カバレッジの検討と市場集中度の分析

カバレッジの検討と市場集中度の分析
ミクロデータに基づく建設業の構造分析 その1
Data Coverage Study and Calculation of Concentration Ratio
Analysis of the Construction Industry using the Business Evaluation Micro Data, Part 1
岩松 準*
Jun IWAMATSU
In the recent Japan, some statistics and results of investigations which cover plenty of construction companies become available in
the form of digital data. This research uses them, and analyzes and understands the overall picture of Japan's construction industry.
Especially in this analysis, the Business-Evaluation results (BERs) created and released under the Construction Business Act is used
mainly. Since most public purchasers use this evaluation, many of construction companies take it every year. The number of micro
data obtained as of March 2012 was 147,152. The contents of data released are corporate profiles, evaluation points, amount of
completed works and number of engineers, labor welfare situations, and financial conditions.
The coverage of BERs is examined by contrast with the Construction License information or the total value of completed work
amount of the Statistics on Construction Undertaken. This analysis is conducted according to prefectures or construction work types.
In some construction work types, it turned out that the coverage of BERs is comparatively high. The concentration ratios are
calculated on the main construction work types with high value of coverage.
Keywords: the Business Evaluation, completed work amount, coverage, micro data, concentration ratio, statistical analysis
経審, 完工高, カバレッジ, ミクロデータ, 市場集中度, 統計分析
1.
研究の背景と目的
計のミクロデータ利用はほとんど進んでいない状況である
1) 4)
。と
近年、建設企業の多くをカバーする統計や調査結果がデジタルデ
ころで、経審自体は統計法が管轄する統計のリストにはなく、公式
ータの形で入手可能になった。本研究はそれらを使い、一見複雑な
には統計とは呼べないが、公表されるデータの内容そのものは企業
建設業を分析・把握するものである。本稿ではとくに建設業法を根
名が入る個別企業情報であって、立派なミクロデータといえる。
拠として作成・公表されている経営事項審査結果(以下、経審)を
ミクロデータの大標本分析では、従来から行われてきた一部階層
中心的に用いる。経審は公共工事の発注機関の大部分が入札資格審
に限られた集計分析や平均値のみを表示する分析とは異なり、分散
査(客観評価)に利用していることから、それにかかる主な建設企
量に関する情報が常に得られるため、分析対象の構造を全体として
業のほとんどが毎年受審している。2012 年 3 月時点採取データベ
把握・解明するのに適しており、さまざまな果実を期待できる。上
ースの数は 147,152 社であった。公表される内容は会社概要、建設
述のような経審データの内容と規模から、本研究では建設業の市場
業許可区分別の完成工事高・評点・技術職員数、労働福祉の状況、
構造や建設企業の収益性指標等の分析を取り扱う。
経営状況等であり、1 社当最大で約 400 項目もある。また、データ
このような分析目的での主な既往調査としては、国土交通省が建
にはユニークな建設業許可番号が振られているため、経年的なパネ
設工事施工統計調査報告に記載のある企業を対象にほぼ 3 年毎に行
ルデータ分析に使うこともできる。
う「建設業構造基本調査」注
2)
や財務省の「法人企業統計」が挙げ
一般に個票レベルの非集計データを「ミクロデータ」と呼ぶ。先
られる。前者は、調査項目がかなり多彩で詳細なものだが、経審に
進諸国では政府などの統計主体が収集・提供する大標本データが学
比べるとかなり少ない約 2 万社のサンプリングであって、さらに有
術研究目的に広く利用される環境があったが、日本では平成 19 年
効回収率は 6 割を切る水準である。また、後者の「建設業」に関す
の統計法改正によってようやく制度はできたものの「匿名データの
る情報は 5 つの資本階層での財務指標の平均値のみが示される。何
提供」は未だ皆無に近い注 1)。建築分野では総務省統計局が所管する
れも有益な情報を提供する調査だが、その状況把握に関してこれら
「住宅・土地統計調査」の一部利用実績があるだけで、その他の統
の点に不満が残る。本研究で扱うミクロデータが示す情報と合わせ
* 一般財団法人建築コスト管理システム研究所
Senior Researcher, Research Institute on Building Cost (RIBC), Dr. Eng.
主席研究員・博士(工学)
1
てみることで、建設業の構造のより深い理解が得られるであろう。
あり、建設業許可情報(②)における個別企業の特定が可能となる。
その結果、大臣許可業者の経審受審有無等が把握可能となる(図 1)。
なお、こうした分析目的で経審データを取り扱う際には、兼業比
率の高い企業が含まれる問題など分析対象へのノイズの混入を避け
最新時点で経審受審は全許可業者 9,713 社の約 64.1%にあたる
る必要があることや、データ自体に虚偽申請やミスがあることを排
6,229 社だが、許可番号が一致するのは 6,159 社で、残り 70 社は新
除しきれない注 3)ため、利用にあたり留意すべき点もある。
規参入、知事許可へ移行、退出(倒産等)のどれかと思われる。大
臣許可企業における経審の未受審は 3,554 社と多く、大企業では電
2.
