【2016年11月24日公開】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~ 「松崎美子」が注目テーマを一刀両断! 『12 月 ECB で追加緩和か?! 「ユーロ/米ドル」一段安も』 執筆者:(ロンドン在住/元為替ディーラー) ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 先週金曜日、欧州中銀(ECB)のドラギ総裁が爆弾発言をした。これにより、マーケット参加者は 「ECB テーパリングの夢」から一気に冷め、新たな追加緩和を織り込みに動き、結果としてユーロ は大きく下落した。 ●ドラギ総裁発言の内容 11 月 18 日(金)にフランクフルトで開催された銀行関係者の会議で、ドラギ総裁は 3 つの問題 点を明確にした。1 つは、「欧州の銀行の収益性が低い点」、2 つめは「インフレ率が低い点」、そし て 3 つめは「ユーロ圏経済は、いつまで経っても ECB の緩和政策頼みから抜け出せない点」であ る。特に 2 つめのインフレ率に関しては、最近上昇しているように見えるが、上昇のほとんどは昨 年以前に下がった原油価格の調整分であり、新規の「インフレ要因」が全く見当たらないと手厳し い分析を披露した。 マーケットでは来年早々にも、ECB がテーパリング(量的緩和策 QE の縮小)に動く可能性を考え ていただけに、この発言を受け、早ければ次回 12 月の理事会で追加緩和が実施される可能性を 織り込みにいった。 現在予想されている 12 月の追加緩和の方法は、 ・国債購入プログラムの 3~6 カ月の延長 ・国債購入額を増やすための条件変更 ・社債購入で、銀行の社債の割り当てを増やす ・国債/社債に続き、株式も購入?? などが挙がっている。 ●ユーロ実効レート急落 この日のドラギ総裁の発言に大きく反応したのが、他でもないユーロ実効レートである。これが そのチャートであるが、夏からずっと黄緑色の上昇チャネルに乗っかっていたが、11 月に入ると一 転して下落に転じた。そして先週のドラギ発言を受け、今年 3 月から続いたレンジ(オレンジ点線 の枠内)下限ギリギリまできそうな勢いだ。ひとまず、レンジの下限と 94 ポイントで下げ止まるのか、 目が離せない。 チャート:欧州中銀ホームページ http://www.ecb.int/stats/exchange/effective/html/index.en.html 最近の為替相場は、トランプ米大統領候補の当選を受け、景気浮揚効果を先取りした形で米ドル が上昇している。その結果、ユーロや英ポンドは対米ドルで苦戦を強いられてきた。しかし、先週 金曜日の動きは、米ドルの上昇だけでなくユーロの下落そのものも加わり、「ユーロ/米ドル」は 10 日連続の陰線で引けた。 ●トランプ効果 私があらためて書くまでもなく、トランプ候補の当選が決まってからのマーケットは、同候補の経 済政策「Trumponomics:トランポノミクス」の景気浮揚効果を先取りした形で米ドル高が進んでい る。この「トランポノミクス」は、3 本の柱(アベノミクスを引用するのであれば、3 本の矢)で成り立っ ている。それは、以下の通りである。 ① 減税 所得税減税・法人税減税・資金還流促進特別税制など。 ② インフラ整備投資の推進 ③ 規制緩和 これら 3 本の柱(矢)をテコにして、米国の景気を刺激していくため、 「景気刺激策 → 景気浮揚 → インフレ懸念台頭 → 長期金利上昇 → 米ドル高」 というシナリオに乗っかり、米ドル高が継続してきた。 しかし、この経済政策には、盲点がある。それは景気刺激策に使われる財源を明確にしていない ことである。 その場合、唯一考えられる財源は「借金(国債の増発)」となる。そうなると、 「米国の国債増発 → 国債量が増える → 投資魅力が下がる → 国債価格下落 → 長期金利上 昇の可能性 → 米ドル高」 となるが、最初に挙げた例が「良い米ドル高」とすれば、2 番目は「悪い米ドル高」といってもよいだ ろう。悪い米ドル高は度がすぎると、アメリカの格下げに繋がるだけに、油断大敵である。 ●「ユーロ/米ドル」ここからのマーケット さて、今週は 11 月 23 日(水)が日本市場休場、そして翌日はアメリカが感謝祭で祝日。そして 11 月 25 日(金)はアメリカのクリスマス商戦の「やる気」を占う上で欠かせないブラック・フライデー1 と続く。私としては、11 月 24 日(木)の感謝祭に向けて、米ドル高の調整が入る可能性を考えてい る。 ここでは「ユーロ/米ドル」週足のチャートを載せたが、日足を見ると先週金曜日まで、10 日間連続 で陰線を出している。予想通りに米ドル高の調整が入るのであれば、黄緑の線を入れた 1.0800 ド ルくらいまで戻してもおかしくはない。しかし、その調整が終われば、来年の「欧州選挙年」に向け た不透明感を反映し、ジリジリ下げると予想している。ターゲットとしては、フィボナッチ・ターゲット が通る 1.03989 ドル (138%)、そして 1.02316 ドル (161.8%) あたりを考えている。 1感謝祭(11 月第 4 木曜日)の翌日の金曜日のこと。 伝統的に 1 年で買い物が最も行われるクリスマス商戦(ホリ デーシーズン)の開始の日であり、小売店の売り上げが黒字になることから、こう呼ばれる。 -------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】 東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決 定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991 年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。 その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、 証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。 -------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】 本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として おります。 本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明 示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。 また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権はワイジェイFX株式会社に帰属 しております。 コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめく ださい。 さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、松崎美子 氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。 最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。
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