第13回 窒化物半導体応用研究会 2012.7.9 次世代パワエレ駆動機構と 家電への応用について パナソニック㈱ 先端技術研究所 大塚 信之 目次 1. 背景 2.パワースイッチングデバイスの家電応用 3.次世代パワエレ駆動機構 4.まとめ 2 電力応用分野の市場カテゴリー 5000 高耐圧分野 HVDC BTB 2000 1000 電流レンジ (A) 200 100 10 5 2 1 10 電気自動車 低耐圧分野 産業用 動力制御 50 20 電気鉄道 中耐圧分野 500 DC/DC コンバータ 無停電源 各種電子機器 充電器 燃料電池 20 汎用イン バータ Automatic EPS ABS エアコン 通信用電源 スイッチング電源 HDD PPC 50 100 200 500 1000 2000 電圧レンジ (V) 500010000 3 インバータによるモータ駆動の動作 ゲート回路 トランジスタ ダイオード 永久磁石同期モータ ホール素子 M コンバータ インバータ 駆動方式:正弦波180度通電方 式 電源電圧:100V モータ制御部 ・負荷に合わせてパルス幅を変調制御 ・逆起電力をキャパシタに回生することも可能 4 パワー半導体は単なるスイッチ IGBT 5 Power MOS 他にも、サイリスタ、トライアック、GTOサイリスタ、SITなどがあるが、 現在は、ほぼ全て上記2つのデバイスに集約されている。 GaN のパワーデバイスの特長 動作温度 ←Wide Bandgap・高ポテンシャル障壁 高出力 電力応用の視点 高速 (℃) 400 高周波応用の視点 G aN 300 200 ←Wide Bandgap 100 最大発振周波数 ←高飽和速度・低寄生容量 (GHz) 50 100 150 0 Si 10 200 (V/um) GaAs 100 降伏電界強度 0. 4 0. 6 0. 8 最大電流(Imax) 1. 2 (A/mm) 1. 0 ←高キャリア濃度・高移動度 雑音指数(NF) (dB) ←低いキャリア散乱 低い高周波損失 6 パワエレの革新技術は ・パワーデバイスの革新 ・インバータ技術の革新 7 インバータに必要となる技術 8 ① パワースイッチングデバイス ② 次世代パワエレ 駆動機構 高電圧 DC AC 絶縁型 ゲートドライバ 2V 高電圧 三相モータ 電圧が変動 0V ① GaNパワ-スイッチングデバイス実用化の課題 9 ①-1. 材料コストの低減 ・安価なSi基板上へのGaN結晶成長 ①-2. 無信号時の安全動作 ・ノーマリーオフ動作 ①-3. 高効率インバータ駆動 ・オフセットフリーと低オン抵抗化 ①-1 6インチSi基板上の AlGaN/GaN エピ結晶 表面:ミラー クラックフリー GaN膜厚均一性良好 高電子移動度 10 Si基板上の大電力AlGaN/GaN FET ゲート ドレイン AlGaN GaN AlN Buffer Si基板 ソース ゲート幅 : 500mm 最大電流: 150A 耐圧 : 350V オン抵抗:19.8mΩ M. Hikita, et al, IEEE IEDM 2004 pp. 803 – 806 Washington DC. 11 ただし、 12 従来のGaN系パワーデバイスは 閾値電圧が IDS (mA/mm) マイナスであり、負電源駆動回路が必要である。 100 VGS=0V 80 -0.5V 60 -1.0V 40 -1.5V 20 0 -2.0V 5 10 VDS (V) 15 20 ①-2 そこで考えた新しいパワートランジスタ Gate Injection Transistor (GIT) 当社の独自素子 Gate Drain Source p-AlGaN i-AlGaN i-GaN Y. Uemoto et al, IEEE IEDM2006 pp. 35.2 Washington DC. ■ノーマリオフ化 p型ゲートによりチャネルのポテンシャルを持ち上げる ■低オン抵抗化 伝導度変調によりオン抵抗低減 ゲートのバリアにより電子のゲートへの注入を抑制 13 GIT はどのようなデバイスか ゲート電圧 = 0V Vgs on 5V 0V 14 off P型ゲートがゲート下 チャネルを空乏化 on ↓ ドレイン電流が流れない off Vgs ゲート電圧 > 1V Gate p-AlGaN + + + + Source - - - - - - - - Drain i-AlGaN - - - - - i-GaN ホール注入 ↓ 電子発生 ↓ ドレイン電流増大 (conductivity modulation) GITのDC特性 15 正電源駆動、安全動作を実現 300 500 Lg=2µm, Lgd=7.5µm 400 Vgs=5V 200 Ids (uA/mm) [uA/mm] Ids [mA/mm] Ids (mA/mm) 250 Vgs=4V 150 Vgs=3V 100 Vgs=1V 0 0 2 4 6 Vds Vds (V) [V] 8 ・閾値電圧 ・最大電流 ・オン抵抗 ・耐圧 300 200 100 Vgs=2V 50 Lg=2µm, Lgd=7.5µm Vgs=0V 0 10 0 100 200 300 400 Vds [V] Vds (V) : : : : +1.0V 200mA/mm 2.6mΩcm2 640V 500 600 700 オン抵抗 - 耐圧 特性 16 オン抵抗 RonA (mΩcm2) Si Limit 10 2 [4] Si Super Junction MOSFET Si IGBT (commercial) [3] 10 1 [2] GaN HFET (normally-off) 10 0 [1] GIT GaN Limit 10-1 102 103 耐圧 (V) Ref. [1] W. Saito, IEEE ED, 2006 [2] N. Ikeda, ISPSD, 2004 [3] S. Iwamoto, ISPSD, 