最近の中国労使関係の新しい特徴と 中国労働組合の

最近の中国労使関係の新しい特徴と
中国労働組合の労使協調の方法について
倪 健民(Mr. Ni Jian Min)
中華全国総工会(ACFTU)副主席
1. 最近の中国労使関係の新たな変化と特徴
まずはじめは、中国の労使関係には国際化の特徴が一段と現れている。中国は世界で最
も多く外資を取り入れ、経済の外国市場志向が最も強く、貿易依存度が最も高い国家のひ
とつであり、労使関係も国際化の特徴が顕著となっている。近年、中国の労使関係にも多国
籍企業戦略、国際経済の変動、国際産業競争、国際労働基準、企業の社会的責任活動な
どの影響がより明確となった。
2 番目には、労働市場の構造と需給バランスに重大な変化が起こっている。総労働力量は
供給が需要を大幅に上回っており、中国の労使関係に影響する深刻な問題となっている。
全体的供給が需要を大幅に上回る構造であるにもかかわらず、一方では構造的な労働力
不足の現象が出現し、「労働不足」、「採用難」を経験する企業も少なくない。特に技能労働
者の不足が深刻で、労働市場で有利な労働者は大きく変化し、労使交渉における労働者
の発言権も徐々に強まっている。
3 番目には、経済構造の改革により労使関係はさらに複雑化しつつある。中国経済・社会
の発展の中で存在する矛盾と問題に対応するため、中国政府は経済発展方式の転換加速
を戦略として掲げ、特に経済構造の戦略的改革を加速させ、伝統的産業を改革して向上さ
せ、サービス業と戦略的新興産業の発展を加速させるとしている。産業構造の優良化とレベ
ルアップを推進するが、構造改革によって一部労働者の利益への影響は避けられない。
4 番目は、新興経済国の発展が労使関係の多様性を増長させている。ハイテク産業、近代
的サービス業等の新興産業の急速な発展は、企業の組織形式、労働者階級の内部構造お
よび労使関係に重大な影響を及ぼしている。伝統的な労働集約型産業と比較すると、中国
の新興産業の労働者は全体的に資質が高く、労働方式、就業形態および労使関係はより
柔軟である。中国の新興産業は主にハイテク産業パークや経済開発区に集中しており、産
業集中度が高く、労使関係においてもエリア的、業界的傾向が強いのが特徴である。同時
に、中国の新興産業は国際市場との関係がより密接で、労使関係も国際市場の変動による
影響を非常に受けやすく、労使関係に影響を及ぼしている。
5 番目は、労使関係の対立の常態化、集団化が現れている。現在、中国は改革発展の中
で、様々な社会的矛盾が多発している。経済のグローバル化と新興産業の発展により、労
働市場の弾力性向上が求められ、派遣労働や非正規雇用の大幅な増加は、労働者の権益
を脅かしている。近年、国際金融危機や労働市場の変化等の影響を受けて、労使の協議機
能の整備にはまだ相当な時間を要し、問題を適時解消することができず、中国の労使は対
立が激化し、企業の労働争議は増加の一途にある。民間企業と沿海地区の集団争議は増
加傾向にあり、労働集約型産業が労働争議の多発領域となっている。新生の臨時労働者や
派遣労働者が労働争議に関わる主要集団となっている。
2. 中国労働組合の労使関係協調の方法
中国の法律と国情により、中国労働組合は労使関係の発展調和を強力に推し進めてきま
した。「企業の発展を促進して、労働者の権益を守る」という企業労働組合の基本原則に基
づき、企業と労働者の利益シェアのメカニズムを形成し、労使関係の確立、運営、監督、調
停等の一部を法律制度に組み入れ、規範化された秩序、公正で合理的、互いに利益を得
る Win-Win の関係、安定的調和のとれた新しい労使関係を樹立していく。
はじめに、労使関係調整の法制化推進を加速させる。関連法律・法規の制定と修正を早
急に進め、『職業病防治法』、『社会救助法』、『職業教育法』、『企業民主管理条例』、『企業
工資条例(企業賃金条例)』等の労働法律・法規の制定または修正を含め、労働法律の執
行状況に対する群衆による監督を強化し、法律の労使関係規範の保障作用を有効的に発
揮させます。
2 番目に、社会政策の根本的な健全化を促進させる。各級政府レベルで協調的労使関係
