<2008 年 3 月 31 日現在> 『新リース会計基準およびリース取引関係税制改正概要について』 1. 新リース会計基準の概要 (1)「新リース会計基準」の適用対象 新リース会計基準には明記はされておりませんが、現行のリース会計基準は証券取引法に基づく 財務諸表について適用されること、及び、会社法上、会計監査人を設置する会社における監査人 は会計基準に基づき監査することが想定されることから以下のいずれかに該当する会社が適用対 象になるものと考えられます。 ①証券取引法の適用を受ける会社(※)並びにその子会社及び関連会社 ※上場会社、社債・CP などの有価証券発行会社、株主数が 500 以上の会社 ②会計監査人を設置する会社(※)及びその子会社 ※会社法上の大会社(資本金が 5 億円以上、もしくは負債総額が 200 億円以上の株式会社) ③任意に会計監査人を設置する会社 (2)「新リース会計基準」の中小企業等への適用について(予定) 中小企業(上述の適用対象に該当しない会社)への適用に関しましては、関係 4 団体(日本税理 士連合会・日本公認会計士協会・日本商工会議所・企業会計基準委員会)において「中小企業の 会計に関する指針」のリース関連箇所が下記の内容に改定される予定です。 中小企業会計指針の要点(平成 20 年 1 月 18 日公開草案) 所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手は、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理 を行う。ただし、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。この場合は、未 経過リース料を注記する。 ただし、重要性がないリース取引については、注記を省略することができる。 この指針における借手(お客様)の会計処理に関しましては、現行の取扱い同様、賃貸借処理 が認められる予定です。 (3)「新リース会計基準」適用時期 平成 20 年(2008 年)4 月 1 日以降開始する連結会計年度及び事業年度から適用することとされて います。但し、四半期財務諸表に関しましては、平成 21 年(2009 年)4 月 1 日以降開始する連結 会計年度及び事業年度に係る四半期財務諸表から適用することとされています。早期適用も可で すが、リース取引開始日が、会計基準適用初年度開始前のリース取引については、従来と同様の 注記を条件に、引き続き賃貸借処理を適用することが可能です。 (4)新リース会計基準のポイント 所有権移転外ファイナンス・リース取引は、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理となり ます。(賃貸借処理は廃止となります) ファイナンス・リース取引 所有権移転ファイナンス・リース取引 ・・・現行:売買取引に準じた処理 ⇒ 変更なし 所有権移転外ファイナンス・リース取引 リース取引 ・・・現行:一定の注記を条件に賃貸借処理 変更 売買取引に準じた処理 オペレーティング・リース取引 ・・・現行:賃貸借処理 ⇒ 変更なし ファイナンス・リース取引とは、以下の①②のいずれにも該当するリース取引です。 ① リース期間の中途で当該契約を解除できないリース取引又はこれに準ずるリース取引 (中途解約不能なリース取引) ② 借手(お客様)がリース物件の経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、物件の使用に 伴って生ずるコストを実質的に負担することとなるリース取引 (フルペイアウトのリース取引) オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引です。 自動車リースは、一般的にメンテナンスサービスの有無により、ファイナンス・リースとメンテナンス・リ ースに区分されますが、リース会計ではこれらの区分とは関係なく、全てのリース取引をファイナンス・リ ース取引とオペレーティング・リース取引に区分します。 弊社では、会計上のファイナンス・リース取引との混同を避けるため、リース契約書における契約形態の項 目表記を 2008 年 4 月 1 日よりファイナンス・リースからリース(メンテナンスなし)へ変更いたします。 (5)重要性が乏しい所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理 リース取引がファイナンス・リース取引と判定される場合でも、以下の①②③のいずれかに該当 するリース取引については、借手(お客様)は賃貸借処理をすることができます。 ①企業の事業内容に照らして重要性の乏しい取引で、リース契約 1 件あたりのリース料総額が 300 万円以下のリース取引 ②リース期間が 1 年以内のリース取引 ③購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、個々のリース物件のリース料総額が基準 以下のリース取引* *企業は、一定金額未満の少額減価償却資産の処理について、購入時に一括費用処理する方法を採用している 場合があります。