物・毒素など
– 直接静脈に環流/
– リンパ管を経由して静脈環流
1. リンパ循環とリンパ管の構造
• 毛細リンパ管
lymph capillary, initial lymphatics
– 弁構造(-),表皮直下
表皮直下,盲端
表皮直下
• 前集合リンパ管
precollecting lymphatic vessels
– 弁構造(+),真皮内
真皮内ネットワーク
真皮内
• 集合リンパ管
collecting lymphatic vessels
– 平滑筋・自動運動,皮下脂肪
皮下脂肪組織内
皮下脂肪
1. リンパ循環とリンパ管の構造:郭清術後変化
• Dermal backflow
– 逆流現象(集合リンパ管
逆流現象
→
弁機能不全
• 集合リンパ管数の減少
• 集合リンパ管の壁肥厚,内腔閉塞
• 迂回路の形成
前集合・毛細リンパ管)
2. リンパ浮腫の診断・評価
• 一次性リンパ浮腫
• 二次性リンパ浮腫
– 感染症(例:フィラリア)
– 炎症性疾患(例:SLE, RA)
– がん治療(例:リンパ節郭清,放射線治療,前立腺・婦人
がん治療
科臓器手術)
– 外傷
2. リンパ浮腫の診断・評価
• 鑑別疾患
– 急性:
深部静脈
静脈血栓症,蜂窩織炎,コンパートメント症候群等
静脈
– 慢性:
静脈環流不全,うっ血性心不全,ネフローゼ症候群,低蛋白血症,
静脈
腫瘍占拠.薬剤性等
2. リンパ浮腫の診断・評価
• PDE
• MRリンファンジオグラフィ
(Magnetic resonance
lymphangiography)
– Gd-DTPA 約5 mL趾間皮下注
→30-45分後MRI撮影
3. リンパ浮腫の治療
• 保存的治療
– CDT: complete (comprehensive) decongestive therapy
*Foldi E, et al. 1985, Angiology
• 外科的治療
– 切除療法 Excisional (Ablative) surgery
– リンパ機能再建手術 Lymphatic reconstructive surgery
Lymphaticovenous anastomosis (LVA)
Lymphangiogenesis
3. リンパ浮腫の治療~保存的治療
• インテンシブケア
–
マニュアルリンパドレナー
• セルフマネジメント
–
ジ
圧迫ガーメント(日中)/
バンデージ(夜間)
–
スキンケア(創傷管理)
–
スキンケア
–
バンデージ
–
マニュアルリンパドレナー
–
圧迫下エクササイズ
ジ(必要症例)
–
エクササイズ
3. リンパ浮腫の治療~外科的治療
• Ablative surgery
– 皮下脂肪組織の切除
• Reconstructive –
– リンパ管静脈吻合術
Charles (1912)
O’Brien (1977)
Sistrunk (1918)
Koshima (1996)
Homans (1936)
Yamamoto (1998)
Miller (1977)
– 真皮弁と筋層の癒合
Thompson (1967, 70)
– 遊離リンパ節弁移植術
Becker (1991. 2006)
Lin (2009)
4. リンパ管静脈吻合術の実際
• 症例:40歳代,女性
婦人科悪性腫瘍切除+照射後10年を過ぎ,右下肢浮腫出現
– 20yy年xx月_手術(1):右下肢リンパ管静脈吻合術(LVA)
下肢全長で周径改善が得られた.*大腿部の効果は不充分.
– 1年7ヵ月後_手術(2):右LVA
– 2年8ヵ月後_手術(3):左下肢浮腫出現→左LVA
– 3年3ヵ月後_手術(4):左LVA
– 3年10ヵ月後_手術(5):左LVA
4. リンパ管静脈吻合術の実際~初診時
皮下脂肪層の容積増大
Dermal backflow
4. LVAの実際;初診-最終
初回手術前,右下肢
浮腫増悪
初回手術後2
初回手術後2年7ヵ月,
左下肢浮腫出現
初回手術後4
初回手術後4年3ヵ月
4. LVAの実際~得られた知見
• 全例で術後周径の改善が認められた
• 複合的理学療法に抵抗性
複合的理学療法に抵抗性の
理学療法に抵抗性の進行性浮腫
– 増悪サイクルをリセットする効果
– 蜂窩織炎の頻度が激減
– 入院中に改善を実感でき,セルフマネジメントのモチベー
ションがUP
– 吻合の追加
→
改善効果が高まる症例あり
• LVAはCDTをサポートする有効・低侵襲な補助療法
5. 当院で実施できること
• 初診時スクリーニング
– 二次性浮腫の病歴,診断,セルフケア歴,心不全の有無
• 入院精査
• インテンシブケア
• リンパ管静脈吻合術 LVA
• フォローアップ,セルフマネジメントのサポート
参考文献
•
LYMPHEDEMA Understanding and Managing Lymphedema After Cancer
Treatment. Edited by American Cancer Society, 2006
•
Lymphedema Diagnosis and Treatment. Edited by Tretbar LL, Morgan CL,
Lee BB, Simonian SJ, & Blondeau B. Springer, London, 2008
•
Puckett CL. Lymphedema in the Upper Extremity. In Plastic Surgery,
volume 8, edited by McCarthy JG, WB Saunders, Philadelphia, 1990
•
須網博夫ほか.四肢リンパ系のマクロ解剖学.PEPARS 22: 8-17, 2008