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平成26年5月24日
地域医療講演会『食と病の関係の質問に対する回答』
外科 仲地厚
●血便について詳しく
回答:(大腸外科 仲地厚)
昨日まで何も問題なかったのに、今朝、排便の後に便器にポタポタと血が落ちているのに気付いた時は、誰でも心配になり
その日のうちにすぐに病院に行くでしょう。しかし、「血便」といってもさまざまで、量が少ない場合には便柱に薄く付着するだけ
だったり、排便後のトイレットペーパーに少量付いているだけで、気が付かずに長い期間が過ぎてしまっている事があります。も
し血便の原因が、がんであったとしたらその間に大きくなってしまいます。はやく病気を発見するには、排便のあるたびに便の
状態をしっかり確認し、あとの処置のペーパーもしっかり見て、わずかの赤さも見逃さない事です。これを毎回行うには、かな
りの根気と繊細さが必要ですし、目で見てわからなくても顕微鏡的にはごく少量の血液が含まれていることもあります。早く病
気を発見するのに確実でお勧めするのは健診を忘れずに受け、2 回法の便潜血検査を必ず行う事です。肉眼で確認できな
いほどの血便も便潜血検査で陽性と検出できます。
●体でコラーゲンはどういう栄養素から作られているのか
●コラーゲンを摂取しないとコラーゲンは作られないのか
●世の中はコラーゲンについて話題にしすぎではないですか。先生のご意見を。
回答:(大腸外科 仲地厚)
美容のためには化粧品などに含まれる「コラーゲン」が気になり、健康のためには飲食物の中の「コラーゲン」の含有量が気
になります。体内でコラーゲンは例えば腱などのような結合組織を丈夫に構成する働きをしており、それは強い力に耐える事
に役立っています。また皮膚の弾力性や強度を与える事に役立っています。口からコラーゲンを摂取する場合は、消化によ
ってアミノ酸のペプチドに分解されて体の構成成分になります。通常の食事にもコラーゲンは含まれますが肉スジや軟骨や
魚の皮にコラーゲンが多いとの調査結果もあります。コラーゲンの体への効果が認められるという報告と、摂取の効果は不明
瞭との報告がありますが、当然ながら摂取する食事のバランスが一番大切であり、サプリメントの摂取だけでは肌や関節に明
らかに良い効果は得られないと理解しておいた方がよいと思われます。
●食生活、運動を心がけているのですが便秘がよくなりません。なるべく薬に頼らずに排便したいのですが、どうすれば便秘
はなおりますか。
●便秘気味ででコロンコロンした便がでるのはなぜでしょうか。どうすれば改善できるのでしょうか。(丸いウンチはどのようにし
てできるの?)
回答:(大腸外科 仲地厚)
お腹が膨らみ、下腹部が重く、「たまっている感じ」が続くと、当然ながら体の調子もわるく、気分も不快になっていきます。た
まっている便を排便へと促す場合には、腸がうねるような動きである蠕動と、肛門の出口まで下りてきた便をしぼりだす下腹
部周りの筋肉による腹圧が重要な働きをします。それらの動きや働きのためには、「朝起きた後に水を一杯飲み、寝ていた
消化管を刺激し蠕動を促し、ある程度の時間、20分程度は便器に座り排便を待つ。お腹を時計の針の回る方向になぞる
事。」が推奨されます。これは多くある方法の代表的な方法の一つとなります。腸の蠕動を促す薬は、眠前に内服する事で 6
時間程度後の翌朝に効果がでます。また、ころころウンチについては、便の性状を排便時に硬い状態から柔らかい状態にし
ておく事が必要となりますので、摂取する水分を多めにするとか、柔らかすする目的の内服薬で調整する事がよいと思われ
ます。内服薬を開始し、自分にとって快調な排便状態と排便周期になれば徐々に内服薬を減らしやめる方法が確実な方法
だと思います。
●人間ドックの便検体の保管方法で「冷暗所」とあるが、トイレの隅の日光の当たらない所では不都合ですか。職場の冷蔵
庫に保管する同僚がおり困っております。もちろんビニール袋に入れてはいますが食品と一緒で気になります。
回答:(大腸外科 仲地厚)
冷暗所で保存する理由をお答えします。まずは便潜血検査について説明します。検査のために採取した便の中に血液がな
ければ、結果は「便潜血陰性」となり一安心です。便の中に血液がある場合は「陽性」となるわけですが、採取した便の中に
は腸内細菌がいるため、腸内細菌が活発に活動している状態では便の中の血液(ヘモグロビン)を分解してしまい、稀に結
果が「陰性」となってしまう事があります。室温では腸内細菌が活動する温度なので、活動が抑えられる「冷暗所」が便の保
管場所としてはより適切な場所になります。職場では、厚めの段ボール製の小箱を準備して冷暗所に入れるなどの工夫をし
て、衛生上も、気分的にも不快のない職場環境を提案してはどうでしょうか。
●大腸検査でみつかったポリープは放置しておくと、がんになるのですか。良質(?)ポリープがあると聞くのですが。
回答:(大腸外科 仲地厚)
大腸内視鏡検査は消化器内科医が主に施行する場合が多く、消化器内科医は経験と知識と内視鏡装置を活用してポリー
プが良性か悪性かをみきわめます。5mm 以下で明らかに良性であれば経過観察になる事が多いですが、生検を行ったり、
