Ver.1.2-m 「見える化」による「One for All, All for One.」の促進 ―実践事例を基に― 関西学院大学総合政策学部 非常勤講師 曽根 康仁 1.社会の諸問題を解決するための一つの理想的アイデア 社会の諸問題において、人々が建設的にまとまることで解決できることも多々あると 考えられます。たとえば、次のようなものです。【 】内は一つの理想的アイデアです。 ① デフレ経済の問題 【需要者が行う対策は、多くの方が 1 品種(例:ラーメンや マーガリン)の1品目(個々の商品)を購入するときは必ず高い価格のほうの1 品目を購入するのです。企業の売上げ増⇒給料等の増加⇒高い価格のほうの 1 品 目を購入、結果としてプラスの回転になります。】 ② 電力問題 【需要者が行う対策は、多くの方が楽しく節電を行うことが継続的な 節電となり、冷静にエネルギーを考えることにも繋がります。】 ③ インフルエンザ等の感染症流行拡大の問題 【確かに「感染しないための努力」 は必要ですが、 「感染させない思いやり」が特に重要です。一般にその地域でマス ク等を使用し「感染させない思いやり」を多くの方が実践すれば、一週間程度で 感染症流行拡大を阻止することが期待されます。】 ④ レジ袋削減の問題 【多くの方がマイバッグを持参することができればいいのです。 】 ⑤ 本四道路の料金問題 【多くの方が本四道路を支えるという意味で、独自の料金 制度に協力し利用することです。】 ⑥ 宇野高松間航路の問題 【⑤と同様に、多くの方が宇野高松航路を支えるという 意味で、独自の料金制度に協力し利用することです。】 ⑦ 風評被害の問題 【補償の問題とは別に「見える化」を行うことにより、多くの 方が安全・安心から信頼へ繋げていく輪を形成することになります。】 2.筆者の研究を基にした社会の諸問題における処方の方向性 一般に供給面についてのことがよく言及されています。確かに供給面を増加させるための 技術開発等は重要なことであります。しかし、一般に人々はコストが少なければ供給された ものを使い果たそうと動く面があると推察されます。したがって、この使い果たそうとする 人々の行動を抑制しなければなりません。ただ自由な行動を認めつつ、使い果たそうとする 一つの均衡点からボールを出すことが新しい土台を形成することになるのではないでしょう か。単に供給面だけに依存するのでなく、まず建設的な一人ひ とりによる自然・社会(周りの方)への思いやりの行動が、 より大切な時期にきているのではと考えています。 一方、筆者は、人々が建設的にまとまるための一つの触媒を研究しております。この 研究の発端は瀬戸大橋の通行料金問題についての研究から始まります。そして研究の成果 として一つのビジネスモデル(1)を開発しました。このビジネスモデルは「One for All, All for One.」 (一人はみんなのために、みんなは一人のために。)を基にしたものです。 その後、この研究は瀬戸大橋だけでなく、種々の交通機関についての料金制度に応用でき る汎用性を持っています。ところが、数年前の新型インフルエンザが流行したときから、 絵本『スイミー』(2)の内容をきっかけに社会の諸問題についての処方にも少なからず応 用できるのではないかと考え、そのための処方しての触媒を研究(3)しております。 そこで、先述の社会の諸問題では、 【 】内に明記しているように「One for All, All for One.」の考え方で多くの方が、個々のできる範囲のことを誠実に行うことができれ ばいいのです。しかし、一般に「個人合理性」>「全体合理性」という強い均衡点に入 っているため、理想的な「個人合理性」<「全体合理性」にはなりにくい状況です。如 何に個々の自由な行動を大切にして「個人合理性」<「全体合理性」にしていくかが、 その大きなポイントになります。 先述のとおり筆者は、一つの触媒を投入することにより、コロンブスの卵として社会 のためになることができればと長年研究しております。今回この研究を具現化するため の一歩となる一つの実践事例をここに紹介したいと考えています。 3.「見える化」の実践事例 最近は風邪のシーズンということで、種々のところでマスクをかけている方を見るこ とが多くなりました(筆者も人ごみではマスクを着用しています。)。