第 69 回日本寄生虫学会 西日本支部大会 プログラム・講演要旨 会 会 期:2013 年 10 月 19 日(土)13:00~10 月 20 日(日)17:00 場:アルファあなぶきホール(香川県県民ホール) 大会議室(小ホール棟4階) 大 会 長:香川大学医学部国際医動物学 新井明治 大会事務局:香川大学医学部国際医動物学 〒761-0793 香川県木田郡三木町池戸 1750-1 Tel:087-891-2122 E-mail:[email protected] ご挨拶 皆様には益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。 この度、第 69 回日本寄生虫学会西日本支部大会を香川県高松市で開催させていただ くことになりました。多数の先生方のご参加をいただきたくお願い申し上げます。 今回も一般演題を広く募集することに加え、第 67 回支部大会から開始されました、 若手研究者の中から優れた研究発表を顕彰する、第3回優秀研究賞の選考をいたしま す。今回は大学院生を中心とした9演題がエントリーされています。 大会企画である「私のムシ自慢」には、6演題をお寄せいただきました。どのような 自慢を聞かせていただけるのか、非常に楽しみです。 また特別講演として、ソウル大学医学部の Dr. Eun-Hee Shin より「Effect of NO production on the neuronal cell death in Toxoplasma gondii-infected mouse brain」 というタイトルでご発表いただけることになりました。トキソプラズマが脳において 慢性感染を維持するために発達させた寄生適応戦略に関する最新の知見を得ること ができる良い機会です。 支部大会の良さは、「若い研究者(大学院生・学部学生を含む)が発表できる機会」 であり、「ひとつの会場で全ての発表を聴くことができる」ことにあると思います。 若い方々が自分の専門領域と異なる分野の発表に触れることで、ひとつでも多く、新 たな研究の芽が生まれることを祈念いたしております。 香川県ではさぬきうどんが有名で、 「うどん県」としての認知度も高まっております。 また最近では、瀬戸内国際芸術祭の開催地として、芸術による文化発信にも力を入れ ております。10 月下旬は同芸術祭の秋会期中でもありますので、学術交流とあわせ て、是非「うどんとアートの香川県」をお楽しみいただければと存じます。 平成25年10月19日 第 69 回日本寄生虫学会西日本支部大会 大会長 新井明治 (香川大学医学部国際医動物学講座) 1 大会日程 10月19日(土) 10月20日(日) AM PM 09:15 09:30 10:00 10:45 10:55 開場・受付 特別講演 セッション⑤ 休憩 セッション⑥ 11:55 休憩 12:30 開場・受付 12:05 評議員会 13:30 13:40 14:10 14:40 15:10 15:20 16:05 16:15 16:20 17:05 17:15 開会・開会の挨拶 セッション① 賞候補 セッション② 賞候補 セッション③ 賞候補 休憩 セッション④ 賞候補 休憩・採点票回収 ムシ自慢 挨拶 ムシ自慢① 休憩 ムシ自慢② 12:45 13:15 13:20 14:05 15:05 15:15 16:15 西日本支部総会 休憩 セッション⑦ セッション⑧ 休憩 セッション⑨ 閉会の挨拶 18:00 18:30 休憩 懇親会 2 ご案内 1.会期:2013年10月19日(土)13時 ~10月20日(日)17時(予定) 2.会場:アルファあなぶきホール(香川県県民ホール) 大会議室(小ホール棟4階) 〒760-0030 香川県高松市玉藻町 9-10 電話:087-823-3131 3.大会ホームページ: http://www.med.kagawa-u.ac.jp/~medzool/69parawest.htm 4.会費および懇親会費: 会員区分 大会参加費 懇親会費 評議員 6,000 円 (5,000 円) 5,000 円 (4,000 円) 一般会員 5,000 円 (4,000 円) 5,000 円 (4,000 円) 2,000 円 3,000 円 (1,000 円) (2,000 円) 学生他 ※評議員の参加費には10月20日(日)の弁当代が含まれております。 ※カッコ内は事前納付の金額です。 5.発表について(発表者の皆様へ) 1) 一般講演は口頭発表で、発表 10 分、質疑応答 5 分の合計 15 分の予定です。 2)発表終了 1 分前(1 鈴)、発表終了時(2 鈴)、討論終了時(3 鈴)にベルで時間を お知らせいたします。 3) 発表者の皆様は、発表いただく 60 分前までに、必ず会場 PC にて各自の発表フ ァイルを試写してください。 4) 10月20日(日)にご講演の方は、前日から PC での試写が可能です。 できるだけ初日に受付していただきますよう、ご協力お願いいたします。 5) 本会で用意します PC の OS は Windows 7、アプリケーションは、PowerPoint 2010 (Windows 版)です。 6) Macintosh 版や、Windows 版であっても上記以外のバージョンの PowerPoint(2003、 2007、2013 など)で作成されたデータは、画像表示やレイアウトの乱れ等が生じる 3 可能性があります。 発表ファイル送付前に必ず、PowerPoint 2010 での表示・動作の確認を行って下さ い。 7) 動画をご使用の場合、コーデックやファイル形式の違いにより再生できない場 合があります。 動画の使用を希望される場合には、発表ファイル送付前に事務局へご相談下さい。 8) お預かりいたしましたデータは、ご講演終了後に事務局が責任を持って消去い たします。 6.評議員会:10月20日(日)12時05分~12時45分 アルファあなぶきホール・大会議室(小ホール棟4階)にて行います。 ※評議員会に出席される方は、参加登録フォームの該当欄にその旨をご記入願います。 ※一般会員・学生会員の方で、事前にお弁当を注文された方は、評議員会開始までに 弁当をお受け取り下さい(お弁当券との引き換えになります)。この場合、評議員会 会場で食べていただいて構いません。 7.総会:10月20日(日)12時45分~13時15分 アルファあなぶきホール・大会議室(小ホール棟4階)にて行います。 8.懇親会:10月19日(土)18時30分~20時30分 ギャラリーカフェ・シレーヌ(アルファあなぶきホール・大ホール棟6階)にて行い ます。 ※懇親会会場は大会会場と別棟になります。一度小ホール棟2階に降りて、大ホール 棟エレベーターで6階に上がって頂くことになります。 9. その他 1) 電話:両日とも会場内での取次ぎはできません。 2) クローク:会場前にてお荷物をお預かりいたします。 3) 禁煙:会館内は禁煙です。 4 アクセス JR高松駅より東へ徒歩約10分 ことでん高松築港駅より東へ徒歩約8分 四国フェリー高松港より南へ徒歩約1分 高松中央ICより車で約20分 高松空港より空港バス又はタクシーで約30分、高松築港駅で下車、徒歩約8分 5 6 第 69 回日本寄生虫学会西日本支部大会プログラム 10 月 19 日(土) 12:30 受付 13:30 開会の挨拶(大会長) 優秀研究賞 選考対象:セッション1 - セッション4の合計9題 審査員:齋藤あつ子(兵庫医療大)・宇賀昭二(神戸大)・吉川尚男(奈良女子大)・ 吉田栄人(金沢大) 13:40 セッション1 座長:齋藤あつ子(兵庫医療大・薬・微生物) 1-1(13:40 - 13:55) 爬虫類由来ブラストシスチス株の性状と遺伝的多様性について ○小山由紀子 1、孫 嬌 2、高見一利 3、佐野祐介 3、吉川尚男 1,2 1 奈良女子大学大学院・人間文化研究科・生物科学専攻、2 奈良女子大学・理学部・生 物、3 大阪市天王寺動植物園 1-2(13:55 - 14:10) 日本とインドネシアのげっ歯類由来のブラストシスチス株の遺伝的多様性 ○勝間田真愛 1、吉川尚男 1、所 正治 2 1 奈良女子大・院・生物、2 金沢大・医・寄生虫 14:10 セッション2 座長:宇賀昭二(神戸大・院・保健) 2-1(14:10 - 14:25) 山口県産ツチガエル Rana rugosa から分離した Trypanosoma tsunezomiyatai の特徴づけ ○迫田菜摘、Binh Thi Tran、佐藤 宏 山口大・獣医寄生虫 2-2(14:25 - 14:40) Effect of Thunbergia laurifolia on experimental opisthorchiasis and cholangiocarcinoma ○Wonkchalee N1,2, Wu Z1, Boonmars T2,3, Nagano I1, Maekawa Y1, Pairojkul C4, Chamgramol Y4, Waraasawapati S4, Aromdee C5 1 Dept of Parasitol., Gifu Univ., 2 Dept. of Parasitol.,3 Liver Fluke & Cholangiocarcinoma Research Center, 4Dept. of Pathol., Fac. of Med., 5Fac. of Pharm. Sci., Khon Kaen Univ., Thailand 7 14:40 セッション3 座長:吉川尚男(奈良女子大・理・生物) 3-1(14:40 - 14:55) 糞便検体からの DNA 精製効率改善を目指した試み ○荒山駿介 1、吉川尚男 2、所 正治 1 1 金沢大・院医・寄生虫感染症制御学、2 奈良女子大・理学部・生物科学科 3-2(14:55 - 15:10) 疫制御因子発現型バキュロウイルスベクターによるマラリアワクチンの開発研究 ○中谷大樹、伊従光洋、吉田栄人 金沢大学・薬・創薬科学類・ワクチン免疫科学研究室 15:10 休憩 15:20 セッション4 座長:吉田栄人(金沢大・医薬保健・ワクチン免疫科学) 4-1(15:20 - 15:35) 兵庫県下の流行河川における Centrocestus armatus の感染動態 ○小松慎太郎、湊 宏美、中西由紀、宇賀昭二 神戸大・院・保健 4-2(15:35 - 15:50) Centrocestus armatus の第 2 中間宿主魚への感染とその後の動態 ○中西由紀、小松慎太郎、湊 宏美、宇賀昭二 神戸大・院・保健 4-3(15:50 - 16:05) Centrocestus armatus の感染が第 2 中間宿主魚の行動に及ぼす影響 ○湊 宏美、小松慎太郎、中西由紀、宇賀昭二 神戸大・院・保健 16:05 休憩・採点票回収 8 16:15 大会企画「私のムシ自慢」挨拶(大会長) 16:20 ムシ自慢セッション1 座長:福本宗嗣(鳥取大・医・医動物) M-1(16:20 - 16:35) 稀代の曲者、旋毛虫 ○高橋優三 兵庫医大・医 M-2(16:35 - 16:50) 寄生虫との長い御付き合い-多くの先輩同僚に支えられて、多くの寄生虫に遭遇で きたことに感謝 ○山田 稔 京都府立医科大学大学院感染病態学 M-3(16:50 - 17:05) と畜場と寄生虫 ○松尾加代子 岐阜県食肉衛生検査所 17:05 休憩 17:15 ムシ自慢セッション2 座長:是永正敬(高知大・医・寄生虫) M-4(17:15 - 17:30) トリコモナス類 ○所 正治 金沢大・院医・寄生虫感染症制御学 M-5(17:30 - 17:45) 私のムシ自慢 −寄生虫症診療の経験から− ○中村(内山)ふくみ 奈良医大・病原体・感染防御 M-6(17:45 - 18:00) 虫のなかのムシのお話:Genetic modification (GM) ハマダラカの唾液腺内のマラリ ア原虫の動態の in vivo イメージング ○吉田栄人 金沢大学・薬・ワクチン免疫科学 9 18:00 休憩・移動 18:30 - 20:30 懇親会 10 月 20 日(日) 9:15 受付 9:30 特別講演 座長:金 惠淑(岡山大・薬・国際感染症制御学) S-1(9:30 - 10:00) Effect of NO production on the neuronal cell death in Toxoplasma gondii-infected mouse brain ○Eun-Hee Shin1,2 1 Department of Parasitology and Tropical Medicine, Seoul National University College of Medicine, Seoul 110-799, Korea; 2Seoul National University Bundang Hospital, Seongnam 463-707, Republic of Korea 10:00 セッション5 座長:吉川正英(奈良医大・病原体・感染防御) 5-1(10:00 - 10:15) タカサゴキララマダニ刺咬後のアナフィラキシーを3回起こしたと考えられる症例 ○大澤さおり 1、吉田幸雄 2、山田 稔 3 1 大澤医院、2 京府医大名誉教授、3 京府医大・院・感染病態学 5-2(10:15 - 10:30) ダブルバルーン小腸内視鏡により発見された Bolbosoma 属鉤頭虫症の一例 ○山本修司 1、山田 稔 2、松村和宜 1 1 滋賀県立成人病センター・消化器内科、2 京都府立医科大学・感染病態学 5-3(10:30 - 10:45) 同一グループ内で発症した熱帯熱マラリアの 2 例 ○中村(内山)ふくみ 1,2、小川 拓 2、米川真輔 2、福盛達也 2、宇野健司 2、笠原 敬 2 、前田光一 2、浦手進吾 2、井上 剛 3、有川 翔 3、三笠桂一 2、王寺幸輝1、吉川正 英1 1 奈良医大・病原体・感染防御医学、2 奈良医大・感染症センター、3奈良医大・高度 救命救急センター 10 10:45 休憩 10:55 セッション6 座長:所 正治(金沢大・院医・寄生虫感染症制御学) 6-1(10:55 - 11:10) 兵庫県のマダニに寄生するバベシア属原虫の調査 ○大森志保 1、河合敦子 1、末廣 優 1、西本あゆみ 1、長野基子 1、斎藤あつ子 1,2 1 兵庫医療大学薬学部微生物学分野、2 神戸大学大学院医学研究科原虫・寄生虫学分野 6-2(11:10 - 11:25) カンボジア Kratie 県においてメコン川より採取したメコン住血吸虫中間宿主貝 Neotricula aperta のミトコンドリア DNA16 S 及び cox1 遺伝子を用いた集団遺伝学的 解析 ○吾妻 健 1、王 辰囡 1、桐木雅史 2、林 尚子 2、Muth Sinuon3、Chuor Char Meng3、 千種雄一 2 1 高知大・医・環境保健学、2 獨協医科大・熱帯病寄生虫病室、3 カンボジア保健省 6-3(11:25 - 11:40) 核/ミトコンドリア DNA をターゲットとした角膜炎分離アカントアメーバの遺伝子 型解析 ○所 正治 1、RAHMAN Md Moshiur1、及川陽三郎 2、小林 顕 3 1 金沢大・院医・寄生虫感染症制御学、2 金沢医科大・医動物学、3 金沢大・医・視覚 科学 6-4(11:40 - 11:55) キハダマグロ筋肉寄生のクドア粘液胞子虫、Kudoa neothunni および Kudoa thunni の 種内 rDNA 遺伝子変異について 李 迎春 1、都築秀明 2、Lea Jimenez3、大西貴弘 4、小西良子 4、○佐藤 宏 1 1 山口大・獣医寄生虫、2 愛知県食品衛検・食品監視・検査セ、3Davao Oriental State College of