校長通信 No8『課題を解決する』

校長通信 No8『課題を解決する』
「校長通信 7」(課題を見つけて,それを解決する)の続きです。
ユニークな問いから始まった研究を 2 つ紹介します。キーワードは「課題解決」。自分が
わかりたいことをハッキリさせて,わかるために必要な工夫を考え実行したものです。
1 問い・その①「人類最速タイムは?」
男子 100m走の世界記録は,ウサイン・ボルトが出した 9 秒 58。
「人類は,ボルトの記録を超えられるか?」これをテーマに研究した人々がいました。研究
者により出された記録は「7 秒 1 より速い」だそうです。さて,その根拠は?
研究者たちは,古代ギリシャの古文書から,次の記録を見つけました。
(紀元前 632 年)オリンピアの短距離チャンピオン・ポリムネストール。
ある日,ポリムネストールの前にうさぎが現れた。
彼は逃げるうさぎを追いかけ,ついに追い抜きざまにうさぎの耳を捕まえた。
へえ,2,600 年前の短距離チャンピオンに目をつけたんですね。これをもとに,ポリムネ
ストールの記録を調べようとしたのです。まず,うさぎの走りの実験をしました。野原に
うさぎを放してイタチに襲わせ,それをビデオで撮ったのです。
(うさぎには,えらい迷惑な
話です)実験の結果,どのうさぎも,1秒間に約 14m走ることがわかりました。
14m走るのに 1 秒かかるということは,同じペースで 100m 走ったら何秒かかるか。
14m:1 秒=100m:x秒(内項の積と外項の積は等しいから)100m=14x秒
x=7.1428571 秒,だいたい 7秒 1 か 2。
うさぎのタイムは 7 秒 1 か 2。ポリムネストールはうさぎを追い抜いているから,彼の
100mの記録は「7 秒 1 より速い」という結論です。
2 問い・その②「T・レックスは暴れ者?」
白亜紀後期に現れた最強の恐竜は? そう,ティラノサウルスです。10mを超える体長,
大きな顎と口に鋭いキバを持つ肉食恐竜。でも,研究者たちはある疑問にぶつかりました。
「ティラノサウルスは,プレデター(捕食者)か?スカベンジャー(腐肉食者)か?」
○ライオンやトラのように,動物を襲って殺して食べる
→プレデター
○ハイエナのように,死体や弱って抵抗できない生き物を食べる→スカベンジャー
彼らの「問い」は,これまでのイメージを疑うことから始まりました。獰猛・凶暴なイメー
ジの T・レックスは,片っ端から草食恐竜を襲うものと考えられてきました。しかし・・・
○太くて強そうなこの足は,速いスピードで獲物を追いかけることができたのか?
○大きな体に不釣り合いなほど小さな手は,戦うときに役に立ったのか?
速く走れなかったと思われます。また,あの小さな手で獲物をなぎ倒すことは難しいと
いうのが定説で,生きている草食恐竜を襲う可能性は低かったと考えられています。
T・レックスは,生きている恐竜を襲う暴れ者ではなかった・・・。それどころか,他の
恐竜と仲よく過ごしていた・・・かもしれない。この論争には決着がついていません。
3 課題を解決する力
よくこんな愉快な問いを思いついたものです。ユーモアあふれる人なんですね。
工夫して,粘り強く続けて,答えを導いたことにも驚きました。普通なら,ろくに
資料も揃ってなくて調べようがないと,あきらめてしまうところですから。
この研究成果は,特別な才能から生まれたのでしょうか。わたしは,そうは思いません。
ただ,彼らが,次の 3 つの力を身につけていたことは間違いないと思うのです。
「なぜなんだろう」
○ 問いをつくる力
○ 解決するための方法を工夫する力 「どうすれば解決できるだろう」
○ 粘り強く続ける力
「あきらめない」
これらは,身のまわりに難しい問題が起こっても,賢く楽しくたくましく生きていく
ために必要な力です。筒賀中学校は,この力を身につけるために学習を進めていきます。