「奇形」という医学用語を考える

日本医学会分科会医学用語委員会
2014年12月19日
「奇形」という医学用語を考える
日本小児科学会 用語ワーキンググループ
本日の発表の趣旨
「奇形」という用語は患者や家族の尊厳を傷つけるおそ
れのある病名(または病態)であって、できれば他の言葉
(たとえば「形態異状」など)に置き換えることを検討すべ
きではないかと、小児科学会用語小委員会で話し合って
きた。
しかし「奇形」という医学用語は小児科医だけではなく、
非常に広い領域の医学分野(解剖学、遺伝学、先天異常
学、形成外科学、整形外科学、小児外科学など)でも用
いられ、また保健福祉の分野でも使われ、何より一般的
な言葉としても定着している。従って、一分科会である日
本小児科学会のみで議論していくべきことではなく、関連
の深い学会と一緒に考えて行きたい。
置き換えの例
anomaly
奇形
形態異状
abnormality
奇形/異常
形態異状/異常
defect
奇形/欠損
形態異状/欠損
deformity
異常/変形/奇形/変態/形質転換/異常性
形態異状
malformation
奇形
形態異状
monster
奇形体
形態異状個体
teratoma
奇形腫
テラトーマ
teratology
奇形学
形態異状学
「奇形」を意味する英文の用語は幾通りもあり、それぞれ本来意味する内容が異なっ
ている。それを反映できるような日本語を充てることも検討できるか?
Congenital
cardiovascular
anomaly
先天性心血管奇形
Congenital
cardiovascular
disease
先天性心血管疾患
患者や家族の尊厳を傷つけるおそれのある
その他の医学用語の例
• 動物の名前が入った用語(例: 猿線 simian crease、
鵞口瘡 thrush、牛眼 buphthalmos、猫なき症候群
cat cry syndrome、獣皮様母斑 giant hairy nevus)
• 顔貌に関する用語(例: ガーゴイリズム様顔貌
gargoylism-like face、鳥様顔貌 bird-like face,
brachygnathia、牛顔貌 bovine face、蛙顔貌 frog
face、河馬顔貌 hippopotamus face、獅子顔貌
leontiasis、老人様顔貌 senile face)
提案
• 「奇形」および関連した先天異常学・発生学・遺伝学
的用語で、患者や家族にとってつらい響きのある医
学用語の置き換えなどを検討するために、この問題
に関与が大きい、または関心の深い分科会が寄り
合って、話し合う場を持つ(ワーキンググループを結
成する)。
• 進捗状況は随時日本医学会医学用語委員会にも連
絡し、提言がまとまったら日本医学会の全ての分科
会にも通達し、public commentsも得るようにする。
• このような過程を経て、十分な審議の元で同意が得
られたら、「奇形」および関連する医学用語の置き換
えを提言する。
お願い
• 本提案をそれぞれの分科会に持ち帰って、
ワーキンググループへの参加の意思がある
かどうかご検討下さい。
• ワーキンググループにおける話合いはメール
を用いても行えますが、対面での会議が必要
となった場合の旅費などの費用は、それぞれ
の分科会で負担することができるかどうか、
ご確認下さい。