を経済社会発展目標計画に組み入れ、協調的労使関係の政策措置制定、積極的な就業
政策の実施、収入分配のマクロ調整、社会保険の補償範囲の拡大、出稼ぎ労働者の都市
流入、住居保障、子女教育等の問題を徐々に解決し、民生改善の政策を実施する。
3 番目に、協調的労使関係の健全化に力を入れる。健全な労使関係、三者協議制度およ
び政府と労働組合の連合会議制度の構築と、労使関係の重大問題解決のための研究を適
時行なう。労働契約、平等協議、集団契約制度を普及させ、労働者の労働による経済権益
を保障する。企業民主管理制度を整備し、労働者の要望汲み取るルートを整備する。労使
関係の対立を予防する制度、労働争議調停仲裁制度、労働者法律支援制度の健全化を進
め、対立を有効的に防止し、適時解消する。
4 番目に、法による『二つの普遍』を普及させる。『二つの普遍』とは即ち、企業の労働組合
組織設立の普遍化と賃金の団体交渉の普遍化である。まず、外資系企業、非公有制企業
(民間企業)、新興産業における労働組合設立を含めた、企業の労働組合組織設立の普遍
化を推進し、協調的労使関係の基礎をしっかりと固める。同時に、賃金分配をめぐる労使関
係の核心問題について、企業における賃金に関する団体交渉の普遍化を重点的に促進し
ていく。
5 番目に、協調的労使関係の創設に関する企業活動を展開していく。我々は最近、北京
で全国の協調的労使関係構築の先進表彰および経験交流会を開催した。各レベルの労働
組合が協調的労使関係構築の経験を広め、企業活動と協調する労使関係の構築をさらに
進め、先進的な企業文化によって労働者の文化教育を行い、協調的労使関係の気運を形
成していく。
3. 中国労働組合が直面する主要課題
現在、中小企業は経営の困難に直面しておりまして、多くの中小企業は苦しい局面にあ
る。企業倒産もあり、経営者が夜逃げをしてしまったという例もある。このような問題が多発し
ているということは、労働者の就業・雇用・収入に影響することになる。組合は即座に政府、
地域、企業とともに問題解決に当たる。これは政府の中小企業発展措置政策によって、企
業の発展を促進するという形で支援していく。労働集約型の中小企業の発展成長を促し、
雇用を促進し、市場競争力を高めていく。また、企業が破産した場合には、行政側で従業
員の権益、経済的な権益を守っていく政策もある。
2. 派遣労働者の問題
ここ数年来、一部の企業はコストを下げようとして、法律や社会の責任を回避し、派遣労
働者を乱用するということが起きる。中国には 2,000 万人の派遣労働者がいるが、派遣労働
者の問題を解決し、彼らの合法的な権益を守るために組合側も調査、研究している。
3. 出稼ぎ労働者の権益保護の問題
最近、中国共産党そして中国政府は組合組織の努力とともに、出稼ぎ労働者の権益は全
体的には改善されている。しかし、出稼ぎ労働者の就労の安定性は低く、一番影響を受ける
のは出稼ぎ労働者の権益である。08 年において、国際的な金融危機が発生して以来、
2,000 万人から 3,000 万人の農民工の出稼ぎ労働者が失業し故郷に帰った。現在は労働組
合としても、出稼ぎ労働者の給与、社会保障、トレーニングといった権益が保証されるように
している。最近、1つの調査があり、調査対象の出稼ぎ労働者の内、95%の人がトレーニング
を通して自分をレベルアップしたいと考えている。上海では一部の出稼ぎ労働者は自分で
身銭を切ってトレーニングを受けている。生活費の 3 分の 1 をかけて訓練を受けている。で
すから、トレーニングを受ける、教育を受けるような権益をきちんと守って、彼らがよりレベル
アップしていけるようにバックアップする必要がある。
4. 支援の問題
多くの組合幹部が現場に行き、組合員と接して彼らのために利益となるようなことをする必
要があります。中華全国総工会は来年の1年間、企業現場に行って組合員に直接接して、
実際彼らが直面している問題について解決していく計画を実施する予定である。また、非常
に生活が厳しい労働者に対して、長期的に有効な措置を講じることしていきたいと考えてい