気、石油、商社、不動産、住設メーカーなどの有名企業が並ぶ。建
経審データの位置づけと分析での活用方針
設関連でも公共事業に関係が薄いと思われる企業もある。建設業許
本章では、経審データとその他の関連統計情報等の比較を通じて、
可の実態をうかがえる興味深いリストである注 4)。
建設業の統計的範囲における経審データの位置づけを検討し、以後
の分析での活用方針を明らかにする。
② 建 設業大 臣許可取得企 業
( 2012年1月末 現在 )
9 ,71 3社
経審は建設業法第 27 条の 23 を根拠に、公共工事への応札要件と
して、昭和 36 年の同法改正以後、
「客観的事項」の受審が義務付け
られたもので、
「建設企業の経営力、技術力、社会的貢献度等の多面
的、総合的データ」5)である。平成 10 年 12 月からは国土交通省の
指導により建設業情報管理センター(CIIC)のホームページ(HP)
で受審企業の「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」が
全て公表されている。約 15 万社が受審する大規模なものであるこ
図1
と、またその公表データの内容は、許可区分(工事種類)別の完成
大 臣 許 可未 取 得
70社
①経営事項審査受審企業(2012 年 3 月現在)6,229 社
(1)経審データベースの意義
大臣許可取得済み・経審受審企業
6,159社
大臣許可取得済み・経審未受審企業
3,554社
大臣許可業者の経審受審の有・無(2012 年当初)
(注)①経審情報と②許可情報の許可番号により調べた。
工事高(完工高)や技術職員の状況、経営状況が判明する主な財務
会計指標など 400 項目ほどが横並びで比較可能なこと、さらに上記
また、表 1 の③の統計は建設企業の毎年度の建設工事の実績を調
通知書の有効期間が 1 年 7 ヶ月のため多くの企業は定期的に受審す
べたもので、大臣許可は全数、知事許可は資本金 3000 万円以上が
ることから、総合的かつ最新の建設業の状況理解に有効であって、
全数など、建設業許可の母集団に対するカバレッジはかなり大きい
多くの果実をもたらす情報源になりうる。
調査である一方、未提出業者は施工実績なしとして扱っている注 5)。
一方、個々の受審企業のプロフィールをみると、建設企業とはい
この完工高総額は、国土交通省の建設投資推計とはほぼ整合する。
えない業態の企業も一定数含まれることにも気づく。例えば製造業
以下ではこれらのデータ間の整合検討や一部データの分析から経
等の上場企業で、事業多角化の一環あるいは自社工場等の建設を目
審データの位置づけを議論する。
的に受審しているのではと思われるケースがある。結果、著名な商
(3)専業比率の検討
社や電気メーカー等が受審企業リストにある
(1)で述べたように建設業の「専業比率」が低いものがあり、分析
注 4)
。分析目的にもよる
が、これら企業を建設業と認識してそれに含めるのは本来ではない。
内容にもよるが、一般には建設業に対する分析からは除くのが望ま
逆に、公共工事に関わりがないため、この経審情報から洩れる建設
しいといえる。前出の「建設業の構造分析」注
企業も少なくない。
統計調査報告」でも兼業比率が 20%(専業比率 80%)をしきい値
(2)カバレッジの検討に利用する情報
にしてサンプルを捨てている。経審データでも「完成工事高/売上
2)
や「建設工事施工
利用データを表 1 に整理した。データベース(①、②大臣)と集
高(%)」という表示項目があり、公表時点でこの計算が既にされて
計された統計(②知事、③)である。建設業の事業者数については
いる。ただし、この欄は単独決算企業のみで、連結決算の場合は表
で触れたとおりで、大枠は建設業法に基づく建設業許可の取
記がなく、別データ項目の「完成工事高合計」値と参考で示される
得企業である。ただ、建設業許可は 5 年間の有効期間があるため近
(連結決算の)
「売上高」とを使い計算する必要がある。この値は本
時の参入・退出企業がフォローされない欠点がある。また、すべて
体と連結の規模差から不正確なものとなるが、他の方法が採れない
の国土交通大臣の許可業者の情報は同省の HP でその内容が定期的
のでこれで代用する。なお、この連結決算は会社法に規定する大会
に更新・公開されている。
(一方、知事許可は各都道府県が対応する
社で有価証券報告書の提出義務がある会社等が該当する。
拙稿
2)
が、現在はその公開方法や内容が統一的でなく、すべてのデータ入
1.大臣許可
手は難しい。) 経審データ(①)にはユニークな建設業許可番号が
表1
2000
平 均=70.98%
標準偏差=35.76%
(中央値=92.10%)
1500
分析したデータベース等(2010~2012 年頃の情報)
データ名称
①経営事項審査結果
(大臣・知事許可)
②建設業許可情報
(大臣許可のみ。知事
許可は統計を利用)
③建設工事施工統計
調査報告(大臣・知事)
