宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2012/01/01発行
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
宮崎正弘
愛読者の皆様、新年あけまして、おめでとう御座います。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成24(2012)年 1月1日(元旦)
通巻第3528号 <新春特別号>
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新連載を開始します!
『正気が失われた日本』
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今年前半の小誌では拙論「正気が失われた日本」を随時(週に一回ていど)連載
します。ことし平成二十四年(西暦2012年)は世界大乱の兆しがあり、世界
はおおいに乱れ、経済は陥没的大揺れとなって波瀾万丈となりそうです。そうい
う気配濃厚です。
正気は狂気の対語と考えられがちですが、そうではない。「正気」(せいき)
と呼び、「しょうき」と呼ぶのは狭義です。よく批評文に「正気の沙汰か」など
とあるのは二義的意味を広義に通用させて使用しているにすぎません。
ひろく気の世界では「正気」の対語は「邪気」です。「破邪顕正」は、このこと
から産まれた日本的熟語です。
日本はながい歴史のなかで、世が乱れ、戦国の世を閲し、ときおり正気が復活し
てまともな精神が政治を導く時代が出現します。正気はふるく宋代の政治家、文
天?が歌い上げ、幕末には藤田東胡が愛引し、吉田松陰がもっとも重視しました。
坂の上の雲にでてくる広瀬武夫も私製の「正気歌」を残しています。
信長、秀吉の狂気とも言える独裁に対して「正気」は建国の理念を追求する清
廉なまつりごとを求めました。
正気はなぜ蘇ったのか?
アイバン・モリスが古典的名著『高貴の敗北』のなかで列挙したのはヤマトタ
ケル、聖徳太子、和気清麻呂、楠正成、大塩平八郎、吉田松陰、西郷隆盛、乃木
希典らで、この列に三島由紀夫を加えました。
林房雄は、あの三島諫死事件直後のテレビで「正気の狂気」と比喩したことを
おもいだします。
これら「正気」を実践した英雄たちの列伝を改めて追求しながらも、本連載で
は「正気」の「気」のほうの探求も試みたいと思います。
「気」は古く孔子の『論語』にあります。
――気をひそめて息をせざる
――若きときは血気いまだ定まらず
それこそ日本語にある『気』は多彩であり、意味が深く、簡単に説明しうるも
のではありません。
(前書きに代えて)
○
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連載第一回
『正気が失われた日本』(1)
孟子が残した言葉も夥しいのですが、「浩然の気を養う」という有名な言葉が
あり、たとえば『浩然の気を養うために海を見に行く』という表現があります。
弟子が孟子に問いました。
「浩然の気とはいかなる意味か?」。
こたえて孟子曰く。「それは簡単に説明できるものではない」。
なにごとかをなそうとすると、地から沸き上がるようなエネルギーを体内に感じ
ることがある。
足のつま先からどぉーっと怒濤のように身体の中を吹き抜ける。
「気」はそもそも可視できない、流動的なものであり、とらえどころがないから
抽象的である。ラテン語はSPIRITUS(スピリットの語源、サンスクリッ
ト語ではプラーナといわれた。
孫文がよく揮毫した熟語に、
「浩然長存」
という言葉があります。
中国人の知識人が大切にする四字熟語で、かの李登輝閣下も山口県周南市の児
玉神社から揮毫を求められた折、「浩然長存」と大書し、この石碑が同社境内に
建立されています。
わたしは岩国から周南市に連続講演旅行で行った折に、早朝宿舎をでて、散歩が
てら児玉神社を訪ね、カメラに収めてきましたが、浩然たる気が長く存するとい
う字句の光嚴なる様に、一種の霊気を感じ取りました。
児玉神社はいうまでもなく日露戦争で二百三高地を落とした立役者のひとり、
児玉源太郎を祀っています。
この『気』は日常生活でどのように用いられているか、考えて見ました。
「気がつく」「気になる」「「気を揉む」「気取る」とか、あるいは「気があ
う」「気になる」「気を高める」「気が置けない」などすぐに思いつく。「気が
気でない」というのも言い得て妙です。
『乗り気です』「素っ気ない」という表現もあれば『気脈を通じる』と言う。
「気が利かないやつ」「気の付く女性」「気が合わない、いやなやつ」「気が
ない」「気がある」「気が強い」「気が弱い」「気が薄い」などの表現で、とく
に意識しないでも夥しく使われています。「気が散る」「気が抜けない」という
表現もあります。
或いは「その気」「やる気」あるいは「気働き」もそういう範疇にはいる。「
気色ばむ」「毒気にあたる」など変調的表現にも用いられる。
可視できない「気」の二文字には、
士気
志気
香気
生気
精気
清気
浩気
暢気
好気
活気
強気
弱気
覇気
勇気
神気
熱気
内気
平気
運気
空気
霊気
天気
妖気
殺気
血気
客気
怒気
悋気
男気
狂気
侠気
運気
雅気
鬼気
症気
これらのなかで病気と元気が対比されますが、「気の病が病気になる」という
のは古来からの真実です。「短気は損気」も「気」が後ろにつく。「味気ない」
「艶気が薄い」とか、「浮気」「色気」「女気がない」など艶聞に関係する言葉
もあります。しかし「景気」の「気」は、この場合、どういうカテゴリィに入れ
るべきでしょう?
