パラグアイ経済(2008年1月~3月) 1.概況 2007年、当国政府はマクロ経済の面で顕著な成績を上げたが、2008年に入っても、3月までの 月間インフレも若干下降(1月1.6%→2月1.3%→3月0.7%)する等、良好な経済指標が報告さ れた。IMFも当国における長年の好調なマクロ経済の成果を評価し、スタンドバイ合意第5次レビュー も承認された。 2月、パラグアイ政府は、サンペドロ県における黄熱病の感染者5人を確認後、都市部でも感染の 可能性有りとし、全土に90日間の非常事態宣言を出した。「パ」では過去34年間、黄熱病の感染が 確認されていなかったものの、2月初めに最初の感染者が確認されて以来、多くの住民が予防接種 を受けようと保健所に殺到。ワクチンの不足に抗議して、首都近郊の住民が幹線道路を封鎖する騒 ぎも起きた。当地主要紙は、黄熱病を敬遠した外国人旅行者数が減少したため、イースター休暇(3 月20~23日)中のアスンシオンの主要ホテルのキャンセル数が前年比で50%低下した旨報道。ま た、イースター休暇の前後で、対ドル為替相場は本年に入って最も大きい上げ幅である80Gのグァラ ニー高を記録。中銀による大規模なドル買い介入にも関わらず、右傾向は止まない状況である。 2.経済関係の主な動き <金融・財政> ●1月2日:行政府は地租税の価格基準となる全国の不動産の新標準価格を発表。新標準価格は2 007年比で13%の増加。不動産所有者は、標準価格の1%を管轄の市役所に納税する義務が発生。 ●1月4日:行政府は、客年12月に国会で審議、可決された2008年度国家予算法(法令3409号) を公布。予算内訳は、歳入、歳出共に27兆9,178億G。予算の伸び率は歳出全体で前年比11%、 中央機関支出は6%、非中央機関支出は16%とそれぞれ増加し、全体的な支出総額の増加、特に 非中央機関支出分の増加が顕著となった。 ●1月7日:バレット蔵相は、承認された予算における財政計画として、中央機関支出分より1兆4千8 百万Gを削減するものの、基本的には社会福祉事業を優先させ、少なくとも4億ドルの公共投資を実 行する旨述べた。 ●1月7日:当地主要各紙は2008年の経済見通しを発表。経済成長率が5~6%、物価上昇率が7. 5%、対ドル為替相場は1ドル=5,270Gと想定、税収は全体で約9%増の見込と報道。 ●2月28日:ロハス中銀総裁は、昨今のグァラニー高の傾向は、大量の外貨流入による正常な動き であり、中銀が優先すべきはインフレの抑制である旨述べた。 ●3月5日:モリナス農牧相は記者会見を開き、ドゥアルテ大統領が、各農産物の収穫時にドルが下 落するのは好ましくないとして、対ドル相場を4,600G台で維持するよう「ロ」中銀総裁に指示した旨 公表。(注:農産物の国際価格は前年比で上昇。小麦:167→387ドル/トン、向日葵:970→2,63 0G/キロ、トウモロコシ:515→1300G/キロ、ステビア:2,000→5,000G/キロ) ●3月26日:ロハス中銀総裁は、グァラニー高是正のため、2008年に入り最大額となる約1,630 万米ドルの購入に中銀が介入する旨公表。右に伴い、米ドルを購入する為に必要な有価証券を発行。 3.対外部門 (1)輸出入 ●1月4日:ホセ・ルイス・ダポルタ被服産業協会(AIC)会長は、2007年度の衣類の輸出高が3,15 0万ドルに上り、2,740万ドルであった2006年と比較して、15%の成長を達成した旨、また輸出先 としては、全輸出量の85%を輸送距離が短く、かつ無関税のメルコスール加盟国(アルゼンチン、ブ ラジル、ウルグアイの順)で占められている旨述べた。 ●1月5日:ウゴ・コラレス国立家畜衛生局(SENACSA)総裁兼メルコスール常勤獣医委員会会長は、 パラグアイは口蹄疫の駆除過程にあり、この4年間口蹄疫が発生していない旨述べた。 ●1月17日:ホルヘ・フィグエレド・パラグアイ不動産業者協会会長は、アスンシオン市及びサン・ロレ ンソ、ビジャ・モラ等の近郊都市において不動産価格の上昇が続いている旨、好調な経済が続けば更 なる成長が見込まれる旨述べた。 ●2月9日:マックス・ハベール・パラグアイ輸入業者中央会(CIP)は、2006年度の「パ」の輸入は中 国製品が一位を占めたが、2007年度は伯製品が取って代わった旨述べた。2007年度の「パ」の輸 入総額は、64億9千8百万ドルであり、うち伯製品(燃料、車、肥料、農業機械等)の輸入高は約17 億4千8百万ドルで、中国製品(電化製品、靴、衣料等)は約17億4千3百万ドルであった。 ●2月13日:大蔵省は、携帯電話会社4社(TIGO、PERSONAL、CTIMOVIL、VOX)の2007年度の 売上金が4億5,800万ドルを記録し、右セクターが4年連続で成長を維持し、国内の市場活性化に 大きく貢献している旨報告。また、国家電気通信委員会(CONATEL)は、2007年度末までに450万 本に上る携帯電話回線が契約されており、2007年度だけでも前年比51%に当たる150万回線の 増加が見られる旨、国民の75%が携帯電話を1台所有している計算になる旨報告。 (2)メルコスール ●1月7日:パラグアイ穀物油糧作物輸出協会(CAPECO)は、亜への「パ」産大豆の輸出量は、200 6年には総輸出量の17%に過ぎなかったが、2007年は62%(2,131,000トン)に増加した旨発 表。 ●1月31日:ソルハンシック・パラグアイ畜産協会(ARP)会長は、EUが、衛生上の理由により、同日 からブラジル、ボリビア産の牛肉の輸入を停止する旨発表したことを受け、ブラジルは新たな市場確 保のため、「パ」産牛肉を多く輸入している露やチリに強力な輸出攻勢をしてくることが予想される旨 述べた。 (3)国際機関 ●2月20日:ブラジルのヘトゥリオ・バルガス財団とミュンヘン大学経済調査研究所の調査によれば、 ラ米の経済は2008年1月、米国の経済不況の影響で、2005年7月以来、最も悪化したが、評価対 象国12カ国中、パラグアイとアルゼンチンの2カ国の経済指数に上昇が見られた旨、パラグアイは2 007年10月に8位であった経済指数順位が、2008年1月には5位となった旨公表。 ●3月29日:IMF理事会は、パラグアイにおける長年の好調なマクロ経済の成果を受け、対パラグア イ・スタンドバイ取極合意第5次レビューを承認。パラグアイは46百万ドルの融資を受けることが可能 となった。 4.民間部門 (1)インフレーション・為替相場・貧困 ●1月24日:ロハス中銀総裁は、昨今の世界経済市場におけるドルの脆弱性に危機感を持ち、外貨 準備金として、ドルに代替する外貨の保有を模索している旨、また、現在、パラグアイの外貨準備金 の9割がドル、1割が円やユーロ等である旨述べた。 ●2月4日:中銀は、1月の月間インフレを、1.6%(前年同月は-1.0%)、昨年1月からの年間累 積インフレ率は、8.8%と報告。 ●1月24日:商工省、大蔵省、公共事業通信省、国家税関当局等で構成されている免税地域委員会 は、パラグアイ国内の免税地域をより有効に利用して、工業及び情報処理機材の組立業の発展を図 る方法を検討した。2008年時点で、免税地域は輸出入の窓口としてだけ利用されており、加工業や サービス業は行われておらず、政府は、既存の流通、倉庫業以外の新たな業者を取り入れることによ り、免税地域の顧客数を増加するための免税地域法の改正も検討している旨発表。 ●1月28日:ズルマ・ソサ統計局長は、バレット蔵相と会談し、来年度、45年振りにパラグアイ国内の 経済統計調査を実施する旨、国内の商業、工業、サービス業等の経済活動に関する様々なデータの 収集の実施が予定され、既に世銀に680万ドルの融資を申請している旨発表。 ●2月13日:大統領府企画庁統計センサス総局(DGEEC)が2006年度に行った家庭調査報告書の データを解析した結果、国内の貧困層の比率が前年度2005年の15.5%から20.9%に上昇した ことが判明。都市部においては05年度の11.6%から16.6%へと上昇し、「ド」政権が発足した03 年度の13.4%を超えた。 ●3月3日:中銀は、2月の月間インフレを、1.3%(前年同月は-0.3%)、1月からの累積インフレ 率は2.9%、昨年2月からの年間累積インフレ率は、10.5%と報告。 ●3月11日:中銀のデータを基にした調査の結果、大蔵省は、2007年度の国民一人当たりの国内 総生産を1,928ドルと非公式に発表。1,598ドルであった2006年度と比較し、20%の上昇となっ た。IMFのデータによれば、ウルグアイ6,477ドル、伯6,220ドル、亜6,278ドル。 ●3月24日:当地主要各紙はイースター休暇(同月20~23日)を挟み1日で80Gのグァラニー高(4, 540G→4,460G)となった旨、2008年に入り最も大きい上げ幅である旨報道。 ●4月2日:中銀は、3月の月間インフレを0.7%(前年同月は-1.0%)、1月からの累積インフレ率 は3.6%、昨年3月からの年間累積インフレ率は、12.3%と報告。 (2)インフラ、エネルギー等 ●1月24日:ヘクトル・ルイス・ディアス公共事業通信省(MOPC)鉱山エネルギー副大臣は、ラテン・ アメリカ・ミネラル社(加)がパソ・ジョイで採集したサンプルの検査結果により、金の存在が確認できた 旨発表。 ●2月14日:ディアス公共事業通信省(MOPC)鉱山エネルギー副大臣は、米国から新たに入手した 資料によると、1947年から2005年にかけて、合計49カ所の石油及び天然ガス井が試堀されてお り、うち9カ所で石油及び天然ガス、7カ所で石油のみ、4カ所で天然ガスのみが埋蔵している可能性 がある旨述べた。 ●2月23日:ギジェルモ・アルカラス投資輸出振興機構(REDIEX)代表は、2008年度中、パラグア イの輸出入業者は外国からの大規模投資を呼び込むために様々なプロモーションを計画している旨 述べる一方、右投資が無秩序に実施された場合、電力の供給が将来不足するのではないかという懸 念を表明。 ●2月23日:セメント公社(INC)は、最近の原油価格高騰の影響により輸送費が上昇したため、セメ ントと石灰、煉瓦や瓦、砂利等の建築資材が不足し、値上がりしている旨公表。特にセメント不足に関 して、ルイス・カルロス・ガマラINC会長は、多くのセメントを日々供給しているのに不足が続いている ということは、値段を上げるために卸業者達が供給を意図的に操作しているのではないか、との疑問 を呈した。 (3)農牧畜業 ●1月7日:ダリオ・マンデルブルゲル環境庁(SEAM)生物多様性局長は、「パ」原産のステビアが自 然生息地で全滅の危機にある旨公表。マンデルブルゲル局長は、農牧省(MAG)、国立植物・種子 品質・防疫事業団(SENAVE)、パラグアイ・ステビア生産者会議所(CAPASTE)、投資輸出促進機 構(REDIEX)との会議で、自然生息しているステビアの種子、苗ではなく、農地で栽培された品種の 場合に限り、加工及び薬品に利用が可能となる政令案の作成に合意した旨述べた。 ●2月28日:口蹄疫発生を想定したシミュレーションが国立家畜衛生局(SENACSA)主導の下、コ ロネル・オビエド市で行われた。シミュレーションに参加したリカルド・ロメロ米国農務省植物衛生検査 局技師は、この種の活動を定期的に行い、外部公開していくことで「パ」産牛肉に対する市場の信頼 感を獲得できる旨述べた。 ●3月11日:セルソ・カニサ・アリメント・エコロヒコ社代表は、2007年に3,470G/キロであったゴマ の価格が、2008年には6,000G/キロもの記録的な高値を付けた旨、また本年度はゴマ生産者に 6,000万ドルの収入をもたらすだろう旨述べた。 (4)観光・航空 ●1月30日:マリアン・ピノ・パラグアイ地方観光組合(APATUR)長は、観光庁(SENATUR)による 地方観光促進のための、トイレの清掃・路上での警察の賄賂撲滅対策の成果により、国内旅行者数 が増加した旨述べ、特に地方観光が伸びた原因として、投資輸出振興機構(REDIEX)が、パラグア イを南米の観光スポットとして旅行展等でアピールした結果であろう旨述べた。 ●2月7日:リス・クラメル観光庁長官は、2月上旬にスペインで行われた国際観光エキスポに参加し、 パラグアイ観光ブースに多くの来場者が足を運び、観光地としてのパラグアイに高い関心が示されて いる旨、特に田舎を体験できるような旅行パックに注目が集まっている旨述べた。また、クラメル観光 庁長官は、スペインの大手旅行会社5社がメルコスール観光パックにパラグアイを組み込むことを確 約した旨述べた。 ●3月15日:フェリアス国家民間航空管理局(DINAC)副局長は2008年度中に、現在国際線に乗り 入れている4社(TAM航空、GOL航空、AEROSUR、アルゼンチン航空)に加え、数社が新たに就航 予定である旨、進出が期待されるコパ航空はパナマ~アスンシオン間の航空路を提示する一方、DI NAC側はパナマ~エステ~アスンシオン~パナマ~マイアミ間を提案している旨、また、タカ航空も 運行を期待されているがDINACとの間で交渉段階である旨述べた。 ●3月24日:当地ラ・ナシオン紙は黄熱病を敬遠した外国人旅行者数の減少のため、イースター休暇 中のアスンシオンの主要ホテルのキャンセル数が前年比で50%低下した旨報道。
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