る。全国に 3,000 の援助センターがある。援助センターでは、彼らの就労、生活が苦しい人
に対して金銭的、経済的な支援を行なう。彼らの子供たちに対しても学費の支援をしてい
る。
以上
中国の団体交渉制度及び実践
~中国企業の賃金及びその他労働条件の決定と今後の課題~
張 建国(Mr. Zhang Jian Guo)
中華全国総工会(ACFTU)団体協約部 部長
『労働法』で団体交渉制度が正式に確立してから十数年間、中国の各級の労働組合は企
業の団体交渉構造の確立を一貫して推進し、労働者の合法権益の保護を基本的な職責と
して、労使関係と調和のとれた発展という重点任務を促進してきました。世界金融危機の中、
特殊形式の団体交渉である『共同約定行動』を創造的に展開してきた。2010 年、中華全国
総工会は人力資源・社会保障部、中国企業連合会/中国企業家協会と共同で、団体契約
制度の実施を推進する『レインボー(虹)計画』を制定し、団体交渉力を拡大した。特に 2010
年 7 月、中華全国総工会は、法律に基づき企業が普遍的に労働組合を設立し、普遍的に
賃金団体交渉を展開する『2 つの普遍』を打ち出した。これは、中華全国総工会が労働者の
合法権益の保護をはっきりと主張し、賃金団体交渉の発展を更に重要な位置に置いたこと
を表している。『2 つの普遍』を着実に実行するため、中華全国総工会は、『2011-13 年賃金
団体交渉計画の更なる推進』、『中国に進出する世界売上トップ 500 企業の賃金団体交渉
制度構築の更なる推進に関する意見』、『団体交渉指導員育成実施計画(2011-13 年)』の
文書 3 件を発表し、目標を更に細分化、具体的措置を明確にし、団体交渉の更なる発展を
推進した。
団体交渉制が健全で完全なものになるにつれ、中国は団体交渉推進の目標を更に明確
にし、力を更に充足させ、体制を更に規範化し、集団を更に専門化し、『地域で最低ライン
を話し合い、業界で基準を話し合い、企業で増加を話し合う』という多層的でつながりのある、
初歩的な団体交渉構造を形成した。
1.中国の団体交渉制度の発展過程及び変化趨勢
90 年代から始まる中国の団体交渉制度数十年の発展は、『4 つの重要ポイントを経験し、5
つの発展趨勢が現れた』と総括することができます。
経験した 4 つの重要ポイントとは、
① 1995 年の『労働法』の正式な公布と施行
中華人民共和国労働法の公布実施によって、団体交渉の法的な基礎ができた。そのうえ
で、全国の各省市自治区、人民政府、全人代、また委員会の中で、現地の状況をふまえた
関連する立法措置がとられた。例えば、団体交渉契約条例などがある。そして、中国での労
組が団体交渉を行なう法的な基礎がつくられた。
② 2001 年の改定後の『労働組合法』の公布と施行
2001 年、全人代で労働組合法が修正されて、2 つの重要な問題が明らかにされた。第 1
点目に、職員の合法的な権益を守るのが組合の職責ということである。このことが、中国の労
組とは何をするのかという問題を解決した。それから第 2 点目に、法的な修正によって、労組
が平等な交渉によって労使関係を調整し、労働者の権益を守るということが決められた。法
的に労組が職員の権益を守るという道筋ができ、重要なものについては、団体交渉によると
いうことである。
③ 2008 年の『労働協約法』の施行
2008 年、中国の全人代の常務委員会により、労働協約法が施行されました。労働協約法
は 2008 年 1 月 1 日から施行され、中国の団体契約制度がより促進されることとなりました。こ
の法律の中で初めて明確に中国国内で、県の範囲内で、地域的、または、産業内の団体交
渉を行なうことができるようになった。中国における団体交渉は、この法律の公布前は法的
な根拠がなかった。
④ 2001 年 7 月に中華全国総工会第 15 回 4 次執行委員会会議で『2 つの普遍』
2001 年 7 月に中華全国総工会第 15 回 4 次執行委員会会議で、「2 つの普遍」を打ち出し
たことで、中国の労組はこれからも組織の発展を続け、企業も団体交渉に応じるということが
