N EWS 時事 インドネシアで未曾有の天然ダム決壊、国交省が対策を提言 7月25日にインドネシアのマルク 決壊後 決壊後 州アンボン島ワイエラ川で巨大な天 決壊前の湛水面 然ダムが決壊し、東京ドーム10杯 分に当たる約1300万m3 の洪水が発 生した問題で、国土交通省は同国政 約50m 府の要請を受けて8月18日〜 24日 ワイエラ川 に調査団を派遣し、対策を提言し た。調査結果と提言内容などは、9 月3日に発表した。 決壊前 この天然ダムは2012年7月13日、 天然ダム土塊末端 ワイエラ川上流で発生した深層崩壊 で形成された。決壊前の天然ダムの 約50m 高さは約110m、満水湛水量は約 1500万m3 だった。今年7月24日か らの豪雨によって水位が上昇し、翌 天然ダム決壊前後の縦断イメージ インドネシアで発生した天然ダムの決壊前後の比較 (資料:国土交通省) 日に越流して決壊した。 決壊に伴い、天然ダムの高さは約 決壊による洪水で3人が行方不明 課長補佐は「ダムの規模もさること 110mから約50mに半減。下流域の となったものの、約2km下流に位 ながら、下流に5000人が住んでい 氾濫範囲は約37万m に達した。そ 置する人口約5000人のネグリ・リマ て、ほとんど死者が出なかった点で の規模は、1953年の和歌山県有田 村では、事前に避難が完了していた。 も世界的に珍しい事例だ」と話す。 川災害で発生した戦後最大級の天然 現地を調査した国交省水管理・国土 国交省は現地調査に基づき、決壊 ダム決壊事例に匹敵する。 保全局地震・火山砂防室の山越隆雄 後の天然ダムと周辺の状況を以下の 2 上空から見た決壊前の天然ダム (写真:インドネシア公共事業省) 16 │ NIKKEI CONSTRUCTION │ 2013.9.23 決壊したインドネシアの天然ダム。V字形に大きくえぐれている (写真:国土交通省) ように分析し、対策を助言した。 にも水が流れる恐れがある。 ムと周辺斜面の保全を進める。今後 こうした分析を踏まえて、ハード も天然ダムを形成する恐れがある土 再閉塞の恐れ、次の出水も危険 面での対策を4段階に分けて提言し 塊を安定化する。 まず、越流で生じた天然ダムの流 た。第1段階では、河道の掘削と導 国交省はこれまでにも、インドネ 路両岸は高さが約100mもあり、約 流堤の整備を進める。河道を固定し シアに対して天然ダムの監視や応急 40度の急勾配なので、崩壊して再 て洪水流を安定化し、住民への被害 対策などに関する技術支援を実施し 閉塞する可能性が高い。次に、下流 を減らすのが目的だ。第2段階では、 てきた。今年2月28日には、土木 の河道では20mも河床が上昇した 扇頂部(扇状地の頂点)に遊砂地を 研究所と水位計メーカーの拓和(東 地点があり、大量に堆積した不安定 整備して、集落を流れる河道への土 京都) が開発した水位観測用ブイを 土砂が、再び洪水が発生した際に流 砂堆積を防ぐ。 天然ダムに設置し、同国と共同で水 出する懸念がある。さらに、下流の 第3段階では、砂防堰堤を整備し 位を観測していた。こうした観測体 氾濫範囲では河道が完全に埋没して て河床の浸食を制御し、河床勾配を 制の確立が、被害者を減らすのに役 いるので、次の出水時にはどの方向 安定させる。第4段階では、天然ダ 立った可能性がある。 (木村 駿) 撤去工事中の橋梁が崩落、作業員7人負傷 撤去工事中だった国道393号の旧 「月見橋」 (北海道赤井川村) が9月2 日午前11時30分ごろに崩落し、作 業員7人が転倒するなどして負傷し た。事故の原因については9月4日 時点で国土交通省北海道開発局など が調査中。 同局小樽開発建設部は、北海道小 樽市と倶知安町を結ぶ国道393号の うち、赤井川村落合を通る一部区間 撤去工事中に崩落した国道393号の旧「月見橋」。倶知安 寄りの部分を中心に逆「へ」の字形にたわんだ。9月2日撮影 (写真:右も国土交通省) 小樽側から見下ろした旧月見橋の事故現場 の線形を2012年度に改良したのに 伴い、不要になった延長400mの旧 は、余市川に架かる延長30mの単 近くの吊り足場に転落したりして骨 道の撤去工事を13年6月〜 14年3 純鋼合成I桁橋で、完成は1965年。 折などのけがを負い、札幌市内、小 月の工期で藤信建設(北海道倶知安 コンクリート床版のうち倶知安側 樽市内、余市町内の各病院に搬送さ 町) に発注した。 (西側) の一部を撤去した段階で、床 れた。 版が取り除かれた部分を中心とし 小樽開発建設部は旧月見橋の撤去 床版を一部撤去した段階で崩落 て、主桁が逆「へ」の字形にたわみ、 工事を中断した。事故再発の防止策 同社は旧道の一部である旧月見橋 余市川に落下した。その衝撃で7人 が実施されるまで再開を認めない方 の撤去を13年8月に始めた。同橋 の作業員が床版の上で転倒したり、 針だ。 (安藤 剛) 2013.9.23 │ NIKKEI CONSTRUCTION │ 17
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