2.知事許可
(度数)
80000
60000
1000
内容等
建設業情報管理センターHP で 2012.3 初旬時点公表の
受審企業情報。N=大臣 6,229 社、知事 140,923 社。
国土交通省の HP 上で公表された 2012.1.31 現在の大
臣許可を受けた企業の登録情報。N=9,713 社。
(なお知
事許可情報は 2011.3 末での国土交通省の集計を利用。)
国の基幹統計の一つ。国土交通省による H22 年度集計
(H24.3.30 公表)。N=大臣 6,567 社、知事 208,144 社。
40000
500
20000
0
0
0
20
40
60
(%)
図2
2
平 均=87.00%
標準偏差=26.18%
(中央値=100.00%)
(度数)
80
100
0
20
40
60
(%)
許可区分別の専業比率のヒストグラム
80
100
との関係は図 4 のとおりである。
(4)経審データのカバレッジ計算と都道府県別の特徴
経審データの位置づけを探るため、大臣・知事許可別に事業者数、
元請完工高の合計値の比較によりカバレッジを検討した。ここでは
想定される母集団に対して、当該データベースのデータ数の割合を
「カバレッジ」と考えている。分析するデータがどの程度母集団の
事情を反映しているかの目安となるとともに、それを細かく属性別
に見れば、その特徴を捉えることもできる。前節(3)の検討にお
いて、専業比率が 80%以上を分析に含める場合も考慮して整理する
と、表 2 はその全国合計値でのカバレッジの計算結果である。
図3
許可区分別の専業比率と完工高の散布図(経審全データ)
表2
(注)建設業の分析では専業比率 80%以上を採用し、それ未満は捨てる。
経審データのカバレッジ(全国合計値)
項目及び資料名
大臣許可
全データ
専業 80%以上
知事許可
全データ
専業 80%以上
113,717
140,923
9,713
489,071
カバレッジ
38.5%
23.3%
64.1%
28.8%
21,209
15,957
32,328
19,021
元請完工 ①経審データ
高の合計 ③施工統計
30,362
16,635
(十億円) カバレッジ
69.9%
95.9%
106.5%
114.3%
(注)資料番号は表 1 に同じ。*大臣:2012.1、知事:2011.3 時点。大臣、知事
の各列の右側は専業比率 80%以上の企業に限った場合の数字。
①経審データ
事業者数
②建設業許可*
(社)
6,229
3,739
全データについてみると、事業者数ベース(表 2 上段)では大臣
許可が 64.1%、知事許可が 28.8%のカバレッジであるが、建設施工
図4
統計調査を基準にした元請完工高ベース(表 2 下段)では、大臣・
棄却しきい値とする専業比率と非棄却率との関係
知事許可とも 100%を超えるカバレッジとなる。経審の元請完工高
経審データの専業比率を上述のとおり求め、許可区分別にヒスト
の値は各企業の事業年度の 2 年分か 3 年分の平均値が採られている
グラムに描いた(前頁図 2)。専業比率の代表値を図中に示すが、大
ことを勘案しても、全体として 100%を超えるのは一見不思議であ
臣許可は知事許可に比べて若干低めの値をとる。知事許可は中央値
る。前述のように、施工統計がサンプリング調査に基づく推計値で
が 100%であって過半はそれである。大臣許可は中央値が 92.1%で
あることによる不正確さによるものとも考えられるが、経審では完
過半はこの値以上となっている。また第 3 四分位が 100%だから、
工高の大きさが企業評価に反映するので、多めに申告する傾向(重
大臣許可企業の少なくとも 1/4 は専業比率が 100%である。また、
複や虚偽)があるためではないか。1 章の最後に述べたことを裏付
完工高規模との関係をみるために散布図を描いた(図 3)。既往の分
けるものとも考えられ、データ利用上、留意すべきこととなろう。
析事例に倣い、専業比率 80%未満を建設業の分析から排除すること
次に、専業比率 80%以上を有効とみた場合のカバレッジの値は若
にすると、その数は不明も含めて大臣許可 2,490 社(排除率 40.0%)、
干減り、企業数ベースでは大臣許可が 38.5%、知事許可が 23.3%、
知事許可 27,206 社(同 19.3%)となる。しきい値の値と非排除率
また、元請完工高ベースでは大臣許可が 69.9%、知事許可が 95.9%
図 6 建設工事施工統計調査報告(表 1 資料③)との元請完工高
の比較に基づく経審データのカバレッジ(都道府県別, %)
図 5 建設業許可情報(表 1 資料②)との業者数の比較
に基づく経審データのカバレッジ(都道府県別, %)
(注)専業比率が 80%以上のみ。図 6、図 7 も同じ。
(注)図 5 のような全国平均値表示は割愛。図中の【参考】は注 6)に解説。
3
となる。建設業に関する分析ではこれで話を進めることにする。つ
3.