明確に示されたということになる。
そして、5 つの発展趨勢とは、
① 法律で要求を提出するから具体的な規範へ
法律によって原則的な要求の提出から、団体交渉の具体的なルールができた。全国 31
の省市自治区はそれぞれ異なる形で、団体交渉のルールを定めている。特に、23 の省市自
治区は、地方立法の形で団体交渉のルールを決めている。
② 企業の交渉から業界の交渉へ
中国の団体交渉は、主として企業レベルの団体交渉から始まりました。現在では、企業レ
ベルから産業レベルへと発展しつつある。中国の一部地域では、産業レベルの団体交渉が
好事例となっている。
③ 団体交渉の発展に政府が推進し主導的な力を発揮する
現在、改革開放の過程にあるが、自治体によって、外資導入のため、また企業保護のため、
団体交渉の制度の創設、その導入にあまり積極的でないところもある。現在、中国の労使関
係の発展状況から見て、多くの自治体が意識していると思うが、団体交渉で問題を解決しな
いと、労使関係の問題が経済社会の発展に大きな影響を及ぼすであろうということを感じて
いる。したがって、政府は団体交渉制度の創設の推進に関して、積極的に関与している、。
④ 政策の主張から国家の意思に
今年 3 月、中国の全人代で中華人民共和国国民経済社会発展第 12 次 5 カ年計画綱要
が発表された。その中で、中国の私企業の団体交渉のカバレッジを 80%にするという目標が
出されている。
⑤ 労働組合組織を実践の探求から基本職責を履行する重要手段に
労組は、基本的な職責を履行する重要な手段として団体交渉制度の設立へ結びつけて
いく。改革開放以来、中国労組の発展から見てみますと、中国の労組というのは、現在のよ
うな非常に団体交渉を重視するということはなかった。
2.中国の団体交渉制度の実施により得た積極的な成果
近年、各方面のたゆまぬ努力により中国の団体交渉は大きな発展を遂げ、一定の成果を
収め、労働者の賃金という核心的な経済権益の保護、労使関係と調和・安定の促進などの
面で積極的な効力を発揮した。
① 労働者が賃金など民生にかかわる事柄において発言権を持った
改革開放の当初、中国企業は労働者の身近な利益については、社長それから経営者が
決めていた。労働者は団体交渉によって、企業の経営者とともに自分の利益、特に賃金に
かかわる問題を決めることができるようになった。
② 労働者の賃金収入の安定的な増加を促進した
改革開放以来、30 年発展を続け、経済社会は大きな成果を上げ、社会の富も大きく伸び
た。そして、労働者がどのようにして経済社会の発展の成果を享受するか、これは私たちの
重要な問題である。団体交渉制度の推進によって、多くの広範な労働者が経済社会発展の
成果を享受するという可能性はもちろんある。団体交渉を行なっている企業は、労働者の賃
金は同業者の企業と比べると高い水準となっている。天津、上海、四川などは、モデル調査
を行ない、その結果、団体交渉したところ、しないところの労働者の収入のレベルに差がある
ことがわかった。
③ 労使関係との調和・安定を促進した
市場経済を発展させる中で、労使間の問題は存在し、これは自然なことである。この問題
をどのようにして企業が解決していくか。現在、企業と組合はいずれも、交渉により労使双方
の利益のバランスをとるということを実現しようとしています。企業が創造した社会の富は、労
働者と企業の所有者、経営者がともに分かち合う必要があると考えている。この富の分配に
ついて団体交渉を行ない、そして一部では、ある程度の成果をおさめている。
中国の団体交渉は大きな発展を遂げたが、多くの問題に直面している。集中的に表われ
ているのは、
① 関連する法律法規の拘束力の欠如
中国は団体交渉制度の設立のために、多くの法律法規を定めてきた。しかし、一部の法
規はこの団体交渉制度に関する拘束力が不足している。企業が組合と交渉したくないと考
えれば、その経営者を制約する手段はない。
② 政府の推進力不足
各自治体は、団体交渉の制度創設については、認識は深まっており、そしてその推進力
も増進してきた。しかし、組合組織のような積極性は見せていない。つまり、自治体の主導的
