資料7 - 関東東北産業保安監督部東北支部

尾去沢鉱山の鉱山保安法等違反事案について(その1)
資料7
平成28年3月9日
関東東北産業保安監督部東北支部
概要
平成26年9月24日、尾去沢鉱山(秋田県鹿角市、休止鉱山)鉱業権者エコマネジメント株式会社から当支部に対し、小真木坑廃水処理所
において、「排水基準に適合しない廃水の無処理放流」及び「坑廃水量のデータ改ざん」をしていたとの報告があり、当支部で司法捜査及
び立入検査を行った結果、次の事実が判明した。
 融雪、大雨等の増水時に、坑廃水量が処理能力及び貯水能力を超過する場合、山腹水路水の導水パイプ入口を土嚢で塞ぐなどして、処理すべ
き廃水の一部を無処理で米代川に排出。 (無処理排出日数:平成17年4月~平成25年7月のうちの491日、水質:pH3前後、鉛0.12~0.36mg/ℓ)
 更に坑廃水量測定値を、処理能力及び貯水能力の範囲内に収まるように改ざん。
■原因
(設備面) ・ 増水時の最大水量の検討、処理能力の設計確認が不十分 等。
(管理面) ・ 法令遵守の意識の欠如、組織・管理・応援体制が不十分 等。
■主な再発防止対策
(設備面)・坑廃水の導水設備、処理設備、貯水設備の増強。
・処理水量削減のため露天採掘跡等の法面被覆、水路整備等の実施。
(管理面)・CSR教育等各種教育、社内監査の実施。
・PDCA手法による管理の徹底。
・各業務の複数担当者化及び定期的ローテーションによる管理体制構築。
・データ記録方法の見直し。
・ホームページによる情報公開。
導水パイプ
■違反法令
鉱山保安法、金属鉱業等鉱害対策特別措置法及び補助金等適正化法
■行政処分等
(平成27年4月1日)
 鉱山保安法に基づく司法捜査、及び補助金等適正化法に基づく立入検査の結果に基づき、
エコマネジメント株式会社に対し次の措置を実施。
【当支部】・既交付補助金の一部決定取消、補助金の返還命令
・厳重注意文書交付
・原因・再発防止に係る報告徴収
【 本省 】・補助金の交付停止(平成27年4月1日以降18ケ月間)
右岸山腹水路(下流より撮影)
■東北支部の対応
(1) 坑廃水処理を実施している全事業者に対し、法令遵守注意喚起文書を発出。(平成27年4月3日)
(2) 補助金を受給し、坑廃水処理を実施している全事業者に対し同様な不正の調査を実施。
(3) 鉱山保安法の抜打ち検査及び補助金検査について、増水時期に重点を置く等、厳重な監督を実施。
尾去沢鉱山の鉱山保安法等違反事案について(その2)
平成28年3月9日
関東東北産業保安監督部東北支部
概要
尾去沢鉱山小真木坑廃水処理所において、平成27年6月から、処理水量削減のため、露天採掘跡等の法面被覆工事(事案その1の再
発防止対策の一つ)を行っていたところ、同年7月25日、降雨(最大24mm/時)により左岸山腹水路の水量が増加し、同水路の一部及び処
理所前枡から排水基準に適合しない廃水(pH4.14 鉛0.23mg/L)が溢流し、米代川に排出した。
■原因
(1) 露天採堀跡等の清水濁水分離のため、法面被覆等工事を実施していたが、工事の施
工性を優先したこと等から、着工前に設置すべき仮設貯水ピットが未設置だったこと。
(2) 露天採堀跡の植栽不良箇所除去とブルーシート養生により、保水力が低下し、降雨時
に表流水が大量に発生したこと。
(3) 処理所前枡等の通水能力が設計上の通水能力を下回っていたこと。
■主な再発防止対策
 応急対策
(設備面) ・溢流箇所の通水能力の増強、貯水設備への送水能力の増強、等。
・仮設貯水ピット2基の設置、等。
(管理面) ・貯水ピット運用手順書の作成、訓練の実施、等。
 恒久対策
(設備面) ・貯水ピットの増設。
・坑廃水処理施設の再見直し。
(管理面) ・工事と坑廃水処理の連携、統括管理体制の再整備。
・非定常時(処理原水量増加時等)の体制の見直し。
・清濁分離工事箇所の巡視の実施。
・貯水ピット運用手順書等を使用した継続的教育及び訓練の実施。
・清濁分離工事の調査、設計及び工事結果確認に係る仕組みの見直し、等。
処理所前枡の溢流状況
■鉱山保安法の違反事項
・ 仮設貯水ピットを設置していなかったこと。
・ 坑廃水処理施設の一部の通水能力が不十分だったこと。
・ 排水基準に適合しない廃水を公共用水域に排出したこと。
・ 清濁分離工事が行われていた露天採掘跡を巡視していなかったこと。
■行政指導
【当支部】 特別検査の結果等に基づき、鉱業権者エコマネジメント株式会社に対し厳重注意文書交付。 (平成28年2月15日)
【 本省 】 親会社三菱マテリアル株式会社に対し、鉱害防止対策の取組み強化等を指導。
(平成28年2月17日)
■本事案を受けた留意事項(管内鉱山に対する注意事項)
(1) 鉱害防止工事に当たり、施工箇所の状況変化を予測し、着工前に工事中の濁水流出防止対策を優先して確実に実施することが必要。
(2) 濁水発生量を十分予測し、必要な通水能力を確保することが必要。