市場集中度の検討
前章での検討から、経審データが金額ベース(元請完工高)では
づいて、このような前提で、都道府県別にカバレッジ計算を行った
(図 5 及び図 6)。
比較的カバレッジの大きなデータであることから、以下の市場集中
事業者数ベースで検討した図 5 によれば、大臣、知事ともに大都
度の計算に使える。建設業の構造分析のはじめにこの問題を扱う。
市を抱える都府県でカバレッジが落ちる傾向がみられる一方、図 6
(1)市場構造の分析方法と市場の範囲
ではそのような傾向はあまり顕著ではない。むしろ知事許可区分で
ミクロ経済学の応用分野の一つである伝統的な産業組織論では、
は東京、千葉、宮城などでは後者のカバレッジはかなり高い。これ
産業の市場構造(Structure)が市場行動(Conduct)を規定し、さ
ら地域では、経審未受審の建設企業の施工実績の総額(元請完工高)
らに市場行動が市場成果(Performance)を規定するという因果関
が少ないことや非専業企業が多く存在することを示唆する。なお、
係を想定した中で、具体的な産業分析を行っている。これを「S-C-P
図 6 の高知県の大臣許可の突出も特徴だが、理由は不明である。
パラダイム」と呼んでいる。建設業についてもそのような枠組みの
(5)業種別のカバレッジ計算
中での研究が可能である。ここでは産業組織論の最も基本的な市場
経審データでは建設業法に規定する 28 の許可業種別の完工高(2
構造分析で用いられる集中度指標によりその市場構造を検討する。
ないし 3 ヶ年の平均値)が示される。28 のうち、どの業種の完工高
S-C-P パラダイムの中心的な考え方である「集中度-利潤率」仮
が大きいかという基準による建設企業のタイプ分けが可能である。
説は、
「集中度の高い市場構造の産業では、企業間の共謀や協調的行
上述の国土交通省「建設業の構造分析」注
では業種別の分析のた
動が企業が少数であるために容易になり、あるいは高い参入障壁が
め、このような考え方で土木・建築の完工高が拮抗する「一般土木建
新たな参入を抑制するなどのために、市場が競争制限的となり、市
築」を新設した区分を採用している注 7)。一方、施工統計(表 1 資
場の競争関係が弱められ、その結果、超過利潤が発生し、産業全体
料③)では、建設業法別表の 28 業種を元に、日本標準産業分類に
の効率的資源配分が歪められる」と説く
近い 32 種類に分類してそれらごとの日本全体での推定完工高を示
を測定する指標の一つであり、いくつかの計算方式があるが、売上
2)
6)
。集中度とは、市場構造
す。両者の表章単位はほぼ重なるため前者の区分を基本に 29 業種
高の大きい順番に企業を並べたときに、一定数の企業の売上高合計
に統合集計してカバレッジを計算した注 8)。図 7 はその結果である。
が、市場規模全体のうちどれくらいを占めるかをみるものである。
上記のような仮定をおくため、この計算はやや正確性を欠く。あ
建設市場の場合は参入企業の数がかなり多いため、一般に集中度が
えてそうしたのは、業種別においてこのデータの特徴が明瞭に出る
高いとはいえず、上記のような理論の適用は困難にみえる。しかし、
ためである。すなわち、産業中分類の「職別」に属する企業は元々
市場を細かく分割してみることは実は可能である。特殊な技術的領
公共工事の元請になる機会が少ないので受審しない層と考えられる
域の存在、入札制度におけるランクの仕組み、地方自治体の工事発
が、結果はそれを裏付けることになった。全体では「総合」や「設
注に見られる過度な地域要件の設定などは、特定の企業にしか参入
備」が高く、05 とび土工を除き、「職別」のそれは低い。また、細
を許さない市場の環境を実現させている
かく見ると、完工高合計が大きい 01 土木と 02 建築では後者のカバ
建設市場は寡占市場の集合体だと考えることもできる。
7) ,8) , 注 9)
。この意味では、
レッジが低いことを確認できる。土木の会社は公共工事に近く経審
産業組織論では市場の定義をすることから始まる。産業は非常に
受審の動機が強いが、建築はそうでもない会社があるといえる。こ
広い概念であるが、その産業の中にさまざまな商品群があり、その
の点もカバレッジの検討からわかる経審データの特徴である。
商品群を分けていく場合に、代替関係を基本に据えて考えると、そ
こで市場というものがある程度確定する。例えば、商品群の一定の
集合をみてそこに競争関係があるというのは代替関係があるという
ことである。具体的な建造物を考えてみた場合、建築と土木、また
建築の中でも住宅と非住宅との間ではとうてい競争関係があるとは
いえない。また住宅の中でも戸建住宅と集合住宅では全く違う商品
というのは自明である。これらは全く別の商品群(財)と考えられ
るわけで、それぞれは別々の市場=競争関係を形成していると考え
るのが自然である。
産業組織論では「需要の交叉弾力性」という概念を用いて市場範
囲を確定しようとする注 10)が、得られる統計数値の限界などから厳
密な定義は不可能である。そこで通常は、使用する原材料、生産技
術等から分類した標準産業分類(SIC)を使い、分析対象とする市
場範囲を一応確定している。建設業でいえば、3 つの産業中分類(総
合工事業、職別工事業、設備工事業)、20 の小分類、49 の細分類(4
図 7 建設工事施工統計調査報告(表 1 資料③)との完工高及び
元請完工高の比較に基づく経審データのカバレッジ(業種別, %)
桁レベル)に市場を分けて考えることができる。
(2)市場集中度の指標
(注)国交省の「建設業の構造分析」注 2)に倣い、経審の 28 業種(完工高の
一番大きなものを当該業種とした。また、土木・建築が拮抗する「一般
土木建築」を新設。)と建設工事施工統計の 32 業種の表彰単位の整合
を独自にとり集計したもので、多くの仮定が入っている。本図におい
て統合 29 業種は総合・職別・設備の大区分の順に並べた。
市場の集中を表す指標には次があり、②、③が多用されている。
①企業数
②累積集中度(通常4社生産集中度:CR4)
4
(CR は Concentration Ratio の略号)
表4
元請完工 ①該当
②累積集中度(%)
③
高の合計 企業数 CR CR CR CR CR
HHI
(10 億円) (社)
1
4
10 100 500 指数
建設市場全体
