地域包括ケア体制の構築 良質な高齢者向けの住まい 2.高齢者人工透析医療支援賃貸住宅の整備 (選定年度:平成 21 年度) ■事業者:広域医療法人社団39会 ■事業場所:千葉県松戸市 高齢者 障害者 子育て 〔事業概要〕 医療法人社団が大都市において、適合高専賃の改修により、透析患者専用の高齢者賃貸 住宅を供給するもの 〔提案の評価概要〕 高齢人工透析者に係る課題・ニーズをふまえた在宅透析住宅の先導性、医療経営のモデ ル性及びフィージビリティの高さとともに、就職紹介等による患者の社会生活支援につい ても配慮がなされている点が評価された。今後さらに生活支援サービスの付帯のさせ方、 家族との同居など、住まいとしての視点が検討されることを期待されている。 (1)提案概要 ①提案時の事業背景 近年、高齢透析受療者の入居先が不足し、 社会問題化され始めている。高齢人工透析 患者の急増、医師不足、採算性悪化による 透析診療施設閉鎖・廃止の増加、有料老人 ホーム等における透析受療者受け入れ問題、 などがあげられる。高齢透析受療者が安心 して居住でき、社会復帰支援も視野に入れ たサービスの提供が求められている。 位置図 ②提案時の事業概要 本事業では、①療養型病床に入院する高齢透析受療者に対し容易に専門治療が受けられる 賃貸住宅の供給、②在宅人工透析を実現することで高齢透析受療者の社会復帰支援を促進、 ③入居者不足の有料老人ホームや高齢者専用住宅に対し、(入居者を特化すること等による) 専門的付加価値を高めたモデル事業を提示し需給ミスマッチを減少、の 3 つを実現する。 <事業の全体像> 1.療養型病床に入院する高齢透析受療者に対し、容易に専門治療が受けられる賃貸住宅を 供給することで、高齢者及びその家族が安心できる生活環境と医療、介護環境を提供する。 ①高齢者専用賃貸住宅を透析患者向け住宅に転用、活用 ②低所得者も入居可能な高齢者賃貸住宅を提供 ③専門診療所の併設、社会福祉事務所との介護業務提携等インフラ整備 2.全国 27 万人の透析受療者が、以前より切望している在宅人工透析を実現することで高齢 透析受療者の社会復帰支援を進める。 ①在宅人工透析治療が可能な賃貸住宅の提供 ②在宅人工透析支援診療所の開設と誘致の実行 ③社会復帰及び就労支援、斡旋業務の実行 3.入居者不足の有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅に対し、 (入居者を特化すること等に よる)専門的価値を高めたモデル事業を提示し、需給ミスマッチを減少させる。 (2)建物概要(竣工時) ①建物 住宅・施設の形態 高齢者専用賃貸住宅(現在はサービス付き高齢者向け住宅) 敷地面積 2,512.27 ㎡ 延床面積 2,311.03 ㎡ 構造・階数 鉄筋コンクリート造・2 階建 管理開始年月 住戸面積・住戸数 住戸内設備 18.29 ㎡~36.58 ㎡・53 戸 トイレ、洗面台、エアコン、緊急通報装置、人工透析設備 共同利用設備 併設施設 平成 22 年 4 月 食堂(ラウンジ)、浴室、洗濯場所、簡易台所、エレベーター 血液透析可能な診療所(1階) 、人工透析室(30 床) ②費用等 ・家賃:ベーシック(18.29~19.17 ㎡) (45 戸)46,000 円、コンフォート(23.87~24.19 ㎡) (4 戸)59,000 円、エグゼクティブ(34.02~36.58 ㎡) (4 戸)180,000 円 ・その他費用:管理費 22,000~69,000 円、 共同施設使用料(個室・共用部の電気代・水道代を含む)12,000 円、 入居者負担金 80,000~261,000 円 入居一時負担金(敷金、礼金は早期入居として以下の特典金額中(調査時) ) 敷金:賃料の 1 カ月分(通常 6 カ月分) 、礼金:賃料の 1 カ月分(通常 2 カ月分) 更新料:賃料の 2 カ月分 (人工透析)入居者負担 0 円(生活保護の場合)~1万円/月程度 (在宅人工透析は保険診療のため平均 3,000 円、材料費等は保険で請求、市町 村や収入によっても負担上限額あり) (3)運営状況等 ①入居状況 入居者数 世帯数 10 名(男性 9 名(うち人工透析利用者 4 名) 、女性:1 名) 平均年齢 66.2 歳 単身 8 世帯、夫婦 1 世帯(入居率 17.0%) 要介護度 平均要介護度:1.8(要支援 1,2 は 0.375 にて算出) (平成 23 年 2 月末日) ②介護、医療との連携 ・介護連携 6~7 名が同時入浴可能な浴室、内部から施錠できる個浴室も設置している。個浴室は、施 設に申込み後、時間貸利用としている。現在(調査時)は介護サービスを行っていないが、 入居者自ら介護サービスを依頼して利用することは可能である。 透析食、一般食等を配達する給食会社を複数紹介する。入居者が上記の会社を利用しない で、他社からサービスを受けることも可能である。 ・医療連携 本住宅では、全居室に RO 水*(逆浸透圧)を供給できる設備を設けている。RO 水の導入で は、複数階であるため、RO 水の水圧を上げなければ各居室に届かないことが問題となった。 改良を重ねた結果、居室でコネクターを差し込み、バルブを開けると RO 水が常に供給できる 設備となった。 ※RO 水:原水(採水された水)に RO 膜(1000 万分の1mm という極小のフィルターで逆浸透膜 ともいう。 )処理を施した水。RO 膜処理が施された水は、純水(H2O)に限りなく近 い状態の軟水になる。 (星野メディカルグループ 39 会公式 Web サイトより作成) ③提案内容の達成状況・課題 住宅内で人工透析を受けられることは、おそらく日本初と思われるが、事業主がうまく PR できていないためか、現状が理想、理念に追いついていない。人工透析を入居対象とした高 専賃(当時)もいくつか出てきているが、あくまで人工透析のクリニック併設である。当住 宅と同様の普及が望まれる。 また、屋外に人工透析の配管をした初めての事例でもある。屋内外の温度差もあり、それ に耐えられるだけの配管が必要であり、温度差をなくすため材料費もかなり費やして保護す る必要がある。管内は常に通水しており、水質は 4 マイクロジーメンスと高い質に保たれて いる。 〔資料等〕 外観 住戸内 屋外の配管 基準階平面図 住戸平面図
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