研修会報告「米国大統領選挙と米国の行方」 ~米国人の意識の変化と社会の変容~ 講演者: 横江 公美氏 (よこえ くみ) 東洋大学グローバル・イノベーション学研究センター 客員研究員、博士(政策) 元ヘリテージ財団上級研究員 研修担当理事 山口雅彦 9 月 7 日(水)にトヨタ北米事務所にて横江公美東洋大学グローバル・イノベーション学研究センター 客員研究員、博士をお招きしてワシントン日本商工会主催によるラウンドテーブル形式の講演会を 開催しました。 横江研究員は 2011 年 7 月から 2014 年 6 月までワシントン DCの大手シンクタンクの 1 つであるヘ リテージ財団に、外国人初の上級研究員として在籍されたご経験があり、ワシントンと日本の両方 の目線から今回の大統領選挙戦を分析され、メディアにも多く取り上げられています。最近では今 年 4 月に「崩壊するアメリカ~トランプ大統領で世界は発狂する!?」(ビジネス社)を出版されま した。 横江氏からは冒頭、今回の米国大統領選挙は誰もが予想しなかった出来事が起きているとの紹介が あり、トランプ&サンダースの台頭を含めた今回の選挙戦を世代論で分析することが興味深いとの 指摘がありました。特に米国で 1980 年以降に生まれたミレニアル世代が増える中で、従来の伝統的 な価値観が崩れ多様性が生まれていること、これにより米国の政治が混乱期を迎えているとの説明 がありました。 また、日本ではオバマ大統領は不人気で弱い大統領との認識が定着しているが、実際は米国ではオ バマ大統領は非常に強い存在であり、新たな価値観を作り上げたとのことです。オバマ大統領は建 国の精神(自己責任・キリスト教的価値観)を変容させ、国内政治では国民皆保険や同性婚、中絶の 容認を実現しました。外交、安全保障でも米国的戦後レジームを終焉させキューバ、イラン、ミャ ンマーとの関係正常化に尽力、広島訪問を実現し、TPP を含めた新たな安全保障の形を提示しまし た。このオバマ大統領が作り上げた新たな米国の背景には、多様化する時代があります。従来圧倒 的な白人の国であった米国は、白人が過半数を切る時代に突入し、マイノリティも多様化していま す。また偉大な米国の国土がテロにより直接狙われるようになりました。これらの背景を知るミレ ニアル世代の新たな価値観が中心となり、2008 年(オバマ大統領選挙の年)から 2048 年まで新たな政 治の 40 年周期が始まったとみられるとのことです。 この新たな時代には、問題解決は争いではなくネットワーキングであり、競争より格差是正の経済 であり、寛容な社会政策が求められる特徴があるようです。これがサンダースの支持層を形成した とみられています。また、これらの価値観に適応できず時代を見失った共和党では候補者が乱立し、 最終的に新たな価値観からあぶれた伝統的労働者層がトランプの支持にまわったとみられるとのこ とです。 横江氏によると、今後、共和党は新たな時代に沿った大きな方針転換が出来るかどうかが生き残り の鍵となり、時代を読むことが求められるとの指摘がありました。既に共和党は伝統的価値観から の変化を受容しつつあるとのことです。 今回の研修会では、間近に控えた先行き不透明な大統領選挙への関心を反映してか、50 名の定員を 上回る参加希望者があり、活発な質疑が行われ新たな視点と示唆に富む研修会となりました。 今回の研修に際して、会場を提供いただいたトヨタ自動車様にあらためて御礼を申し上げます。
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