熱の現象 3−1 熱膨張 3−1−1 固体の膨張 1 温度 温度を定めるために

熱の現象
3−1
熱膨張
3−1−1
1
固体の膨張
温度
温度を定めるためには、時間と場所に関係なく、一定の温度を再現しうる 2 つの点を選
ぶことになる。この 2 つの温度を温度の定点という。2 つの定点を定めると、この間隔を等
間隔に分割することにより、温度の目盛が定まる。
目盛としては、摂氏温度と絶対温度があり、両者の関係は、T=273+t
2
で与えられる。
固体の長さの膨張
ある固体の 0℃、t℃、t’
℃の時の長さを,l0、l、l’
とし、温度 1 度についての長さの膨張率
として 0℃の長さに対する割合をα(/℃)と定義すると、以下の関係が成立する。
3
l=l0(1+αt)
l0=l(1−αt)
l’=l{1+α(t’−t})
l=l’{1−α(t’-t}}
固体の体積膨張
(1)体積の膨張
固体の 0℃、t℃、t’
℃の時の体積を,v0、v、v’
とし、0℃の体積に対する膨張率をβ(/℃)
と定義すると、以下の関係が成立する。
v=v0(1+βt)
v0=v(1−βt)
v’=v{1+β(t’−t})
v=v’{1−β(t’-t}}
同じ等方性の物質(方向によって物理的性質が変わらない)の体膨張率βと線膨張率αと
の間には、次の関係がある。
β=3α
(2)面積の膨張
固体の表面又は内部に考えた面の 0℃、t℃のときの面積を a0、a とすると、あまり広く
ない温度範囲に対して
a=a0(1+γt)
γ=2α
γを 0℃の面積に対する面膨張率という。
(3)密度の膨張
固体又は液体の 0℃、t℃のときの密度をρ0、ρとすると、
ρ=ρ0(1−βt)
3−1−2
1
液体の膨張
液体の膨張
液体では気体と同様 に体積の膨張のみが考えられる。0℃、t℃、t’
℃の時の体積を,v0、
v、v’
、密度をρ0、ρ、ρ’
、βを液体の体膨張率とすると、
v=v0(1+βt)
v’=v{1+β(t’−t})
ρ0=ρ(1+βt)
ρ=ρ’
{1+β(t’−t})
液体を容器に入れて熱するときは、液体が膨張するとともに、容器も膨張する。液体の
膨張は固体の膨張率より大きいため、その差だけ、液体が膨張したように見える。これを、
液体の見かけの膨張という。
液の見かけの膨張=液の真の膨張−容器の膨張
2
浮力の温度による変化
液の膨張率をβ、固体の線膨張率をα、0℃と t℃における固体の体積を v0、v、液の密度を
ρ0、ρ、液の浮力を F0、F とすると、次の関係が成り立つ。
F = F0
1 + 3αt
1 + βt
β>3αであるので、浮力は温度が上がると減少するのが一般
3−1−3
1
気体の膨張
気体の膨張
圧力一定のもとでは、温度 1℃の昇降に伴い、気体の体積は 0℃の時の体積の 1/273 ず
つ増減する。
0℃から t℃になったとき体積が、v0 から v になったとすると、
v/T=v0/T0
2
T=273+t、T0=273
気体の圧力と体積と温度の関係
一定量の気体の圧力、体積及び温度の間には次の関係がある。
pv p 0 v0
=
=一定
T
T0
T=273+t、T0=273
この関係は、同温、同圧の気体1モルの体積は全ての気体について等しいので、常に
1モルの気体をとることにすれば、0℃、1 気圧における体積は全ての気体について等しい
ことになり、この場合の定数を気体定数 R という。気体が n モルの場合の気体の体積を V
とすれば、以下の関係が成立する。
pV=nRT
3−1−4
気体の圧力と密度と温度
p
pv p 0 v0
p
=
を気体の質量 m で辺々を割ると、
= 0 =一定となり、密度=質量/体
m
m
T
T0
T
T0
v
v0
積であるので、密度ρ、ρ0 と置き換えることで関係がえられる。
3−2
熱量と熱の移動
3−2−1 熱容量と比熱
1
熱容量と比熱
水 1g の温度を 1℃上げるのに必要な熱量を 1 カロリー(cal)
ある物体の温度を 1℃上げるのに要する熱量を、その物体の熱容量という。
熱容量=質量×比熱
物質 1g の温度を 1℃上げるのに必要な熱量を、
その物質の比熱という。 単位は、
cal/g・℃
2
熱量と温度変化
熱量=熱容量×温度差、 熱量=質量×比熱×温度差
物体 A が物体 B に熱を与えると、A の温度は下がり、B の温度は上がる。この際、両物体
以外への熱の移動がなければ、A の失った熱量=B の得た熱量
これが、熱量保存の法則
3−2−2
1
熱の移動
熱の移動
熱の移動には、伝導、対流、放射 がある。
2
冷却
物体が単位時間に失う熱量 Q は、物体の表面の温度θと周囲の温度θ0 との温度差が大きく
ないときは、温度差(θ-θ0)と、物体の表面積 S との積に比例する。
Q=hS(θ-θ0)
3
熱伝導率
θ1
θ2
厚さ l の板の両面の温度がθ1、θ2(θ1<θ2)であ
るとき、対向面積 S を通して時間 t の間に伝導す
る熱量 Q は次式となる。
Q
S
θ − θ1
Q = kS 2
t
l
l
3−3
熱による状態変化
3−3−1
1
融解と凝固
融解点と凝固点
結晶質では一般に融解点と凝固点は等しい。無定形質では、はっきりした融解点という