Sciences and Technology、4 国立医薬品食品衛研・衛生微生物 11:55 休憩 12:05 昼食/評議員会 12:45 西日本支部総会 11 13:20 セッション7 座長:大槻 均(鳥取大・医・医動物) 7-1(13:20 - 13:35) 経皮吸収型抗マラリア薬の開発研究 中村由香、片本 茜、佐藤 聡、檜垣和孝、綿矢有佑、○金 岡山大・薬・国際感染症制御学 惠淑 7-2(13:35 - 13:50) 熱帯熱マラリア原虫のヘモグロビン輸送における寄生胞膜の動態 ○入子英幸 1、大槻 均 1、橘真由美 2、石野智子 2、鳥居本美 2、坪井敬文 3、福本宗 嗣1 1 鳥取大・医・医動物学、2 愛媛大・プロテオサイエンスセンター・寄生病原体学部門、 3 愛媛大・プロテオサイエンスセンター・マラリア研究部門 7-3(13:50 - 14:05) マラリア原虫赤血球侵入関連分子 EBL の C 末端のシステインは細胞内局在にとって 重要である ○大槻 均 1、入子英幸 1、石野智子 2、金子 修 3、福本宗嗣 1、坪井敬文 4、鳥居本 美2 1 鳥取大・医・医動物学、2 愛媛大・プロテオサイエンスセンター・寄生病原体学部 門、3 長崎大・熱研・原虫学、4 愛媛大・プロテオサイエンスセンター・マラリア研 究部門 14:05 セッション8 座長:山田 稔(京府医大・院・感染病態学) 8-1(14:05 - 14:20) タイ国サコンナコン県の 6 小学校における消化管寄生虫症の疫学調査 ○土井龍一 1、Ahmed Ibrahim Youssef2、松本衣津美 2、Somchai Chakhatrakan3、 伊藤 誠 4、宇賀昭二 1,2 1 神戸大・院・医学、2 神戸大・院・保健、3Thammasat University, Thailand、4 愛知医 大・医・寄生虫学 8-2(14:20 - 14:35) Antigen detection ELISA for surveillance of visceral leishmaniasis with urine samples Sharmina Deloer1, Sohel Mohammad Samad1, Chatanun Eamudomkarn1,2, Eisei Noiri3, 〇Makoto Itoh1 1 Dept. of Infection and Immunology, Aichi Medical Univ., Aichi, Nagakute, Japan, 2Dept. of Parasitology, Faculty of Medicine, Khon Kaen Univ., Khon Kaen, Thailand, 3Dept. of Hemodialysis & Apheresis, The Univ. of Tokyo Hospital, Tokyo, Japan 12 8-3(14:35 - 14:50) アメーバ原虫の集シスト法の再検討 ○大西義博 大阪府大・院・獣医 8-4(14:50 - 15:05) ヴェネズエラ糞線虫初期感染における抗体依存性排虫機構について ○松本真琴 1、安田好文 1、善本知広 2、中西憲司 3 1 兵庫医大・免疫学医動物学、2 兵庫医大・先端研・アレルギー、3 兵庫医大 15:05 休憩 15:15 セッション9 座長:新井明治(香川大・医・国際医動物) 9-1(15:15 - 15:30) 害虫の暗視野データに対する動態計測手法 ○奥田泰丈 1、高橋 悟 1、新井明治 2 1 香川大・工・知能機械システム工学、2 香川大・医・国際医動物学 9-2(15:30 - 15:45) 赤外分光イメージングによる寄生虫検出の試み ○石丸伊知郎 香川大・工・知能機械システム工学科 9-3(15:45 - 16:00) 静電型集積装置に誘引されたワクモの SEM-EDX 解析 ○國方希美 1、寺中正人 2、近藤哲也 3、原田正和 2、新井明治 2、松本由樹 1 1 香川大・農・家畜生体機構学、2 香川大・医・国際医動物学、3 近藤電子株式会社 9-4(16:00 - 16:15) イオン液体と SEM を用いたワクモの全周囲観察 ○寺中正人 1、國方希美 2、松本由樹 2、近藤哲也 3、原田正和 1、新井明治 1 1 香川大・医・国際医動物学、2 香川大・農・家畜生体機構学、3 近藤電子株式会社 16:15 閉会挨拶(大会長) 13 特別講演 14 S-1 Effect of NO production on the neuronal cell death in Toxoplasma gondii-infected mouse brain ○Eun-Hee Shin1,2 1 Department of Parasitology and Tropical Medicine, Seoul National University College of Medicine, Seoul 110-799, Korea; 2Seoul National University Bundang Hospital, Seongnam 463-707, Republic of Korea The generation of NO in brain-specific macrophages (microglia) induces an important antimicrobial mechanism, whereas it exemplifies a system that can result in collateral damage to tissue in the brain. Brain tissues are extremely susceptible to the noxious effects of NO which is toxic substance causing a wide range of neurodegenerative and demyelinating diseases in the CNS. T. gondii is a successful protozoan parasite due to its ability to manipulate the host immune system to the direction of decrease in toxic inflammatory response during chronic infection. The present study aimed to examine the immunopathology attributed by T. gondii infection in normal C57BL/6 mouse brain, the orientation of microglial activation which is induced by different T. gondii strains, type I (virulent; RH) and type II (avirulent; ME49), and how T. gondii modulates the activation of microglia to be a chronic infection without harmful events in the brain. C57BL/6 mice were orally infected with 10 cysts of T. gondii type II (avirulent; ME49) strain and sacrificed at weeks 0, 1, 3, 6, 9 and 12 post-infection (PI). The brain tissues observed histological changes in the hippocampal formation. Levels of proteins and mRNA were examined by cytokine arrays for IL-4, IL-10, IL-6, granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF), IFN-γ, tumor necrosis factor-alpha (TNF-α), IL-12p70, and by microarray analysis of mouse brain gene expression, respectively. In addition, BV2 cells (microglial cell line established from C57BL/6 mouse brain) were cultured with T. gondii tachyzoites antigens (RH and ME49 strain) and confirmed the expression of cell surface markers including major histocompatibility complex II (MHC II), CD80, B7-H1, B7-DC, and CD40 using flow cytometry. Moreover, it was to determine the effects of T. gondii strains on relative gene expression of cyclooxygenase-2 (COX-2), inducible nitric oxide synthases (iNOS), and arginase 1 using real-time PCR. Accordingly, these results suggest that microglia in the brain infected with ME49 strain of T. gondii was activated to M1 phenotype increasing inflammatory cytokines and NF-kB expression. Although the accelerated inflammatory response resulted in neuron degeneration, IL-10 (mRNA and protein level) and TGF-b (mRNA level) increased at the same time modulated the excessive inflammatory response. In particular, the specific increase of arginase 1, and the decrease of COX2 and iNOS, decreased selectively NO production, and accordingly, it seems to be recovered from neurodegeneration of brain tissues. The present study shows that neurotoxic NO production was decreased in the brain while maintaining M1-like microglial activation for continuous immune vigilance. 15 大会企画「私のムシ自慢」 16 M-1 稀代の曲者、旋毛虫 ○高橋優三 兵庫医大・医 旋毛虫は、稀代の曲者である。敵ながらあっ晴れ。それ故、曲者の手口を調べ上げ、 使っている道具を知るべし。敵の武器を利用する事こそ、古今東西、戦いに勝つため の常套手段である。かくして旋毛虫が如何に巧妙な寄生戦略をとるのか、そしてそれ を可能にする生理活性物質(parakine)の研究が始まった。 <旋毛虫 Face Book> 線虫の一種である。ヒトに経口感染するため、食品衛生 上、重要な寄生虫である。ほぼ全世界に分布している。 感染形は宿主の筋肉内で被嚢している幼虫である。宿主 が捕食されると、被嚢幼虫は脱嚢し、腸管の中で成虫と なり有性生殖をおこなう。卵胎生であり、生まれた新生 幼虫は血流に乗り、全身の骨格筋の筋肉細胞に侵入、被 嚢する。嚢は卵円形で中に幼虫やその世話をするナース 細胞などが入っている。 実験室内での継代と維持は超簡単。忙しい分子生物学的研究者の片手間仕事で十分 OK。 お友達:encapsulated clade として Trichinella spiralis,T. native,T. britovi,T. murrelli, T. nelsoni.non-encapsulated clade として T. pseudospiralis, T. papuae, T. zimbabwensis. <旋毛虫は、敵を手なずけて、敵の城の中で暮らす> 旋毛虫の新生幼虫は、筋肉細胞に侵入する。侵入された筋肉細胞の局所は傷害を受け、 典型的なサルコメア構造が消失する。この被害を最小限に食い止めようと、筋肉細胞 は“防火壁”の様なものを作って傷害の拡散を遮断する。筋肉細胞の一大事に呼応し て筋芽細胞(衛星細胞)が分裂・増殖し、筋肉細胞に分化し、傷害部位と融合し、筋 肉の治癒を目指す。これは宿主の筋肉細胞が壊れた時一般に起こる治癒機転である。 ところが旋毛虫は、この筋芽細胞を誤分化させて筋肉細胞ではなく自分の世話をさせ る細胞(ナース細胞)に分化させてしまう。つまり相手が治ろうとする力を利用して いるのだ。これは柔道や相撲で、相手の力を利用して豪快に投げ飛ばすのと、同じ作 戦である。全部自分の力でやろうとする“まじめさ”が欠如しているが、巧妙である。 さて、このように旋毛虫は、敵(宿主)を手なずけて、敵の城(筋肉細胞)の中で暮 らすが、やがて手なずけた細胞(ナース細胞)もやがて弱って来る。その一大事に感 づいた筋芽細胞は、再度、分裂・増殖し、筋肉細胞に分化しようとするが、旋毛虫は、 非情にもこれナース細胞に誤分化させてしまう。 17 そう、旋毛虫の嚢は筋肉細胞の基底膜が増強された結果であり、そもそも基底膜に包 まれた袋の中に筋肉細胞と筋芽細胞が入っているので、旋毛虫は自分の嚢の中に、新 しいナース細胞の供給源を囲い込んでいるのだ。こうして旋毛虫は自分の嚢に筋芽細 胞が入っている限り、ナース細胞の供給に事欠く心配は無い。 つまり、哀れ筋芽細胞、旋毛虫の嚢の中に取り込まれたため、一生筋肉細胞に分化で きず、次の代も次の代も、子孫代々、ナース細胞となってご主人様のお世話をする過 酷な運命となる。これは新大陸に送り込まれた奴隷並みの悲しい運命と言わざるを得 ない。 <旋毛虫は、自分への免疫攻撃から逃れようとする> 被嚢した旋毛虫は、宿主の免疫攻撃で死滅する事は無い。これは、宿主由来の細胞成 分である嚢の中に入って、免疫攻撃から物理的に隔離されている事も一因であるが、 おそらく宿主の免疫を変調させ、免疫攻撃を弱めているのも無視できない一因であろ う。寄生虫感染による宿主免疫能の低下は、旋毛虫以外でも知られている通りである。 興味深い事に、この宿主免疫能の低下があったとしても、その宿主が日和見感染に陥 るわけではない。 <旋毛虫は、遅れてやって来た同類への免疫攻撃を看過する> 旋毛虫に感染した宿主は、旋毛虫に対して特異抗体を産生する。その宿主に新たな旋 毛虫感染を行うと、その新たな旋毛虫は免疫学的な機序で宿主腸管から排除される。 つまり遅れて到着した旋毛虫は寄生を完結しにくい。これは先輩が後輩を助けるとい う博愛の精神に反する非情であるが、旋毛虫の種族維持の立場から言うと、合理的で ある。一旦寄生が完成した旋毛虫は、もうこれ以上宿主が重症になって死んでしまっ ては、自分の生存も危なくなる、と判断した。