原木自家栽培した『昔の茸そば』の話です

原木自家栽培した『昔の茸そば』の話です
弊店では、六年前先代が他界するまでの2 0年以上、原木自家栽培した茸を使った、 「 茸そば」
「 茸のおろしあえ」が、お品書きとしてあり、お客様に好評でした。
主には、ヒラタケ ・ クリタケ ・ ナメコ ・ シイタケ、を原木栽培し、ある一時期には、タモギタケも栽培して
いました。
クヌギ ・ ミズナラ ・ クルミ ・ クリなどの、落葉広葉樹を伐採し、玉切り、それぞれの菊をもつ種駒を
打ち込み、2年位、日陰の湿気のある地面に寝かせておくことで、枯れた原木に菌がまわり、温度や
湿度などが好条件になることで、茸として成長したものを収穫しました。
収穫時期は、1 0月下旬から1 2月上旬の2ヶ月間に集中しました。量も多かったので、煮て塩漬
にし、使用する時に塩出しをして調理しました。原木栽培したヒラタケは、旨味と香りがありました。
クリタケは、くせがなく歯ごたえがよく、また、傘のひらいたナメコのあの美味しさ。大きく肉厚のシイタケ
の旨さと、タモギタケの煮汁のやさしい味わい。茸そばだけではなく、 「 茸のおろしあえ」も、お酒の
お客様には大変喜ばれました。
採ってきたその日のうちに、大きな鍋で煮て、( — -―-翌日まで持ち越してしまうと、腐食した木の葉な
どが、なかなか取れなくなる為 —---)汚れや虫などを取り除き、それぞれの茸が混ぜられて、蔓に
塩漬保存したのでした。もちろん、天然の茸が採れた際も、 一緒に甕に塩漬されました。
先代が亡くなった後、原木栽培の茸ができなくなり、茸そば ・ 茸のおろしあえは、封印してやめた訳
ですが、その後の経過は、平成2 3年夏号のマイコファジストに紹介されたとおりです。
しかし、今更ながら覚えるのは、そば屋家業のかたわら、山仕事、畑仕事、養蜂など圧倒的な仕事
量をこなしながら築きあげた、先代の多オな技の存在です。
山仕事に限っても、原木の伐採、運搬、種駒の打ち込み。何箇所かあった、それぞれの異なる原木
の見回りと、その管理。しかも、数年も過ぎると、新たな原木に種菌を打ち込まねばならず、同じ場
所に原木を運び込むか、あるいは原木のある場所で栽培するかの、どちらかでした。そんな繰り返し
を2 0年以上続けながら、山林の杉や唐松の手入れを含め、 一 人で黙々と楽しみながら行ってきた
のでした。
そんな先代の茸の原木栽培の姿を見続けてきた想いが、新たな 「 茸そば」の誕生へと、女将の
背中を押したのかもしれません。
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とがめ
今、役わりの終わった五斗甕が2本、店の裏庭の片隅に、ひっそりと鎮座しております。竹で編ん
だ綸をかぶり、庭水用の雨水をためております。
現在は、かつての原木栽培のきのこではなく、菌床栽培の
きのこの、 「 茸そば」ですが、原木栽培、菌床栽培どちらの茸そば
も、その良さがでており、それぞれに私には美味しいと言える、
想いがあります。
平成24年
神無月
山とも庵店主
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