49.5
51,348 140,443 3.6 10.3 18.7 41.5 57.5
築
02 建
22,262 37,619 7.0 18.8 35.3 60.5 72.9 158.8
木
01 土
10,727 67,254 3.0 10.3 18.0 40.1 50.9
46.4
気
08 電
3,849 19,131 5.7 17.7 31.2 61.8 76.4 131.6
20 機 械 器 具
3,215
5,268 8.2 21.3 35.8 73.6 92.2 188.0
管
2,744 32,987 2.8 8.8 15.4 40.3 57.3
09
39.1
22 電 気 通 信
2,137
4,555 6.2 18.8 31.0 79.8 94.2 166.6
装
13 ほ
1,105 27,762 5.2 14.1 23.8 43.2 57.5
80.4
(注)表頭の CRn は上位 n 社集中度を示す。元請完工高合計が 1 兆円以上
の 7 業種を抽出。丸数字は本文中の指標番号。全経審データに基づく。
4
CR4=
 (100q / Q) ・・・4 社シェア合計
i
i 1
③ハーシュマン・ハーフィンダール指数(HHI 指数)
HHI=
 (100q
i
/ Q) 2
建設市場全体と元請完工高が大きな主要業種別の集中度
=Σi(シェア)2
i
ただし、それぞれ産業の国内における生産量が Q、企業 i の国内
生産量が qi である。
企業規模にそれほどの格差がない場合は①で十分だが、通常は計
100
算の容易さなどから②が用いられ、上位 4 社のみではなく複数社の
数値が使われることもある。ただし、②が上位企業の規模格差の不
80
累積シェア(%)
均等性を反映していないことから、公正取引委員会では③を企業結
合審査等において活用している。
HHI は独占の場合 10000、完全競争市場では 0 の値をとり、企業
60
40
●
●
●
●
●
●
●
数が減少すれば HHI は拡大し、企業数が一定ならば企業シェアの
格差が大きいほど増大する。公正取引委員会では HHI が 1800 超を
20
高位寡占型、1000 超 1800 以下を低位寡占型、1000 以下を競争型
0
などとして産業の類型化を行っている。表 3 は公正取引委員会調べ
0
の建設関連製造品の集中度の計算結果である。HHI 指数でソートし
100
図8
のもの集中度に関する数値の公表はない。
300
400
500
主な業種別の市場集中度(上位 500 社までの累積シェア)
建設市場全体
代表的な建設関連品目における市場集中度(H20 年度)
1.0
Gini係数=0.9018
(n=147,152)
0.8
品
目
CR4
1 石こうボード・同製品
99.9%
2 衛生陶器(附属品を含む)
97.5%
3 建設用トラクタ
89.4%
4 シャッタ
96.0%
5 建設用クレーン
99.4%
6 住宅用アルミサッシ
97.6%
7 エレベータ
86.2%
8 普通鋼冷延広幅帯鋼(幅 600mm 以上でコイル状のもの)
86.0%
9 タイル
67.2%
10 ビル用アルミサッシ
85.8%
11 ショベル系掘さく機
76.2%
80.0%
12 普通鋼熱間鋼管(ベンディングロール成型によるものを除く)
13 形鋼(鋼矢板、リム・リングバー、サッシバーを含む)
63.0%
14 小形棒鋼(※但し、この品目のみ H14 年度の値が最新)
39.6%
(注)公正取引委員会公表資料より抽出。HHI でソート。
200
各市場の企業シェア(上位500社まで)
ているが、寡占型~競争型まで広く分布する。なお、建設業そのも
表3
22.電気通信(CR100=79.8%)
20.機械器具装置(CR100=73.6%)
08.電気(CR100=61.8%)
02.建築(CR100=60.5%)
13.ほ装(CR100=43.2%)
09.管(CR100=40.3%)
01.土木(CR100=40.1%)
HHI
6,634
3,769
3,649
3,500
3,453
2,491
2,446
2,446
2,052
2,018
1,797
1,720
1,256
707
02.建築
1.0
0.8
Gini係数=0.9230
(n=37,619)
01.土木
1.0
0.8
Gini係数=0.8536
(n=67,254)
08.電気
1.0
0.6
0.6
0.6
0.6
0.4
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.2
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
20.機械器具
09.管
22.電気通信
1.0
Gini係数=0.9415
(n=5,268)
0.8
1.0
0.8
Gini係数=0.8543
(n=32,987)
1.0
0.8
Gini係数=0.9492
(n=4,555)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
13.ほ装
1.0
0.6
0.6
0.6
0.4
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.2
0.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
図9
0.2
0.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
Gini係数=0.8729
(n=27,762)
0.8
0.6
0.0
Gini係数=0.9073
(n=19,131)
0.8
0.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
ローレンツ曲線及びジニ係数の計算(全体及び主要業種別)
書いたようにたとえば CR100 では、電気通信、機械器具設置、電
気、建築などが 60%を超えており比較的に高く、土木、管、ほ装は
40%程度で比較的低い業種と判明する。また、表 4 によれば、CR4
の最大は機械器具工事業の 21.3%で、表 3 の建設関連市場の値と比
(3)建設市場の集中度
以上の知識を前提に経審データで市場集中度の計算等を行った。
べると相当に低い。HHI 指数についても同様で、もっとも小さく競