な役割の発揮という意味では、私たちを満足させるレベルには至っていない。
③ 社会で共通認識が形成されていない
社会全体ではまだ、団体交渉をするというような意識や理念が深まっておらず、団体交渉
制度の実施についても、多くの人がまだ懐疑心を抱いている。外国、外資系の企業も懸念し
ている。私たちが知るところでは、日本の企業も中国へ約 7 万社が進出しており、約 700 億
人民元の投資を行なっている。日本の中国進出企業は、全体的にみて、団体交渉制度を
積極的に推進している。しかし、同時に認識が必ずしも深くないという状況も存在している。
労働紛争に実際直面した際、一部の外資系企業は、自分から積極的に交渉という手段を使
うということに意識が向いていない企業もある。
④ 労働組合自体の問題
中国の労働組合は法律に規定されているにもかかわらず、産業別、業界別で組合の設立
が行なわれていない。このため労働組合が業界との交渉に満足でき、うまく調整できるかが
今私たちの直面している課題の1つである。つまり、交渉が難しい、調印が難しい、約束の
実行が難しい、監督が難しいということである。
3.中華全国総工会の団体交渉制度の実施推進における目標、原則、重点及び具体的な
措置
(1)中華全国総工会の団体交渉制度の実施推進における努力目標
2011 年から 3 年間かけ、2013 年末までに労働組合を設立している企業の 80%以上で賃
金団体交渉制度を構築し、労働組合を設立している企業の普遍的な賃金団体交渉を実現
し、中国に進出している世界売上トップ 500 企業の全てで賃金団体交渉制度の構築を実現
していく。
(2)中華全国総工会の団体交渉制度の実施推進において従う原則
団体交渉の推進過程において、中華全国総工会は次の 5 つの原則を堅持する。
第 1、法律、法規、規則及び中国政府の関連規定の遵守。
第 2、お互いを尊重し平等に交渉し、企業に自主分配と平等な交渉で決定を一致させる。
第 3、誠実に約束を守り公平に協力し、公平と効率を一致させる。
第 4、双方の合法権益に心を配り、企業発展促進と労働者権益を一致させる。
第 5、法律に基づいた科学的な交渉の展開を自ら堅持し、道理に合い秩序だったやり方で
不一致を解決し、過激な行動を取らない。
(3)中華全国総工会の団体交渉制度の実施推進における重点
中華全国総工会の団体交渉の推進には、重点領域、重点形式、重点対象の 3 つの重点
がある。領域では、民間の中小企業と中国に進出する世界売上トップ 500 企業を重点とする。
形式では、業界の団体交渉の推進を重点とする。対象では、出稼ぎ農民と派遣労働者を重
点に、同じ仕事・同じ報酬、同じ職場・同じ報酬、の実現の推進に努める。
(4)中華全国総工会の団体交渉制度の実施推進において講じる措置
団体交渉の推進における各目標を期日どおりに実現するため、中華全国総工会は以下の
措置を講じ、団体交渉の推進力を確実に拡大していく。
・関連する法律法規の完成を推進
中国が既に承認している労働者に関わる国際的な条約を積極的に学習し、受け入れるこ
とで中国の労働立法の発展と完成を促進させる。
・政府の主導的役割の発揮を推進
中華全国総工会は、各級政府が団体交渉制度を構築させる主導的役割を確実に発揮す
ることを積極的に推し進める。
・交渉代表の能力と資質の向上
現在、中国の各級の労働組合では団体交渉指導員約 6 万人を任用している。中華全国
総工会は、政策法規、戦略テクニックなどの重点内容を中心に、団体交渉指導員と交渉代
表の育成力を強化するため、2011 年から 3 年間をかけて、全国の各級の労働組合で団体
交渉に従事する労働組合幹部と全団体交渉指導員約 15 万人を対象に、計画性があり、狙
いがはっきりし、段階的で、レベルに分かれた研修を計画している。
・多層的でつながりのある団体交渉構造の形成を推進
中華全国総工会は、労働者の賃金分配制度、賃金の増加幅、労働ノルマ、単価の出来
高払いなどを主要内容とし、特に産業集団、中小企業、労働集約型企業が集中した地域と
業界で、団体交渉における地域性と業界性を全力で推し進めていく。