やや物理学的に言えば下記などは軽量化が可能です。
電気
蒸気
磁気
天気
気圧
気象
気流
気温
さて「気」が先にくる字句には
気力
気概
気分
気色
気持
気配 気品
気功
気味
気運
気脈
などがあり、後に具体的に検討してみたい。
ほかに中国医学には「気」が前後につく様々な専門用語(たとえば肝気、腎気
など)があり、また気功には、呼吸法として内気、精気、濁気、死気、気血なら
びに天の気、地の気などがありますが、ここでは触れません。
それならば「気」とは何なのか。いったい文字による説明が可能なのでしょうか
?
(1月4日号に続く) ▲
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<< 新年度のお知らせ >>
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(1)宮崎正弘の新春独演会
1月19日(木)午後六時半
大手町 産経プラザ 三階大会議室
http://www.s-plaza.com/access/index.html
演題 「2012年 世界大波乱」
主催 正論を聞く会
会費 お一人1500円(学生千円)
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(2)新年 新刊第一弾は1月24日発売! 宮崎正弘の新著は
『世界金融危機 かれらは「次」をどう読んでいるか』
<副題 ソロス、バフェット、ロジャーズの回答>
双葉社新書 840円(税込み)
世界経済を世界一の投機家、投資家の目から判断すると?
日本の読書人、学生、家庭の主婦まだが待望する分析書
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(3)一月の休刊日 1月12日―16日 台湾総統選挙取材のため
1月27日―2月7日 欧州取材旅行のため
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(お知らせ)小誌は1月4日より通常通りの発行となります。
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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 690回】 ――その昔、熱く語(騙?)っていたこと・・・お忘れですか
『資本主義貨幣危機』(尹士楚・貝世京 人民出版社 1974年)
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「通貨危機は日ごとに深刻さを増し、現在の資本主義国家が最も頭を悩ませる問
題の一つとなり、猛烈に頻繁に資本主義各国を襲っている」。「通貨危機の暴風
に襲われるごとに、資本主義諸国の為替相場は劇的に変動し、金の価格はうなぎ
登りに急上昇する。甚だしい場合には外為市場は閉鎖され、国際金融市場を大混
乱に陥らせる」。
かくして「資本主義における政治、経済の危機は深刻の度を加え、国家独占資本
主義が深化するにしたがって帝国主義国家はいよいよ財政出動に頼って経済の建
て直しを図り、経済危機の脅威からの脱却を画策し、生き残りの道を探る。だが
国家資本主義が目論む様々な方策は資本家にとっての天国建設を目指すのみで、
広範なる労働人民にとっては過酷な軍事キャンプに強制収容されることを意味す
る」。資本主義の本質が改められることはなく、結果として財政・貨幣・金融危
機などを激化させることになる。「そのため、独占資本階級は国家の持つ様々な
システムを利用して」、「政府の予算を増大させると共に金融市場をコントロー
ルすることを通じ」、危機の先延ばしを狙う。
だが、そうした措置は結果として「膨大な財政赤字を生み、通貨を著しく膨張さ
せ、銀行による金利を限りなく変動させ、国際収支の不安定化を招くなどの背景
の下で、資本主義の貨幣危機は日々深刻化することになる。かくして旧い病気が
癒えないうちに新しい病気になるように、様々な危機が止むことなく連鎖的に起
こることになる」。
「貨幣危機の暴風に一再ならず襲われている現下の情況において、戦後に打ち立
てられた米ドルを機軸とする貨幣中心の資本主義における世界の貨幣体系は既に
瓦解している。こういった情況は、資本主義における貨幣危機が新たなる危機段
階に突入したことを意味する。今後の推移、帝国主義国家におけるこの問題に起
因する矛盾と闘争が、国際政治経済の各方面に共に大きな影響を与えることにな
る」。だから、「この問題に対し我われは関心を持ち研究を進め、国際情勢全体