つまり、種族としては、寄生を完結さ せた旋毛虫の生存だけは優先的に確保したい安全策である。 <旋毛虫の秘密兵器> 旋毛虫の外分泌腺で最も注目すべきは、食道腺である。ここからの分泌蛋白(ES 産 物)は多種類あるが、嚢の形成や免疫変調を担っている生理活性物質が含まれている と期待されている。そのため食道腺の分泌蛋白は、生化学的にも、分子生物学的にも 検索が進められ、その一部は組み換えタンパクとして作成された。今までに機能が判 明した組み換えタンパクは、マクロファージ遊走阻止因子、プロテアーゼ、プロテア ーゼ・インヒビター、転写補助因子、転写抑制因子、解糖系酵素(enolase)、DNase、 ヒートショックプロテインなどである。ありていに言うと、最も欲しい生理活性物質、 つまり彼らの秘密兵器は、まだ合成されていない。 18 M-2 寄生虫との長い御付き合い-多くの先輩同僚に支えられて、多くの寄生虫に遭 遇できたことに感謝 ○山田 稔 京都府立医科大学大学院感染病態学 私は昭和49年に岐阜大学獣医学科を卒業し、大阪府立大学で修士を終了後、昭和 51年に京都府立医科大学医動物学教室に助手として入局し、現在に至ります。私と 寄生虫との出会いは岐阜大学の学生の頃、家畜病理学教室(主任 故久葉 昇教授) で寄生虫とは関係のない実験のお手伝いをしていた時、たまたま路上でネズミを拾い、 教室へ持ち帰って解剖し腸管から寄生虫を見つけたことから始まります。私の記憶で は故正保 忠三郎先生(元大阪市大准教授の宇仁先生とフィラリアの研究をされまし た)にこの寄生虫を同定してもらいました。また丁度私が卒業と同時に久葉先生が定 年退官であったため、文献の整理をお手伝いしていて、多くの寄生虫の論文に遭遇し、 先生の許可を得て、一部の文献を長く保存していた記憶があります。大阪府大の修士 では家畜内科学教室でモルモットにおける線虫(豚肺虫)の防御免疫について元九州 大学の古賀正崇先生(当時は修士の一年先輩)とご一緒できたことは忘れられません。 食肉検査所で得た豚の肺を教室に持ち帰り解剖して豚肺虫成虫を得、中間宿主である ミミズに子宮内卵を食べさせ、ミミズから感染幼虫を得ました。主任の故野田亮二教 授はロシア語が堪能と見えて、よくロシア語の寄生虫の論文を読んでおられました。 実験では家畜内科学教室の先生方にお世話になりました。修士終了後は京都府立医科 大学医動物学教室で助手をもとめておられ、運よく採用されました。主任は現吉田幸 雄名誉教授で、周りには研究生として多くの開業獣医さんもおられ、ドクターと一緒 に研究をし、活気がありました。ニューモシスチス肺炎がその当時主要な研究領域で した。現有薗直樹名誉教授もおられ指導を受けました。その後有薗先生は病理へ転出 されましたが、平成元年再び教授として戻って来られました。先生とはネズミの線虫 である Nippostrongylus brasiliensis を扱った研究で、先生が定年になられるまでご一緒 しました。その間多くの先輩諸兄同僚にはよく面倒を見ていただき、論文もたくさん 出来、感謝に堪えません。ところで吉田先生は臨床寄生虫学にも興味がおありで、臨 床症例についてノートに要領よくまとめられ、私たちにもノートを残すよう言われ、 そのおかげで今でも臨床ノートを書いており(要領は悪いですが)検査・診断に従事 しています。有薗先生はよく症例があればそのコンサルタントとして努めるようにと おっしゃいました。今ではひとりになりましたが、多くの寄生虫症例に遭遇でき、ま た医師・検査技師さんからも信頼されてきておりうれしい限りです。元本学准教授 塩田恒三先生他前教室員の皆様にも大変お世話になりました。採集旅行や野外調査も 楽しかった思い出です。最後に寄生虫のことを書いていませんでしたので寄生虫に怒 られると思い、人体や動物で遭遇した主な寄生虫の名前を列挙したいと思います。 19 真菌:ニューモシスチス 原虫:赤痢アメーバ、大腸アメーバ、小形アメーバ、ヨードアメーバ、ヒトブラスト シスチス、アカントアメーバ、ランブル鞭毛虫、腸トリコモナス、メニール鞭毛虫、 イソスポーラ・ベリ、サイクロスポーラ、トキソプラズマ、各種マラリア、バベシア 属原虫 蠕虫 線虫:回虫、ブタ回虫、イヌ回虫、アニサキス、蟯虫、各種鉤虫、東洋毛様線虫(輸 入例)、広東住血線虫、各種糞線虫、東洋眼虫、常在糸状虫、イヌ糸状虫、鞭虫、旋 毛虫、 Nippostrongylus brasiliensis 吸虫:肝吸虫、横川吸虫、異形吸虫(輸入例)、槍形吸虫、ウエステルマン肺吸虫、 宮崎肺吸虫、大平肺吸虫、各種棘口吸虫、肝蛭、日本住血吸虫、クリノストーマ 条虫:日本海裂頭条虫、広節裂頭条虫(輸入例)、クジラ複殖門条虫、マンソン孤 虫、無鉤条虫、有鉤嚢虫、単包虫、サル条虫 鉤頭虫類:おそらく Bolbosoma 衛生動物:各種マダニ、ヒゼンダニ、ニキビダニ、カ、ブユ、ハエの幼虫、ヒトクイ バエ(輸入例)、アタマジラミ、ケジラミ、トコジラミ、シバンムシアリガタバチ、 ムカデ、ヤマビル 20 M-3 と畜場と寄生虫 ○松尾加代子 岐阜県食肉衛生検査所 日本人が日常生活で生きた寄生虫を見る機会は激減しているが、家畜においては未 だ寄生虫症も多く、家畜が食肉へと加工される起点となると畜場は食品由来寄生虫症 の最前線と言える。と畜場では以前に比べ、減ってきたとはいえ、頻繁に寄生虫と遭 遇する。現場の獣医師(と畜検査員)の間ではにょろにょろ達は嫌われものであるが、 ライブで動く寄生虫は、寄生虫研究者には夢のような光景である。日頃から肉は食べ ていてもそれがどのように検査されているのか一般の人が知る機会はほとんどない と思われる。食品由来寄生虫症の危険性について日々説いておられる諸先生方におい ても実際に見たことのある人は少ないだろう。 管内のと畜場でもっとも多く見られる寄生虫は豚回虫である(図1)。農場によっ ては搬入されたロット全ての肝臓が回虫によるミルクスポットで廃棄されることも ある(図2)。その他、豚鞭虫(図3)や豚肺虫(図4)などが見られる。牛の肝蛭 は激減しているが、稀に遭遇するとテンションが上がる(図5)。また、牛の心筋に かなりの感染率で検出される住肉胞子虫のシスト(図6)などを、と畜時の検査風景 を交えつつカラースライドを中心に紹介していきたい。海外に出かけることなく身近 に存在するこの寄生虫フィールドをもっと活用していただければと願うものである。 図1 図2 図4 図3 図5 21 図6 M-4 トリコモナス類 ○所 正治 金沢大・院医・寄生虫感染症制御学 寄生虫まん延地域であるインドネシアでのフィールドワークの際にブラストシスチ スを培養していて腸トリコモナスが検出されることに気づいてから、少しずつトリコ モナス類を収集している。宿主は、ヒト、ウシ、ヤギ、イヌ、齧歯類、ブタなど様々 であり、遺伝子解析で同定した種名は、Pentatrichomonas hominis、Hypotrichomonas acosta、Simplicimonas similis、Tetratrichomonas sp.、Trichomitus batrachorum など。培 養には田辺・千葉培地の液層をベースに 5-10%の LB 液体培地を加えた培地を用い、 すでに最長で 3 年経過した株もある。 ヒトと密接に暮らす様々なほ乳類にこれほど多様なトリコモナス類が分布していて、 本当にヒトに感染するのは P. hominis だけなのか、また、P. hominis はヒト以外の多く のほ乳類からも検出されているが異なる遺伝子型ではないのかなど、主に分子分類に もとづく興味で解析してきたが、今回のムシ自慢を機会に形態的にこれらの種を見て みようと思いついた。 非病原性原虫の例に漏れず、トリコモナス類においてもその分子分類は混乱の極みで あり、リファレンスの同定情報が果たして正しいのかどうかも不明なため、分子系統 樹を作成すると様々な種が異なるクラスターにばらばらに位置する(図1)。今後、 形態学的な詳細解析による種同定と遺伝子情報の組み合わせを洗い直し、正しい分子 分類を確立していく必要のある原虫と考えている。 図1.18S ribosomal RNA 遺伝子の部分配列を用いた系統樹(N-J tree) 22 M-5 私のムシ自慢 −寄生虫症診療の経験から− ○中村(内山)ふくみ 奈良医大・病原体・感染防御 私の寄生虫症との関わりは、宮崎医大での寄生虫症免疫診断から始まり、都立墨東病 院での臨床経験、そして奈良医大へとつながっている。今は寄生虫症をきちんと診療 できる医師を育成することが目標のひとつであり、私の診療経験を伝えるべく奈良医 大の学生や研修医への講義と研究会等の講演依頼があれば積極的に引き受ける様に 務めている。寄生虫学会で寄生虫症について語るのは自慢にならないように思えるが、 患者さんの診断・治療に携わって出て来た疑問点(clinical question)を2つ提示する ので、病態解明に結びつくアイデアをいただけたらと考えている。 有鉤条虫症から自家感染により播種性有鉤囊虫症を合併した1例(Kobayashi K et al. Am J Trop Med Hyg 89, 2013.) 治療経験がある人は少ないだろうという純粋な自慢症例。有鉤条虫キャリアが自家感 染により囊虫の播種性病変を合併したと考えられるが、自家感染の様式は本当に external autoinfection (fecal-oral route)なのか?internal autoinfection (regurgitation of gravid proglottids into the stomach)だとすればそれを確かめる方法は? アーテメタ・ルメファントリンによる重症熱帯熱マラリア治療後に遅発性溶血性貧血 を認めた 1 例 自験例は日本で 3 例目だが、先に報告された 2 例はアーテスネート静注薬を用いて治 療した点が強調されており、遅発性溶血性貧血にはあまり注目されていない。ところ が最近、アーテミシニン誘導体によって重症熱帯熱マラリアを治療し、マラリアの治 療は奏功したものの遅発性に溶血性貧血を起こす症例の報告がヨーロッパから相次 いでいる。症例の経過からはアーテミシニン誘導体が貧血に関与している可能性が高 いが、半減期が短いことで知られているアーテミシニン誘導体が遅発性貧血を起こす 機序は? 23 M-6 虫のなかのムシのお話: Genetic modification (GM) ハマダラカの唾液腺内のマラリア原虫の動態の in vivo イメージング ○吉田栄人 金沢大学・薬・ワクチン免疫科学 マラリア原虫はヒトと蚊の体内間を行き来する非常に複雑な生活環をもっており、今 なお、寄生メカニズムおよび分子基盤には多くの事柄が解明されていない。特に、蚊 唾液腺はマラリア原虫(スポロゾイト期)が集積する重要な器官であり、吸血により 唾液とともにスポロゾイトが宿主へ侵入するいわば蚊のステージ内の最終居住地で あるが、その侵入メカニズムや動態についてはブラックボックスに包まれている。 我々は世界に先駆けて、ハマダラカ唾液腺特異的に機能するプロモーターを同定し 1、 このプロモーターを用いて唾液腺特異的に外来遺伝子を発現することに成功した 1-4。 スポロゾイトと関わりの深い唾液腺に外来遺伝子を発現する系を開発できたことは、 ハマダラカーマラリア原虫の寄生適応のメカニズムを解明する重要な技術となる。本 学会では、高度な遺伝子操作技術を用いて作製したトランスジェニック蚊と組換え GFP マラリア原虫による in vivo イメージングシステムを駆使したマラリア原虫の唾 液腺での動態を発表する。 1. Yoshida, S. & Watanabe, H. Robust salivary gland-specific transgene expression in Anopheles stephensi mosquito. Insect Mol Biol 15, 403-410 (2006). 2. Yamamoto, D.S., Nagumo, H. & Yoshida, S. Flying vaccinator; a transgenic mosquito delivers a Leishmania vaccine via blood feeding. Insect Mol Biol 19, 391-398 (2010). 3. Yamamoto, D.S., Sumitani, M., Nagumo, H., Yoshida, S. & Matsuoka, H. Induction of antisporozoite antibodies by biting of transgenic Anopheles stephensi delivering malarial antigen via blood feeding. Insect Mol Biol 21, 223-233 (2012). 4. Sumitani, M., et al. Reduction of malaria transmission by transgenic mosquitoes expressing an antisporozoite antibody in their salivary glands. Insect Mol Biol 22, 41-51 (2013). 24 優秀研究賞候補演題 25 1-1 爬虫類由来ブラストシスチス株の性状と遺伝的多様性について ○小山由紀子 1、孫 嬌 2、高見一利 3、佐野祐介 3、吉川尚男 1,2 1 奈良女子大学大学院・人間文化研究科・生物科学専攻、2 奈良女子大学・理学部・生 物、3 大阪市天王寺動植物園 ブラストシスチスはヒトをはじめとする様々な動物の消化管内に寄生している嫌気 的な原生動物の一種である。最初にヒトから発見されたが、その後さまざまな哺乳 類だけでなく、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫類などから分離されている。形態的に 異なるいくつかの型があるが、シスト型を除く他の型の形態が多様性を示すことか ら、形態的に分離株間を区別することはできない。一方、分離株間には著しい遺伝 的多型が見られている。特に遺伝的多型は、多数の株が分離されている哺乳類と鳥 類由来株で顕著であるが、それ以外の爬虫類や両生類由来株は分離株数が少なく、 遺伝的多型については十分に解析されていない。そこで、今回、天王寺動物園の協 力の下、爬虫類の様々な種からブラストシスチス株分離を試み、多数の種類の爬虫 類から株を分離することができた。 最初に報告された爬虫類からの分離株は、シンガポール動物園で飼育されていた爬虫 類から分離されたもので、25℃前後で培養維持されており、実験的に 37℃で培養し たところ、ほとんどの分離株が死滅したと報告されている。これ以外の分離株につい ては GenBank に登録されているだけで、培養状態などの記載はない。 一方、私たちが爬虫類株から分離した株の一部を 37℃で培養しても死滅する株は見 られなかった。従って今回分離した株の多くはシンガポールで分離された爬虫類由来 株とは異なると考えられる。 次に、哺乳類と鳥類由来のブラストシスチスの分類基準であるサブタイプ分類との異 同を確かめるために、小亜粒子リボソーム RNA (SSU rRNA) 遺伝子を使った制限酵 素切断断片長多型 (RFLP)解析による簡易遺伝子型分類を試みた。天王寺動物園のカ メから分離できた 33 株から 1.1Kbp の SSU rRNA 遺伝子を PCR 増幅したところ、25 株から増幅バンドが確認できた。その中にはバンドサイズの大きい株が 1 株あった。 この中の 19 株について Spe I 酵素処理を行ったところ、二種類のバンドパターンを示 し、サプタイプ 1, 2 のグループを示したのは 3 株、残りの 16 株は、新規のバンドパ ターンを示した。