「市の魚」としてニジマスを制定することについての意見

平成 21 年 4 月 20 日
富士宮市長
小室 直義
様
財団法人 日本生態系協会
会長
池谷奉文(いけやほうぶん)
「市の魚」としてニジマスを制定することについての意見
平成 21 年 3 月 5 日に行われた市長の定例記者会見のなかで、
「市の魚」としてニジ
マスを制定することについて、適切であり、そのための作業を進めていく旨のご発言が
ありました。この件につきまして、以下のように意見を述べさせていただきます。
ニジマスは、北アメリカ、カムチャツカ半島を原産地とする外来種であり、その生態
から、日本の生態系、具体的には在来のサケ科魚類に悪影響を与える可能性があること
などから、環境省より「要注意外来生物」とされているほか、日本生態学会の「日本の
侵略的外来種ワースト 100」、また国際自然連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワ
ースト 100」にもあげられている種です。養殖などに当たっては、逸出しないように適
切な管理が必要な種とされています。
外来種が日本の生態系に与える影響を未然に防止したり、既に出ている悪影響をとり
除くため、平成 16 年に「外来生物法」が制定されました。生物多様性条約にもとづき、
平成 19 年 11 月に閣議決定された第 3 次生物多様性国家戦略、昨年(平成 20 年 6 月)制
定された生物多様性基本法においても、外来種対策が今後重要であるとの認識が示され
ています。
来年(平成 22 年)、愛知県名古屋市で、第 10 回生物多様性条約締約国会議(COP10)
が開催されます。世界各国から約 7,000 名の参加が見込まれ、日本の生物多様性保全へ
の取り組みについても注目が集まります。
富士宮市はニジマスの養殖が盛んであり、貴市における産業としてのその重要性は理
解します。
しかし、環境省より「要注意外来生物」とされ、日本生態学会の「日本の侵略的外来
種ワースト 100」、IUCN の「世界の侵略的外来種ワースト 100」にあげられている外
来種を「市の魚」として制定することについては、国際的に求められている、これから
の自然と共生した持続する社会の構築や教育の観点から、問題があります。
「市の魚にニジマス」制定という件につきましては、ご再考のほど、何卒宜しくお願い
申し上げます。