2005 [4] W. Saito, ISPSD, 2005 104 ①-3 高効率インバータ駆動の実現のために GITはオフセット電圧がなく、オン抵抗(Ron)が小さいため、 低損失駆動を実現 IGBT I-V特性 ダイオード I-V特性 駆動電流 IGBT 駆動電流 従来の インバータ M 還流電流 ICE 還流電流 Ir IF 損失 VF VCE オフセット電圧 IR 損失 Vr VF オフセット電圧 損失=VF・IF+VF・IR ダイオード GaN-GIT I-V特性 駆動電流 GaN-GIT IDS GaN-GIT インバータ IF M RON 還流電流 ISD 損失 VDS IR RON 損失 VSD 損失=Ron・IF2+Ron・IR2 ~0 17 ダイオードモードの活用 18 低電圧側GITの駆動を工夫することで、 ダイオードを外付けしなくてもダイオードと同等の駆動を実現 駆動電流 駆動電流 還流電流 高電圧側 GIT 低電圧側 GIT 還流電流 ON 高電圧側 GIT OFF 低電圧側 GIT ON OFF D D D S S S ダイオード モード FET モード ダイオード モード GaNインバータの高効率駆動を実現 19 100 GaNインバータ 効 率 (%) 6個のGaN-GIT 98 IGBTインバータ 96 94 0 •低出力時でも高い効率を実現 •IGBTと比べて損失を53%低減 200 400 600 800 1000 出 力 (W) T. Moritaet al, APEC2011, p.481 Texas ② エアコン等のインバータでも絶縁が必要 280V 絶縁電源 DC電源 制御信号 マイコン 制御信号2V パワー トランジスタ ゲートドライバ 電源を絶縁分離 フォトカプラ 280V 信号を絶縁分離 基準電圧が変動 モータ駆動用 インバータ 200V ゲート駆動回路 モータ 課題: ① フォトカップラの特性劣化 ② 高温で使用できない 20 高絶縁特性を実現するために 21 電磁界共鳴現象を利用して、長距離で電力を伝送 100V 10MHz 電磁界共鳴器 電力伝送 共鳴 共振 ~ 課題;インバータ用には大きくなりすぎる マイクロ波領域(5GHz帯)への展開 直径約1m ② 次世代パワエレ駆動機構の特長 ②-1 非接触電力伝送技術 ②-2 バタフライ型電磁界共鳴結合技術 ②-3 2×2信号分離技術 22 ②-1 非接触に電力をおくるために 23 •電磁界共鳴を利用して、世界で初めてパワエレ(~100kVA)と マイクロ波(5GHz)を融合 Drive-by-microwave •絶縁された信号と電力を同時に供給するので、外部DC電源が不要 超小型 & 高絶縁性 ワンチップ集積化 マイクロ波(5GHz) 整流器 スイッチング信号 電磁界共鳴器 制御信号とゲート駆動用電力を同時に伝送 スイッチング信号 (入力信号) 変調信号 スイッチング信号 (出力信号) パワー トランジスタ (~100kVA) ②-2 バタフライ型にして小型化 24 新開発のバタフライ型構造により、電磁界を集中させ小型化を実現 従来の電磁界共鳴器(円形) バタフライ型電磁界共鳴器 面積1/2 領域 : 1.77mm2 (φ1.5mm) 領域 : 0.92mm2 (0.96mm□) 出力 電磁界集中 入力 電磁界分布 高速に駆動するために 25 高速スイッチングには、トランジスタのON信号(立上り用)と OFF信号(立下り用)の2セットの電磁界共鳴器が必要 GaNマイクロ波 発信器(5GHz) 整流器 φ トランジスタON信号 (立上り) パワートランジスタ φ 入力 PWM φ φ トランジスタOFF信号 (立下り) 電磁界共鳴器 ②-3 電磁界共鳴器を一つにまとめて小型化 26 2系統の信号を一つの電磁界共鳴器で伝送し、 分離可能とする信号分離技術を構築 2×2電磁界共鳴器 マイクロ波(5GHz) 電磁界共鳴器 整流器 1.78 mm Port 1 φ Port 3 Port 2 面積1/2 分離配線 1.6 6m m φ Port 4 サファイア基板 マイクロ波(5GHz) 2×2 電磁界共鳴器 整流器 電磁界 共鳴器 φ サファイア基板 0.2mm厚 φ 2ポート ゲートドライバ回路 27 サファイア基板上にGaNパワーデバイスを集積化 GaN集積回路は高温でも動作可能 S. Nagai et al, 5.8GHz 発振器 VT IEEE ISSCC2012, p.404 San Francisco ミキサー VDD 電磁界共鳴器 整流器 出力 Lrect1 Dp1 GND Input + (PWM +) Input – (PWM - ) EMRC GND Dn1 Dn2 Lrect2 Ref. ゲートドライブ回路のワンチップ化に成功 28 サファイア基板上にGaNパワーデバイスを集積化 バタフライ型電磁界共鳴器 発振器 整流器(+) 入力 信号 入力 φ 信号 出力 φ 信号 整流器(-) ミキサー 参照 信号 2.5mm 5.0mm GaNパワーデバイスの駆動に成功 GaNパワートランジスタ 入力信号 入力信号 1 kHz ゲート電圧 ゲート電圧 1kHz 負荷 GaNパワーデバイスのスイッチング電圧 スイッチング電圧 29 スイッチング動作を確認! 立ち上がり時間 ゲート電圧 消費電力 : 800ns : 3.0V : 0.675W ( 15V, 45mA) 80V GaN は家庭用電化機器のキーデバイスになる まとめ Si基板上にGaNを成長することで低コスト化を実現 ノーマリーオフGITで高安定動作を達成 インバータの省エネ駆動を実現 高絶縁型GaNゲートドライバで小型化 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 「省エネルギー革新技術開発事業」 30
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