これらの結果は、今回分離した爬虫類由来のブラストシスチス株の 多くが、従来のサブタイプとは異なる事を示している。 次に、分子系統解析のために SSU rRNA 遺伝子の全長配列の解読を試みた。その結果、 ホシガメ、スッポンモドキ、チュウゴクオオアタマガメの 3 種類の配列を解読するこ とができた。塩基配列をブラストサーチした結果、スッポンモドキとチュウゴクオオ アタマガメ由来株はシンガポールで発見されたアミメニシキヘビと近似していた。さ らにこの分離株は 37℃でも死滅しなかったことから、塩基配列は近似しているが、 性状は異なると想定された。一方、ホシガメ由来株はチェコで報告されているホウシ 26 ャガメと近似していた。現在、他の分離株の SSU rRNA 遺伝子の全長配列の解読を進 めており、それらの配列と他の爬虫類由来株とともに分子系統解析した結果について 報告する。 27 1-2 日本とインドネシアのげっ歯類由来のブラストシスチス株の遺伝的多様性 ○勝間田真愛 1、吉川尚男 1、所 正治 2 1 奈良女子大・院・生物、2 金沢大・医・寄生虫 ブラストシスチスは、動物の腸管内に寄生する原生動物で世界中に分布しており、ヒ トを含むさまざまな哺乳類や鳥類、さらに爬虫類、両生類、昆虫類と幅広い動物から 分離されている。ブラストシスチスの遺伝的多様性に関しては、小サブユニットリボ ソーム RNA(SSUrRNA)遺伝子で最も解析が進められている。多数の種類の哺乳類・ 鳥類から分離されたブラストシスチス株について最も解析が進んでおり、ヒトから分 離された株は、分子系統的に異なる 9 つのクレードに分かれることから、ヒトを含む 哺乳類・鳥類由来株は各クレードに相当するサブタイプ 1~9 の遺伝子型に分類され ている。 げっ歯類由来のブラストシスチス株について、GenBank に登録されているのは 8 株あ り、全てサブタイプ 4 に分類され、それらの株は日本、アメリカ、シンガポール、フ ランスと、世界中から分離されている。それ以外のサブタイプでは、異なる動物種か ら同じサブタイプの株が検出されるだけでなく、同じ動物種由来の株間でも多様な遺 伝子型が見られている。これに反して、サブタイプ 4 の株は、最初モルモットから 検出され、それ以降、異なる地域で様々なげっ歯類からブラストシスチス株が分離さ れたが、現在のところ、全て同じサブタイプ 4 に分類されており、同じサブタイプは ヒトからのみ分離されている。このげっ歯類由来ブラストシスチス株の宿主特異性と 遺伝的多様性を明らかにするために、より多くの分離株を解析する必要があると考え、 日本とインドネシアでげっ歯類からブラストシスチス株を分離し、その株の系統解析 を行った。 2009~2012 年のインドネシアのスンバ島での調査で捕獲された野生のネズミ、さら に 2012 年に日本の西宮市環境衛生局と天王寺動物園で捕獲されたドブネズミの糞便 を培養し、野生のげっ歯類からブラストシスチスの分離を試みた。その結果、日本で 捕獲された個体から 16 株、インドネシアで捕獲された個体から 12 株のブラストシス チスが分離でき、ゲノム DNA を得ることができた。このゲノム DNA は、特異プラ イマーを用いた PCR で増幅し精製して、クローニング、シークエンスを行い、得ら れた塩基配列を系統解析し系統樹を作成した。系統解析に使用したブラストシスチス 株は、GenBank に登録されているサブタイプ 4 の株、新しく日本とインドネシアで分 離したげっ歯類由来株、また、新しく配列を得たインドネシアのげっ歯類由来株の中 にサブタイプ 5 と配列相同性の高い株があったため、サブタイプ 5 のヒト、ブタ、ウ シ由来株をそれぞれ 1 株ずつ用いた。 系統樹は、サブタイプ 4 の大きなクレード、サブタイプ 5 のクレードに大きく分かれ た。しかし、インドネシアのげっ歯類由来の RI09-05 株 1 株のみが、サブタイプ 4 に 近いがサブタイプ 4 の大きなクレードとは別のクレードに位置した。また、別のイン 28 ドネシアのげっ歯類由来の RI09-52 株はサブタイプ 5 のクレードに位置し、インドネ シアのげっ歯類由来株は遺伝的に多様性が見られた。一方、日本のげっ歯類由来株は すべて、サブタイプ 4 の大きなクレード内に位置した。今回、サブタイプ 5 のクレー ド内に位置するげっ歯類由来株が見つかったことから、必ずしもげっ歯類はサブタイ プ 4 という宿主特異性とは限らない可能性がある。新しく分離したブラストシスチス 株の系統解析がまだ全て終わっていないので、今後残りの株の系統解析を行い、げっ 歯類由来ブラストシスチス株の宿主特異性と遺伝的多様性を検討し、さらにブラスト シスチスを分離した地域差などが関係しているのかも合わせて検討する。 29 2-1 山口県産ツチガエル Rana rugosa から分離した Trypanosoma tsunezomiyatai の 特徴づけ ○迫田菜摘、Binh Thi Tran、佐藤 山口大・獣医寄生虫 宏 両生類を宿主とするトリパノソーマは、形態学的多形性に富むとされ、種同定が難 しい。同一個体から採取した血液に見られるトリパノソーマであっても、単一種なの か複数種なのか、検査に当たって当惑することもしばしばである。宮田彬の一連の詳 細な形態学的観察によって、アジア産の両生類から多くの種が記載されているが、遺 伝子確認がないために、世界的な認知に至っていない。今回、2013 年7月に山口大 学構内で採集したツチガエル(Rana rugosa)に、波動膜を欠く小円形のトリパノソーマ 種 Trypanosoma tsunezomiyatai Miyata, 1978 を確認し、その遺伝子解析を通して、形態 学的に記載された本種の独立性について検討した。 山口大学構内で採集したツチガエル 10 匹の血液および肝臓を材料に、ギムザ染色 標本の作製、BSK 培地による培養、DNA の抽出を行った。ギムザ染色標本は血液薄 層 塗 抹 と 肝スタン プ 標本より作製した 。 培地には Barbour-Stoenner-Kelly (BSK) medium の改良版を使用し、BSK medium 0.5ml に対し、血液を 30µl もしくは肝臓の 切片を投入して 32˚C で培養した。DNA 抽出は血液、肝臓、上記の培養した BSK 培 地 の 虫 体 を 材 料 に 、 IllustraTM blood genomicPrep Mini Spin Kit (GE Healthcare, Buckinghamshire. UK) を用いて行った。抽出した DNA はトリパノソーマ 18S rDNA の 高変異域をターゲットとする nested PCR と、gGAPDH 遺伝子の増幅を目的とした nested PCR にかけ、アガロースゲルでの電気泳動でバンドがみられたものに関して はシークエンスを行った。 ギムザ染色標本において、10 匹中 2 匹の血液塗抹標本から、また、10 匹中 4 匹の 肝スタンプ標本からトリパノソーマが検出された。これらの形態はほぼ一定でおよそ 30µm の円形で、核も一様に丸く、波動膜を欠いていた。培地においては、培養 5 日 目に肝臓を用いた培地のうち 5 つで増殖型のトリパノソーマが確認できた。PCR で は、10 匹中 2 匹の血液、4 匹の肝臓、7 匹の培養液で増幅産物が得られ、これらにつ いて分子系統解析を行った。 ギムザ染色標本における形態学的特徴は Miyata (1978)が長崎市産ツチガエルとヌ マガエル、石垣島産ヌマガエルから種記載した T. tsunezomiyatai とよく一致した。 rDNA ならびに gGAPDH の塩基配列確認では、形態学的類似性が高いが大型(約 40µm の円形)の T. chattoni を含め、これまでに遺伝学的に確認されている両生類寄生トリ パノソーマ種とは明確に区別された。これまで、T. chattoni との種鑑別が行われてこ なかった T. tsunezomiyatai であるが、今後は、本種は独立種として正当に扱われるこ とが必要である。 30 2-2 Effect of Thunbergia cholangiocarcinoma laurifolia on experimental opisthorchiasis and ○Wonkchalee N1,2, Wu Z1, Boonmars T2,3, Nagano I1, Maekawa Y1, Pairojkul C4, Chamgramol Y4, Waraasawapati S4, Aromdee C5 1 Dept of Parasitol., Gifu Univ., 2 Dept. of Parasitol.,3 Liver Fluke & Cholangiocarcinoma Research Center, 4Dept. of Pathol., Fac. of Med., 5Fac. of Pharm. Sci., Khon Kaen Univ., Thailand Abstracts It well known that liver fluke, Opisthorchis viverrini (OV), is a health problem in northeastern part of Thailand. This parasite has been reported that it correlated to the cholongiocarcinoma (CCA) development. Treatment of OV infection is very easy by efficacy drug, praziquantel but treatment of CCA is remained a problem. Therefore, prevention of CCA development by reducing liver pathology from OV infection is one of choices that may be effective. Thunbergia laurifolia is a medical plant that has antioxidant anti-inflammatory and anti-cancer activities. Therefore, the aim of study was to investigate the effect of T. laurifolia on opisthorchiasis and CCA through pathological changes, liver function tests for alanine transaminase (ALT) and alkaline phosphatase (ALP) and kidney function tests for blood urea nitrogen (BUN) and creatinine in animal model. The results showed T. laurifolia reduced the inflammatory cells surrounding hepatic blie ducts in OV group and reduced bile duct proliferation in CCA model compared to untreated group which correlated to the ALT level, Moreover, after treatment with praziquantel, the T. laurifolia treated group was trend to reduce inflammation and decrease serum ALT with time manner. Blood urea nitrogen and creatinine of T. laurifolia treated group were in normal level which suggests no toxic effect from this plant. This study suggests that T. laurifolia pathological changes in OV infection and CCA model which may be useful for prevention of CCA development. . 31 3-1 糞便検体からの DNA 精製効率改善を目指した試み ○荒山駿介 1、吉川尚男 2、所 正治 1 1 金沢大・院医・寄生虫感染症制御学、2 奈良女子大・理学部・生物科学科 【背景•目的】寄生虫検査では顕微鏡等を用いた形態学的検査が標準として実施され てきたが、近年は PCR をはじめとする分子生物学的検査が幅広く活用されている。 遺伝子解析の手法は鏡検と比較すると感度が高く、技量の違いによる結果のバラツキ も少ない上に、増幅産物をシークエンス解析することで詳細な種同定が可能だが、一 方で、コンタミネーションの危険性や種々のサンプル状況に伴う DNA 精製効率の低 下、また非特異 DNA の増幅などの問題があり、プロトコルの最適化や注意深い精度 管理が必須である。そこで本研究では、サンプルからの DNA 精製プロトコルについ て、操作が簡便な比較的安価なキットで精製効率を改善するトライアルを実施した。 【材料•方法】寄生虫まん延地域であるインドネシアにおいて採取されたヒト児童糞 便検体を材料とし、価格・原理の異なる 2 種類の DNA 精製キットを使用し、精製効 率の比較と添加物等を用いた精製効率の改善を評価した。具体的には、1 検体あたり 約 640 円と高価なカラム精製ベースの ZR Fecal DNA Kit(ZYMO RESEARCH)及び 1 検体あたり約 100 円のエタノール沈殿ベースの DNAzol®(Molecular Research Center, Inc.)を使用し、PCR では Entamoeba 属と Giardia intestinalis をターゲットとした評価 を実施した。 【結果】ZR キットでは、価格相応の高い DNA 精製効率が得られたが、DNAzol を使 用した場合でも、凍結融解の追加や protease K/RNase 処理、さらに共沈剤(Linear polyacrylamide)の添加を標準プロトコルに追加することで DNA 精製効率を改善する ことができた。その精製効率は、これらの追加プロトコルの同時使用により ZR キッ トに迫るレベルにまで達した。 【考察】比較的低価格な DNA 精製キットにおいても、様々な工夫によりその効率は 十分に改善可能である。分子疫学的解析では多数検体の PCR スクリーニングが欠か せず、したがって、ランニングコストの低減はプロジェクトにおける解析可能サンプ ル数と直結する重要な課題である。また PCR 検出による評価では、サンプルからの DNA 精製効率と PCR の感度が最終結果である陽性率に直結するため、このような精製 効率と PCR の感度に関するデータは論文に詳細に記載される必要がある。異なる研究 グループにおける分子疫学的データの相互比較を可能とするためにも、この点にはよ り注意が払われるべきである。 32 3-2 究 疫制御因子発現型バキュロウイルスベクターによるマラリアワクチンの開発研 ○中谷大樹、伊従光洋、吉田栄人 金沢大学・薬・創薬科学類・ワクチン免疫科学研究室 バキュロウイルスは昆虫を宿主とする2本鎖DNAウイルスであり、種々の哺乳細胞 へ遺伝子導入が可能な非感染性ウイルスベクターとして有望視されている。