(5)団体交渉の指導とサービス力の強化
中華全国総工会は、民間企業の数の多さと制度構築の難しさという実状に焦点を当て、
各地の労働組合に実際の状況から出発するよう指導し、異なった規模、異なった経営状況
の企業の賃金団体交渉の特徴と規律を探求し、柔軟で多様な要約形式と交渉方法をとり、
異なった交渉の要点を確定する。
(6)交渉理念の宣伝指導を強化
団体交渉制度における曖昧な認識、曲解した現象に的を絞り、交渉理念の啓発を強化し、
特に中国に進出する世界売上トップ 500 企業の団体交渉制度構築の推進によって、団体交
渉の効果と意義を広め、社会全体に交渉理念が着実に打ち立てられるよう導いていく。労
使双方が労働者自身の利益に関わる事項について、法律に基づいた団体交渉の展開が必
ず必要であることを認識させる。
(7)労働組合自身の改革と構築に力を入れる
中華全国総工会は、企業の労働組合設立に一層力を入れ、労働組合の組織率を高めて
いく。このため、団体交渉の発展に更に強固な組織基盤を築き、労働組合の組織体制改革
と革新を積極的に推進し、広範囲な代表性と更に高い権威性を持つ業界労働組合組織の
設立を探求していく。
中国労働組合の労働法制整備への参加状況
張 智君(Mr. Zhang Zhi Jun)
中華全国総工会(ACFTU) 法律工作部 処長
1. 中国の労働法制整備の状況
1992 年第 7 期全国人民代表大会第 5 回会議において『工会法(労働組合法)』が採択さ
れ、その後 2001 年に改定された。同法は労働組合が国家の政治、経済及び社会生活にお
ける地位を確立し、労働組合の権利と義務を明確にし、労働組合が法に則り労働者の合法
的権益擁護について、法律上の保障を定めた。
1994 年第 8 期全国人民代表大会常務委員会第 8 回会議において『労働法』が採択され
た。さらに、『鉱山安全法』、『職業病予防治療法』、『安全生産法』及び『女性従業員保護規
定』などの法律と規則も相次いで制定された。安全生産及び職業病の予防と治療等につい
て規定を設け、労働者に対する権益の擁護を強化した。
2000 年以降、中国の労働法制整備のプロセスは加速し、『労働契約法』、『就職促進法』、
『労働争議調停仲裁法』、『社会保険法』及び『労働保障監察条例』、『労働契約法実施条
例』、『労災保険条例』、『従業員年次有給休暇条例』など、おびただしい数の法律と規則が
相次いで制定された。
2010 年末までに、中国の労働法制システムは基本的に確立された。労働者の権益に関
係する法律、法規、規則と政策はすでに 300 余あり、社会主義市場経済に相応しい労働契
約、就業促進及び労働争議解決の制度が設立または整備されてきた。
2010 年 10 月 28 日に第 11 期全国人民代表大会常務委員会において『社会保険法』が
採択された。『社会保険法』では都市部と農村部のすべての住民をカバーする社会保険シ
ステムの構築を明確にし、基本的な年金保障、基本的な医療保険、労災保険、失業保険及
び出産保険など 5 つの基本保険制度が定められた。
社会保険制度の構築とともに、中国における社会保険のカバレッジは拡大してきた。昨年
末の時点で、農村の保険カバレッジは 2.57 億人、都市の保険カバレッジは 12 億人、労災は
1.6 億人、失業保険もカバレッジが増えている。7,700 万人が最低生活保障を受けている。
2. 中国労働組合の労働法、法規、政策整備への参加及び推進状況
中国労働組合は、労働と雇用を中心として、収入と分配、社会保障、労働安全衛生など、
従業員がもっとも関心を寄せ、もっとも現実的な利益に関る問題について、調査研究を行な
い、地方の労働組合、末端労働組合及び幅広い労働者の願望と要望を十分に聴取し、幅
広い労働者の要求と主張を積極的に反映している。
労使関係と密接な関係のある法律法規、規則及び政策の制定について、労働組合は全
てのプロセスに参加している。例えば『労働契約法』及びその実施条例、『労働争議調停仲
裁法』、『社会保険法』、『職業病予防治療法』、『労災保険条例』など、労働組合が示したほ
とんどの意見と提案が立法機関に受け入れられた。