それより大きい場合にポリープをとる処置をおこない顕微鏡検査の結果で良性か悪性かを診断します。ですので、放置して
あるポリープがすべてがんになるわけではなく、経過観察でよい場合もあります。施行医はポリープを観察し、その扱いを適
切に判断しています。
●乳酸菌と摂ることが大腸がんの予防に良いと聞いていますが、種類も多く、何が一番効くのか決められません。何がおす
すめでしょうか。
回答:(大腸外科 仲地厚)
国立がん研究センターがん対策情報センターから報告されたがん予防についてのコメントの中には乳酸菌についてのデータ
はありませんでした。比較した大規模な試験や信頼できる結果などの十分な検討はされていないと思われます。
●野菜不足を補うため青汁をのんでいますが、鉄分が多く、血圧の薬を飲んでいる人には良くないと聞いた。本当かどうか
知りたい。
回答:(大腸外科 仲地厚)
上記の質問については、栄養管理士とか薬剤師など、薬や栄養に専門の知識のある職種が、より適切に解答できると思わ
れます。
●ポリープ切除 精密検査の結果、早期がんがみつかり、半年後に精査検査するとのこと。その間にやるべき事はなにか。
食事、運動など自分なりに努力はしますが、ネットなどを調べるとどんどん不安が大きくなります。フコイダン、プロポリスなど
念の為にとっておいたほうが良いのでしょうか。
回答:(大腸外科 仲地厚)
内視鏡検査でポリープを切除した場合に、粘膜のみにがんがあり周囲に取り残しのない完全切除のがんの場合は、ほとんど
再発や転移がない状態で経過します。しかしながら、早期がんと言われたとしても、粘膜下までの深さの場合やリンパ管の中
にがんがある場合など、さまざまなケースがあり、それによって対応方法がちがうので、しっかりと担当医の説明を聞いて診察
を継続した方がよいと思われます。早期がんをポリープ切除した場合に、補助的な食品の予防や治療効果のデータはありま
せんので、やはり、担当医のアドバイスを受ける事が一番安心できる事でしょう。
●熱いものがよくないと聞きましたが、冷たいものやトウガラシ、わさびといった刺激物は OK ですか。
●大豆、豆類は乳がんになるリスクが高いと聞きました。豆乳などはどうでしょうか。
回答:(大腸外科 仲地厚)
世界中で、発がんに影響する事柄や食物を調査し、がんに予防効果のあることや食物を信頼できる数で調査した結果、熱
い飲食物と食道がんに関連を認めました。質問にある、冷たいものや刺激物では、はっきりとした結果のでた報告はありませ
ん。極端な摂取を避ければ問題ないと思われます。大豆や豆類についての報告の評価でもはっきりした結果はありません。
●肉食はがんのリスクが高くなると言いますが、何グラムまで大丈夫ですか。
●発がんするリスクに赤身の肉とありましたが、最近は肉を食べた人が長寿であると挙げられています。(赤身の肉が良いと
聞いた)肉を食べると(良質なたんぱく質)と血管が強くなると聞いたことがあります。実際はどうなんでしょうか。
●最近テレビでよく老人の新型栄養失調症の問題を聞きます。その予防対策として肉を食べるよう勧められています。栄養
失調予防とがん予防の為に、特に赤身肉の摂り方をどう考えどう注意していけばよいでしょうか。
回答:(大腸外科 仲地厚)
肉の摂取量については 1 日何 g までなら、大丈夫とか、何g以上だと癌が確実に出現するといった数字の境界はありません。
発がんリスクについては肉食の多い地域や集団など多くのデータを分析した結果ですので、日本人の平均を見て感じていれ
ば、そのくらいの摂取が適切と思っていただいていいと思います。まわりから見て「他の人よりも明らかに肉を多く食べる人」の
摂取量は多い量といえると思います。二つ目の質問の肉を食べた人が長寿で血管が強くなるのでは、との質問がありました
が、正確な情報ではない可能性があります。確かに「良質なたんぱく質を不足の内容に適度に摂取し、その他の食物もバラ
ンスよく摂取する」場合には健康的に過ごせたり、長寿になる場合もあるでしょう。しかし、赤身肉の摂取量が多い国や地域
の疫学的な調査では大腸がんの発生率が高くなるとのデータはありますが、長寿になるデータはありません。
●ピロリ菌の検査はどこでできますか。
回答:(大腸外科 仲地厚)
総合病院では「尿素呼気試験」という名前の検査が簡易でできる検査の一つです。その方法は口から吐いた息を専用の袋
にためてそれを検査し、ピロリ菌の有無を調べます。検査可能なかかりつけ医もあると思いますので、検査が可能かどうかを
聞くとよいと思います。それ以外の方法としては、採血で検査する方法、内視鏡検査で生検を行う方法などがあり、それぞれ
長所と短所がありますので、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。
●大腸癌と便秘の関係についてもっと詳しく聞きたいです。
回答:(大腸外科 仲地厚)
大きな大腸癌の場合には、腸管内腔が閉塞し排便回数が少なくなったり便が細くなる事があります。しかし右側の大腸は内
容物の便が柔らかい状態であるために狭窄を来しにくく、気が付きにくいことがあって注意する必要があります。便秘が続くと
大腸癌になるのではとご心配される方もいますが、便秘が原因で発がん率が高くなる事が確実に証明されたデータはありま
せん。