我々は本 ウイルスをもとに Baculovirus Triple Expression System(BDES)という新型マラリアワ クチンを開発した。本システムを用いヒト熱帯熱マラリアのスポロゾイト抗原 PfCSP を標的としたマラリアワクチンを作製し、遺伝子組換え原虫を用いたネズミマラリア モデルで感染防御効果を評価したところ、PBS 対照群と比較し有意な感染防御効果が 示された。本研究では、上記のワクチンベクターに新規免疫制御因子を搭載させた新 型ワクチンプラットフォーム (D3-BTES)を開発した。従来型ワクチンに比較した D3-BTES ワクチンの液性免疫応答、ならびにマウスモデルでの感染防御効果を解明 することを研究目的とした。 抗 原 タ ン パ ク PfCSP と VSV-G TM 領 域 を 融 合 し て 発 現 量 を 増 強 さ せ た AcNPV-D-PfCSP- G ワクチンを作製し、さらに免疫制御因子の遺伝子を挿入した D3-BTES ワクチンを作製した。免疫・感染実験は PBS 接種群を対照群とし、 AcNPV-D-PfCSP-G ならびに D3-BTES を BALB/c マウスに筋肉内接種し、液性免疫 応答とマラリア感染防御効果を評価した。液性免疫応答を調べた結果、抗 PfCSP 抗 体価は AcNPV-D-PfCSP-G 免疫群に比較し、D3-BTES 免疫群で若干の液性免疫応答の 増強効果があることが分かった。ウイルス表面タンパクに対する免疫応答を調べたと ころ、D3-BTES 免疫群における抗バキュロウイルス抗体価は AcNPV-D-PfCSP-G に比 較し有意に抑制された。PfCSP-Tc/Pb 感染蚊を用いたチャレンジ感染実験の結果、い ずれのワクチン群も PBS 対照群に比較し有意な感染防御効果が認められた。抗体価 と防御効果の相関を調べたところ、D3-BTES 免疫群では完全感染防御効果と抗体価 との間に有意な相関があることが明らかとなった。 ウイルスベクター自体に対する宿主免疫応答はワクチンのブースター効果を妨げ るが、 D3-BTES ワクチンはベクターに対する免疫応答を回避している可能性がある。 D3-BTES ワクチンの感染防御メカニズムを明らかにすることで、新たなマラリアワ クチンプラットフォームの開発へ進展しようと考えている。 33 4-1 兵庫県下の流行河川における Centrocestus armatus の感染動態 ○小松慎太郎、湊 神戸大・院・保健 宏美、中西由紀、宇賀昭二 Centrocestus armatus は異形吸虫科に属する腸管内寄生虫であり、カワニナを第 1 中 間宿主、カワムツなどの淡水魚を第 2 中間宿主、そしてヒトを含む鳥類やほ乳類を終 宿主とする小吸虫である。我々は本吸虫の流行地における感染動態を明らかにする目 的で、以下に示す 4 つの疫学調査を実施した。 ①カワニナの感染状況 カワニナの通年の感染率を、遊出法と粉砕法を用いて調査した。その結果、セルカリ アを遊出する貝は夏場には確認されたものの、冬季には認められなかった。しかし、 粉砕法を行ったところ、冬季においてもスポロシストやレジア陽性貝が確認されたこ とより、カワニナの感染率は年間を通して 10〜26%と、あまり変化は認められなか った。 ②セルカリオメトリー 我々は、河川水からセルカリアを回収・計測する装置を開発し、セルカリア数の季節 内変動および日内変動とその要因を検討した。河川水中のセルカリア数の季節的変化 を調べたところ、温度の高い夏場には多くのセルカリアが認められるものの、水温が 9℃以下となる冬場には全く認められず、カワニナの実験で得られた結果が再現され た。夏場の河川水 30 L 中のセルカリア数を 2 時間毎に 24 時間調べたところ、その数 は午前 8 時から上昇し始め午後 4 時にピークとなった後、以後漸次減少するという一 峰性のピークを示した。我々はこの変化が日の出や日の入り(照度変化)とも関係し ていたこと、さらには気温や水温の変化(温度変化)とほぼ類似していたことより、 光の多少あるいは温度がセルカリアの遊出に関係するのではないかと考え、実験室内 で数種の実験を検討したところ、明条件では暗条件の 7 倍のセルカリアが確認でき、 セルカリア数の日内変動には光が影響していることが明らかとなった。 ③カワムツの感染状況 本流行河川では 1 年を通じてほぼ 100%のカワムツが C. armatus の感染を受けていた。 これらカワムツの新たな感染発生状況を明らかにするために、流行河川で、非流行河 川から捕獲した陰性カワムツを飼育するといったセンチネルフィッシュの実験を行 った、その結果、新たな感染は 5 月下旬から始まり、1 日約 14 匹のセルカリアの感 染のあることが明らかとなった。センチネルフィッシュ開始後の 3 週間目には平均 210 個のメタセルカリアが観察された。このことより、第 2 中間宿主への感染は急激 に生ずるのではなく、緩やかにその感染強度を増していくことが明らかとなった。 ④終宿主の感染状況 本流行地での終宿主を確定すべく、周辺に生息する鳥類あるいは小動物を対象とした 調査を実施している。現在我々は、鳥類の糞便ならびに捕獲した小動物から得た糞便 34 から本吸虫の虫卵の検出を試みているので、本大会では得られた結果を報告する。 35 4-2 Centrocestus armatus の第 2 中間宿主魚への感染とその後の動態 ○中西由紀、小松慎太郎、湊 神戸大・院・保健 宏美、宇賀昭二 Centrocestus armatus は異形吸虫科に属する小吸虫であり、日本や韓国をはじめとする アジア諸国における分布が報告されている。過去には、演者らのフィールドである兵 庫県下の流行河川において第 1 中間宿主、第 2 中間宿主ともに極めて高率に本吸虫の 寄生を受けていることを明らかにしている。本吸虫に関しては、ヒトへの感染症例や 終宿主となりうる他の動物への感染率等の報告はなされているが、本吸虫の第 2 中間 宿主に対しての感染やその具体的な動態についてはほとんど検討されておらず、その 生態は必ずしも十分に知られているわけではない。そこで演者らは、本吸虫のセルカ リアの魚への感染動態を明らかにするため実験室内でカワムツに対する感染実験を 行い、セルカリアの吸着、侵入、およびその後の発育の観察を行った。あらかじめ設 定した実験室内での感染条件に従ってセルカリアの魚への吸着を観察したところ、曝 露 30 分後のピーク時にはおよそ 8 割が吸着したものの、残る 2 割のセルカリアは未 感染の状態で検出された。しかしこれらのセルカリアを繰り返してカワムツに曝露さ せた場合、2 時間後には全てのセルカリアが死滅した。この値は、カワムツと接触さ せない対照群のセルカリアの死亡率が 1%であったことより、魚の存在下においてセ ルカリアの生体内で何らかの acceleration が生じていることが示唆された。本吸虫の セルカリアの魚への侵入部位はエラであり、ウロコやヒレに吸着・侵入するセルカリ アはほとんど認められなかった。カワムツ体内に侵入した幼虫は、早い場合には 20 分という短時間の間に標的臓器へ到達した。組織内でメタセルカリアが成熟するまで には少なくとも 3 週間の時間を要した。これらのメタセルカリアのカワムツ体内での 分布を調べた結果、感染は全身の各臓器で認められるものの、内臓や脳、および眼に きわめて高密度にメタセルカリアが分布していることが明らかとなった。メタセルカ リアの分布が全身にわたっていることから、他の吸虫と比較して本吸虫の第 2 中間宿 主体内での臓器特異性は低く、このことが Parasite manipulation を引き起こす原因の 一つになっていることが考えられる。ここで我々は、陰性カワムツに対して野生の陽 性カワムツでみられる感染数とほぼ同程度の感染を一度に起こした場合、カワムツに は致死的に作用することを見いだした。そこで、自然界においてはこれらの感染がカ ワムツにどのような割合で蓄積されていくかを陰性および陽性カワムツを用いて調 査した。方法は、カワムツに任意の濃度のセルカリアを曝露させ、一定の時間をおい た後に再感染させることを繰り返し、曝露後の脳に存在する未熟メタセルカリアをカ ウントするという方法で行った。その結果、セルカリア曝露の既往に関係なく新たな 感染が一定の値で増加しており、本吸虫のセルカリアのカワムツへの感染は frequency-dependent に蓄積されることが考えられた。このことから、流行河川におい てはセルカリア濃度が魚の致死量には達しない程度に低いことなどを理由として、第 36 2 中間宿主であるカワムツの生存が保たれ、本吸虫の生活環が成り立っているのでは ないかと考えられた。 37 4-3 Centrocestus armatus の感染が第 2 中間宿主魚の行動に及ぼす影響 ○湊 宏美、小松慎太郎、中西由紀、宇賀昭二 神戸大・院・保健 寄生虫は自らの生存を有利にするため、中間宿主の行動をコントロールする現象を有 することが知られている。この現象は Parasite manipulation と呼ばれ、いくつかの寄 生虫類で証明されているが、異形吸虫科の 1 種である Centrocestus armatus について の研究は十分に行われていない。そこで、我々は C. armatus による Parasite manipulation を明らかにすることを目的として、C. armatus の感染が第 2 中間宿主である淡水魚の カワムツの行動あるいは生理に及ぼす影響について生態学的な実験を行った。実験に は兵庫県下の流行河川から捕獲したカワムツを使用し、脳内のメタセルカリア数が 10 個以下のものをコントロール魚、20 個以上のものを陽性魚とした。これらのカワ ムツを用いて、群れの分散、水中の遊泳深度、体色、および刺激に対する反応時間の 4 つの指標についてグループ間の違いを比較した。群れの分散の実験の結果、陽性魚 は、コントロール魚と比較して個々が分散して遊泳する傾向が見られた。水中の遊泳 深度の実験では、陽性魚は周囲が暗い場合、水面近くを遊泳することが明らかとなっ た。体色に関する実験より、陽性魚は暗条件下での体色の調節機能が低下することが 明らかとなった。さらに刺激反応に関する実験からは、陽性魚は刺激に対する反応時 間が遅くなる傾向が認められ、これらの一部のデータを昨年の本支部大会において報 告した。陽性魚に見られたこれらの行動は、終宿主である鳥類に捕食されやすくなる 行動を示すものであり、C. armatus による Parasite manipulation の結果であると我々は 考えた。しかし指標のうちのあるものは、寄生虫感染に伴う衰弱によるものではない かという問題が生じた。そこで我々はコントロール魚と陽性魚の血糖値および Condition factor を測定し、カワムツの健康度を評価した。その結果、両項目において コントロール魚と陽性魚のグループ間で有意な差は認められなかった。さらに、これ らの変化が本吸虫の感染によって惹起されるのかどうかを明らかにするため、コント ロール魚に本吸虫を人工的に感染させ、感染前後の体色あるいは反応時間の変化を個 体ごとに比較した。その結果、体色の実験では、感染後のコントロール魚の体色は感 染前と比較して明るくなる傾向が確認され、反応時間の実験においては感染前と比較 して、反応時間の遅延が認められた。 以上の結果より、我々は C. armatus の感染がカワムツの行動変異を引き起こしている ことを明らかにした。さらにこれらの変化は、寄生虫感染による衰弱ではなく、魚の 生理的な変化に基づくものであることが強く示唆されたことより、C. armatus には Parasite manipulation という現象が存在するものと結論した。 38 一般演題 39 5-1 タカサゴキララマダニ刺咬後のアナフィラキシーを3回起こしたと考えられる 症例 ○大澤さおり 1、吉田幸雄 2、山田 稔 3 1 大澤医院、2 京府医大名誉教授、3 京府医大・院・感染病態学 今回、マダニに3回刺咬を受け、そのたびにアナフィラキシーショックを起こしたと 考えられる興味ある症例に遭遇したので報告する。患者は65歳女性。京都市在住。 職業は花屋。職住同一で自宅裏は山際で森林が広がるというやや特殊な環境に居住し ている。高血圧にて加療中であるが、花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患は有し ていない。変形性膝関節症にて他院通院中である。初回発作は2012年6月。6月 5日就寝中に右下腿を刺され、同部が著明に腫脹した。右下腿の腫脹が軽減した第7 病日の6月11日夕方に全身が痒くなり動悸がして一晩で2回意識消失し翌12日 来院した。顔面、首、四肢、体幹に発赤があり、蕁麻疹と考えた。意識消失の原因検 索のため、頸動脈エコーを施行したが明らかな狭窄やプラークを認めず血圧降下や SpO2 低下も認めなかった。その日の採血で白血球増多、好中球増多を認めた。抗アレ ルギー薬を内服処方したところ速やかに発疹は軽快し、その後意識消失は認めなかっ た。2回目発作は2012年7月8日である。夕方、長靴を履いていたところ、左下 腿後面を刺された。同日夜に左足の腫脹が出現。その後全身蕁麻疹が出現。頭まで搔 痒感著明となり、嘔気出現しトイレに行った後に意識消失し、気付いたら朝になって いた。刺咬4日後に当院を受診した際は左下腿に腫脹が目立つ以外は著変なかった。 3回目発作は2013年6月26日である。就寝中の午前5時頃虫に右背中を刺され、 痛みで目が覚め冷やしていたところ、20分後より全身蕁麻疹、吐き気、狭心痛、咽 頭閉塞感、呼吸困難を自覚し、その後数十分ほど意識消失した。意識が回復しても手 足と体幹の発疹が残存しており、来院した。来院時血圧 124/80mmHg、HR87/min、SpO2 99%、心電図上異常なく、意識清明でチアノーゼや喘鳴は認めなかった。四肢体幹に 地図状の紅斑を認め左背部に虫刺の痕跡を認めた。アナフィラキシー症状と考え血管 確保にて経過観察したがバイタルサインの憎悪は認めなかった。翌日、就寝時に装着 していた腹巻から 3mm 大の虫を発見し持参した。虫体を観察したところタカサゴキ ララマダニの若虫と同定された。採血にて白血球 13,400/ ℓ と増多、CRP 0.04mg/dl、 IgE 412IU/ml と軽度高値、特異的 IgE はヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、アシ ナガバチなどに高値を認めた。翌日には発疹は軽快し、再意識消失も無かった。虫刺 によるアナフィラキシーと考え、エピペン○R を処方の上携帯を指示した。今回の症例 は以前の病歴にて虫刺後の失神のエピソードが2回認められ、マダニ刺咬後にアナフ ィラキシーを複数回起こした稀な症例と考えられた。 40 左背部マダニ刺咬部 の紅斑 タカサゴキララマダニ 若虫 背面 41 タカサゴキララマダニ 若虫 腹面 5-2 ダブルバルーン小腸内視鏡により発見された Bolbosoma 属鉤頭虫症の一例 ○山本修司 1、山田 稔 2、松村和宜 1 1 滋賀県立成人病センター・消化器内科、2 京都府立医科大学・感染病態学 症例は 37 歳男性。21 歳時より小腸型クローン病で加療されていた。下痢症状が増 悪傾向にあるため、ダブルバルーン小腸内視鏡にて精査を行ったところ、中部空腸に 乳白色の虫体を認めた。虫体は約 20mm 長で腸粘膜に頭部を刺入させた状態で付着し ていた(図 1)。強固に腸管へ刺入していたため難渋したが、生検鉗子で虫体を摘除し た。虫体の組織学的所見では体前部は球状をなし、その側部表面に並列する多数の棘 を認め、帯状に取り巻いていた。球部の中央には外面を厚い筋肉層に覆われた吻鞘が 認められた(図 2)。