なおここでは、第 2 章で説明した専業比率や業種区分の考え方から
争型市場に分類される「小型棒鋼」の 707 よりもさらに低い値を示
一端離れ、元請完工高合計に重複がないことを前提におき、経審デ
す。従って、経審データによる集中度の計算によれば、建設市場は
ータのすべての企業情報を使った。一見第 2 章の記述と矛盾するが、
公正取引委員会が定義する「競争型市場」に属するといえる。しか
本章の問題は、建設市場全体の大きさに関わることであって、建設
しこれは一面的な話であって、
(1)節で述べたように、地域やラン
企業の平均像ではない注
クや特殊な工事分野別などに区分した上での検討が課題として残る。
11)
。また、業種別の視点での分析では、カ
バレッジが低い分野を扱うのは適当でないため、図 7 で明らかにし
本稿では割愛するが、この点は経審データの他の情報項目や別のデ
た経審データの特徴を考え、元請完工高計が 1 兆円を超える 7 つの
ータベース等の援用により今後検討可能と考える注 12)。
さらに図 9 は同じ情報からローレンツ曲線とジニ係数を計算した。
総合工事業(以下、主要業種別)に絞ることにした。
表 4 は前節で説明した 3 指標の計算結果である。建設市場全体と
これらは、一般にはある集団の中の不平等度を計測するためのもの
主要業種別に示した。また、図 8 はとくに②累積集中度指標を視覚
で、ローレンツ曲線は均等分布線から離れるほど不平等度が大きい
化し、主要業種別に CR500(上位 500 社)まで計算した。図中に
ことを示す。また、ローレンツ曲線が描く弧と均等分布線で囲まれ
5
た弓形の面積の大きさが不平等度に比例する。この面積割合をジニ
計値が 1 兆円を超える 7 つの細分業種を「主要業種」と呼んで業種
係数と呼び、1 に近いほど格差が大きいことを示す。ジニ係数は国
別分析の対象とした。
民の所得格差についてよく扱われる指標である。ちなみに 2000 年
(2)経審データによる市場集中度の検討
頃の等価可処分所得による国際比較結果では米国が約 0.37 で突出
建設業の市場構造の基本的な分析の一つとして、経審の全事業者
して高く、英国は約 0.34、日本は約 0.27(日本は拡大傾向)となっ
を対象とし、建設市場全体と主要業種別に主な市場集中度指標等の
ている注
計測を行った。完工高の上位 4 社累積集中度は建市場業全体では
13)
。ジニ係数の計算によって主要業種別の格差の大きさが
測定できる。建設市場全体では 0.90 とかなり高い。主要業種別では、
10.3%、建設市場全体の HHI 指数は 49.5 であった。またこれらの
格差の大きい順に、電気通信(0.95)、機械器具設置(0.94)、建築
指標は主要業種別では、機械器具設置、電気通信、建築でやや高く、
(0.92)、電気(0.91)、ほ装(0.87)、管(0.85)、土木(0.85)と
土木、管、ほ装でやや低く出ている。公正取引委員会の分類では独
なる。本稿では検討しないが、この値の異時点での計測によって、
占や寡占の状況にはなく、建設市場は何れも「競争型市場」に区分
業界内格差の拡大・縮小の推移等が議論できる。
できる。しかし、これは一面的で、実際には特殊な技術的領域、入
札制度によるランク制や地域要件等によって建設市場は細かく分け
4.
られており、これらの狭い範囲での市場集中度は高くなる可能性が
まとめと今後の分析
あることを指摘した。
(1)経審データ利用の意義とデータ特性
建設業の母集団に近いカバレッジをもつ大標本データ(約 15 万
つづいて、主要業種別に元請完工高のローレンツ曲線を描き、ジ
社)であるといってよい経審データ(経営事項審査結果)の公表や
ニ係数を算出したところ、7 業種のジニ係数は 0.85~0.95 と極めて
全ての建設業許可情報(ただし、公表内容は一部のみ)の公表等に
高いものとなった。これは各業種の中での規模格差が相当に大きな
よって、これまで統計作成者によって集計された公表統計の加工利
ことを裏付けるものである。この値の経年的な推移を観察すれば、
用だけで語られてきた建設業の構造についての分析を、統計的な意
各主要業種の中での格差の拡大・縮小が議論可能となることを指摘
味において比較的精密に議論することが可能な状況が実現しつつあ
した。
る。しかし、たとえば、建築物の着工時に悉皆的に取られる業務統
(3)今後の分析に向けて
計である「建築着工統計調査」は、建築学の研究上は非常に利用価
経審データは大規模データであることに加え、許可番号という識
値の高いはずだが、統計主体による「匿名データの提供」には至っ
別可能な企業 ID が与えられており、多くの企業が定期的に受審し
ていない。今後とも統計法改正の趣旨に沿った、統計データの二次
ていることから、複数時点のデータを追跡することによるパネルデ
的利用に向けた動きが加速することを期待したい。
ータ分析が可能である。また、その主な内容は、各企業の主な財務
本稿は、ミクロデータとしての経審データによって建設業の構造
指標や 28 業種別の完工高、技術職員数等であり、これら分野の指
分析を進める上で必要となるデータの特性把握を行ったものである。
標分析に向いている。これら指標の業種区分別、事業者規模別、地
事業者数
域別などの仕分けによる統計的データ解析が可能であり、複雑な建
設業の構造を理解するのに十分に役立つものとなろう。
や元請完工高等、日本全体での大きさがわかる別の統計等をもと
に、カバレッジの算出によってその評価を行った。建設企業は建設
参考文献
1)岩松準:建築着工統計による工事費単価分析への期待, 総研リポート特別
号 , 建 設 物 価 調 査 会 , pp.3-5, 2009.4, http://www.kensetu-navi.com/
bunseki/report/pdf/200904_02.pdf(参照:2012.9.30)
2)岩松準:建設業データベースにみる“建設業者”の多様性と状況--国土交
通大臣許可業者の専業比率・粗利等の分析, 日本建築学会大会学術講演梗
概集(F-1), pp.1269-1270, 2010.9.
3)岩松準:建設業の産業組織に関する研究:公表データを利用した市場集中
度に関する検討, 日本建築学会建築経済委員会第 21 回建築生産シンポジ
ウム論文集, pp.243-250, 2005.7.