を相対的に把握し、毛主席の革命外交路線に服務することを徹底させなければな
らない」とし、「資本主義各国の通貨が膨張するにしたがって各国紙幣の信用は
いよいよ低下し、金争奪も必然的に激しさを増し、さらなる混乱が巻き起こる。
同時に米ドルの持つ覇権的地位は下落するが、いかなる資本主義国家の貨幣が米
ドルに代わることはありえない」と結論付ける。
以上、記述をそのまま引用して、この本の要旨を纏めてみた。何をいっているの
か判らないが、何を言いたいのかが判る文章の典型といえそうだ。つまり資本主
義の崩壊は必然であり、毛沢東思想により新しい世界を打ち立てれば人類は幸福
になるということだろう。
だが当然のことながら、そうは問屋が卸さない。じつは深刻な危機に襲われたの
は資本主義国家ではなく、「毛主席の革命外交路線」であり、ゴ本尊サマの毛沢
東思想そのものだった。そこで鄧小平の共産党は「毛主席の革命外交路線」を引
っ込めて、毛沢東思想をボロ雑巾のように捨て去る一方で、「中国の特色を持つ
社会主義」やら「社会主義市場経済」などと見え透いた 言い訳 をしながら自
らの強い意思で世界の資本主義市場経済に飛び込んだ。
これが共産党に一元的に統治された中国の特色ある市場経済、つまり市場レーニ
ン主義だ。それにしても中国の特色とは実に便利なことばだ。
これさえ使えば、どんなムリも通り、矛盾も直ちに雲散霧消だ。中国の特色、そ
れをチョー自己チューという。
《QED》
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読者の声 読者之声 READER S OPINIONS
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(読者の声1)樋泉さんの【知道中国 689回】は面白かったです。特に毛沢東
が出産を奨励していたとは知りませんでした..毛沢東がかなりピンクが
かった紅だった事は貴メルマガや高山正之さんのコラムで知りました。此の様な
「出鱈目な理屈」を考え堂々と披露されると 呑まれて しまいます。この種の
民族に立ち向かうのにはどんな資質が必要なのでしょうか。
(岡山県 眠桃太郎)
(宮崎正弘のコメント)『延安時代』というのは、毛沢東の「長征」そのものが
でっち上げ、洞窟に隠れ住んで粛正とハーレムに明け暮れたのが実態です。
毛沢東を活かしておいたのはコミンテルンの支援があったからで、蒋介石は洞窟
のゲリラどもという認識しかなかったようです。
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宮崎正弘の新刊! 増刷中です! 書店では「ビジネス」や「中国」コーナーに置かれています!
『2012年 中国の真実』(ワック)
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0日入荷)
定価930円、216ページ 新書版
<『2012年 中国の真実』の内容>
――いよいよ中国バブルの大崩壊が始まった!
――がら空きの工業団地、幽霊屋敷のようなショッピング街、住民がいない団
地!
――2010年、発生した暴動は18万件
――四大銀行の帳簿から80兆円の不良債務が突如として消えた
――GDP成長率はマイナス10%、インフレは16%が本当の数字
――次は人民元大崩落だ!
もっとも先鋭的な中国経済、現場からの報告と未来展望!
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<宮崎正弘の対談シリーズ>
『猛毒国家に囲まれた日本』(佐藤優氏との対談。海竜社、1575円)
『増長し無限に乱れる「欲望大国」中国のいま』(石平氏との対談。ワック、9
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『絶望の大国 中国の真実』(石平氏との対談。ワック、933円)
『日米安保、五十年』(西部邁氏との対談。海竜社、1680円)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との対談。徳間書店、1575円)
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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(C)有)宮崎正弘事務所 2012 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示。
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