以上の所見から Bolbosoma 属鉤頭虫の幼若虫体と診断した。回腸 にクローン病による潰瘍病変を認め、虫体摘除後も下痢症状は改善しなかった。この ため鉤頭虫症による消化器症状はなく、偶然発見されたものと考えられた。患者は検 査 3 日前に刺身(種類不明)を摂取した既往があった。Bolbosoma 属鉤頭虫は海産哺乳 類を終宿主とし、オキアミなどの甲殻類を中間宿主、それらを捕食する魚介類を待機 宿主とする。待機宿主の生食を通してヒトに感染すると考えられている。Bolbosoma 属鉤頭虫症の報告は稀であり、若干の文献的考察を加えて報告する。 図1 図2 42 5-3 同一グループ内で発症した熱帯熱マラリアの 2 例 ○中村(内山)ふくみ 1,2、小川 拓 2、米川真輔 2、福盛達也 2、宇野健司 2、笠原 敬 2 、前田光一 2、浦手進吾 2、井上 剛 3、有川 翔 3、三笠桂一 2、王寺幸輝1、吉川正 英1 1 奈良医大・病原体・感染防御医学、2 奈良医大・感染症センター、3奈良医大・高度 救命救急センター 【症例1】78 歳女性【既往歴】右鎖骨骨折、メニエール病【マラリア予防内服薬】 なし【トラベラーズワクチン】黄熱ワクチンのみ【現病歴】2013 年 5 月 29 日〜6 月 10 日までケニアへ渡航した。5 月 30 日〜6 月 6 日はニャンザ州ボンド県西アセンボ 郡ランブク村に滞在し、その後、8 日までマサイマラ、ナイバシャ湖を経てナイロビ に入りケニアを出国した。帰国後 3 日目から転倒しやすくなり、徐々に会話がかみ合 わなくなった。17 日に 38℃台の発熱に気づかれて総合病院を受診した。受診時の意 識レベルは JCS II-10、 GCS E4V5M6、血圧 115/87 mmHg、脈拍 101/分、呼吸数 36/ 分、酸素飽和濃度 93%(室内気)で口腔内に点状出血、右の肋骨脊椎角叩打痛を認め た。血液検査では血小板減少、肝・腎機能障害があり、血液塗抹標本で熱帯熱マラリ ア原虫が検出された。当院へ転送される直前に血圧と酸素飽和濃度が低下し、昇圧剤 と酸素投与が開始された。 【転院時検査所見】WBC 6200, Hb 13.3, Plt 2.3x104, T-bil 1.5, AST 66, ALT 52, LDH 424, BUN 36, Cre 1.7, Glu 173、 マラリア原虫寄生率 8.2%。【転 院後経過】意識障害、循環不全、高原虫血症から重症熱帯熱マラリアと診断し、キニ ーネ点滴とアーテスネート座薬で治療を開始した。治療開始 2 日目には原虫寄生率が 1%以下となりクリンダマイシンに変更して治療を継続した。転院から 23 日目に退院 した。 【症例 2 】42 歳女性【既往歴】マラリア(2 回罹患、ケニアで治療) 【マラリア予防 内服薬】なし【トラベラーズワクチン】黄熱ワクチンのみ【現病歴】アフリカへの渡 航歴が複数回ある。症例 1 の患者と同旅程でケニアへ渡航し行動を共にした。6 月 19 日に 38℃台の発熱、ふらつき、脱力感が出現したため当院を受診した。 【入院時現症】 意識清明、身体所見では脾腫を認めた。【入院時検査所見】WBC 2800, Hb 12.7, Plt 11.2x104, T-bil 0.9, AST 58, ALT 39, LDH 320, BUN 9, Cre 0.78, Glu 105、 熱帯熱マラリ ア原虫寄生率 0.2%.【入院後経過】非重症熱帯熱マラリアと診断し、アトバコン・プ ログアニルで治療を開始した。すみやかに全身状態は改善したものの、原虫寄生率は 増加し、発熱が持続した。また 3 日目にアトバコン・プログアニルを内服直後に嘔吐 したため、メフロキンへ変更して治療を完遂した。入院 5 日目に解熱し、7日目に退 院した。 本症例は小学生 2 名を含む合計 8 名のグループでケニアに渡航し、そのうちの 2 名が 43 熱帯熱マラリアに罹患した事例である。症例1が当院に転院した際に家族から同行者 がいるとの情報を得ており、同行者に発熱などの症状が出たらすぐに当院を受診する よう伝えていた。その結果、症例 2 は早期に診断できたと考える。食中毒の事例だけ でなく、マラリアであっても患者と行動を共にした者の症状の有無を確認し、発症し た場合の対処について同行者へ説明・周知することが重要と考えられる。 本事例は速報記事として 2013 年 7 月 29 日に Web 版 IASR に掲載された。 (http://www.nih.go.jp/niid/ja/malaria-m/malaria-iasrs/3769-pr4023.html) 44 6-1 兵庫県のマダニに寄生するバベシア属原虫の調査 ○大森志保 1、河合敦子 1、末廣 優 1、西本あゆみ 1、長野基子 1、斎藤あつ子 1,2 1 兵庫医療大学薬学部微生物学分野、2 神戸大学大学院医学研究科原虫・寄生虫学分野 バベシア属原虫は、主に動物に感染するマダニ媒介性赤血球内寄生原虫で、ヒトに も感染する。健常人にヒトバベシア症を引き起こすのは、ネズミバベシア(Babesia microti)によるものが最も多く、米国北東部沿岸地域と中西部にかなり限局して症例 が報告されてきたが、近年、中国、台湾、日本でも散発例が報告されている。我国初 の症例は輸血後感染で、病原原虫の SSUrDNA 型は、合衆国流行地の合衆国型とは異 なる神戸型であった。私達の野ネズミの B. microti 感染疫学調査から、我国の野ネズ ミには、少なくとも4種類の SSUrDNA 型(神戸型、大津型(穂別型とも呼ばれる)、 長野型(大津亜型)、合衆国型)B. microti が寄生していることが示された。他グルー プの疫学調査結果も合わせると、①神戸型は兵庫県淡路島、青森県など限られた地域 の Apodemus 属の野ネズミに寄生している。②大津型は広く全国的に Apodemus 属、 Clethrionomys 属、Microtus 属の野ネズミおよび食虫目のジネズミやトガリネズミにも 寄生が認められる。③長野型は長野県のヤチネズミのみに寄生が確認されており、他 のネズミ種にはこれまで認められていない。④合衆国型は北海道にのみ分布し、 Apodemus 属と Clethrionomys 属の野ネズミに寄生が認められる。などの事実がこれま でに示されている。 さらに、私達は 2001 年から 2005 年にかけてマダニの調査を行い、 兵庫県神戸市(六甲山)、淡路島、北海道のヤマトマダニに大津型、長野県のヤマトマ ダニに長野型、北海道のシュルツェマダニに合衆国型の寄生を確認した。しかし、神 戸型はいずれのマダニからも見つかっていない。また、六甲山のヤマトマダニからは 4つの SSUrDNA 型とは若干異なる B. microti 様原虫も検出された。そこで、野ネズ ミ以外の野生動物にも、B. micoti 様原虫が寄生している可能性があることを念頭に、 2008 年から 2009 年には和歌山県において中型野生動物の調査を行った。B. micoti 様 原虫がアナグマ、アライグマから 、 B. gibsoni と思われる原虫がタヌキから、B. gibsoni(DQ184507)の SSUrDNA 塩基配列と 69 塩基異なる配列をもつ原虫がイノシシ からみつかった。また、北海道のアライグマに寄生が報告されている B. gibsoni や B. divergens に近い2つのタイプのバベシア属原虫に遺伝子レベルで非常に近縁の原虫 が、アライグマ、アナグマ、テン、ニホンイタチから検出されたことなどは第 81 回 日本寄生虫学会大会で報告している。 今回、私達は、西宮市環境局環境総括室環境衛生課河内優英らの研究協力を得るこ とが出来たので、再度、種々のバベシア属原虫の媒介マダニについての調査を開始し ている。これまでに、28 匹という少数のマダニの検討ではあるが、内2匹からバベ シア属原虫の寄生を確認したので今回報告する。平成 24 年 3 月〜7 月の間に、兵庫 県西宮市と淡路島で合計 28 匹のマダニ(ヤマトマダニ 10 匹、フタトゲチマダニ 14 匹、 キチマダニ 4 匹)が捕獲された。これらマダニの唾液腺から抽出した DNA を用いて、 45 ピロプラズマ目原虫 SSUrDNA 検出用 primers と B. microti SSUrDNA 検出用 primers で PCR を行ったところ、西宮のヤマトマダニ 1 匹からは両 primers を用いた PCR 反 応で陽性の結果が得られ、PCR 増幅産物の塩基配列を直接塩基配列決定法により解 析した。これまでに決定した SSUrDNA の部分塩基配列から、寄生していた原虫は、 B. microti 大津型と思われた。また、西宮のフタトゲチマダニと思われる 1 匹に検出 された原虫については、ピロプラズマ目原虫検出用 primers を用いた PCR 反応で陽性 の結果が得られ、これまでに決定した約 1100bp の SSUrDNA の部分塩基配列から、 B. hongkongensis と 100%一致することを確認した。B. hongkongensis は、2012 年に Samson S.Y.W.らによって、家ネコに寄生していることが初めて報告された原虫で、 分子系統学的解析から、前述の北海道のアライグマに認められた B. gibsoni や B. divergens に 近 い 2 つ の 内 1 つ の タ イ プ に 属 す る バ ベ シ ア 属 原 虫 B. sp.SAP#091(AB251609)に最も近縁であることが示されている。B. hongkongensis の媒 介マダニについてはこれまでに報告はなく、マダニから検出されたのは今回初めてで ある。 今回解析したわずか 10 匹のヤマトマダニ中 1 匹から B. microti 大津型が見つかった ことから、B. microti 大津型はかなり高率にヤマトマダニに寄生していると考えられ た。しかし、今回も神戸型の寄生は確認出来なかった。今後は、神戸型を媒介するマ ダニはヤマトマダニ以外である可能性も考慮して、さらに調査を続けていきたい。ま た、野ネズミ以外の他の野生動物に寄生するバベシア属原虫の媒介マダニついても今 後の調査によって明らかにしていきたいと考えている。 46 6-2 カンボジア Kratie 県においてメコン川より採取したメコン住血吸虫中間宿主 貝 Neotricula aperta のミトコンドリア DNA16 S 及び cox1 遺伝子を用いた集団遺伝学 的解析 ○吾妻 健 1、王 辰囡 1、桐木雅史 2、林 尚子 2、Muth Sinuon3、Chuor Char Meng3、 千種雄一 2 1 高知大・医・環境保健学、2 獨協医科大・熱帯病寄生虫病室、3 カンボジア保健省 カンボジアにおいて6つの村(Kampong Krabei、Srea Khoean、Char Thnaol、Kbal Chuor、Krakor、Kracheh)から Neotricula aperta を採取し、ミトコンドリア DNA の cox1 と 16 S の2つ遺伝子座の塩基配列を調べ、集団遺伝的解析を行った。 その結果、まず 16 S では 15 のハプロタイプがみられ、H1 は最も頻度が多く(合 計 19 個体)、Char Thnaol、Kbal Chuor、Kampong Krabei にみられた。次に頻度の高い ハプロタイプは H15(合計 17 個体)であり、Kbal Chuor、Kracheh、Srea Khoean、Krakor にみられた。NJ 系統樹解析の結果、16 S ではハプロタイプ H8、H9、H10、H11、H12、 H13、H14、H15 の8つのタイプは、ほとんどが γ-race と極めて近い塩基配列を示し、 一つのクラスターを形成した。一方、ハプロタイプ H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7 の7タイプは、これまで知られていた3つのどの race(α-race、β-race、γ-race)とも 異なる大きなクラスターを形成し、新しいタイプの race であることが分かった。 一方、 cox1 では 27 のハプロタイプが見つかり、最も高い頻度を持つハプロタイプ、 H1 は、15 個体あり、Char Thnaol、Kbal Chuor、Kampong Krabei、Krakor にみられた。 次に高い頻度をもつ H27 は、7個体であり、Kbal Chuor、Srea Khoean、Krakor にみ られた。 NJ 系統樹解析した結果、H11 ~ H27 の 17 ハプロタイプは、ほとんどが γ-race であるが、H1 ~ H9 の9のハプロタイプは、すべて新しいタイプの race であり、cox1 とほとんど同様の系統関係が確認された。 以上の結果、カンボジアのメコン川流域の Kratie 県に分布する Neotricula aperta は、 DNA の情報から、主に γ-race と新 race がほぼ同頻度存在する混合集団であることが 分かった。今後は、この新 race の分類学的地位と、この race のメコン住血吸虫感受 性について調べる予定である。 47 6-3 核/ミトコンドリア DNA をターゲットとした角膜炎分離アカントアメーバの遺 伝子型解析 ○所 正治 1、RAHMAN Md Moshiur1、及川陽三郎 2、小林 顕 3 1 金沢大・院医・寄生虫感染症制御学、2 金沢医科大・医動物学、3 金沢大・医・視覚 科学 眼科領域で注目されているアカントアメーバ角膜炎は、コンタクトレンズの普及およ び美容用途での使用の拡大に伴い報告件数が増加している原虫症である。原因原虫で あるアカントアメーバ Acanthamoeba spp.は自然環境中に幅広く生息する自由生活ア メーバであり、ヒトへは偶発的に感染するものと考えられている。本原虫の種内多型 は、核遺伝子の 18S small subunit ribosomal RNA(18S rRNA)遺伝子座に基づく分子分類 によって T1〜T15 のグループが知られており、またミトコンドリア遺伝子の 16S rRNA 遺伝子座による高解像度の解析により T4 遺伝子型内のサブタイプレベルの分 類もなされている。一方、日本国内に分布するアカントアメーバの遺伝子レベルでの 多型についての報告は限られ、その詳細は未だ明らかとなっていない。 本研究では、国内で角膜炎症例より分離培養されたアカントアメーバ 27 株を用い、 核およびミトコンドリア遺伝子の上記2遺伝子座をターゲットとした遺伝子型の詳 細解析を実施し、以下の知見を認めた。 1) 国内の臨床において検出されたアカントアメーバの遺伝子型は主に T4 であり、ま た T3、T5 がその他に認められた。これらの遺伝子型の特徴は海外で報告されてきた 臨床分離株と同様の傾向であり、日本独自の地域特異性は存在しなかった。 2) T4 におけるサブタイプレベルでの評価においては、臨床分離株の一部のサブタイ プへの集中が認められ、ヒトにおける角膜炎の原因として高リスクの遺伝子型の可能 性が示唆された。 3) 16S rRNA 遺伝子座の多型によって従来 a〜h の 8 タイプに分類されてきた T4 のサ ブタイプに、9 番目のグループ(タイプ i)を確認した。 4) 遺伝子レベルでヘテロ接合を示しながらミトコンドリア遺伝子レベルでホモ接合 を示す株を見いだした。この知見は、本原虫における核遺伝子のハイブリッド形成を 示唆しており、クローナルに分裂増殖する原虫における直接的な遺伝子交雑の痕跡は、 多型形成のベースとしても極めて重要な知見と考える。 核及びミトコンドリア DNA の同時解析は、アカントアメーバのような自由生活アメー バの種内多型解析において有用なツールであり、より詳細な分子分類を可能とする。 