このような方法を採用している場合、リース料総額(リース物件が複数ある場合は物件単位 毎のリース料総額でも可)が、一括費用処理する基準額以下のリース取引については、賃貸借処理することが できます。 MBF リースプログラムのファイナンス・リース/オペレーティング・リース判定フローチャート ※お客様の状況により判定が異なる場合もございますので、最終的な判定につきましては、お客様の顧問税理士等、専門家にお問い合わせください。 オープンエンドリース クローズエンドリース(マイレージプラン) ①中途解約不能 ②フルペイアウト 弊社では、オープンエンドリースにつきましては、 のいずれにも該当 <具体的判定基準> A.中途解約不能のリース期間中のリース料総額の 現在価値が、見積現金購入価格の概ね 90%以上 一律ファイナンス・リース取引と判定いたします。 (解約不能型オープンエンドリース契約における残価部分は、リース資産 B.中途解約不能のリース期間が経済耐用年数の 概ね 75%以上 のリスクと便益のほとんど全てが借手(お客様)に移転しているため、解約 不能のリース期間中のリース料総額に含まれるものと判断されるため) 自動車リースにおいては、中古車市場の存在等に より、借手(お客様)がリース物件に係るほとんど 全てのコストを負担することにはならない場合が 多いことから、弊社では A.の判定基準のみ採用し、 判定を行います。 YES NO ファイナンス・リース取引 オペレーティング・リース取引 リース物件の所有権が借手に移転すると認められる取引 ①所有権移転条項付リース (リース契約上、リース物件の所有権が借手(お客様)に移転するリース取引) ②割安購入選択権付リース (リース契約上、名目的価額または著しく有利な価額で購入する権利が付されてい るリース取引) ③特別仕様のリース物件のリース取引 (リース物件返還後、第三者へ再リースまたは売却が困難であるリース取引) YES NO <所有権移転ファイナンス・リース> <所有権移転外ファイナンス・リース> 1 契約あたりのリース料総額が 300 万円以 下のリース取引(但し、企業の事業内容に照 YES らしてその取引の重要性を判断する必要性 有) NO YES リース期間が 1 年以内のリース取引 NO 適用対象 ①上場会社とその連結子会社 NO ②会社法の大会社とその連結子会社 ③会計監査人のいる会社 YES 売買取引に準じた処理 賃貸借取引に 準じた処理 2. リース取引関係税制改正の概要 リース会計基準が見直され、賃貸借処理が原則廃止されることに伴い、借手(お客様)側のリースの 簡便性を維持するため、会計に沿った税制上の処理を認めるなど、所要の税制上の措置が講じられます。 (1) リース取引関連税制改正のポイント 所有権移転外ファイナンス・リース取引について、下記の措置が講じられます。 ①所有権移転外ファイナンス・リース取引は、新リース会計基準に合わせ、売買取引と見なされ ます。 ②所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の賃借人(お客様)における償却方 法は、リース期間定額法(リース期間を償却期間とし、残存価格をゼロとする定額法)とされ ます。 ③上述の中小企業や「少額な資産」、「短期」のリース取引の場合、所有権移転外ファイナンス・ リース取引について賃貸借処理が可能とされています。借手(お客様)が会計上賃貸借処理し た場合、法人税法上は「リース料として損金経理した金額は、償却費として損金経理した金額 に含まれるものとする」とされています。 従って、リース料の額が毎月定額で、 「リース期間定額法」により計算される償却限度額と同額 となる契約であれば、税務上の申告調整は不要となります。 (2)適用時期 平成 20 年(2008 年)4 月 1 日以降に締結するリース契約に係る所有権移転外ファイナンス・リー ス取引について適用されます。 3. 会計基準変更後も継続されるリース取引のメリットについて 今回のリース会計基準及びリース取引関連税制の改正後も、リースには以下の通り様々なメリットが ございます。 ① 基本的に、今回のリース会計基準の改正後も、中小企業は賃貸借処理が認められる予定ですが、詳 しくは税理士等、専門家にお問い合わせください。 ② 「新リース会計基準」の適用対象となるお客様につきましても、リース資産総額に重要性がないと 認められる場合には、簡便的な会計処理が認められる場合があります。 利息相当額が定額処理できる場合(リース比率 10%未満の会社)は、毎月の費用は一定となり、 現行のリース損金処理と変わりません。 ③ オペレーティング・リース取引および企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース契約 1 件あ たりのリース料総額が 300 万円以下のファイナンス・リース取引は、賃貸借処理が維持され、オフ バランス処理が可能な取引となります。従来のリース取引と同様に、有利子負債の抑制・総資産の 圧縮ができます。 ④ 資金調達手段の多様化が図れるため、自己資本余力・調達余力を温存できます。 ⑤ 車両の所有権がリース会社にあることにより、諸税の納付・保険の付保を従来通りリース会社が行 うので、事務管理の省力化、事務コストの削減が図れます。 ⑥ リース期間での償却が可能ですので、車両の使用見込期間にあわせてリース期間を設定することに より、車両の陳腐化リスクに柔軟に対応できます。 ⑦ リース料は毎月定額支払いのため、簡便的な会計処理が認められた場合、所有に比べ、車両に関わ るコストが正確に認識でき(メンテナンス費用は除く)、リース期間中にわたるコストが平準化され、 将来にわたる費用も簡単に把握できますので、業績の把握・事業計画の立案などが容易になります。 ⑧ お客様が物件を取得され、平成 19 年(2007 年)4 月から適用が開始された「新定率法」により減価 償却費を算定した場合、資産簿価と固定資産税の課税標準額を 2 重に管理する必要性が生じますが、 リースを活用した場合、これらの煩雑な事務を軽減することができます。 4. 再リースについて 弊社では、1 年(12 回)もしくは 2 年(24 回)の再リースをご提供しておりますが、2 年の再リース につきましては、上記判定フローに基づき、ファイナンス・リース/オペレーティング・リースの判定を いたします。 5. 注記資料について 弊社では、お客様のご希望に応じて決算処理に必要なリース会計の注記資料をお出ししておりますの で、弊社までご連絡のうえ、お申し出ください。 6. その他注意事項 ファイナンス・リース/オペレーティング・リースの判定および処理につきましては、お客様の状況 により判定が異なる場合もございますので、最終的な判定および会計・税務処理につきましては、お客 様の顧問税理士等の専門家にご相談・ご確認のうえ、お客様のご判断にてお取り進めいただきますよう お願い申し上げます。 また、本『新リース会計基準およびリース取引関係税制改正概要について』は、2008 年 3 月末現在 で作成したものであり、法人税基本通達等の改正により、今後内容が修正されることもありますので、 予めご了承いただきますよう併せてお願い申し上げます。 <ご参考>「新リース会計基準」に基づく会計処理フローチャート 「新リース会計基準」では、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区分に応じて、会計処理方法 および開示方法が以下の通り定められています。 賃貸借取引に 売買取引に準じた処理 準じた処理 リース資産総額に重要性がないと 認められる場合 判断基準:リース比率 10%未満(※2) リース比率 リース比率 10%未満 10%以上 (以下の簡便処理を選択できる) リース料総額を資産の取得額相当額と利息に区分する 売買取引に準じた処理 区分しない 売買取引に準じた処理 売買取引に準じた処理 売買取引に準じた処理 賃貸借取引に準じた (原則処理) (簡便処理) (簡便処理) 処理 (利息の区分有) (利息の区分無) 貸借対照表(B/S) 貸借対照表(B/S) 貸借対照表(B/S) 資産・負債を取得価額 資産・負債を取得価額 貸借対照表(B/S) 貸借対照表(B/S) 計上なし 相当額で計上 相当額で計上 資産・負債を取得価額 資産・負債をリース料総額 但し、未経過リース料の 相当額で計上 で計上 注記が必要(※3) 損益計算書(P/L) 損益計算書(P/L) 損益計算書(P/L) 損益計算書(P/L) 損益計算書(P/L) ○減価償却費 ○減価償却費 ○減価償却費 ○減価償却費 ○支払いリース料(賃貸借 ⇒自社資産と同様 ⇒残価ゼロのリース ⇒同左 ⇒同左 期間定額法、定率法 但し、利息の区分が 級数法等より選択 無いためリース料と 取引と同様の処理) 同額になる ○利息相当額 ⇒利息法 ○利息相当額 ⇒利息法 ○利息相当額 ⇒リース期間にわたる ○利息相当額 ⇒計上なし 定額配分(定額法) (※1)現在価値の算定方法 リース料の支払い条件に基づき、弊社の計算利子率を使用して割引計算を 行い、リース取引開始時のリース料総額の現在価値を算出いたします。 (※2) 未経過リース料の期末残高 未経過リース料の期末残高+有形・無形固定資産期末残高 < 10% (注)未経過リース料の期末残高には(※3)の①~③に 該当し賃貸借処理したものや、利息法により会計処理した (※3)以下のリース取引の場合、注記は不要となります。 ・中途解約可能 ・重要性が乏しい場合(以下の①~④のいずれかに該当) ①個々のリース物件のリース料総額が、購入時に一括費用処理する 基準額以下(少額資産) ②リース期間が 1 年以内 ③1 契約あたりのリース料総額が 300 万円以下 (企業の事業内容に照らしてその取引の重要性を判断する必要性有) ④事前予告をもって解約可能なリース取引で、事前解約予告期間(予 告した日から解約日までの解約不能期間)に係る部分のリース料 ものは含めません。また、有形・無形固定資産期末残高 には、リース資産は含めません。
© Copyright 2024 Paperzz