4)総務省統計局:公的統計の利用拡大について(二次的利用について),
http://www.stat.go.jp/index/seido/2jiriyou.htm(参照:2012.9.30)
5)建設業情報管理センター:経営事項審査結果データの活用と海外における
建設企業評価手法に関する調査, 2012.2, http://www.ciic.or.jp/topics/
img/data/keisinkeltukadata.pdf(参照:2012.9.30)
6)堀内俊洋:産業組織論, ミネルヴァ書房, 2000.5, p.69
7)植草益:産業組織について(Ⅳ), 建設産業研究 No.4, 建設経済研究所,
1983, p.3
8)古川修:日本の建設業, 岩波新書, 岩波書店, 1963, pp.44-45
9)国土交通省:建設工事施工統計調査報告(平成 22 年度実績), 2012.3.30
公表, http://www.mlit.go.jp/common/000205209.pdf(参照:2012.9.30)
10)国土交通省:建設業構造実態調査, http://www.mlit.go.jp/statistics/
details/kgyo_list.html(参照:2012.9.30)
業法に基づく許可の仕組みの中で把握・認識されており、まずは大
臣許可・知事許可で区別され、建設企業の統計的な情報はこれで整
理される。経審データの単純なカバレッジ計算では、事業者数にお
いて大臣許可で約 6 割、知事許可で約 3 割だった。一方、元請完工
高ベースでは大臣・知事とも 10 割を若干超える数値となったが、
その原因は経審データの信憑性に関わる問題を抱える注
14)
。また、
経審データには通常は建設業とはいえない会社も多く含まれている。
そこで建設企業として認識できる範囲を建設業の専業比率 80%以
上のものと捉えると、カバレッジの値は事業者数では大臣が約 4 割、
知事が 2 割強、また、元請完工高では大臣が約 7 割、知事が 10 割
弱となった。
つづいて、専業比率 80%以上の場合で、都道府県別によるカバレ
ッジの違いを計算した結果、大都市を抱える都府県で事業者数のカ
バレッジが落ちるが、元請完工高のそれはそれほど落ちないことか
ら、それら地域では兼業企業が多く存在すること、経審の未受審企
業の事業規模が小さいことが予想される。またある前提の元に行っ
た業種別区分の検討からは、産業中分類の「総合工事業」や「設備
工事業」にあたる区分の業種のカバレッジが比較的高く、
「職別工事
注
注 1)平成 24 年 1 月現在の「委託による統計の作成等及び匿名データの作成・
業」のそれは低いことから、前二者の分析に向いていることが確認
できた。第 3 章で扱った具体的な業種別分析では、元請完工高の合
6
提供に係る年度計画一覧(平成 24 年度)」(総務省統計局)によれば、建
築分野の主な統計を所管する国土交通省では、建築着工統計調査の「委託
による統計の作成(オーバーメイド集計)」の門戸は開いているが、その他
の統計についての「匿名データの作成・提供」は実施しないとしている。
注 2)国土交通省の「建設業構造基本調査」の結果は平成 20 年度までは「建
設業の構造分析」というタイトルの報告書で発表されていた。平成 23 年度
以降は調査名が「建設業構造実態調査」(参考文献 10)と変更された。な
お、建設業許可の 28 業種区分に「一般土木建築工事業」と「木造建築工事
業」を加え、清掃施設工事業を除いた 29 業種区分での分析がされている。
注 3)評点アップのために、完成工事高や技術職員数の水増し、粉飾決算な
どの虚偽申請が後を絶たないといわれている(Wikipedia: 経営事項審査)。
これに対し、国土交通省と都道府県の建設業許可行政庁では、虚偽申請を
行っていた場合の営業停止処分等を決めている。また、国や登録経営状況
分析機関によって 16 指標による疑義項目チェックが行われている。例えば
「完工高と技術職員数値の相関分析」は「1 技術職員数値当たりの標準完工
高」を想定して一定幅を外れるものをチェックしている(国土交通省資料)
というが、詳細は不明である。
注 4)図 1 の区分に従い、大臣許可取得企業のうち、経審の受審の有無別の
資本金規模の上位からの企業名リストを示す。受審企業の中でも大手ゼネ
コンは上位にはいない。一方、建設関連業でも非受審の企業もある。
表 経審受審有無別の資本金規模順企業リスト(大臣許可業者)
資本金順
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
経審受審企業
(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ
(株)東芝
(株)日立製作所
日本電気(株)
東日本電信電話(株)
富士通(株)
西日本電信電話(株)
三菱重工業(株)
丸紅(株)
(株)神戸製鋼所
住友商事(株)
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)
シャープ(株)
積水ハウス(株)
三菱電機(株)
三井不動産(株)
KDDI(株)
東京瓦斯(株)
昭和電工(株)
大阪瓦斯(株)
大成建設(株)●
大和ハウス工業(株)
凸版印刷(株)
川崎重工業(株)
積水化学工業(株)
住友電気工業(株)
(株)IHI
ヤマハ発動機(株)
ダイキン工業(株)
(株)クボタ
鹿島建設(株)●
清水建設(株)●
備の 3 区分にまず分類し、その比の大きさによって企業を 3 分類する。続