48 6-4 キハダマグロ筋肉寄生のクドア粘液胞子虫、Kudoa neothunni および Kudoa thunni の種内 rDNA 遺伝子変異について 李 迎春 1、都築秀明 2、Lea Jimenez3、大西貴弘 4、小西良子 4、○佐藤 宏 1 1 山口大・獣医寄生虫、2 愛知県食品衛検・食品監視・検査セ、3Davao Oriental State College of Sciences and Technology、4 国立医薬品食品衛研・衛生微生物 Kudoa neothunni は「ジェリーミート(筋肉融解現象)」の見られたキハダマグロから 種記載された粘液胞子虫である(Arai & Matsumoto, 1953)。生鮮魚介類に起因する食中 毒事例と関係して収集されたメジマグロから分離され、ジェリーミートの見られない Kudoa sp.は K. neothunni と同一の形態学的な特徴を有し、18S あるいは 28S rDNA 塩 基配列でも 99.9%および 99.0%と高い同一性を示した(Li et al., 2013)。今回、「ジェリ ーミート」の見られないキハダマグロ寄生の分離株について、その rDNA 塩基配列の 特徴づけを行った。材料は、2011 年 12 月および 2012 年 2 月にフィリピンミンダナ オ島の市場で収集したキハダマグロ寄生 11 分離株、2011 年 8 月および 2012 年 2 月 に愛知県内の市場で収集したキハダマグロ寄生 10 分離株で、ITS 領域を含めた 18S-28SrDNA の塩基配列を検討した。愛知県市場で収集した1例に部分的な「ジェ リーミート」が確認されたが、他の収集材料の寄生筋線維に変性・融解像はなかった。 食中毒事例と関連して収集されたメジマグロ3寄生株の rDNA 遺伝子配列は先に同 一宿主から記録したそれと同一であった。一方、解析が進んだキハダマグロ寄生 19 株の rDNA 遺伝子配列には2型が確認され、ジェリーミートのみられたキハダマグロ 由来 K. neothunni 型が 16 株、メジマグロ由来 K. neothunni 型が 3 株であり、部分的な ジェリーミート病巣の K. neothunni の rDNA 遺伝子型は後者であった。 また、愛知県内市場で 2009 年 2 月-2011 年 8 月に収集されたキハダマグロ筋肉に白 点を形成する Kudoa sp.5 分離株は、太平洋産ビンチョウマグロから種記載された Kudoa thunni Matsukane et al., 2011 と形態学的に同定された。18S rDNA 塩基配列では K.thunni との同一性は 98.7% (1,629 塩基長)、28S rDNA では 99.4-99.8% (625 塩基長) であった。今回検討したキハダマグロからの分離株間でも、28S rDNA では 98.4-99.7% の同一性で、変異が見られた。 各種マグロに寄生する Kudoa 種として、シュードシスト形成する6極嚢/殻片の Kudoa neothunni、筋線維間にシスト形成する4極嚢/殻片の K. thunni の 2 種がこれ までに知られているが、それぞれの種内での形態学的ならびに rDNA 塩基配列上の変 異を考慮する必要性があると考えられる。 49 7-1 経皮吸収型抗マラリア薬の開発研究 中村由香、片本 茜、佐藤 聡、檜垣和孝、綿矢有佑、○金 岡山大・薬・国際感染症制御学 惠淑 当研究室ではこれまでの新規抗マラリア薬の開発研究から見出した環状過酸化化 合物(N-89 及び N-251)を次世代の新規抗マラリア薬として臨床開発している。これ までの研究の結果、本化合物は生体内半減期が短く、肝初回通過効果が大きいことか ら、マラリア流行地で使用するためには剤型工夫が必要である。そこで、我々は肝初 回通過効果の回避が可能な投与経路である皮下投与及び経皮投与に着目し、抗マラリ ア薬の有効性を高める剤型の開発を行っている。 N-89 と N-251 の皮下投与製剤及び経皮吸収型製剤を作製した。抗マラリア効果は ネズミマラリア原虫 (P. berghei) 感染マウスを用いた 4-day suppressive test で評価し た。また、皮下及び経皮で単回投与した際の血漿中濃度推移を調べた。 4-day suppressive test の結果、皮下投与において両化合物で経口投与及び静脈内投 与よりも優れた抗マラリア効果を示すことがわかった(N-251 の経口投与時の ED50 値 が 15 mg/kg、皮下投与時の ED50 値が 7 mg/kg)。また、N-89 及び N-251 経皮吸収型製 剤は経皮投与においても優れた抗マラリア効果を示した。これら結果は、死亡症例の 9割が乳幼児であるマラリア流行地での重症マラリアの治療において、非侵襲性で乳 幼児への適用が容易であると考えている。現在、N-89 及び N-251 経皮吸収型製剤の 薬物体内動態解析を行っており、これら研究成果を含めて最新の研究知見も本大会で 報告する。 50 7-2 熱帯熱マラリア原虫のヘモグロビン輸送における寄生胞膜の動態 ○入子英幸 1、大槻 均 1、橘真由美 2、石野智子 2、鳥居本美 2、坪井敬文 3、福本宗 嗣1 1 鳥取大・医・医動物学、2 愛媛大・プロテオサイエンスセンター・寄生病原体学部門、 3 愛媛大・プロテオサイエンスセンター・マラリア研究部門 赤血球内に寄生したマラリア原虫は、発育・増殖に必要な栄養源としてヘモグロビ ンを利用する。このヘモグロビン代謝には、食胞内のマラリア原虫特有のプロテアー ゼ群やヘム重合化分子が関与し、その分子機構の解明はマラリア治療薬の開発に繋が ることから、生化学的な研究が盛んに行われてきた。しかし、マラリア原虫がヘモグ ロビンを食胞に輸送する仕組みについては、ほとんど明らかにされていない。 マラリア原虫は赤血球侵入時に寄生胞膜を形成するため、原虫細胞内へのヘモグロ ビンの取り込みには、寄生胞膜と原虫細胞膜を介した物質輸送の仕組みが必要となる。 そのためマラリア原虫は、この2つの膜を内側に陥入させたサイトストームと呼ばれ る構造から、ヘモグロビン輸送小胞を形成して、食胞へと輸送する。この輸送小胞は、 寄生胞膜と原虫細胞膜に由来した二重膜構造であるのに対し、マラリア原虫の食胞は 一重膜構造であるため、輸送小胞と食胞が融合する過程において、原虫細胞膜・寄生 胞膜由来の膜の一方が崩壊すると予想される。そこで本研究では、ヘモグロビン輸送 小胞を構成する寄生胞膜由来の膜が、食胞との融合過程においてどのような運命を辿 るのかを調べた。 これまでに我々は、熱帯熱マラリア原虫のリング期〜初期トロホゾイト期の寄生胞 膜に発現する ETRAMP4 (Early TRAnscribed Membrane Protein 4)が、サイトストームと ヘモグロビン輸送小胞の膜に移行することを見出した。そこで、ヘモグロビン輸送小 胞の寄生胞膜由来の膜の指標として抗 ETRAMP4 抗体を用いて、熱帯熱マラリア原虫 (3D7 株:リング期〜初期トロホゾイト期)のヘモグロビン輸送過程を詳細に解析し た。その結果、ヘモグロビン輸送小胞の寄生胞膜由来の膜は、食胞との融合過程で崩 壊することが明らかになった。また、食胞内部に抗 ETRAMP4 抗体に反応を示す膜の 残骸が確認されたことから、ヘモグロビン輸送小胞の寄生胞膜由来の膜は、食胞内部 で分解されることが明らかになった。 51 7-3 マラリア原虫赤血球侵入関連分子 EBL の C 末端のシステインは細胞内局在に とって重要である ○大槻 均 1、入子英幸 1、石野智子 2、金子 修 3、福本宗嗣 1、坪井敬文 4、鳥居本 美2 1 鳥取大・医・医動物学、2 愛媛大・プロテオサイエンスセンター・寄生病原体学部 門、3 長崎大・熱研・原虫学、4 愛媛大・プロテオサイエンスセンター・マラリア研 究部門 マラリア原虫メロゾイトは、先端部にある 3 種類の細胞内小器官から種々の侵入関 連分子を分泌し、赤血球表面の宿主レセプター分子や原虫由来分子間の相互作用を通 じて赤血球内に侵入する。これら侵入関連分子が正しく細胞内小器官に輸送される事 が重要と考えられるが、その詳細は未だ不明である。 我々は侵入関連分子の中でも、赤血球との密着接合形成に用いられる Erythrocyte Binding Like 分子(EBL)に着目し研究を行っている。これまで我々は、ネズミマラリア 原虫 Plasmodium yoelii の致死株(17XL)と非致死株(17X)の EBL を比較し、C 末 端側の領域 6 の 2 番目の Cys が 17XL 株では Arg に置換され、EBL の局在がマイクロ ネームからデンスグラニュールという全く異なる細胞内小器官へ変化している事を 見出した。両株のこの位置の Cys/Arg を置換した組換え原虫を作製して観察した結果、 細胞内小器官への局在は野生型原虫同様に変化し、この位置の Cys の重要性が示され た。また、組換え原虫をマウスに接種して寄生率を計測した所、Cys→Arg により上 昇し、Arg→Cys で低下した。この事から、領域6の 2 番目の Cys が原虫の病原性に も大きく影響している事が示された。 今回我々は、EBL 領域 6 内に細胞内輸送に重要な部位があると考え、領域6内の 8 つの Cys 全てをそれぞれ Ala に置換した組換え原虫を作製し、EBL の局在を観察し た。その結果、強毒株で変異していた 2 番目の Cys を含む 6 個の Cys を置換した組換 え原虫において、EBL の局在が変化した。しかし残りの2個の Cys については局在 の変化を認めなかった。この 2 つの Cys は熱帯熱マラリア原虫の EBL 領域 6 の X 線 結晶解析でジスルフィド結合していると報告されており、4 つのジスルフィド結合に より複雑な立体構造を持つ EBL 領域6の中でも、EBL の局在を決定するのに重要な 部位と重要性の低い部位がある事が示唆された。また、EBL の局在が変化した Cys 置換原虫と変化しなかった Cys 置換原虫をマウスに接種して原虫率を比較した所、 EBL の局在が変化しなかった原虫では原虫率は変化しなかった。 以上から、2 番目の Cys 以外の Cys も EBL の細胞内局在決定に重要な役割を果た しており、領域 6 全体の立体構造が重要である事が示唆された。 52 8-1 タイ国サコンナコン県の 6 小学校における消化管寄生虫症の疫学調査 ○土井龍一 1、Ahmed Ibrahim Youssef2、松本衣津美 2、Somchai Chakhatrakan3、 伊藤 誠 4、宇賀昭二 1,2 1 神戸大・院・医学、2 神戸大・院・保健、3Thammasat University, Thailand、4 愛知医 大・医・寄生虫学 演者らは、2013 年 5 月よりタイ国東北部サコンナコン県の 6 つの小学校の学童を 対象として、寄生虫症の疫学調査を実施している。サコンナコン県はバンコクから北 東約 500 ㎞に位置し、タイ国の少数民族であるプータイ族、ソー族、およびタイヨー 族が中心に居住している地域である。調査では 4~12 才の学童 352 名を対象(各学校 当たり 20~123 名)として糞便検査法による消化管寄生虫症の疫学調査を実施した。 糞便の採取に際しては、まず調査の目的と主旨を充分に説明し、協力を申し出た学童 のみに糞便容器と 22 項目から成るアンケート調査用紙を手渡した。回収した糞便や アンケート用紙は神戸大学に移送し、検査・解析に供した。糞便検査法にはホルマリ ン・エーテル法を用いた。調査の結果、101 名(29%)から 10 属 11 種の寄生虫が検 出された。その内訳は、線虫 4 種(Trichuris trichiura, Hookworm, Gongylonema sp., 未 同定線虫卵)、吸虫 2 種(Opisthorchis viverrini, Heterophyes heterophyes)、条虫 1 種 (Taenia sp.)、および原虫 4 種(Entamoeba spp., Giardia lamblia, 未同定原虫シスト) であった。調査した 6 校(A~F)の学校別の検出虫種と陽性率を見ると、A校:6 種、14%;B校:4 種、15%;C校:4 種、56%;D校:2 種、11%;E校:4 種、20%; およびF校:6 種、44%と学校による有病率の差が認められた。なかでもC校とF校 は他の 4 校と比較して有意に高い陽性率を有していた(χ2 検定:p<0.05)。得られ た寄生虫種のなかでも特記すべきことは、F校においてタイ肝吸虫と異型吸虫がそれ ぞれ 22%、20%と極めて高い割合で検出されたことである。現在これら原因魚類や 調理法については調査中である。一方アンケート調査からは、手洗い環境(98%)や トイレ環境(71%)は「よい」と答えているものの、75%の学童が時々あるいはいつ も外でトイレをする、37%がトイレの後に手を洗わないと回答しており、この地域の 衛生状況は必ずしも清潔に保たれておらず、高率な消化管寄生虫感染症が存在する背 景には、寄生虫感染症予防における衛生管理や保潔の必要性に対する認識力の低さが あることが推測された。さらに 94%の学童が家でイヌやネコなどのペットを飼育し ていると回答したことは、人獣共通感染症の立場からの調査も必要となることを示し ており、今後これを対象とした調査も計画している。 53 8-2 Antigen detection ELISA for surveillance of visceral leishmaniasis with urine samples Sharmina Deloer1, Sohel Mohammad Samad1, Chatanun Eamudomkarn1,2, Eisei Noiri3, 〇Makoto Itoh1 1 Dept. of Infection and Immunology, Aichi Medical Univ., Aichi, Nagakute, Japan, 2Dept. of Parasitology, Faculty of Medicine, Khon Kaen Univ., Khon Kaen, Thailand, 3Dept. of Hemodialysis & Apheresis, The Univ. of Tokyo Hospital, Tokyo, Japan Visceral leishmaniasis is endemic in many Bangladeshi areas, with the Mymensingh district representing over 50% of the cases. There is substantial underreporting. In 2007, the estimated number of active cases was 136,500. However, less than 5,000 cases were reported that same year. The estimated incidence of VL, according to recent studies, is 15.6/1,000 person-years in Fulbaria and 27/10,000 population in Godagari and Rajshahi (WHO). In 2005, a memorandum of understanding was signed between Bangladesh, India and Nepal to eliminate kala-azar or visceral leishmaniasis (VL) by 2015, aiming to reduce the