日本の展示状況 TELECOM WORLD2006 に参加した日本企業(団体)は 23 社で、単独ブースを設けた のは 9 社で、あとは Japan Pavilion に 13 社、また国際的な光業界の共同ブースである G ‐PON Pavilion に 3 社が共同出展した。(合計で 23 社/25 ブースとなる)出展者を業種別 に分類すると、通信事業者が 5、メーカが 18、大学及び出版が各 1 ブースとなる。 3 年前にジュネーブで開催された TELECOM2003 の出展者は 22 社であり、数的にはほ ぼ同じであるが、大規模単独ブースが少なく小振りではあるが、逆に日本全体で見ると、 まとまっていて好感が得られた。 世界の各国との比較を行うと、36 か国が約 650 のブースを設けて展示を行った。最も出 展者が多いのは中国であり、香港と合わせて約 230 と全体の 3 分の 1 を占める。また、米 国は 90、カナダは 57、英国は 50 と出展者数は多いが、小規模ブース(1 間ブース)が多 く、展示規模や展示内容は充実していたとは云えない。韓国は日本とほぼ同じ 24 ブースで あるが、サムソンや LG などのメーカ、SK や KT などの携帯事業者は大規模なブースで華々 しい展示をしている一方で、小規模ブースが多く、出展者間の格差も大きい。 Japan Pavilion 日本企業の中で最大規模(東芝ブース) 主な出展品と特徴として 1)携帯電話/PHS 現行の携帯端末は、韓国や中国勢の携帯電話を主軸においた華やかで活気のある展示と 豊富な品揃えに押されて、日本勢の影が薄く、最近論議されている携帯電話の日本シェア 低下が実感として見ることができる。また、展示されている携帯電話は、日本のキャリア 向けが中心であり、海外の顧客に対して、どのようなアピールができたか疑問はあるが、 豊富な機能やコンテンツには興味を示しており、すでに日本発の写メール(カメラ機能) 1 が 世 界 の 携 帯 電 話 の 標 準 機 能 と な っ て い る よ う に 、 音 楽 再 生 機 能 や Felica 機 能 (Osaifu-Keitai)などの日本発の新携帯機能も、ITU Telecom2009 までには世界中の携 帯の標準機能として、展開されていくものと思われる。写メール、i-mode、着うたなど に代表される日本発の携帯機能のアイデアや技術を、日本の強さとして活用できないもの だろうか。また、ワンセグ携帯端末が展示されていたが、欧州の DVB-H、韓国の T-DMB、 米国クアルコム社の Media FLO など色々な方式があり、端末を見ただけでは、どれも同 じ「携帯テレビ」であり、違いが分からない。放送業界と連携して、国際展示会の場で、 日本の「ワンセグシステム」を売り込む(売り込まないまでも、技術をアピールする)な どの工夫があっても良かったか? 実用面では、日本の「ワンセグ」は、すでに全国規模 でサービスが行われており、世界を先行している。 【参考】携帯ミュージック市場(Official Newspaper of ITU Telecom World2006 記事) 2006年 $6.7 billion うちストリーム・ミュージック 0.2 billion 2011 年 $14.1 billion うちストリーム・ミュージック 1.8 billion 次世代携帯電話技術(HSDPA/HSUPA/LTE/4G)に関する展示として、スペアナ等の測 定器を用いて、実際の特性を示しながら、技術開発の状況をアピールしていた。 PHS は、日本の携帯電話事業が停滞している中で、勝ち組と評されているが、最大市場 である中国向けの端末は、日本からモジュールを供給し、ケースの設計製作及び組み込み 作業は現地企業が行っているとのことである。これらの日中分業は、人件費の安さによる 組立コスト低減のみならず、日本人の性格(日本人の設計は妥協を許さず安くならない) や文化の違いによる色や構造等の好み(折り畳み式は不人気)から、最終仕上げの現地化 は必須とのこと。これは、成功している海外の大手携帯電話メーカが、現地化を進めてい ることに符合する。 