いて中分類の中の売上高の最も大きい業種をその企業が該当する業種と定
める。各社の主業が何かを探り当て、それによって企業の性格分けを行っ
ている。なお、総合工事業のうち、土木と建築が主となる企業はそれが 80%
以上を施工するものをそれぞれ土木、建築、その中間を一般土木建築とし
た。「建設業の構造分析」で扱っている木造工事業は建築に分類した。
注 8)結局のところ本分析では施工統計との整合を下記のように取った。
表 分析で用いた建設業業種の 29 部門
本分析(29 部門)
00.一般土木建築
01.土木
02.建築
03.大工
04.左官
05.とび土工
06.石
07.屋根
08.電気
09.官
10.タイルレンガ
11.鋼構造物
12.鉄筋
13.ほ装
14.しゅんせつ
15.板金
16.ガラス
17.塗装
18.防水
19.内装仕上
20.機械器具装置
21.熱絶縁
22.電気通信
23.造園
24.さく井
25.建具
26.水道施設
27.消防設備
28.清掃施設
経審非受審企業
三洋電機(株)
国際石油開発帝石(株)
三菱商事(株)
伊藤忠商事(株)
三菱地所(株)
住友不動産(株)
大日本印刷(株)
(株)小松製作所
宇部興産(株)
東急不動産(株)
(株)レオパレス21
(株)*島屋
エヌ・ティ・ティ都市開発(株)
阪和興業(株)
三井金属鉱業(株)
住友大阪セメント(株)
(株)大京
(株)日立ソリューソンズ
電気化学工業(株)
(株)伊勢丹
TOTO(株)
タカラスタンダード(株)
関西ペイント(株)
ユニバーサル造船(株)
リンテック(株)
トピー工業(株)
(株)ノーリツ
(株)LIXILビバ
(株)日本AEパワーシステムズ
伊藤忠エネクス(株)
日本貨物鉄道(株)
セントラル硝子(株)
建設工事施工統計調査(32 部門→29 部門に統合)
一般土木建築工事業
土木工事業
建築工事業、木造建築工事業
大工工事業
左官工事業
とび・土工・コンクリート工事業、はつり・解体工事業
石工工事業
屋根工事業、金属製屋根工事業
電気工事業
管工事業
煉瓦・タイル・ブロック工事業
鉄骨工事業
鉄筋工事業
舗装工事業
しゅんせつ工事業
板金工事業
ガラス工事業
塗装工事業
防水工事業
内装工事業
機械器具設置工事業
熱絶縁工事業
電気通信工事業
造園工事業
さく井工事業
建具工事業
水道施設工事業
消防施設工事業
その他の設備工事業
注 9)植草益(1983)p.3(参考文献 7)には「市場の地理的な広さ、それぞ
れの「市場」の中に入る技術、材料、用途などの概念を考えあわせて具体
的に市場を捉える必要がある」とあり、また古川修(1963)p.44(参考文
献 8)では「建設の市場は、工事規模や工事の種類などごとに分割された
小市場の集積で、建設業は小集団ごとにそれぞれの小区画にいわば棲み分
けているのである」としている。
注 10)任意の 2 製品間(qi, qj)の代替性の程度は、理論的には需要の交叉
弾力性(ηij)=(∂qi/∂pj)(pj/qi) (i≠j; 1,2,・・・,n)で定義でき、η
ij=∞の時、j 財の価格がわずかに変動すれば i 財の需要が無限に増大する
ので、製品が完全に同質的である。この値が小さくなるにつれて代替性の
程度が弱まり、ηij=0, or<0 の時、両製品はそれぞれ独立、または補完関
係にある。需要の交叉弾力性が高いグループが市場または産業であると定
義できる。(新庄浩二編『産業組織論』2003.5, p.49 より)
注 11)たとえば、経審データを使った経営指標の計算等では、建設企業以外
が混入することは望ましくないので、専業比率等によって一部データを棄
却して分析する予定である。第 2 章はカバレッジの検討と本研究の今後の
作業のために記述されている。
注 12)たとえば、経審データの市区町村コードの利用とある対象地域での発
注情報との組み合わせによって、ミクロな地域の集中度計算が考えられる。
注 13)http://ja.wikipedia.org/wiki/ジニ係数(参照:2012.9.30)
注 14)傾向的なミスや虚偽情報の問題が解決しない場合、そのデータ利用に
当たっては、特定の指標や他項目との比率計算等で見つかる「外れ値」を
処理したり、とくに企業会計データの分析では、経審データ中にある「監
査の受審状況」により企業を区別したりする工夫が必要となろう。前者の
方法で多用されるのは、比率データ全体から上下一定の割合を異常値とみ
なし、データを除外した後に平均をとる「トリム平均」の算出などである。
(注)経審受審企業で●印は、専業比率 80%以上であり、本分析で建設企業として扱う。
注 5)約 50 万社の建設業登録企業を母集団とし、一定の抽出条件によって約
11 万社に対して調査をかけ、約 6 万社の回答を得ている。調査票未提出の
約 5 万社は施工実績がなかったものとして扱っている。調査結果は、抽出
率に応じて、その逆数を乗じて母集団である全国約 50 万建設企業の値に復
元した値である。詳細は参考文献 9)。
注 6)図 6 中に参考に示した施工統計の“施工県別”の元請完工高に対する
計算では、東京都、次いで大阪府が突出する。これはこの地域を本拠とす
る建設企業が、他地域の建設需要に対応している(たとえば、東京都の“所
在県別”は 17.3 兆円、“施工県別”が 6.8 兆円。この差は東京都所在企業
が他の道府県で受注した)ことを示す。
注 7)「建設業の構造分析」(参考文献 10、注 2 参照)では企業を業種によ
って区別するため、各社の 28 業種別完工高を産業中分類の総合、職別、設
7