incidence to less than one in 10,000 population. Active surveys of the disease which are essential to find out the endemic foci are needed and tools for the surveys critical. We developed an ELISA which detect anti-Leishmania antibodies in urine samples which are easily and safely collected with good compliance of the residents. It is sensitive but past and present infections cannot be distinguished. In this study, we optimized an ELISA, which was developed to detect L. donovani antigen in urine samples. Materials & Methods Urine samples were collected from 50 VL patients parasitologically confirmed by spleen biopsy, before and after treatment with sodium stibogluconate: weekly up to 4 weeks and 2 months after the treatment. Sandwich ELISA was used to detect Leishmania antigens in urine samples. IgG extracted from serum of a rabbit immunized with promastigote of L. donovani was coated to an ELISA plate. Two folds diluted urine samples were applied and incubated at 25C overnight. Then the trapped antigen was detected by the same IgG used for coating but biotin labeled. Avidin-peroxidase and ABTS substrate were finally used. Nested PCR with DNA extracted from 1ml of blood and KAtex latex agglutination kit to detect, which is a commercially available kit to detect Leishamnia antigens in urine, were also used. Results and Discussion Among the 50 patients, 45 (90%) and 41(82%) were positive with nested PCR and the ELISA, respectively. Examinations of other 250 paired blood and urine samples obtained after the treatment, showed 9 and 63 positives with nested PCR and the ELISA, respectively. Among 54 the 54 urine samples from the 54 nested PCR positives, 50 (93%) were ELISA positive. These results showed that the sensitive and specific antigen detection ELISA is useful to evaluate the treatments and to find the present infection. 55 8-3 アメーバ原虫の集シスト法の再検討 ○大西義博 大阪府大・院・獣医 アメーバ原虫の集シスト法としては、従来からホルマリンエーテル法(MGL 法)が 使用されている。しかしながら、MGL 法では、回収される沈渣がかなり多く、検査の 場合はかなりの時間がかかる。 また、DNA 抽出用の集シスト法としては、夾雑物を除去するためにショ糖液遠心浮 遊法が用いられている。 今回、シストの回収率を高めて、夾雑物の沈渣を少なくするために、MGL 法とショ 糖液遠心浮遊法について再検討を行った。 <材料と方法> 材料:ある動物園で飼育されているサル類の糞便を用いた(予備検査で大腸アメー バのシストが検出された)。この糞便をホルマリン固定保存し、適度に希釈して用い た。 方法: MGL 法とショ糖液遠心浮遊法を用いた。使用する液の成分や濃度について も比較検討した。試験管として、ポリスチレン製の遠沈管を用いた。 <結果と考察> 1)MGL 法に用いる液として、ホルマリン原液を純水で希釈したホルマリン水と、ホ ルマリン原液をリン酸緩衝生理食塩水で希釈したものとを比較したところ、前者の方 が後者よりもシストの回収率が高かった。この原因として、後者の比重が前者よりも やや高いからかもしれない。また、ポリスチレン製の遠沈管にシストや夾雑物が吸着 しやすいこともあげられると考えられた。 2)また、ホルマリン水に 0.05% tween 液を添加して使用すると、シストの回収率が 良くなった。 3)ショ糖液遠心浮遊法に使用するショ糖液の濃度を 10~55%(~比重 1.215)で比 較したところ、シストの回収率は約 2 %から 90 %以上に増加するものの、回収率は 100%にはならず沈渣からもシストが回収された。糞便中の夾雑物によって共沈したも のと考えられた。 4)さらに、ショ糖液遠心浮遊法では、使用するショ糖液に tween 液を添加すると、 シストの浮遊率が減少した。 <今後> シストの回収方法については、ホルマリン水に tween 液を加えて用いる方法と、最 適な濃度のショ糖液を用いた遠心浮遊法とを併用する方法をさらに検討することで、 より良い検出率の高い改良法ができるものと考えられた。 56 8-4 ヴェネズエラ糞線虫初期感染における抗体依存性排虫機構について ○松本真琴 1、安田好文 1、善本知広 2、中西憲司 3 1 兵庫医大・免疫学医動物学、2 兵庫医大・先端研・アレルギー、3 兵庫医大 ヴェネズエラ糞線虫(以下ヴェネと略する)の L3 幼虫を C57BL/6 マウスに感染さ せると約 12 日間で排除される。FcRγ鎖の欠損マウスでは感染期間が 20 日以上に遷 延することから、ヴェネの速やかな排虫には抗体依存性機構が必要であることが示唆 されていた。このメカニズムを解析するため、抗体のクラススイッチが起きない AID 欠損マウスを用い、先ず AID 欠損マウスにヴェネを感染させると感染期間が 20 日以 上に遷延することを確認した。感染マウスから血清を採取し AID 欠損マウスに投与 すると感染期間が 10 日間短縮された。IgG、IgE 両者が排虫活性を有し、IgG は低親 和性 IgG 受容体 FcγRIII を、IgE は高親和性 IgE 受容体 FcεRI をそれぞれ介して作 用していることが判明した。ところが、FcγRIII 欠損マウスあるいは FcεRI 欠損マ ウスは野生型マウスと同等のヴェネ排虫能力を有していた。このとき同時に IgE の中 和抗体を FcγRIII 欠損マウスに投与するとヴェネ排虫が遅延した。また、FcεRI 欠 損マウスに FcγRIII の阻害抗体を投与してもヴェネ排虫が遅延した。以上のデータ から IgG と IgE はヴェネ排虫に対して相補的に機能していることが証明された。また 感染血清は肥満細胞欠損マウスにおいて排虫を促進しないことから、IgG、IgE の標 的細胞は肥満細胞であることが示唆された。 最近、B 細胞欠損マウスにヴェネを感染させると感染期間が 100 日以上に遷延する という報告がなされた。現在、この報告の再現性がとれるかを確認しており、合わせ て考察したい。 57 9-1 害虫の暗視野データに対する動態計測手法 ○奥田泰丈 1、高橋 1 悟 1、新井明治 2 香川大・工・知能機械システム工学、2 香川大・医・国際医動物学 近年、動画像処理技術の発展により生物の行動計測に対して数多くの動画像処理技術 が用いられており、特に害虫や病原体を媒介する生物を対象とする研究に多く扱われ ている。例えば、夜間活発性の害虫を観測する場合には暗闇環境下において赤外線撮 影にて取得した動画像を用いることが多い。このとき、動画像データは赤外線撮影の 特性から不鮮明な映像となり対象生物を目視観測にて捕捉することは困難であり、さ らには生物の不規則な移動や類似した対象が複数存在する環境において、人為的な誤 認識が生じやすく、また計測に膨大な時間が必要となることが問題となる。 我々は、上述の課題を解決すべく新たな動画像処理手法を提案し、害虫の行動軌跡か ら行動計測を行うための手法を構築する。ここでは、試験環境に起因する配置物の影 響や照明変動に伴う画像輝度変動、さらには害虫の不規則な運動により検出・追跡が 困難となる場合がある。これらに対し、我々は照明変動にロバストな統計的リーチ特 徴法に基づく背景差分法により害虫を検出し、かつ対象判別法を適用することで類似 する害虫に対して個体識別を施した動態計測手法を構築した。 58 9-2 赤外分光イメージングによる寄生虫検出の試み ○石丸伊知郎 香川大・工・知能機械システム工学科 我々は、親指サイズの超小型赤外分光イメージング装置の研究を進めてきた。本分光 イメージング技術は、物体光間の空間的位相シフト干渉法による准共通光路型結像光 学系である。その為、各画素の分光データをワンショット(1 画像)の高時間分解能 で取得することが可能である。 従来の血液検査装置は、分子構造レベルで詳細に検査する DNA シーケンサーや、液 体セルの中は均質とみなして試薬などにより光学検査する装置の 2 種類であった。次 世代血液検査装置として、大半は正常な血液成分であり、一部にウィルスなどの異常 な微少物質が存在する血液の検査が必要となっている。そこで、超小型分光イメージ ングにより、各画素での分光データから高い空間解像度で異常点検出を行う血液検査 装置を開発している。 図 1 に示すように、空間的に疎な検査対象の非検査対象に対する体積比率を向上する。 まず、血液サンプルを単一細胞膜レベルの薄膜化したディスク状にして厚み方向の体 積比率を向上させる。また、提案手法が分光イメージング手法であり各画素での検査 が可能であることから、面内方向での体積比率も向上できる。面状にサンプルを広げ るが、超小型ヘッドをマルチ化して高速走査することにより検査時間を短縮する。本 発表では、マラリア感染赤血球の検出実験について述べる。 体積比の向上 感染赤血球 正常赤血球 厚さ方向:試料の薄膜化 面方向 :各画素での検出 超小型マルチヘッド 広範囲計測 超小型センサのマルチヘッド化 薄膜ディスクの回転検査 試薬レス検査 10μm 中赤外光の高感度検出 ディスク状の血液薄膜サンプル 空間的に疎な微少物質の高感度検出 図1 (例:感染赤血球の分光検出) 存在確率 0.01%程度のサブ µm の異常微小物体検出 59 9-3 静電型集積装置に誘引されたワクモの SEM-EDX 解析 ○國方希美 1、寺中正人 2、近藤哲也 3、原田正和 2、新井明治 2、松本由樹 1 1 香川大・農・家畜生体機構学、2 香川大・医・国際医動物学、3 近藤電子株式会社 家禽に寄生するワクモ(Dermanyssus gallinae)は、飼養環境の良否により異なる被害 がもたらされることから、 持続的な営農を保持するためには、ワクモ被害の低減や 駆除の適切なタイミングを把握しなければならない。我々は、帯電物に集塊を形成す るワクモの行動特性に注目し、閉鎖鶏舎内や暗環境下で利用できる害虫集積装置を開 発し応用研究を行ってきた。集積装置に誘引されるワクモの特徴の一つには、腹部に 励起光に反応する部位を有しており、蛍光顕微鏡下で観察できる点がある。本研究で は、これらの蛍光部に注目し、ワクモの微細構造と組成解析を試みた。 ワ ク モ 腹 部 の 蛍 光 部 は 、 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM) の 反 射 電 子 を 用 い た Cathodoluminescence 法(CL 法)で励起状態の確認と微細構造の観察を行った。さら に、蛍光顕微鏡下で蛍光の有無を確認後、SEM-エネルギー分散型 X 線分光法(EDX) で元素分布および組成分析を試みた。さらに、ガムクロラール系封入剤を用い光学顕 微鏡の観察、ワクモ断面構造と蛍光部の相異を確認した。 ワクモ腹部には、複数励起(488nm、594nm)に反応する蛍光物質を有していることが 明らかとなり、さらに、同部位は CL 法により得られた発光部と共局在することが示 された。SEM-EDX 分析結果では、蛍光部位の元素成分には、非蛍光部と比較して 硫黄とカリウムが多く含まれる可能性が示された。これらの結果から、短期間に集積 部に誘引されるワクモの腹部は、生体内の有機物が蛍光物質として発光している可能 性が示唆された。 帯電部に集積するワクモの性質について、本結果を手掛かりに解析を進めることは、 鶏舎におけるワクモ被害低減につながると期待できる。 電子顕微鏡観察像 蛍光顕微鏡観察像 60 9-4 イオン液体と SEM を用いたワクモの全周囲観察 ○寺中正人 1、國方希美 2、松本由樹 2、近藤哲也 3、原田正和 1、新井明治 1 1 香川大・医・国際医動物学、2 香川大・農・家畜生体機構学、3 近藤電子株式会社 ワクモ Dermanyssus gallinae は人畜共通の吸血性ダニであり、養鶏産業に最も大きな 被害を与える衛生動物である。香川大学では、農学部と医学部が連携してワクモ被害 軽減のための研究を行っている。ワクモは、農学部松本研究室と近藤電子が開発した 集積装置を用いて集めており、ワクモの生物的な特徴について調べることで、従来の 薬剤駆除と異なる駆除方法の開発を目指している。 この基礎研究の一環として、我々は日立ハイテク製卓上顕微鏡 Miniscope® TM3030 とイオン液体(常温溶融塩)を用いてワクモの全周囲の観察を行った。TM3030 は卓 上で用いることのできる電顕として開発され、サイズがコンパクトで、操作が極めて 簡便であり、試料の前処理にほとんど手間を要さない。またイオン液体は、資料の固 定と同時に表面電荷の軽減を行うことができるので蒸着を行う必要がない。この両者 を組み合わせて、同一個体を回転させながら撮影できる実験系を構築し、ワクモ個体 の全周囲からの観察を行った。 観察の準備段階において、イオン液体とオスミウム固定、アルコール固定との比較、 およびイオン液体の有無によるチャージの変化について調べたので、それらも併せて 発表する。 ワクモ(同一個体)の体軸に対する縦回転 61 本大会を開催するにあたって、ご協力いただきました皆様に、厚く御礼申し上げます。 広告掲載企業様一覧 株式会社香川サイエンス 株式会社大一器械 グラクソ・スミスクライン株式会社 塩野義製薬株式会社 四国医療器株式会社 高松帝酸株式会社 有限会社香川器械 62 63 64
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