中国市場向け PHS 端末の例 ・日本製モジュールを使い、中国メーカが完成品 に仕上げる(日中合作) ・音声通話のみのシンプル機能、簡単操作 ・小型、実用的 ・作りやすさを重視したシンプルな構造 ・趣味趣向/文化の違い(折り畳み型は不人気) ・日本人は性格上割切った設計ができない 2)NGN・光伝送 携帯電話と並び国内で注目されている NGN や光伝送システムは、NTT や NEC、富士通 2 ブースなどが、光デバイスやプラットホームなどの機器やシステムを展示。NTT のブース では、既に商用化されている FTTH をモデル化して、トータルシステムとして展示をして いた。 また、国際的な共同ブース G-PON(gigabit passive optical network) Pavilion には、NEC、 日立製作所、富士通が参加した。G-PON Pavilion の参加 9 社のうち、日本企業が 3 社、米 国 3 社、その他 3 か国が各1社を出展し、日米が光技術を先導している。Pavilion では、 各メーカの機器間相互接続試験のデモを行った。 3)WiMAX 今回の展示会のもうひとつの目玉である WiMAX は、富士通、三菱、日立製作所、沖電 気などの機器の展示と KDDI 社の Ultra 3G のコンセプトとして、Mobile WiMAX の Bus Tour デモ(車載デモ)のビデオ映像の公開展示が注目された。海外企業の展示は、概して 精練された商用化製品レベルに近いものが多いが、静的展示が多いように思われた。これ に対して、日本企業の展示機器は、「いかにも試作機」風の無骨品ではあるが、富士通が測 定器を持ち込んでの動的システムの展示を行うなど説得力があった。 (写真参照) WiMAX 基地局 WiMAX 端末局 測定器で特性を表示 4)その他の展示 日本企業の展示は、半導体・デバイスから装置、さらにシステムまで、多岐多彩な展示 で、一言では言い表せない。また、3D ディスプレー、アコースティック OFDM(最近、 テレビコマーシャルで宣伝している。面白い!)、バーチャル・キーボード、ペーパー・デ ィスプレーなどの近未来的新技術開発など、ほかの国の製品展示(実用化システムまたは 実用化評価システムまで)と一風異なった技術展示をしており、新技術の発信国との印象 が大きい。一方では、用途も明確になっていないものを何故開発するのかの疑問の声も聞 かれた。新システムの開発の手順として、欧米はまずシステム設計を行い、その次にシス 3 テムを実現するために必要なデバイスを開発する手法をとるが、日本は往々にしてデバイ スを先に開発し、それを使うアプリケーション/システムを考える傾向にある。今回の展示 も、この一端を見た感があった。 3.総じて 1)日本は、 「技術」が中心で地味ではあるが、確かなものがある。 世界の通信業界の注目は、「携帯電話」に集中しており、華やかな携帯電話を中心とした CE ショー的な展示会の中で、日本勢は「技術」を中心とした「確かなもの」が感じられ、 見ていても「安心感」がある。これは、モトローラ(米)やジーメンス(独)などの世界 の通信業界の大手企業にも、云えることである。 2)日本企業は「技術展示会」 日本企業は、測定器を持ち込んでの動的展示をしているケースが多々見られたが、ほか の国ではあまり見られず(せいぜいパソコンによるモニター表示まで)、展示会のスタンス は、日本は「技術展示会」、他国は「製品展示会」の感じが強くでていた。(国際展示会で は、何をアピールすれば効果的か検討する必要があるかも知れない。 ) 3)日本は通信の総合商社 日本は、守備範囲が広く、何でも出来る通信の総合商社 最近、日本の技術力低下が論議されている中で、改めて、日本の技術は世界でもトップ クラス(またはトップ)であることを認識した。 4)日本人の特質 国際展示会では、日本人と外国人の国民性の違い、文化の違いが良くわかる。同じ日本 企業のブースでも、外国人の説明員は積極的。これは、同行者全員の一致した意見。(日本 人はシャイ) 5)今後の課題 ・総合商社とは云っても、日本は限られた資源を何に注力をして行くべきか選択と集中も 必要 ・世界でもトップクラスの技術を、どのように活かし、そして世界に売り込んでいくかが 最大の課題(市場調査、販売戦略、国際セールスマンの育成等) 4
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