各レベルの地方労働組合も地方の立法への参加を大変重視してきた結果、地方人民代
表大会及び政府は労働者の権益擁護に関する地方法規と規則の制定を促進してきた。
3. 中国労働組合の労働法、法規の徹底実施への推進状況
中国の法律の規定では、雇用側に対して労働に関する法律と法規遵守の状況を監督す
ることは、各レベルの労働組合に与えられている権利として、中国労働組合は、人民代表大
会、政府及び政治協商会議が労働法の施行の徹底に対する監督と検査に積極的に参加を
推進している。
中国全国人民代表大会常務委員会は法律の実施状況を監督する最高の権力機関であ
り、2008 年『労働契約法』が実施された年に法の執行検査を実施した。2011 年にはさらに 2
回目の法の執行検査を行い、これは中国の法制史上初めてであった。全国政治協商会議
は『労働契約法』の実施状況を視察、監督を行なった。労働組合は全過程を通して、その執
行状況の検査に参加し、『労働契約法』の徹底的な実施を力強く推進した。2009 年、世界
的な金融危機が蔓延する状況の下、全国人民代表大会常務委員会は『工会法』に対し、そ
の執行状況について検査を実施した。
各レベルの労働組合組織は労働法制の実施に対する監督という責務を誠実に果たし、
労働組合の労働法制への監督組織を整備することにより、労働法制に対する労働組合の監
督のネットワークはほぼ形成された。
各レベルの労働組合は積極的に労働争議案件の処理に参加している。
4. 中国労働法制の整備における主要問題
中国の労使関係における問題:
一部の労働集約型の中小企業及び非公有制企業における労働協約の締結率は低く、そ
の内容も基準を満たしておらず、またその履行も不十分である。労働争議、集団争議及び
群体性労働争議の件数は高い頻度で発生しており、労働者の権益が侵害される案件が
度々起きている。例えば、農民工の賃金未払い問題などである。労務派遣の雇用において
は『同一労働、非同一賃金』、『同一制度、非同一権利』などに対する問題がある。労働協約
の締結率とその履行レベルをさらに高めなければならない。労働保障監察執行組織の整備
が遅れているため、一部の従業員の合法的権益を侵害する案件の処理は不十分となって
いる。
中国労使関係の法律、法規、政策が新しい情勢に対応できていない:
1 つ目は、いくつかの問題は法律上で原則的な規定があるが、その法律は具体性に欠け
るために、実際の運用は大変難しく、付属の法律と政策の支えが必要である。2 つ目は、あ
る法律は時代遅れであり、時代のニーズに対応できず、改正と整備が必要である。3 つ目は、
ある法律は強制執行力が十分ではない。
5. 中国労働組合の労働法制体系の完全推進に対する努力目標
1. わが国の労働法制システム整備についての研究を強化し、わが国の労働法制体系整備
についての提案と意見を提唱する。
2. 立法機関に対し提案と意見を示し、人民代表大会、政府の立法または法律改正を積極
的に促進し、最高人民法院(最高裁判所)における司法解釈を推し進め、国務院関係部門
の政府規則の制定を推進する。
3. 法律の制定または改正のプロセスの中で、現場に深く立ち入り、よく調査研究をし、地方
労働組合、末端労働組合と従業員の要望と要求を十分理解した上で、分析と研究を経て、
労働組合の主張を提唱する。
4. 積極的かつ主体的に人民代表大会、政府、最高人民法院及び関係部門と連絡及びコミ
ュニケーションを取り、従業員と労働組合の主張を反映し、全人大、政府と裁判所及び関係
部門の理解と支持を勝ち取るよう努める。
5. 地方労働組合への指導を強化し、地方立法を推進する。
6. 人民代表大会、政治協商会議が展開する労働法制の執行状況の検査、視察を積極的
にサポートし、政府の労働行政部門による労働監察と法律の執行に協力する。また従業員
が大衆的な労働法制の監督を組織及び指導し、労働組合の『六五』法律普及キャンペーン
を深く掘り下げて展開する。労働法制を順守し、法の執行は厳正に、違法行為は必ず追求
するという目標の実現に努め、源から、根本から、また基礎から労使関係の安定を保証す
る。