演題番号 : 演題名 :呼吸器症状を呈した牛からのウイルス分離 発表者氏名:○山本武、恵谷美江 発表者所属:広島県東広島家保 1、 はじめに:2006 年 5 月中旬に、県北で約 60 頭の搾乳牛を飼養する農家で、28 頭を飼育する牛舎の 17 頭に 水様性鼻汁,咳等の呼吸器症状が認められた。病性鑑定を実施したところ、鼻汁よりウイルスが分離されたの でその概要を報告する。 2、 材料および方法:材料は、発症牛 5 頭の鼻汁及び発症期と回復期のペア血清を用いた。 ウイルス学的検査は、鼻汁を初代牛腎臓細胞(BK 細胞)及び Vero 細胞に接種,1 時間感作後 37℃で回転培 養し観察した。分離ウイルスの理化学的性状検査は常法に従い実施した。血清学的検査は、ペア血清により、 牛アデノウイルス 7 型、牛パラインフルエンザ 3 型ウイルスを HI 試験、牛 RS ウイルス、IBR ウイルス、BVD ウイルス 1 型を中和試験で実施した。 細菌学的検査は、鼻汁を PBS(-)で 10 倍階段希釈後、5%羊血液寒天培地及び DHL 寒天培地に接種培養 し,発育菌について常法により同定した。 3、 成績:鼻汁を用いたウイルス分離では、BK 細胞に接種した 1 検体(No.3)で、培養 3 代目の 3 日目に細胞 変性効果を示した。理化学的性状試験で、この分離ウイルスは、大きさが 50nm 以下で、核酸型が RNA、酸 及び熱に感受性で、リピド溶剤に耐性であった。また、0.5%牛赤血球浮遊液を用いた HA 性は認められなかっ た。血清学的検査では、1 検体(No.4)で牛パラインフルエンザ 3 型ウイルスに対する有意な抗体上昇を認め たが、その他の検体については有意な上昇は認められなかった。 なお細菌学的検査では、 Pasteurella multocida が 5 頭中 2 頭から分離された。 4、 考察:現在、分離ウイルスは同定継続中であるが、鼻汁から分離されたウイルスの理化学的性状及び臨床所 見等から、この分離ウイルスが牛ライノウイルスである可能性が示唆された。今後、この分離ウイルスに対す る中和抗体検査で今回の呼吸器症状への関与と、本農場における分離ウイルスの浸潤状況を調査していく必要 があると考えられた。
© Copyright 2024 Paperzz