スーパーマーケッ トにおいてもレジの担当者がマスクを着用していることも珍しくありません。 ところで、筆者は以前からこのようなマスクの着用について筆者のマスク着用も含め て違和感を持っておりました。なぜマスクを着用しているのか(確かに風邪を理由に着 用している方もいるでしょう。しかし、意外と予防でしている方が多いように推察しま す。)。もしマスク着用の理由を周りから分からない状況を作れば、予防でマスクを着用 している方たちがまとまるというよりも、離散的になるのではないでしょうか。 そこで、スーパーマーケットのマスク着用の事例において、筆者はこのスーパーマー -1- Ver.1.2-m ケットに次のように提案しました。 (そこで、提案の前に最初に確認したことは、このス ーパーマーケットのレジ担当者は予防としてマスクを着用しているとのことです。)「予 防でマスクを着用していることを『見える化』しない場合は、購入を控える方も考えら れ『売上げ的にマイナスはあっても、プラスはない』。しかし、 『見える化』した場合は、 購入を控えることはなく、さらに他店との差別化による購入促進で『売上げ的にプラス はあっても、マイナスはない』」。 この筆者の提案後すぐに快く、このスーパーマーケットでは、次の写真に示す内容の 掲示をしていただいたのです。 4.「見える化」による「One for All, All for One.」の促進 この「見える化」(4) は筆者の研究のコンセプトである「One for All, All for One.」を促進する大きな原動力になるものです。この「見える化」により、人々を建設 的にまとめマスク着用を安全・安心から信頼へ導き、さらに他店や個人の間でも「見え る化」の必要性を気づかせることに繋がるものです。この波及により、マスク着用が広 範囲でまとまって行われることができれば、インフルエンザ等の感染症に対しても大き な抑制効果を発揮することができるものと期待するものです。 さらに、このことがきっかけとなり、人々の自由な行動を認めながら「個人合理性」 <「全体合理性」にしていくことが期待され、先述の社会の諸問題を解決する一つの手 がかりになるものと考えています。 このように「見れる化」は「One for All, All for One.」を促進する重要な必 要条件の一つです。 「One for All, All for One.」を絆として「思いやり社会」の 形成に繋がり、将来の共生経済・共生社会の構築の第一歩となればと考えています。 是非、更なる「見れる化」による「One for All, All for One.」を促進するた めに、タイガーマスク運動が広がったように、この実践事例を多くの方へ 紹介していただきたいのです。どうぞよろしくお願い申し上げます。 注 (1)筆者は、日米のビジネスモデルの特許〔日本:(特許第 3685757 号),米国: (Patent No.US 7,392,227 B2)〕を取得しています。この発明を基にしたものが FS 技術です。 (2)レオ・レオニ(訳:谷川俊太郎)『スイミー』東京,好学社,2002。 (3)「思いやりマスク」の考え方を提唱。一方、日本ビジネス実務学会第 29 回中国・ 四国ブロック研究会(於:徳島文理大学・2012 年 9 月 2 日)において、次のタイ トルで研究発表を行いました。 「情報公開と秘密の保護についての一考察(その4)-社会の更なる安定化装置 としての FS 技術-」 (4)パソコンの応用ソフトの普及においても一種の「見える化」が重要な要素になっ ていると推察します。種々のところでその応用ソフトを使用していることを、多く の方が知ることにより普及促進しました。特にある一定の普及率になると急速に普 及するものです。 一方、携帯電話会社では呼び出し音を独特のものにすることにより、一般に他社 との違いを「見える化」することになります。その結果、その携帯電話会社の特長 を強力に顧客の囲い込みに繋げていくことが期待されることになります。この場合、 単に携帯電話の呼び出し音を変えただけ(単に「見える 化」しただけ)と考える方も多いかもしれませんが、携帯電話会社の経営 においては利用促進策として深い意味を持っていることが推察されます。 (2012.12.24 作成) -2-
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