ものはなく、加熱していくと、ある温度範囲にわたって次第にやわらかくなって、ついに
液状になる。
融解点はその物質に加える圧力により変わる。断りなしに融解点といえば、1 気圧の空気
中での値をいう。
2
融解熱と凝固熱
結晶質の固体を一様に加熱していくときの、時間 t と温度θの関係は図のようになる。BC
の温度θ1 が融解点である。
B は融解の始まったことを、
C は試料が全て液化したことを示す。
B→C の間に加えられた熱は、温度上昇の効果を持たないで、物質内の潜在していることか
ら、潜熱という。
θ
D
B
θ1
C
A
氷の融解熱は 0℃においておよそ 80cal/g
3−3−2
t
気化と凝結
液体の自由表面からのみ行なわれる気化を蒸発といい、蒸発によって出来た気体を蒸気
という。密閉された容器内に液体をいれ、温度を一定にして放置しておくと、液体と蒸気
とがつりあった状態になる。このときの蒸気を飽和蒸気といい、その圧力を飽和蒸気圧と
いう。
液体を一定の圧力のもとで同温度の蒸気に変えるためには、固体を液体に変えるときと
同様の潜熱が必要となる。これを気化熱という。逆に、蒸気を定圧のもとで、同温度の液
体とするときは、同量の熱を放出する。これを凝縮熱という。
密閉容器内に空気と水と水蒸気が共存するときは、水蒸気圧は常にそのときの温度に対
する飽和蒸気圧であるので、次の関係が成り立つ。
全体の圧力=空気の圧力+飽和水蒸気圧
3−3−2
湿度
大気中の含まれている水蒸気の含有量を示す。
1
絶対湿度
3
1m の空気中に含まれる水蒸気の量を g で表したもの。
2
相対湿度
現在の水蒸気圧 p の、現在の気温に対する飽和水蒸気圧 ps に対する比を 100 分立で示し
たもの。
現在の水蒸気圧
相対湿度=
×100(%)
現在の気温に対する飽和蒸気圧
3−3−3
相のつりあい
固体、液体、気体の状態、すなわち、原子又は分子の集合状態の相を使い、固相、液相、
気相ということがある。
1
昇華
固体を容器内に密閉しておくと、昇華によってその物質の気相が生ずるが、その圧力が
ある値に達すると、気相は飽和蒸気となって昇華は停止する。このときの飽和蒸気圧を昇
華圧という。
昇華圧
温度
2
相のつりあい
融解曲線、蒸発曲線、昇華曲線の3つは、それぞれ固相と液相、液相と気相、固相と気
相とが安定の状態で共存しうる条件を表す曲線である。
p
液相
固相
a
p1
b
三重点という。この点において、3 相は
g
pt
θt
つりあう。
気相
O
θ1
3
これらの曲線が 1 点で交わる点 O を
d
θ2
θ
気体の等温圧縮
化の始まるときの体積と終わるときの体積が近づい
圧力
気体を等温圧縮において、温度を高めていくと液
液体
てきて、温度θC で一致する。このときの温度θC を臨
界温度、圧力 pC を臨界圧力という。
θC
気体
P
pC
不飽
液体
和蒸
+
気
飽和蒸気
体積
3−4
1
熱と分子運動
アボガドロ数と分子密度
アボガドロ数
N=6.02×1023 /mol
1 グラム分子中の分子数
標準状態(0℃、1 気圧)の気体の1モルの体積=22.4l=22.4×103 cm3
気体の状態方程式
pV=nRT
(V は n モルの体積)
単位体積中の分子数を分子密度という。圧力 p、絶対温度 T の気体の分子密度 n と、標準
状態の気体の分子密度 n0 との関係は次。
p
p
= 0
nT n0 T0
2
n0=N/V0=6.02×1023/22.4×103=2.69×1019/cm3
気体の圧力の式
m を分子 1 個の質量、n を分子密度、ρを密度、 v 2 を分子の速さの 2 乗平均とすると、圧
力 p は次式で得られる。
1
1
p = mnv 2 = ρ v 2
3
3
分子の平均の運動エネルギは、その絶対温度に比例する。分子の平均運動エネルギ K は、
ボルツマン定数 k、モル分子数 N との積を R とおくと、
K=
3−5
1
1
3
3 R
mv 2 = kT =
T
2
2
2N
熱と仕事
∆V
気体のする仕事
自由に動く面積 S のピストンをもつ円筒内に気体を封入
し、気体に熱を加え、ゆっくりと外圧 p に逆らって膨張させ
p
S
p
るものとする。ピストンの移動距離を∆l とすると、
気体のする仕事=p∆V
2
∆l
熱の仕事当量
熱と仕事の関係は、次式で関係つけられる。
Q カロリーの熱=JQ ジュールのエネルギ
W ジュールのエネルギ=W/J カロリーの熱
熱の仕事当量
3
J=4.19J/cal
気体の定積変化と定圧変化
定積変化とは、熱膨張が無視できる容器に気体を入れ、熱を与えるか奪うかして、圧力
及び温度の変化を起こさせること
定圧変化とは、自由に動くことの出来るピストンを備えた筒に気体を入れ、筒内の圧力
を一定の大きさの外圧と等しく保ちながら、熱を与えるか奪うかして、体積及び温度の変
化を起こさせること
定積比熱:cv
定圧比熱:cp とする。
定圧比熱−定積比熱=気体 1g が外圧に対してする仕事=R/JM
3−6
エネルギの保存則
熱力学第一法則:物体の内部エネルギの増加は、これになされた仕事と、吸収された熱
量との和に等しい
熱力学第二法則:高温物体及び低温物体以外のもに、なんら変化も残さずに、熱を低温
物体から高温物体に移すことはできない。